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2008/12/14

太田ジオメールマガジン[133]~対策方法が見つかると現象が認識される、の巻~

◆太田ジオメールマガジン第133号!!!◆

赤穂浪士は元禄15年12月14日に討ち入りましたが、太陽暦だと1月30日だそうです。

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          ━ Vol.133 ━ 2008.12.14 ━

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┏━━━━━INDEX━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃★対策方法が見つかると現象が認識される
┃ 防災対策は、危険性を指摘するだけでは進みません。危険性の指摘は対策方
┃ 法とセットで初めて現象の認識につながります。
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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■対策方法が見つかると現象が認識される
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先日、ある受圧板メーカーの方が来社された際に、用途拡大について話をしまし
た。どういう用途・分野に適用できるか?という話だったのですが、すでにある
分野では先行している工法が多々あるので、そこを置き換えるのは「価格が安い
こと」以外では今は難しいですよ、という話をしました。

それよりも、今はない分野で先行する方が良いのではないですか?という話をし
ました。防災には、専門家はわかっていても、見て見ぬふりをしている分野がた
くさんあります。なぜ危険性の存在がわかっているのに、警鐘を鳴らさないかと
いうことですが、それは「対策方法がないから」です。

対策方法のないものは、危険性を声高に叫んでも「じゃあどうするの?」に応え
ることができません。単に不安を煽るだけでは防災対策にはなりません。防災ビ
ジネスは、安心感を与えるものであって、不安感を与えたままではダメなのです。

以下に、当社が関わった事例を紹介します。自然界にとっては前からあったもの
なのですが、防災対象になったのは解決方法が見つかったあとです。

(1)高エネルギーの落石
20年くらい前まで、落石対策は小規模なものに限られていました。対策工が斜
面末端・構造物直近の待ち受け型落石防止柵工(100KJ程度のエネルギー量が限
界)か、発生源対策としてのネット工(本当にそれで岩盤崩落が抑えられるかど
うかは調査してもなかなかわからないので、ネットが張ってあれば初動が抑えら
れるので大丈夫だろうという約束事でする工法)が主体でした。どうしても岩盤
崩壊対策が必要な重要な山岳道路に限っては落石洞門(剛構造なので500KJ程度
が限度)がなされてる程度でした。

スイスからリングネット工法という柔構造のネットが輸入され、似たような柔構
造ネットも開発され1500KJ〜3000KJ程度の高エネルギーの落石対策ができるよう
になりました。これによって、大岩塊の崩落という現象が「防御すべき現象」と
して認識されたのです。ちなみに、リングネットは戦時中Uボート(ドイツ海軍
の潜水艦)が、湾内に侵入しないように海中に仕掛けられた高強度ネットを使っ
たのが最初なのだそうです。

リングネット工法(オーストリアの例)
http://www.ohta-geo.com/siryou36/DSC00790.html

(2)地震時の谷埋め盛土
地震時に谷埋め盛土が横方向に動くということは、一部の土質専門家の間では知
られていた現象のようです。しかし、「対策は無理(ある専門家談)」と考えら
れており、対策すべき現象としては存在しないことになっていました。1995年の
兵庫県南部地震で、京大の釜井先生の研究により240箇所以上の谷埋め盛土が調
べられ、そのうち110箇所ほどが変動していました。これだけのデータがあると
原因究明が可能になり、対策の方法も考えることができるようになります。

まず、溜池を埋めた盛土はすべて変動していました(変動率100%)。谷埋め盛
土は約40%が変動していました。ということは約60%の谷埋め盛土は変動しなかっ
たことになります。それらを分析した結果、谷埋め盛土を滑動させる原動力は、
底面の飽和地下水帯に発生する液状化現象で、変動するかどうかは側面摩擦抵抗
の効き具合(側面摩擦抵抗が大きければ変動しない)によることがわかりました。

対策方法としては、(A)液状化を発生させない=過剰間隙水圧を発生させない
=>>地下水を抜いてしまうか、過剰間隙水圧が発生しようとしたときにその圧
力を逃がしてやればよい、(B)側面摩擦抵抗がよく効くようにしてやればよい
=>>一団の盛土が同時に動かないように盛土をブロック化してそのブロック間
に摩擦抵抗が生じるようにしてやればよい、ということがわかりました。意外に
簡単だったのです。そして工事費も公共事業で行われるような高額のものでなく
て良いことがわかりました。

この解決方法がみつかったことで、宅地谷埋め盛土の地震時対策(宅地耐震化促
進事業)が宅地造成等規制法の改正を経て始まりました。解決方法に目処がつい
たことによって見て見ぬふりされていた危険が防災対象として認識された好例で
す。

宅地耐震化工法例
http://www.ohta-geo.co.jp/reports/002/house_pdr.html
http://www.ohta-geo.co.jp/reports/002/takuti_kouji.html

(3)擁壁の排水不良
擁壁の安定計算を地質の出身者が最初に見るとぎょっとします。薄っぺらいコン
クリート(もたれ式をイメージしてください)が土圧とバランスしていなければ
ならないという単純な安定条件は、土質の不均質さや、飽和状態、地下水の状況
などの無限の組み合わせと精度上のバランスがとれていないと直感するからです。

実際、水圧は作用しないという条件でつくられた擁壁が水圧で壊れている例が多
くあります。それらは、被災した擁壁の原因として報告書には書かれますが、良
い対策工法がないので被災現場個別の特殊事例として処理されています。しかし、
技術屋の大半はそれが特殊事例ではないことを知っています。とはいってもコン
クリート擁壁をくり抜いて(特に重力式擁壁)集水ボーリングをするのも費用が
かかって大変なので、どちらかというと見て見ぬふりがされている事例です。

ただ、保全すべき施設が重要となるとニーズが生じ、対策の実績ができると徐々
に普及がはじまり、防災すべき現象として認識されはじめます。下記URLのよ
うに、既存擁壁の水抜穴を利用してストレーナー付き鋼管を打ち込めば、実は簡
単に対策できます。背面地盤まで打ち込みますので、受圧板でもつければアンカー
機能ももつようになり、地震時の擁壁転倒防止対策にもなります。

現在は、重要施設での対策がニーズの主体ですが、そのうち道路の擁壁等もこう
いう方法で維持していくことになると思います。擁壁変状には、地すべりなどに
よるものももちろんありますが、多くは排水不良によるものと考えられるからで
す。ブロック積み擁壁などは、排水不良になれば変状して当たり前の構造物です。

排水不良に起因する盛土・擁壁の災害予防工
http://www.ohta-geo.co.jp/reports/004/haisui-anchor.html

排水アンカー工の広告
http://www.ohta-geo.co.jp/image08/D_anchor.jpg

(4)長期利用できる保孔管
世界金融危機の影響を受けて、金融とは直接関係のない分野にまで不況が押し寄
せてきています。不況で税収が少なくなるということは、インフラを新たにつく
るということが難しくなるということでもあります。このため、すでに造ったイ
ンフラをできるだけ上手に維持して長持ちさせようということになります。ライ
フサイクルコストの意識です。

ライフサイクルコストが重要だということはかなり前から専門家の間では認識さ
れていました。しかし、目先のイニシャルコストに気持ちが揺さぶられて「とり
あえず今の出費が少ない方がよい」という選択がなされてきたように思います。
すなわち、ライフサイクルコストも見て見ぬふりされていて検討対象として認識
されてこなかったものの一つです。

「足らざるを造る」時代が終わってきたことや、低成長時代になってきたこと、
あるいは膨大なインフラの維持・更新費用を考えはじめるとクラクラしてきたこ
と、それに加えて昨年会計検査院が「ライフサイクルコストを検討していないも
のがあった」と指摘したことなどから、公共インフラのライフサイクルコストが
強く意識されるようになってきました。

地すべり対策施設のライフサイクルコストに関する業務も公的研究所から発注さ
れるなど、公共インフラ整備も維持・更新を強く意識したステージに入ってきた
と言えます。

ライフサイクルコストは、施設の寿命でほとんど決まります。20年に1度更新が
必要なのか、100年に一度でよいのかというのは、イニシャルコストなど簡単に
吹き飛んでしまうほどの違いを生じます。

例えば集水ボーリング保孔管に関しては、以下のような資料がありますので、ラ
イフサイクルコストを考慮してインフラ整備する場合には参考にしてください。

集水ボーリング保孔管のライフサイクルコスト
http://www.ohta-geo.com/products/sabiless_lifecycle_cost.doc

集水ボーリング保孔管の比較検討表
http://www.ohta-geo.co.jp/reports/others/hokoukan-hikaku.pdf

集水ボーリング保孔管の機能比較
http://www.ohta-geo.co.jp/reports/others/hokoukan-hikaku2.pdf


((((((( 編集後記 )))))))
ちょうど良い対策工法が無いが為に防災対策が必要な現象と認識されていないも
のは意外に沢山あると思います。既存分野で新たな工法を普及させようとするの
は大変なので、いままで見て見ぬふりをされていた分野を探すのが合理的だと思
います。といっても何も手がかりがなく探すことは難しいことです。現象に関し
ての認識は専門家の間では存在しているけれど対策が実用化されていないものが
良いターゲットになるのでしょう。ビジネス的には、その「見て見ぬふりをされ
ている現象の探し方」が鍵のようです。(H.O)


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耐震構造;地下水排除・間隙水圧消散、並びに地盤補強による地盤の耐震化工法
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