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2009/01/05

太田ジオメールマガジン[135]~2009年タブーに挑戦、の巻~

◆太田ジオメールマガジン第135号!!!◆

2009年が皆様にとって良い年でありますように

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          ━ Vol.135 ━ 2009.1.5 ━

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┏━━━━━INDEX━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃★インフラ寿命を短くするタブーに挑戦
┃ 「インフラを長持ちさせる」ということが重要になる元年だと思います。
┃ そのためには、見て見ぬふりをしていたタブーに挑戦する必要があります。
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■インフラ寿命を短くするタブーに挑戦
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低成長時代になりフロー社会からストック社会への転換が言われはじめました。
公共財であるインフラについてもそうですし、個人の財産である家屋等に対して
もそれを考える時期に来ました。「壊れたら直せばよい」「足らなければ造れば
よい」という時代は去り、今あるものを長持ちさせるということに切り替えるに
当たり、いままで見て見ぬふりをしていたところにメスを入れる必要が出てきた
と思います。またそこにこそ新しいビジネスチャンスがあるとも言えます。今回
は、5つのタブーについて総論的にご呈示したいと思います。それぞれの詳細に
ついては今後ご紹介していく予定です。

(1)「丸腰の法面解消」への挑戦
キーワードは「丸腰解消」。丸腰解消対策は「何でも良い」。強いて言うなら
「土の自由度を奪う邪魔なものを入れる」

法面は土構造物の代表格です。切土法面も盛土法面も標準勾配で管理されていま
す。雨によってよく表層部が崩れますが、いったん崩れると法面全体で安定計算
が行われ大きな対策が事後対策として行われます。事前に「何でも良いですから」
土を拘束する対策をしましょう。

自然の道理として、法面は、長い時間が経過すれば、自然斜面の勾配に限りなく
近づきます。自然斜面の勾配はその地域の気象条件(特に降雨)とバランスして
います。ほとんどの場合、自然斜面より法面勾配の方が急なので、風化し自然地
盤の状態に近づいていけば、勾配もそれに近づきます。すなわち崩れるというこ
とです。

実際の現象としては、切土法面も盛土法面も、風化や緩みが発生するのは表層部
1〜2mの浅いところです。それ以深はそれほど劣化しません。風化帯がマントの
役割をするからです。豪雨時に浸透する水にとっては、深いところの緩んでいな
い地盤は不透水層的であり、表層部の緩んだところにだけ水が浸透します。表層
部の緩み部を崩壊させないようにさえすれば、法面は長持ちします。

崩壊するときには、土の中の粒子は動かなくてはなりません。その際に砂質土系
の地盤は「膨らみます」。その現象は、土質工学では正のダイレタンシーと呼ば
れます。何もしていない丸腰の斜面は、自由に膨らむことができるので、自由に
崩れることができます。丸腰なのですから何の束縛もなく、何でもできます。何
かしてある「丸腰でない斜面」は、自由度が減っているので自由に膨らめません。
このため自由に崩れることができません。丸腰でなければ斜面は崩れにくい、と
いうわけです。

法面は人間がつくった急勾配斜面です。決して「安定」勾配ではありません。人
間が急につくった代償として、何か崩れにくくするものを加える行為をする必要
があります。丸腰は、やりっ放し、造りっぱなしなので、せっかくのインフラが
長持ちしません。鉄筋をただ差し込むでも良し。排水パイプを打込むでも良し。
必要な安全性向上の程度とコストとを考えて、「何でも良いですから」代償行為
をすることを普及させましょう。

丸腰じゃなくした法面(たったこれだけで崩れなくなった)
http://www.ohta-geo.co.jp/image08/nisikita01.jpg
http://www.ohta-geo.co.jp/image08/nisikita02.jpg


(2)「擁壁背面に水圧は作用しない」への挑戦
キーワードは、「擁壁は標準の排水孔では背面の水は抜けない」。

擁壁の排水は3m2に1箇所程度の排水孔を空けることになっていて、それがあれ
ば擁壁に水圧は作用しないことになっています。安定計算上は、水圧が1〜1.5m
作用すると壊れてしまうのが擁壁です。特にもたれ式擁壁タイプが問題です。
そして実際にその程度の水圧が作用している証拠がある擁壁も多々あります。実
際倒壊したものもあります。排水不良の原因は水抜孔が貧弱さです。

しかし、排水不良の擁壁がすべて壊れているわけではありません。設計の個別要
因を過大に見積もって、逆に水に対する評価が過小となっていてバランスしてい
るからだと思われます。ベテラン技術者のさじ加減の妙もあると思いますが、い
わゆる結果オーライです。結果オーライなら良いではないか、とも言えますが、
地震も増えていることですし、また集中豪雨も多くなったそうです。排水孔の機
能改善や地震時の転倒防止も図れる方法もできたことですから、「インフラを長
持ちさせて使うために」擁壁排水の改善対策を普及させましょう。

擁壁は背面水圧があるとアウト
http://www.ohta-geo.co.jp/image08/youheki.jpg

排水不良に起因する盛土・擁壁の災害予防工
http://www.ohta-geo.co.jp/reports/004/haisui-anchor.html


(3)「集水ボーリング保孔管の破断防止」への挑戦
キーワードは、「破断しているものがあることをうすうす感じているんでしょ」。

土木構造物は、それぞれの部材強度から構造解析して十分安全になるように設計
するのが基本です。しかし、地すべり対策などで使われる集水ボーリング保孔管
については、それが行われてきたことはありません。見えないので、見なければ
安心なのです。心理学における「安全性バイアス」の一つと考えて良いと思いま
す。

動く地面の中に入れる部材ですから、その動きに対して十分な強度をもっていて
はじめて長持ちする施設になります。部材の劣化以上に重要なことです。集水ボー
リング保孔管に対する強度の話をはじめましょう。

パイプが破断するとどうなるか?
http://www.ohta-geo.co.jp/image08/drain_pipe.gif
地中のパイプにはどれくらいの負担がかかっているか?
http://www.ohta-geo.co.jp/image08/drain_pipe.jpg


(4)「法面排水溝が法面崩壊の原因のひとつ」への挑戦
キーワードは、「放置するなら、ない方がマシ」。

大雨が降って、法面が崩落しているところをみると、集水ます直下にその場所が
多々あることに気がつきます。その集水ますの近くでは植生工の枯れたゴミが集
まり、水路としての機能を果たしていないところが目につきます。広く水を集め
てきて一箇所で吐き出し、その結果法面が崩れている場合があります。溝掃除を
すれば済むことですが、なかなかこれが難しいようです。あまりにもたくさんあっ
てコスト的にまかなえないからのようです。

環境配慮で植生工を法面にするのであれば、それによって不利益になること(ゴ
ミが詰まる)に対して何らかの代償行為をしましょう。そうすれば法面が長持ち
します。

法面の水路掃除を仕事とすればたくさんの雇用が生まれるかも知れません。通行
料が高くなるかも知れませんが、インフラ寿命が長くなるのであればペイするか
も知れません。


(5)「宅地を買うならライフプランをたてるのが常識」への挑戦
キーワードは、「住宅ローンは命とバランスしているだけ」。

マイホームを購入すると、そのローンはマイホームの資産とバランスしていると
考えがちですが、実は違います。災害などで家屋や宅地が被災しても、担保を差
し出せばチャラになるということはありません。ローンは生命保険とバランスし
ているだけです。

ライフプランを立てるのは難しくありません。エクセルで自分が死ぬまでの収入
と支出を想定し、その間に災害等で資産を失う時期をいくつか想定してシミュレー
ションしてみればよいだけです。ビジネスで独立開業するときの試算と基本的に
は同じです。「何事もなく順調」以外にはあり得ない、というのは楽観的すぎま
す。

どこまでを「対策」で防御し、どこからを「保険」で補うか、それでも足らずの
時にはどうするか、ということをシミュレートすると、「安い」を追求すること
が結果的に一番「高い」選択をしているということになることもあると思います。
個人資産も長持ちすることが大切で、それこそがフローからストックへの転換に
なるものです。考えるのを停止することによる安心感より、ちゃんと考えて安心
を得るように地盤技術者がお手伝いをしましょう。


((((((( 編集後記 )))))))
オーストリアの砂防巡検に連れて行ってもらったとき、他国の斜面対策を見て驚
きました。まったく日本でやっていることと違うのです。彼らは地すべりであっ
ても、抑止工をほとんどやりません。民家が近くても、幹線道路沿いでもです。
そして水抜ボーリングすら高価だからという理由でやりません。対策の大半は、
明暗きょ工で、希に植樹してその木が地中から水を吸い上げるという「工法」ま
でありました。日本の対策方法が世界標準ではありませんし、いま目指そうとし
ているヨーロッパ型のストック型社会では、日本で主流の「力任せ対策」はむし
ろ例外中の例外でした。上記のタブーは、極論ではなく世界で見れば極めて常識
的な範囲にあるものだと思います。いやまだまだ豪華対策の部類なのかもしれま
せん。知恵を出していきましょう。(H.O)

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耐震構造;地下水排除・間隙水圧消散、並びに地盤補強による地盤の耐震化工法
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