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青年フリーライターと小料理屋の若旦那がおとどけする酒と肴、季節風物あれこれ。ときにはちょっと和やかになったり、ふと何かを発見したり。日常のなかの何かを食と酒に求めて。。。

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2007/07/30

STREET JOURNAL

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      ☆★☆ STREET JOURNAL ☆★☆
                                   
                                2007/7/30
====[今日のメニュー]========================

■美味にまつわるエトセトラ:Thirsty Soul 〜 うろうろ
■美味しい街パトロール: 身近に転がっている“寿司ネタ”
■シアターコラム: この夏話題の大型映画解説!
■私的日記: 生命とは
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■美味にまつわるエトセトラ:Thirsty Soul 〜 うろうろ
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 いやはや、今年はなんともだらだらと梅雨が続くことだ。東京はじめじめとして、ま
ったく夏が嫌いな私でさえ、早くからっと晴れた夏の日にならないかなと思ってしまう
ほどだ。皆様におかれましてはいかがお過ごしだろうか?夏バテにはやはり、おいしく
食べおいしく飲むことが大切ではないかと思う。さて、今月は何からはじめましょうか
ね・・・



 という前置きの部分から、この原稿は馴染みのカフェで書いています。梅雨の晴れ間
なのか、燦燦と日差しが強く、オープンエアのスペースに植えられた木々も、どことな
くしんなりと暑さにうだっているように見える。何組かの女の子が外のテーブルでしゃ
べっているが、よくこんな暑い中に屋外で飲む気になるよな。。。


 こんな暑い昼間は、私はビールよりもカクテルを好む。ジン・トニックかカンパリ・
ソーダ、時にはシャンパンにちょこっとペルノーなんかをたらしたりして。このカクテ
ルは「デス・イン・ジ・アフタヌーン」という名前がついているとか。「午後の死」と
はなんとも面白いネーミングだ。
 ペルノーは薬草系のリキュールでアニスの香りが強く、結構癖のある味で好き嫌いが
分かれるお酒だ。かつてヨーロッパで中毒者が続出したというニガヨモギのリキュール
「アブサン」と同じような系統。この香りをシャンパンに少し添えると、一風変わった
さわやかなカクテルになる。午後の物憂いカフェの飲み物には、ぴったりなのではない
かと思って愛飲しているのだ。付け加えると、アブサンはかのヘミングウェイの大好物
であったとか。。。


 それでもまあ、夕方近くになってくると多少は風も出てきて涼しさを感じたりもす
る。冷房のしっかり効いた店内は、ゆったりとした夏の夜の雰囲気になる。こうなると
あまりライトなカクテルは似合わなくなってきて、腰を据えてゆっくり飲めるものがほ
しくなる。
 「ネグローニ」とか、いいですよ。ジンとカンパリとスイートヴェルモットをロック
グラスで混ぜ合わせたもの。柑橘の香りとして、オレンジなんかを添えるとなかなかい
い。私は個人的に、オレンジの皮だけをピールして入れるのが好きだ。ジンのアルコー
ルのパンチとカンパリの苦味と、そしてヴェルモットの甘さと香りが絶妙に溶け合っ
て、やはり日が沈んでからはこういうカクテルでいきたいものだな、と。


 「ブラックベルベット」も、のんびりとした夜にお勧めのカクテルだ。こちらはちょ
っと贅沢な、シャンパンとスタウトのカクテル。スタウトというのは、まあ黒いビール
のことで、ギネスなんかが有名な銘柄ですね。両方ともよく冷やして、氷をいれずにグ
ラスに注ぎ合わせて出来上がり。スタウトの滑らかな舌触りと、シャンパンの香りと味
わいが、カクテルになるとそれぞれの特徴を活かしあってまったく別の味わいになる。
 シャンパンは一本買ってしまったほうが楽しい。「デス・イン・ジ・アフタヌーン」
を飲みながら原稿を書き、おなかが減ったので、シェフお手製のベーコンとブロッコリ
ーのキッシュを食べて、ヒヨコマメとトマトのスープを飲み、今は「ブラックベルベッ
ト」を飲みながらブルーチーズ食べてます。ちょっと贅沢なカフェタイムでありました
(笑)

                
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 今は鰻屋の座敷に居ります。この原稿の構想は鰻が焼けるのを待ちつつ、飲みながら
考えたわけであります。いや、土用の丑の日とは関係なく、友人の司法試験のお疲れ様
会で、ともかく鰻屋の座敷に上がってみました(笑)

 鰻は焼けるのに時間がかかるのが当たり前。きちんとしたところは注文が入ってから
捌き始めるので、小一時間はかかると思って間違いないわけで、その間にちょろっと一
杯飲るわけですよ。暑いから瓶ビールを一本飲んで、板わさと香の物でぬる燗をちびり
と・・・。そうしているうちに鰻が焼きあがってくるので、粉山椒などでちょっと香り
をつけていただくわけです。

 夏のこの時期はにょろにょろ系がおいしいのか、鱧もまさに旬。湯引きにしたり照り
焼きにしたりと、なかなか滋味にあふれる鱧だが、なんといってもお吸い物にして香り
を楽しむのが、私は好きだ。吸い物にするときは、あまり具材をあれこれと入れると、
全体の味としてぼやけてしまうような気がする。鱧の味わいを楽しむなら、ほかの具は
せいぜい茸か、鱧の蒲鉾なんかでいいと思う。香り付けも、この時期なら酢橘かな。か
んきつでなくても、三つ葉なんかでもおいしく味わえる。日本酒を合わせるなら、こち
らは吟醸よりも、普通酒で冷やかぬる燗あたり。酒肴のベストマッチは、互いが主張し
あうことではなく、味と香り、双方の絶妙の譲り合いにあると思う。


 鰻を食べ終わったときに、そんな風に思った。だからあれこれと偉そうに肴をそろえ
ていたり、大吟醸ばかりをズラリとそろえて法外な値段を取る鰻屋よりも、メニューに
「ビール」「日本酒」とだけ書いてあるような店が、私は好きなのである。



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 今は高田馬場のやきとん屋に来ています。ここで原稿を書くつもりはなかったのだけ
ど、あまりに面白いからちょこっとメモってみたのです。
 メニューに「ゴーヤチーズ」って書いてあったんだもの・・・
 クラコットにクリームチーズを塗って、生のゴーヤを五ミリくらいにスライスして乗
せてあるのです。ちょっと塩とガーリックが振ってありました。

 まじで!    と思ったけど意外にうまい!

 夏のビールにぴったりです。皆さんも一度試してみてください。。。。。。というメモでした(笑)


   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 というわけで、今は漫画喫茶で仕上げをしています。ドリンク飲み放題というのがよ
い。懐かしい漫画を読めるのもいい。気がつくとどっぷりはまっていたりする。

 
 あれやこれやと食の話題は尽きないけれども、今使っているこのパソコンで、世界中
の食べ物やお酒の情報を検索できる。写真が出てきて味や香りの解説、産地や生産者、
値段まで。いろいろなことがわかるけれども、世界が広くなったようで、実は狭くなっ
ていることに最近寂しさを感じる。

 東京駅や品川で、日本各地のお土産を売っているのを見たときの寂しさと同じだ。

 地方性や特異性、いわば個性というものの存在が、なぜ否定されるのだろう。なぜ何
でも手に入るのだろう。経済利益や利便性の追求が、実はそのものの付加価値を削って
いることに、なぜ気がつかないのだろう。なぜ疑問を持たないんだろう。


 年中スーパーでキュウリを売っているから、トマトを売っているから、夏の体を冷や
してくれるそれらの野菜のありがたさやおいしさを、忘れてしまうのだ。
 本当の味、味わいの本質。喜びや感謝とともに、食というものはあると思うのに。季
節とともに、太陽と月のリズムでわれわれ人間は、われわれを取り巻く自然とともに生
きてきたはずなのに。


 没個性化が、本質をぼやかしているのは食の現場にも言えることなのだ。 


 というまじめな一言で、今月は終わろうと思います。望むらくは、このメルマガが配
送されるころには、からっと晴れた夏になっていますように・・・
 



                RYO.S/小料理&Bar「菊水」マスター   
    
 



     
     
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■美味しい街パトロール:身近に転がっている“寿司ネタ”
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 先日、馴染みの寿司屋で居合わせたお客さんと寿司談議になった。
そもそもの発端は、「江戸前寿司というのは、どういう寿司のことを言うのか?」
という私の疑問。

 大将曰く
「元々の由来は“江戸城の前”。徳川家康が、江戸城の前の浅い海を埋め立てて
土地を造成した時にできた沼(お堀という説もある)で鰻が沢山とれて、それに
目を付け商売をした人がいたの。江戸城の前の沼で捕れる「江戸前のうなぎの蒲焼き」
と言ったのが江戸前の最初の意味。やがてそれが、江戸で生まれた今の握り寿司の
人気が上がってきたときと重なって、いつしか“江戸の前の海=東京湾”で捕れる
魚介類をネタにした寿司を指すようになったというのが通説」

 「江戸城前の鰻」が由来だったとは、初めて知ったが、
今度は“江戸前”とはいったい、どこまでの海を指すのかという新たな疑問が……。

 案の定、「どこで獲れた魚を江戸前と呼ぶか?」という定義はあいまいなまま
だったらしく、さまざまな議論が繰り返されてきたのだとか。そして、その議論に
終止符を打つべく、水産庁が江戸前を「東京湾全体でとれた新鮮な魚介類を指す」と
2005年に定義付けたというから、なんだか元の由来はまったく無視された話になってい
る。

 調べてみると、ここでいう東京湾は、三浦半島の剣崎(神奈川県三浦市)と
房総半島の洲崎(千葉県館山市)を結ぶ線より内側の海域のことらしい。狭義では、
羽田沖から江戸川河口周辺の沿岸部を江戸前といったが、現在、このあたりの海域では
漁業はほとんど行われていないことから、江戸前の定義を東京湾全体に拡大したのだと
か。

 ただ、江戸前寿司とは、東京湾産のネタを使っていれば、それで江戸前寿司と
名乗れるかというと、そうではないらしい。
「ネタで判断するんじゃなくて、江戸風、江戸好みの寿司という理解の方が、
分かりやすいし、現実に即している気がするねぇ」(大将)

 じゃあ、その“江戸風の寿司”とは何かというと、江戸前寿司が成立するためには、
「米」「酢」「江戸前で捕れる魚」「醤油」「ワサビ」が必要なんだとか。
これが江戸の流儀にのっとった寿司なんだそうで、要するに、現在もっともポピュラー
な寿司が、江戸前スタイルということ。つまるところ、この江戸スタイルでネタが東京
湾産であるものが、江戸前寿司というわけだ。

 江戸前寿司を理解するのに、なんだかけっこうな字数をとったが、
そのほかにも、おもしろい寿司ネタを仕入れたので、簡単に紹介したい。 
 
●なんで「すし」というのか?
すしの原型はけっこう古いもので、昔むかしの言葉遣いからきているんだとか。
昔、からいものを食べたとき、「これは、はなはだ”からし”」といったように、
すっぱいものを食べて、「これは、はなはだ“すし”」といったとかいわないとか。

そういえば、すしには「鮨」、「鮓」、「寿司」と漢字の書き方があるが、それぞに
意味が違う。『鮨・鮓』の語源をたどれば、鮨と鮓はもともと二千年以上も前からあっ
た中国の漢字。「すし」の始まりは、東南アジア山中の民族が川魚の保存に穀物を炊い
たものを漬け込み、自然発酵させたものが始まりだと言われている(日本ではフナ寿
司)。

「鮨」のつくりである「旨」にはモノを熟成させるの意味があり、「鮓」のつくりの
「乍」はモノを薄くはぐの意味があるそう。それが、中国から日本に渡ったと言われ
ている。一方、よく目にする「寿司」の語源は、「寿を司る(つかさどる)」で、
縁起がいいものとしてその名が広まったようです。

●語源にまつわるあれこれ
すしの語源ついでに、もう少し。「シャリ」の語源は「仏舎利」(仏様の遺骨)が、 
ちょうどお米に似ているためそう呼ばれるようになった。  
「ばってら寿司」の語源はポルトガル語。ポルトガル語での「ばってら」の意味は
「小さな船」。そういえば、カステラとバッテラは似てますね。

●まぐろの海苔巻きをなぜ「鉄火巻き」というのか?
ばくちをしながら、食べやすいようにつくられたから、「鉄火巻き」という説がありま
す。
昔、賭場のことを鉄火場といっていたことに由来するようです。
実は、西洋に同じようなものがあります。カードゲームに興じながら食べられるものを
と、イギリスのサンドウィッチ伯が作らせたのが「サンドウィッチ」、成り立ちが似ていますね。

●賢い寿司の頼み方は?
一般的によく言われるのが「卵で始まり卵で終わる」ですが、これは卵を食べればその
店の意気込みや味付けが分かるからだそう。寿司職人の力量がわかるということで
「小肌」を最初に頼むという人もいます。
ところで、寿司屋で一番儲かるのは並にぎりなんだそう。逆に寿司屋が損するのは上に
ぎり。
上にぎりというのは、やはりお店の顔なので、店側もちょっと見栄を張ってしまうのだ
とか。
ということは、まず「上にぎり」を食べてから、足りない分を後で追加する。そうすれ
ば、得して、その店の本当に美味しいものを食べられるということになります。
(大将がこっそり教えてくれました)

 ほかにも、色々な寿司の話題について、大将とお客さんと盛り上がったのだけど、
続きはまたの機会に。意外と、寿司にまつわる言葉が身近にあふれていることに
気づいた夜でした。


                           ライター/長友慎治




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■シアターコラム:この夏話題の大型映画解説!
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8月は夏休み公開の大型映画が目白押しです!
ということで、今回はこの夏話題の映画ラインナップとその見所を紹介します。

今年の夏、一番HOTな映画といえば、やっぱり『ハリー・ポッター』ですかね。
最も、今は最新映画よりも、本国アメリカで発売された最終巻のほうが話題になっ
てますが。たしかにあれだけあの美人作家に「主要人物が2人以上死ぬのよ!」
と予告されたら、誰だって結末が気になりますよね。そのうえ、ハッカーが
発売前に結末をネットに流したとか、著者が秘密漏洩防止に25億円かけたとか
なにやら華やかな話が続いてます。さすがですね。

でも、そんなハリポタ旋風に負けじとがんばっているのが
『レミーのおいしいレストラン』です。なにをがんばっているかといったら、
その宣伝。メトロだろうが、JRだろうが、電車に乗るたび、絶対あのネズミを
1匹は目にしているような気がします。 サポーターに南海キャンディーズの
しずちゃんを抜擢したり、本国パリの試写会には、なんとあのミポリンが出席
したりと話題はたえません。でもあまりに宣伝しまくっているので、まだ一度も
観ていないにも関わらず、なぜかもう観たような気にさせられてしまいます。

スピルバーグ×マイケル・ベイ(『アルマゲドン』)というビッグネームの
最強タッグが製作にもかかわらず、あんまり話題になっていないのが
『トランスフォーマー』。「なにが襲ってくるのかイマイチCMからは分かり
づらい」ということなのか、上の2大タイトルにやや押されぎみのSF大作映画
です。 あのモンスターみたいなのは、実は携帯電話とかTVとかいろんな電化
製品が集合してロボットみたいになっているらしいです。

あと、忘れてはならないのが『オーシャンズ13』。シリーズ1・2に出演
していたジュリア・ロバーツは今回は降板だそうです。個人的には、
オーシャンズ夫妻のおしどり夫婦っぷりを、彼女不在の中ジョージ・クルーニー
1人でいかに演じきるのかが一番気になるところです。「もしもし? ベイビー、
愛してるよ」とか1人でしゃべって、彼女(ジュリア・ロバーツ)と電話して
いるふりをして不在をカバーするんじゃないかとにらんでいます。
 

「夏はやっぱりホラーでしょ!」という人で、古風なのがお好きな方は
繊細な映像美が楽しめる『怪談』。そして現代っ子なら今流行の都市伝説を
モチーフにした映画『伝染歌』がオススメです。『怪談』は和服姿の黒木瞳が
発する大人の魅力が楽しめるし、セットが舞台風に一風変わっているのに
注目です。『伝染歌』ならAKB48のイチオシっ子たちのピチピチした若さが
堪能できるし、「歌うと死ぬ!」ということで発売延期になった(?)
“伝説の”自殺ソングがもれなく聴けます。しかも、JOYSOUND系の
カラオケ店でこの自殺ソングを歌うと、なにか恐怖体験っぽいことが起こる
というオマケもあるので、カラオケ好きな現代っ子にはぴったりです!  

「この夏映画を観にいこうと思っているけど、なにを観ようかな〜。
ありすぎて決められな〜い」と悩んでいる方、ぜひ参考にしてみてください! 


                          ライター/風味絶佳

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          私的日記: 生命とは
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 最近、山登りの夢をよく見る。
 中学から大学まで、ずっと山ばかりに没入しているようなところがあったにもかかわ
らず、見る夢はたいてい悪夢というものに近い。雪崩や落石、滑落。本当に自分が山が
好きだったのかと、疑うときもあるほどに。


 今朝もそんな夢を見た。岸壁に取り付いた途中誤ってザイルが切れて一人取り残され
る。(このあたりが夢ですね、実際はなかなか手操作で切れることなんてないから)
 死ぬかもしれないという、局面に立たされるわけですよ。
 美しいと眺めた眼下のパノラマは、果てしなく淀んだ奈落の落ち込みに見えてくる。
 蒼天を突く頂ははるか遠く、いかにしてもそこに達することはできないという絶望感
に駆られる。
 涼やかで心地よく感じたそよ風も、今では自分をこの岩肌から引き剥がそうとしてい
るかのように。
 小さな花や虫までもが憎憎しく見え、汗が噴き出して腕を伝って流れ落ちてくる。
 怖い怖い怖い、落ちたら確実に死がまっている・・・


 というところで、今朝は電話で目が覚めた。いやあ、いつもなら必ず落っこちるとこ
ろで目が覚めるんですがね(笑)
 それでも全身汗びっしょりだし、心臓はバクバクしてホント死ぬかと思いました。電
話はもちろんスルー。いやはや、恐ろしい。


 実際にそういう局面に立ったことは、実はないですね。というより、死ぬかもしれな
いと思ったのは、実はもうその局面を脱してから感じることが多かった。落石も滑落
も、結果として生きていたからで、その場ではもう夢中なわけですからね。

 でも本当に、自分は身勝手だと思う。知り合いが何人も山で死んでいるし、「自分も
死ぬかもしれない」という覚悟はできているつもりでも、いざ死が目の前にぶら下がる
と頭の中が真っ白になるものですね。愛しく、美しく思っていたものまで、憎悪の思い
でしか眺めることができなくなる。浅ましいものですよ。

 それでもかつては、それでも、登ってました。
 頼りない思い込みと、確信めいた何かに惹かれる様にして。「いつかは死ぬんだか
ら。。。」


 でも実は命とは、そういうものなのかもしれませぬ。一瞬の僥倖というやつ。
 生まれ、移ろい、消えてゆくものですね。
 花も樹々も、芽吹いては枯れてゆく。魚も虫も動物も、石も水も皆、同じ。いつかは
失われてゆくもの。
 永遠というものがないなら、同じなのですね。
 
 古寺で、千年の風雨にさらせれて顔もわからなくなった苔むした石仏を見たとき。山
奥の岸壁に彫られた仏像を仰いだとき。屋久島で縄文杉に会ったとき。洞窟の暗闇の中
で鍾乳石を見たとき。渓流を溯り、エメラルドグリーンの淵を眺めたとき。鴇色に輝
く、アルプスの朝焼けを見たとき。
 浅間山、硫黄の煙に巻かれて死んで白骨化した鳥。その上空を渡る鳥。
 羽化したばかりの真っ白なセミ、その木の根元に転がり、蟻のたかったセミの屍骸。
 蜘蛛の巣にかかった赤とんぼ、用水路の澱みに卵を産みつける塩からトンボ。
 小川の底のカワニナの貝殻、初夏の夕暮れ、一斉に飛び立つ蛍の輝き。


 ・・・・・・・・・・


 さてさて、煮詰まったところで今月も何とか間に合いました。
 今日あたりから、そろそろ夏日になってくれるとよいのだけれども。今外は土砂降り
の雨が上がって陽が差してきています。どことなく、夏の香りのする光。

 「夏になるな・・・」

 一年のうち、わずか数日の間だけ感じる、この季節の境目の感覚が、実は大好きで
す。冷房を入れると、一年の間にたまった、ちょっとかび臭い香りがしたりして。さ
て、今年の夏はどうなるんだろう、ってね。


 人生は一度きりですからね。思い切り満足して毎日を送りたい。
 後戻りはできない、立ち止まることもできない、前にしか進めない。
 エンドレスなロンド、出会いと別れのシンフォニー、命の限りのトッカータ。
 前へ前へと、ステップを踏む。間違えないように、なるべく上手に踊れるように。

 そんな気分になるんです、夏を目前にしたこの時期は。。。


 それでは皆様、よい夏をお過ごしくださいますように。。。














 梅雨がないっていいよな、まったくまったく。
                           (白)

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