2009/10/03
文芸同人「主婦と創作」2009年10月3日発行 通巻 たぶん339号
┏テ┃キ┃ス┃ト┃系┃創┃作┃メ┃ー┃ル┃マ┃ガ┃ジ┃ン┃━━━━☆ ┃━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ┃ ┃ 文芸同人 主婦と創作 ┃ ┃ 2009年10月 3日発行 通巻 たぶん339号 ┃ ★━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵¨∵ 初めましてのかたは、初めまして。 そうでない方は、お待たせいたしました。 【「自称・文芸同人誌」主婦と創作】発行人の銀凰です。 まずは業務(?)連絡から。 来週10月10日は休刊となります。 次号発行は10月17日を予定しております。 掲載作品投稿の締め切りは「10月15日」となります。 よろしくお願いいたします。 さて、今日は芋名月(旧暦の8月15日・十五夜)です。 秋の夜長に本日の会報をお楽しみ下さい。 ∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴..∴...∴..∴..∴..∴∴..∴..∴ @━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━@ ◇本日の目次… ◆連載……風天マン 実録国際線乗務員の飛行(非行)日誌 39 ◆連載……高野聖 Neo horror Fantasy 黄龍(ウォン・ロン) 18 ◆連載……湖東わたる 『種』 2 ◆連載……神光寺かをり フレキ=ゲー編によるガップ民話集 3-29 @━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━@ ★文芸同人「主婦と創作」ではあなたの作品のご投稿をお待ちしています。 投稿は専用メールフォームで(http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html) 作品投稿に際しては投稿規約(http://mm.9no1.gozaru.jp/03.html)必読です。 ○相互リンクメルマガ・サイト募集中↓お問い合わせはこちらのフォームで↓ http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇連載 実録国際線乗務員の飛行(非行)日誌 作:風天マン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆☆ 実録! 国際線チーフパーサーの飛行(非行?)記録 ☆☆ 「エッ、ウソ、ホント?」笑いと感動、痛快、恐怖の裏側を覗いてみる? 航空会社志望の学生、外国事情やスッチーに興味あるヒト、飛行機を利用 するヒトは必読! 国際線2万時間のハチャメチャ乗務員が仕掛けた、笑いと涙、恐怖と珍事 の打ち上げ花火。 ===================================================================== VOL 39 酒豪新人スチュワーデスと民放美人アナ(その1) ■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□ 香港でビール20本を空けた新人スチュワーデスと某民放テレビ局のアナウンサーの 話です。 女性といえど、2人でビール20本は結構いるのではないかと思われるが、 酒豪には違いない。 これ程の酒豪になった経緯がユニークなので紹介することにします。 香港便に某民放TV局で当時売れっ子の美人アナウンサーのAさん一行が搭乗し てきた。 彼女だけがファーストクラスで、彼女に同行しているカメラマン、マネージャー、 記録係り等5名はエコノミークラスだった。 テレビの画面では結構デカ顔だと思っていたのだが、実際はごく普通サイズ(?)で、 色白の美人で彼女の透き通るような響きのある声は機内放送をやってもらいた いと思わせる魅力的なものだった。 少しばかり「私は魅力的でしょう!」という印象があり、私は意識的に普通に 対応していた。 香港での取材目的は、九竜半島にある通称「阿片窟城」とのことだったので、 それを聞いた私は思わず 「あそこはヤバイですよ!」と言ってしまいました。 ほぼ満席で、彼女だけにかかわっている場合ではなかったので、それで彼女との 会話は終ったのです。 そして、最後の搭乗御礼の挨拶をした際に「十分、お気を付けて下さい」と 言ったのです。 その後、我々が夕食を終えて九竜半島のホテルに帰ってきたときに、偶然にも ロビーでAさん一行とバッタリ出会ったのでした。 声を掛けようとしたのですが、何やら彼等の様子がおかしいので、しばし観察 していました。 彼等の状況から推測すると、どうもAさんが同行スタッフに文句を言ってるよ うでした。 その後、どういうわけか彼女は頭を抱えるようにしてロビーの椅子に座り込ん でしまったのです。 私と新人スチュワーデスのM子がその場にいて、他のスチュワーデスは部屋に 引き上げていったのです。 何故新人スチュワーデスのM子だけが残ったかと言えば、実は、彼女はAさん のフアンだったのです。 私はやおら、Aさん一行に近づき「こんばんは、今日の東京からの便でご一緒 した雨宮です。こちらのホテルにお泊りなのですか?」と声を掛け、Aさんに 「どうかなさったのですか?気分でも悪いのですか?」と尋ねました。 Aさんの話によると、要するに、阿片窟城の取材交渉が上手くいってなくて 困ってるということでした。 この半年余り依頼していた香港の取材協力者が実際には力が無く、阿片窟の ボス(支配的人物)と交渉決裂になったとのことでした。 これに類似した事例は外国では決して珍しいことではなく、単なるAさんの TV局の手配ミスなのです。 当時の香港では、阿片窟城。正式な呼び名は九龍城砦(ガウロンセンツアイ)で、 この一角だけには近づいてはいけないということは誰でも知っていました。 いわゆる悪の巣窟みたいな場所で、我々のようなヨソモノにとっては危険極ま りない所だったのです。 当時の香港啓徳国際空港のビルを出ると斜め右方向に崩れかかった九龍の城が 見えていました。 英国領香港の中にあって中国政府が主権を持つ一角なのですが、実質的には 独 立国家の形態を取っており、阿片窟、賭博場、暗黒街のあらゆる要素が結集して、 100年以上に渡って数々の魔窟伝説を生み続けてきた治外法権的な場所なのです。 その昔、周恩来によって、城砦の主権は中華人民共和国にありと声明が発せら れながら実際は統治されず、英国香港政庁も支配下にできず、共産主義と 資本主義のはざまのブラックホールとも言われていたのです。 1997年の中国への返還を前に、その処遇が問題になり、強制収用と解体が 行われたのでした。 軍隊までが出動した、この強制収用と解体の様子は連日テレビやラジオ、新聞 で報道されていました。 ですから名前の通り、そこでは阿片中毒の人達や、犯罪を犯した人達が警察の 手を逃れて逃げ込む場所でもあったわけで、そこに逃げ込まれたら警察でも 手が出せないということでした。 そこをAさん一行は取材しようとしていたわけですから、生半可な下準備では どうしようもないのです。 彼等に言わせると、約1年前から表の政府関係者や裏の世界の関係者とシッカ リと打ち合わせてきたとはいうものの、私から見ても日本の某TV局の企画は 実情を知らない甘いものだと思いました。 私は1度だけ、そこに顔の効く香港の知人に案内してもらったことがあるのですが、 異様な雰囲気で、2度とは行きたいとは思いませんでした。 ある欧州系の航空会社のスチュワーデスが、誘拐されそこで阿片中毒にされて 売春をさせられ、数ヵ月後に発見された時には心身ともにボロボロだったとい うことも聞いていました。 私は、空手をやっていた関係で香港のカンフーの関係者(裏稼業とも関係)や カンフー映画の監督にも知り合いがいたので、Aさんのマネージャーに 「私の友人でその世界に影響力のある人物がいます。もし、よかったら紹介し ますが、如何ですか?」 と提案したのでした。 彼等は余程困っていたのか、即「お願いします!」ということになり、1時間 後に九竜半島の裏社会に顔の効く私の知人のF氏が経営するナイトクラブに Aさん一行を引率することになったのです。 ■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■□□□ 次回も香港での酒豪の新人スチュワーデスと某民放美人アナウンサーの話の続 きです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆感想は「主婦と創作」気付で↓こちらからお寄せください。 http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html Web拍手からも送信できます http://ohimesamaclub.chat-jp.com/petit/postmail/index.cgi ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ _________________________________ ■Neo horror Fantasy 黄龍(ウォン・ロン)連載 第18回 by 高野聖■ (※本作品には残酷な描写/グロテスクな描写が含まれています) _________________________________ ハインは朱雀の真横で、小学生のように両膝を抱えて座っていた。 「死んだお祖父ちゃんがいつも言っていた。 【洪水はいつだってすぐにはこない。晴れていても安全じゃない】って。 大雨が降って、泥色の川の水が堤防ぎりぎりまでやってきて、コンクリート にヒビが入り、小さな破片が落ちてきて...........ヒビの間から泥水が吹き出して やがて轟音をあげて堤防が崩れ落ちるんだ。水は唸りをあげて村を飲む込み、 すべてを押し流してしまう。 悲劇もいっしょだ。みんな気づいていた。だけど誰1人、全力で逃げよう とはしなかった。誰もが自分だけは平気だと思っていた .......ある日、悲劇が来た」 泥の川は激流となって川岸を洗った。水の上に突き出たコンクリートの 岸壁には、後ろ手に手錠をはめられた人々が、押し合いへし合いしながら 身を寄せ合っていた。今でも立っていられないほどなのに、後から後から 兵士が人を追い立ててくるので、突端に立つ人は濁流の上に身を乗り出し バランスをとっていた。兵士が押すと、木から果物が落ちるように、先頭 からバラバラと水面に落ちていった。 後ろ手に手錠をはめた男女が、驚いたような顔で水面を浮き沈みしながら、 つぎつぎ押し寄せてくる奔流に飲まれ消えていった。 「祖国の大地を血で清めよ!復讐せよ!」 ハインの、AK47ライフルを頭上に掲げた腕は、疲れでブルブルと震えていた。 銃は撃つだけではなく、人を殴り殺し、濁流へと突き落とし、その精神を 破壊する万能の武器だった。引き金に触れると、冷たい金属の肌を通して 力を与えてくれる狂神の腕だった。 スピーカーはさらに割れる大音響で、洗脳された少年たちの鼓膜を叩いた。 ハインは両耳をふさいでしゃがみたくなった。 「同志ハインよ、今こそ敵を倒し、祖国への忠誠を見せよ!」 見せよ見せよ見せよ見せよ見せよ...............洗脳された少年兵たちが拳を ふりあげながら、スピーカーと同じ言葉を繰り返した。 凶暴なコーラスは、無造作なコンクリートの広場と周辺のジャングルに こだました。葉は不吉にざわめき、アンコール王朝の石塔に見えない 亀裂がまた増えた。大樹の根が、遺跡の土台を押し上げ破壊していくよう に、狂気が世界を根底からひっくり返そうとしていた。 わずかに残る理性はかえって苦痛だった。洗脳は鎮静剤、敵の存在は 空気のようなものだった。敵がいるから戦うのではなく、生き残るため に敵を必要としていた。敵がいなければ、作り出せばいい。 敵意が道行く見ず知らずの農民も、家族連れも、学生も、赤ん坊さえも、 みな敵に変えた。 群衆の前に処刑される「敵」が連れて来られた。なぜ処刑されるのか、 妄想以外の理由を知る者はいなかった。 敵は年齢も階級も関係なかった。ここでは「死」だけが万人に平等に 与えられた。 最初に出てきた女は、それまでの兵士の暴行でぼろぼろだった。 両手を縛られたまま引きずられたので、髪も服も砂まみれだった。 女は髪をつかまれ、無理矢理立ち上がらされた。 「母さん!」 ハインは絶叫した。 姉娘が殺された時、母親はスパイ容疑で、ハインは兵士になるため、別々に 連れ去られていた。 独裁者は、子供を兵士として洗脳するために、まず親姉弟を殺させるという。 親を手にかけた子は、自分の生死さえ興味を失い、支配者の意のままに、 死の危険もかえりみない殺人マシーンになる。 「殺せ」 ハインの後ろに立つ上官が命じた。 母親は息子に気づいて、これから何が起きるかを悟った。 砂色の顔に二筋の涙の線ができた。 「いいんだよ、ハイン、母さんが死ぬことでおまえが生き延びるなら、この 命はいらない。だから私を撃っていいのよ・・・・」 凍りついたように動けないハインを見て、上官がのけぞって笑った。 「そうだ、この女はおまえの母親だ、ハイン、だから殺すんだ。この女は おまえに悪しき思想を植えつけた悪人だから、殺して自らの血を清めるのだ。 ............どうした?なぜ泣く?ハイン、できないのか? もしおまえが拒否したら、母親は息子が拷問されるのを見せられたあげく、 自分も同じ拷問で苦しめられて死ぬんだ。アッハッハッハッハ! おまえたちは2人とも死............」 ズギュンッ 弾が肉の中で破裂する音がした。 高笑いしていた上官の、浅黒い顔の上半分が吹き飛んだ。 口元に笑いを浮かべたまま、鼻の中央から上は真っ赤なクレーターだった。 AK47ライフル、別名カラシニコフ、少年でも使いこなせるほど普及した 「人類史上最も人を殺した兵器」。 ハインは初めて引き金を引き、その威力の強さに驚くのと同時に、取り返し がつかないことをしてしまったという思いがゆっくりとこみ上げてきた。 弾を顔面に受けた上官は、血の糸を引きながらコンクリートの上に転がった。 皆が事態に気づいて行動を起こすよりも早く、ハインはふたたび体をねじり 反対方向を向いた。引き金を引く指が痙攣し、涙があふれ出した。 もう後戻りできない。突然、幼いころの記憶が脳裏を走った。 庭で飼っていたニワトリを、今晩のおかずにするために、追いかけていた。 ニワトリは飛べない羽をばたつかせながら、何とか逃げようと飛び上がっていた。 (ぼくたちはニワトリ以下だった。逃げようともしないで捕まった) 母の目は、ハインに語りかけていた。 (撃ちなさい。何も気にすることはないよ。私はこの汚い世界を離れて 美しい場所へ行くの。そこには姉さんも父さんも待ってる) 鋭く長い銃声が響いた。母親は胸に銃弾を受けた衝撃で、体をくの字に 曲げ、前のめりに倒れた。血がみるみる砂に吸い込まれていく。 しかしゆっくりと、最後に残った力をふりしぼり、顔をあげて息子を見た。 美しい微笑だった。直後に力尽きた。まぶたが、息子の姿を愛おしむよう に、半分だけ閉じていた。 「ぼくが誰かに銃を向けるのはこれで最後だ」 ハインはそういって手からAK47ライフルを落とした。 将校の1人が、今にも撃ち殺そうと銃口を向ける兵士たちを下がらせ、 素手の屈強な兵士を手招きした。 「こいつをトゥール・スレン強制収容所へ連れて行け。アメリカのスパイだ。 わが軍の将校を殺した。たっぷり痛めつけてすべて吐かせろ」 兵士の指が、鉄枠のようにハインの両腕に食い込み、強制収容所へと向かう 軍用トラックへと引きずっていった。 (To be continued) _________________________________ よかったら、こちらのサイトも覗いてみてくださいね 「英国歴史散歩~薔薇の王国~」 http://www.kingdom-rose.net/ __________________________________ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆感想は「主婦と創作」気付で↓こちらからお寄せください。 http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html Web拍手からも送信できます http://ohimesamaclub.chat-jp.com/petit/postmail/index.cgi ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇連載短編 『種』 (二) 作者 湖東わたる ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 工場のおじさんたちがきて、家に帰って休むように言ってくれたけど、あた しはとてもそんな気になれなかった。お爺ちゃんから一メートルどころか一セ ンチすら離れたくない。ずっと病院の家族用仮眠室に寝泊まりしていた。 集中治療室に入るときは、お爺ちゃんが心配しないように涙を拭いて鏡で顔 をチェックしてからお爺ちゃんに会った。 カニューレが喉に入っていて声を出せないので、お爺ちゃんのベッドの手元 にはスケッチブックとペンが置かれていた。 (心配するな。大丈夫だから)お爺ちゃんが書いてくれた。 「うん。早く元気になって退院しようよ」そんなやりとりを毎日のように繰り 返してた。お爺ちゃん、あたし初めてだよ、こんなにたくさん嘘をつくの。 お爺ちゃん。この世の中でただひとり、あたしのことを愛してくれる人、そ してただひとり、内気なあたしが平気で自由に話せる人。あたしはそんな大切 な人を失おうとしていた。 夜中に突然、看護師さんに起こされた。お爺ちゃんの容態が急変したのだ。 「意識がなくなるかもしれないから、今のうちに言うことがあったら言いなさ いね」看護師さんが言った。 あたしの心臓は爆発しそうだった。ベッドに行くと、土みたいにひどい顔色 でお爺ちゃんは少しだけ笑顔を見せた。 「お爺ちゃん! あたしをひとりにしないで。お願い」あたしは初めてお爺 ちゃんの前で涙を見せた。ブルブル震えながらお爺ちゃんがあたしに左のこぶ しを差し出した。あたしはその手を両手で包み込んだ。お爺ちゃんは右手でス ケッチブックに何か書いた。ペンを持つ手が震えていて、とても弱々しい字 だった。 (この花を見たかった。アカネ、咲かせてくれるか?) お爺ちゃんの左手からあたしの手の中に何かが渡された。見るとそれは何か の小さな種(たね)だった。水滴型のかたちをしていて、茶色で、尖った先端 に向かって黄色に変わっている種だった。 「わかった……。お爺ちゃん、あたし……咲かせるよ。きっとこの花を咲かせ るからね……」あたしの涙がお爺ちゃんの左手を濡らした。 お爺ちゃんは意識を失った後、二日間がんばり、そして息を引き取った。街 路樹に紅葉が目立つようになってきた秋の日だった。 * お葬式も終わった後、あたしはひとりで家にいた。母方の遠縁の親戚があた しを引き取ってくれるという話もあったけど、あたしは断った。幸い、両親の 生命保険のおかげで暮らしていくのに不自由はなかった。それに、お爺ちゃん との思い出がいっぱい詰まったこの家を出て行くのは何より嫌だった。中学校 の担任の先生から電話が入り「一ヶ月ほど休んで気持ちの整理ができたら出て おいで」と言ってくれた。 あたしはひとり机の上にほおづえをついて、お爺ちゃんの残した種を見つめ ていた。何の花なんだろう? お爺ちゃんの花いじりをあれだけたくさん見て いたにもかかわらず、あたしの「アカネ・コーナー」は花を枯らせてばかり だった。 この花を立派に咲かせたら、お爺ちゃんへの供養になる。あんなに見たがっ てた花だもの、絶対見せてあげたい。それには、確実な栽培方法を知らなく ちゃ。なにしろ種はたった一個だもんね。そう考えるうちに、すうっと涙が流 れて、机の上に落ちる。何日か、そんな日を過ごした。 (続く) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ☆感想は「主婦と創作」気付で↓こちらからお寄せください。 http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html Web拍手からも送信できます http://ohimesamaclub.chat-jp.com/petit/postmail/index.cgi ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◇連載小説 フレキ=ゲー編によるガップ民話集3-29 作:神光寺かをり ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ※この小話はフィクションであり実在の人物・団体・思想とは関係ありません。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 地上に巨人が生まれて、そのあと絶えた訳 29 庭の外れの柵の前に、牛飼い杖を持って立っている娘と、灰褐色の服の男が いました。彼等は家畜の数を数えるのに忙しく、それ以外には、互いの姿しか 目に見えていないようでした。 反対側の外れに、長い肩掛けを掛けた娘と、黄色の服の男がいました。彼等 は美しい装束に見入っていて、それ以外には、互いの姿しか目に見えていない ようでした。 竈の側に、大きな壺を持った娘と、褐色の服の男がいました。彼等は芳醇な 酒に酔っていて、それ以外には、互いの姿しか目に見えていないようでした。 食卓に、大きな剣を持った娘と、赤い服の男がいました。彼等はたくさんの 食物に耽楽していて、それ以外には、互いの姿しか目に見えていないようでした。 ペネムエルはさらに良くあたりを見回しました。 小さな離れに、白い服を着た女性と、土色の服の男がいました。彼等は遠く へ出かけていた一番上の娘が帰ってきたのを大変喜んでいて、それ以外には何 も見えていないようでした。 この世で一番最初のお母さんがフッラに駆け寄って言いました。 「娘よ娘、さあその大きな荷物を下ろして、母に口づけをなさい」 「この荷物はこちらの方の大切な荷物ですから、この方の兄弟の皆さんに渡す までは方から下ろすことができません。どうか許してください」 フッラは荷物を下ろさずに、この世で一番最初のお母さんの頬に口づけをし ました。それからこの世で一番最初のお父さんの頬にも口づけをしました。 この世で最初のお父さんは、ペネムエルに訊ねて言いました。 「兄弟よ、娘が担っている荷物は何ですか? あなたではなく、彼女が背負わ ねばならない物でしょうか?」 ペネムエルは答えて言いました。 「偉大な兄弟よ、これは総ての人間が担わなければならない物です。あなたと、 あなたの子供たちと、その子供たちが、皆担い続けなければならない物です」 ペネムエルは続けて言いました。 「天の最も高きところにおられる最も尊き御方が、この世で最初の人をお造り になられたとき、まず大地の御使を呼び、命ぜられました。 『肥えた土を採れ。逞しき体となるように』 大地の御使いは楽園の中心から肥えた土を掘り出し、御前に運びました。 それから海の御使いを呼び、命ぜられました。 『澄んだ水を採れ。健勝な体となるように』 海の御使いは海の底から澄んだ海水を汲み、御前に運びました。 それから炎の御使いを呼び、命ぜられました。 『清い炎を採れ。強き体となるように』 炎の御使いは山の頂から清い炎を採り、御前に運びました。 それから風の御使いを呼び、命ぜられました。 『涼やかな風を採れ。柔軟な体となるように』 風の御使いは谷川から涼やかな風を採り、御前に運びました。 いと尊き御方は、土を集めて人の形を作り、水を加えて整え、炎で乾かし固 め、風を吹き込まれました。土は肉となり、水は血となり、炎は熱となり、風 は息となりました。 それらは眠る人となって、御前に横たえられました。 最後に最も尊き御方は、空の御使いに命じて言われました。 『古き命の輝きを降らせよ。相応しき命が宿るように』 空の御使いは夜の天蓋を揺すり、小さな星を雨と降らせました。万の星は燃 え尽きて消え、千の星は海に落ちて消え、百の星は山に落て消えち、十の星は 楽園の地面に落ちて消え、一つの星が眠る人の胸に落ちました。 眠る人の胸の中で、星は消えることなく光輝き続けました。 それ故、眠る人は目醒めた人となったのです。 偉大な兄弟姉妹よ。あなたは土の人であり、あなた方の娘たちもまた、大地 から造られた肉の体を持っています。 大地に生きる大地の兄弟よ。肉の体を持つ者の夫には肉の体を持つ者が相応 しく、肉の体を持つ者の妻には肉の体を持つ者が相応しいのです。あなた方が あなた方に相応しいしいように。 しかし、あなたより後に来た私の兄弟はあなたの娘たちに相応しい体を持っ ていません。 偉大な兄弟姉妹よ、あなたより後に地上に来た私たちは、燃え尽きた星と同 じ古き命そのものです。あなた方の目に見えていて、あなた方が思っているも のと同じ体は、持っていません。古い命は肉の目に見える物ではないからです」 この世で最初のお父さんは頷いて言いました。 「智慧のある兄弟よ。誠にあなたの言うとうりでしょう。しかるに私の娘とあ なたとが手分けをして運んできたのは、私の娘の婿たちの血肉たる土でありま しょう。さあそれを彼等に手渡してください。そうすれば、彼等は私の娘たち の正しい婚約者となるでしょう」 しかしペネムエルは荷を下ろしませんでした。彼がが荷物を担ったままです ので、フッラも荷を下ろすことができませんでした。 続く ─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─ ★「フレキ=ゲー編によるガップ民話集」のバックナンバー(今までのお話)は ↓こちらのサイトでもお読みいただけます↓ http://ohimesamaclub.chat-jp.com/petit/cb/folklore/ ★神光寺かをりのファンタジー小説・歴史小説サイトはこちら↓ お姫様倶楽部Petit:http://ohimesamaclub.chat-jp.com/petit/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今週号はここまで。 また次回お会いいたしましょう。 メルマガの感想、各作家さんへのメッセージは「主婦と創作」気付で ↓こちらからお寄せください。 http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html Web拍手からも送信できます http://ohimesamaclub.chat-jp.com/petit/postmail/index.cgi ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このメールマガジンは サイト/ブログなどの購読フォームから購読のお申し込みを戴いた皆様や、 無料レポートのご請求を戴くなどした際にメールマガジン購読を ご希望いただいた皆様に配信しています。 お申し込みのお心当たりの無い場合は、 メールアドレスの間違いやいたずらの可能性がありますので、 お手数ですが下記の解除URLより購読登録の解除をしてくださいますよう お願い申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━【奥付】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◆テキスト系創作メールマガジン 文芸同人「主婦と創作」◆ 発行人:銀凰恵(P.N.神光寺かをり) サイトURL :http://mm.9no1.gozaru.jp/ ブログURL :http://ohimesamaclub.seesaa.net/ お問合用メールフォーム:http://mm.9no1.gozaru.jp/mmagazine.html 登録・解除用フォーム :http://mm.9no1.gozaru.jp/02.html このメールマガジンは、以下のメルマガスタンドを利用して発行しています。 まぐまぐ http://www.mag2.com/m/0000093007.html めろんぱんhttp://www.melonpan.net/mag.php?004900 アルファポリス http://www.alphapolis.co.jp/maga.php?maga_id=1000313 メルマ! http://www.melma.com/backnumber_175552/ マリンNAVIお知らせメール http://www.marine.ne.jp/mm/user.asp?id=75141 お知らせメールの登録解除は http://www.marine.ne.jp/scripts/mente.aspの <おしらせメール申込サイトの解除>フォームに ご登録のメールアドレスを入力し、 解除したいマガジンを選択して「削除実行」ボタンをクリックして下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ このメールマガジンに掲載されている文章は、 それぞれに表記のある著作者が著作権を有しています。 無断転載・複製・改変・転用は、著作権法により禁止されております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


