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今、時代は大きな転換期にあると思います。この時代の性格と、今後わたしたちに何が問われているかを、世界や日本の主な出来事の分析を通じて考えます。

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2007/12/24

インターナショナル53

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
                  ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
【月刊ニュースレター:メール版】 イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                 ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第53号(通巻177号)      2007年12月24日発行
 発行所:MELT
     ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
          Eメールアドレス   melt-ks@jn3.so-net.ne.jp
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
わたしたちはいま、大きな時代の転換点に生きているのではないでしょうか?
だから今とは、人間の自立と自律や民衆の自治という新しい民主主義のあり方
と、旧い代行民主主義の葛藤の時代でもあるのでしょう。 
 次々と起きるいろいろな事件や社会現象の分析をとおして、そんな問題を考
えてみたい人たちのためのメールマガジンです。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
今号の内容:
1:私たちの時代とは(日本):●自・民「大連立」騒動
            外交戦略の変更嫌う親米保守勢力の画策
        −自民党の時代錯誤と民主党の「未熟な」議論−
2:私たちの時代とは(世界):●高騰つづく原油相場
            ドル安に連動する「戦略物資」の高騰
        −グローバリゼーションの逆説=商品市場の機能不全−
3:【時評】:神話が崩壊した 日本の高い技術
4:【時評】:●排出権取引と日中関係
                環境ビジネスの効果と課題
  −環境技術うり込む日本企業は、和諧社会に貢献できるか−
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1:●自・民「大連立」騒動

                外交戦略の変更嫌う親米保守勢力の画策

            −自民党の時代錯誤と民主党の「未熟な」議論−

▼党首会談と「小沢の豹変」

 福田・自民党総裁と小沢・民主党党首による初の党首討論会直前の10月30日、
唐突に両党首の会談が行われた。つづいて11月2日夜にも党首会談が行われ、
この席で福田は、小沢に「連立協議」を打診した。非公開の会談を嫌ってきた
小沢が、福田と2人だけの会談に応じたこと自体が驚きをもって受け止められ
たが、連立協議の提案は、あらゆる憶測と疑念を呼び起こした。
 2日の会談後、官邸に戻った福田は記者団に、「連立というか、まあ新体制で
すな。政策実現のための体制ですよ」(11/3:朝日)と説明したが、それはた
ちまち自民・民主両党による、いわゆる「大連立構想」と「小沢党首の豹変」
として大々的に報じられ、民主党には大きな衝撃が走った。
 その後、小沢の辞任会見と辞意撤回など、民主党が迷走する発端となったこ
の騒動の背景には、後述するように、自衛隊海外派兵の恒久法制化を唱えて
「新テロ特措法」に強硬に反対する小沢・民主党に対して、福田・自民党の側
には、それを取り込む余地があったのである。
 そしてここに、変革主体の再生をめざす私たちが、注意深く正確に評価して
おくべき問題が潜んでいる。
 したがって一連の騒動の事実関係を、正確に認識しておく必要がある。とい
うのも、党首会談の「仕掛け人」であるナベツネこと渡邊恒雄が会長を務める
「読売新聞」グループの論調に幻惑されて、「政策協議」や「連立協議」とを
混同して声高に小沢を非難するだけでは、民主党が圧勝した参院選を通じて高
まった政権交代の期待に冷水を浴びせ、結局は自民党政権の延命に手を貸すこ
とになるだろうからである。
 断っておくがわたしは、小沢という著名な保守政治家が信頼できるか否かを
問題にしたいのではない。むしろこの点で彼は、政党政治をパワーゲームに切
り縮めてとらえる、その意味で「政策的には信用できない」政治家だと考えて
いる。
 にもかかわらず正確な事実関係を問題にするのは、仕掛け人・渡邊と、その
背後で彼と密談を重ねてきた中曽根元首相ら親米保守勢力による「意図的なミ
スリード」に、「密室談合の料亭政治」や「元老気取りの老害」といった、こ
の国の政治を閉塞状態に陥れてきた、清算されるべき戦後保守政治の悪弊を見
るからでもある。

▼「大連立」騒動の事実関係

 では正確な事実関係は、いったいどんなものだったのだろうか。
 読売グループとフジ・サンケイグループを除くマスメディアの報道によれば、
30日の会談後、小沢は菅代表代行、鳩山幹事長、輿石参院議員会長と会談して
党首会談の報告をしたが、次回会談(2日)までに回答すべき提案があったか
との問いに、「全くそういうものがないんだ」「(自民党が)何を考えている
かわからない」と答えたという。
 これとは対照的に、自民党の中川秀直元幹事長は30日の講演会で、「政局は
風雲急を告げている。同じ考えの人が違う党に所属している〃ねじれ〃をどう
解消していくか。・・・両党首が話をして、ねじれ解消につながることを切に
願う」(10・31:朝日)と、意味深長な発言をしていた。
 そして11月2日、福田は「大連立」を小沢に打診し、これを受けて小沢は、ま
ず菅、鳩山そして輿石に、「総理から連立の話があった。驚いた」と報告した
と言う。その後開かれた役員会では、小沢が「みんなの意見を聴きたい」と切
り出し、連立協議について、政策実現というメリットと、「国民の理解が得ら
れるか」というデメリットの両方を説明したと報じられている。だが役員会で
発言した全員が、「その政策協議に入ること自体も反対」(2日夜の小沢の記
者会見より)だっために、「反対が多いので断ります」と自ら議論を締めくく
ったと言う。
 こうして小沢は、「連立は私どもとしてはのめない。受諾できない」(同前)
と福田に電話で伝えたのである。
 形式的な言い方だが、この事実だけなら、小沢は党首会談で提案された連立
協議について党の役員会に諮り、その結果にもとづいて拒否の回答をしたので
あり、辞任の理由は見当たらない。つまり小沢が辞任を決意したのは、別に理
由があったということだ。 そこには、「政策協議」と「大連立」とを混同し
た民主党内の「未熟な議論」があったと考えられるが、この問題も後述するこ
とにして、事実関係に話をもどす。
 その後、小沢自身が、党首会談に至る経過説明で「さる人」の介在を明らか
にするが、10月25日夜、その仕掛け人たる渡邊・読売グループ会長と「大連立」
が持論の中曽根元首相らが、都内の料亭で会食したことが朝日新聞(11/3)で
報じられている。
 その報道によれば、中曽根が「総選挙前の大連立はあるか」と渡邊に問うと、
彼は即座に「ある」と断言したと言う。さらにこの2人は、2度目の党首会談
のあった2日の民放番組の収録でも、渡邊が「年内にも大連立政権をつくって
懸案を合理的に処理していく」べきだと主張し、中曽根もまた「福田さんも小
沢さんも共同責任で話し合って、安心しなさいと。そういうことをやる責任が
2人にはある」と語り、大連立に強い期待を表明したのである。
 つまり福田・小沢の唐突な党首会談は、渡邊や中曽根といった親米保守派の
人脈が、自民党の福田や中川、そして森元首相らに小沢を引き込んだ大連立構
想をもちかけ、「新テロ特措法案」をはじめ、政府提出法案がまったく成立し
ない事態に焦燥を募らせていた福田が、これに便乗して小沢に党首会談を呼び
かけて連立協議を打診し、民主党役員会がこれを拒否したということである。
 ただこの一連の動きは、ここに上げた人物を含む、おそらく10人未満の少数
の人物たちだけで秘密裏に行われ、福田と小沢の腹心や側近を自負する人々に
さえ党首会談当日まで知らされなかったことであらゆる憶測と疑惑を呼び起こ
した事実は、議会制民主主義の建前である与野党の論戦すら平然と無視するこ
とも厭わない、戦後保守派の悪弊として確認しておくべきだろう。

▼親米外交だけが選択肢なのか

 周知のようにその後、事態は小沢の辞意表明という意外な展開をみせた。
 もっとも小沢は、大方の予測を裏切って周囲の説得を受け入れて辞意を撤回
し、「大連立」をめぐるドタバタ劇は、何ともみっともない幕切れとなったの
だが、まずは、自民党の側に、小沢の持論である自衛隊派兵の恒久法制化を
「取り込む余地があった」問題から検証してみよう。
                           *
 話は5年前、福田が小泉内閣の官房長官だった02年にさかのぼる。以下は、
海上自衛隊が給油活動を始めた当時から「新テロ特措法案」提出までの動向を
報じた、毎日新聞(10月19日)の「テロとの戦い−日本の選択(1)」にもと
づいている。
 02年5月、福田は、当時の小泉首相の演説原稿に、「平和の定着及び国造り
を国際協力の柱とするために必要な検討をする」と、自ら書き入れたことがあ
るという。「9・11」テロから8カ月、すでにインド洋で海上自衛隊による給油
活動が始まっていたが、アフガニスタンへの「人道支援」に自衛隊を派遣でき
ない状態を何とかできないかというのが、福田の思惑であった。
 なぜなら小泉演説の翌月、福田は官房長官の諮問機関として「国際平和協力
懇談会」を設置し、同年12月の懇談会報告書には、「多国籍軍の後方支援に自
衛隊派遣を可能にする恒久法整備」が盛り込まれたからだ。
 それから5年。福田は、自らの所信表明演説の草稿をつくる官僚たちに、「
平和を生み出す外交」と真っ先に記された手書きのメモを渡した。ところが
「新テロ特措法」策定に向けた自民党内の検討作業は、福田の思惑とは程遠い
混迷の中にあった。
 所信表明演説から3日後の10月4日、新テロ特措法の与党プロジェクトチーム
の会合に提出された新法案の骨子には、「テロからシーレーンを守る」とあっ
た。座長の山崎拓・前自民党副総裁は「そんなの入れたら大問題になるぞ。日
本の自衛権の発動になる」と、声を荒らげたと言う。
 憲法論議を置き去りにして、言わば思いつきの派兵目的を法案に潜り込ませ
ようとする自民党内のご都合主義は、「給油活動は安全で安上がりだ」と言う、
給油活動擁護論にも色濃く現れている。それは「カネを出せば済む問題ではな
い」という、91年の湾岸戦争支援策の〃反省〃が、事実上は無視されているに
等しいからだ。
 この自民党内のご都合主義に比べれば、小沢の持論である「国連決議があれ
ば、海外での武力行使も合憲」という原則にもとづく派兵恒久法のアイデアは、
同じく恒久法論者である石破防衛相にとっても、そしてもちろん福田にとって
も、十分に「協議」に値するのは当然であろう。
 党首会談後、小沢が「自衛隊のあり方などについても、私どもの主張に大き
な理解を示していただいた」と記者団に語ったのは、まさにこの問題で福田が、
小沢の持論に「大きな譲歩」を提案したからだし、小沢が民主党の役員会で
「政策実現」のメリットについて説明したのも、自らの持論が実現する可能性
があるからに他ならなかった。
 そしてこの点に、一連の騒動の核心となるテーマがある。
 それは中曽根や渡邊、そして福田と小沢ら「親米保守派に共通する認識」と
言えると思うが、彼らの最大の関心は、「親米外交を堅持する」ための「連立
協議」にあったのであり、自民・民主の二大政党が手を携えて政権を担当する
「大連立」という、一般に流布されたイメージとはかなりのズレがあると言う
ことである。
 しかもこうした思考は、政権交代可能な二大政党制は「外交上の一貫性がな
ければ不可能だ」とする、冷戦下で自民・社会の二大政党が対決していた「55
年体制」そのままに、ばかばかしいほど硬直した戦後保守派の論理を共通の土
台にしていたのだ。
 少なくとも、先の参院選が政権交代に現実的な可能性を与え、さらにはテロ
特措法の期限切れで自衛隊の給油活動が中断に追い込まれたことが、親米保守
勢力の不安、つまり政権交代にともなう親米外交の動揺という「不安」を増幅
したのは疑いない。「福田さんも小沢さんも共同責任で話し合って、安心しな
さいと。そういうことをやる責任が2人にはある」という、前述した中曽根の
発言がこれを裏づけてもいる。
 そしてこの親米保守派の不安を取り除く方策が、元来の親米派である小沢の
持論を取り込み、アメリカに要請される「人的貢献」を憲法上の制約なしに実
施できる法制を実現する「連立協議」だったのだ。
 これが、党首会談と大連立問題をめぐる中曽根と渡邊、そして福田と小沢が
共有した核心的テーマであり、私たちが正確に認識しておくべき問題なのであ
る。

▼政策協議と小沢のプッツン

 だが、親米外交を外交戦略の代替品にしてきた戦後保守派の基本路線は、国
連安保理常任理事国を目指した時にも、あるいは北朝鮮の核開発をめぐる6カ国
協議でも、その綻びが露呈していることは、いまや否定し難い現実であろう。
 この国をとりまく状況は冷戦時代とは大きく様変わりし、アメリカの顔色を
うかがうだけの親米外交は、経済的台頭の著しいアジア諸国や中東の産油国に
対する有効性を失い、むしろ日本の外交的比重を低下させつつあると言っても
過言ではない。
 したがって一連の騒動は、親米保守派たる小沢の戦略的限界を暴くことにも
なったが、それは同時に民主党もまた、戦後保守派の親米外交に代わる戦略的
対案を持てない、あるいは「持とうとしない」限界と未熟さを示すことにもな
った。
 と言うのも、党首会談後に小沢は、民主党役員会の反対意見を「その政策協
議に入ること自体に反対」と表現したが、この苛立ちは何故かということでも
ある。
 小沢が言及した「その政策協議」が、派兵恒久法に関する協議であったこと
は明らかだし、福田がそれを「連立協議」として提案したのも事実であろう。
だが政策協議と連立協議は同じではないし、連立協議でさえ「大連立」と「部
分連立」を同列に論じるのは正確ではない。
 辞意撤回後、TBS-TVの「NEWS23」に出演した小沢は、「私は〃大連立〃とは言
ってない」と筑紫キャスターに答えたが、小沢は、派兵恒久法に係わる「部分
連立」を想定していたと考えられる。
 ひとつの傍証がある。11月3日付朝日新聞の「時時刻刻」である。
 これによると小沢は、ある政治学者がまとめた「民主党の中長期戦略リポート」
の要約版を読み、この学者に丁重な礼状をしたためたという。リポートにあっ
た「国会改革のための憲法部分改正や公務員制度改革などの問題のためだけに、
短期間の連立か、それに代わる議論の場をつくる」との提言に強い関心を持っ
たからだそうだが、「大連立は目的と期間を限定し、必ず総選挙によって、早
期に終了するものでなければならない」とも記されていたと言う。
                          *
 言うまでもなく、多くの選挙区で与野党候補の一騎打ちとなる小選挙区制の
下で、長期にわたる大連立など、現実には不可能であろう。「大連立」に否定
的な与野党幹部が口を揃えて指摘したように、それは「中選挙区制に戻すこと
が前提」になるだろうし、そんなことが、それこそ国民の理解を得られるとも
思えない。
 だが前述のように、政権交代をしても外交路線は同じでなければならないと
いう、硬直した論理に囚われた保守政治家・小沢としては、海上自衛隊の給油
活動中断が呼び起こす外交上の疑念や不審は、早期に打ち消しておく必要を感
じて不思議ではない。
 ところが民主党の役員会では、おそらく小沢が期待したような議論はなく、
それこそ政策協議も連立協議も、長期的連立も部分連立もすべてがごちゃまぜ
のまま、強硬な反対意見が噴出したに違いない。
 もちろんそれは、「憲法論と現実の政策は別」とうそぶき、海外での武力行
使を容認する派兵恒久法を唱えて自民党を揺さぶり、はては党首会談を秘密裏
に準備した親米保守派と気脈を通じた、策士・小沢の身からでた錆びだが、こ
れが党首辞任表明の引き金になったと思われる。
 小沢が「プッツンして」辞任会見を開き、事実上の党首不信任だの、政権党
としては民主党は力量不足だのと口走ったのも、こう考えれば説明がつく。
 だがこれは、ひとり民主党の「未熟さ」ではなく、戦後日本の議会政治のあ
り方から生じた悲喜劇と言えるだろう。
 事実上の永久政権党=自民党の存在と、採決では絶対に勝てない野党という
関係の固定化は、公然たる政策協議の代わりに「密室談合による裏取引」を常
態化し、他方では「対案なき反対」という野党の「無責任」を助長してきたか
らである。
 だが、いわゆる「衆参のねじれ」が、こうした与野党の馴れ合いを不可能に
した。
 互いに譲ることのできない対決法案はいざしらず、与野党間にさほどの違い
のない法案までが、旧来的な与野党関係を前提に「政争の具」とされ、議会が
何も決められない事態が慢性化すれば、それこそ中央省庁官僚の恣意的「指導」
や通達が幅をきかし、議会は自らの役割を否定するに等しいことになるのは明
らかだからである。
 そして皮肉なことに、この大連立をめぐるドタバタ劇の直後から、自民・民
主両党による「政策協議」は現実となり、いくつかの非対決法案の成立を見た
のだ。

▼対案のための相互討論へ

 こうして、自民・民主の保守二大政党制に抗して、親米外交からの脱却と新
自由主義的な「改革」に反対する政治勢力の形成をめざす私たちは、大連立を
めぐるドタバタ劇を通じて、戦後外交戦略の代替品とされてきたアメリカ追随
外交に代わる、「新たな外交戦略の対案」を持つ課題を突きつけられたと言わ
なければならない。
 ところが戦後革新勢力の小沢批判は、戦争遂行の総動員体制を支えるために
1940年に結成された大政翼賛会をアナロジーした批判にとどまり、「政党政治
と議会制度への違背」という視点すら希薄であった。
 むしろこの点では、「官僚依存の象徴のような政府に対する質疑応答の場」
と化している議会の論戦を「政党や議員同士が討論する場に変え」、その討論
を「国民に見える形で徹底的に行って」法案を成立させるのが「言論の府」
(北川正恭・元三重県知事)だとする保守リベラルの方が、小沢への批判とし
ては鋭いものだと言える。
 実際に、旧帝国議会における二大政党だった政友会と立憲民政党は、少し乱
暴な言い方をすれば、相互に重要法案を政争の具として権力抗争にうつつを抜
かし、自ら政党政治への信頼を貶(おとし)め、大政翼賛会への道を掃き清め
はしなかっただろうか。そしてこの時も政友・民政両党は、対中国外交に関す
る対案らしい対案を持たず、結局は中国戦線の膠着に苛立つ社会的雰囲気に押
されて、「バスに乗り遅れるな」と大政翼賛会へとなだれ込んだのではなかっ
たか。
 したがって私たちが、いま本当に必要としているのは、親米保守勢力の「親
米外交」を維持し続けようとする野合−そう!これは連立というよりは野合な
のだ−に抗して、いわゆる「国際貢献」の対案を生み出すための真剣な協働と
相互討論なのである。
 そうした対案の私見は、本紙149号(04年10月号)の「経済援助という国際
貢献の道」で述べたのでここでは繰り返さないが、いずれにしろ「親米外交」
と「人的貢献」の呪縛から解き放たれない限り、この国の外交的混迷を克服は
できないだろう。
 それでも、この外交戦略の転換が「親米か反米か」といった、親米保守派が
恐れるような二者択一ではあり得ない。というよりも今日、覇権国家・アメリ
カとのそれなりに良好な関係ぬきには、日本のみならず世界のあらゆる国もま
た、国際政治への現実的関与が難しいことは明白である。
 そうした意味でも、戦後外交戦略の抜本的な再検討を認めない親米保守派の
硬直した論理は、冷戦時代を引きずった時代錯誤と言う他はないのだ。
                          *
 ところで、大連立をめぐるドタバタ劇の直後だったにもかかわらず、11月18
日に行われた大阪市長選挙では、民主党と国民新党が推薦し社民党も支持した
平松邦夫候補が、自民党と公明党が推薦した現職・関淳一候補を敗って初当選
した。
 この結果は、小沢への不信は確かに強まったが、自公連立政権への不信や
「元老気取りの老害」への嫌悪がこれを上回り、政権交代への期待がなお持続
していることを示すものであろう。それは、政官財の癒着と無責任な官僚行政
に依存しつづける自民党政治を終わらせたいという、民衆の強い思いの現れと
は言えないだろうか。
 さらに言えば、「小沢辞任騒動」後の各種世論調査でも、民主党の支持率は
ほとんど変わらないのに対して、福田政権の支持率がじりじりと低下してもい
る。「・・・声高に小沢を非難するだけでは、・・・自民党政権の延命に手を
貸すことになるだろう」と述べたゆえんである。
(12/10:きうち・たかし)
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2:●高騰つづく原油相場

      ドル安に連動する「戦略物資」の高騰

   −グローバリゼーションの逆説=商品市場の機能不全−

▼100ドル目前、原油価格の急騰

 原油価格の高騰が、世界経済の先行きに暗雲を投げかけている。
 原油価格の国際基準のひとつであるWTI(ウエスト・テキサス・インターミ
ディエート)原油先物価格は、8月始めには1バレル(1樽=約159ℓ)76ドル台
で取引されていて、サブプライムローン問題による金融市場の混乱で、一時は
69ドル台に下落した。
 ところが、このサブプライムローン問題による景気の減速懸念から、FRB
(アメリカ連邦準備制度理事会)が4年3カ月ぶりに大幅な利下げに踏み切った
9月以降、わずか3カ月で30ドル近く跳ね上がり、11月始めには98ドル台の高値
を記録したのである。
 こうした原油価格の急騰は、生活必需品価格にも影響を与え、人々の生活を
直撃し始めている。ガソリンは今や1ℓ=150円で、運送業界では「エコ運転」
と称する運転手への締め付けが広がり、暖房用灯油の値上がりが、寒冷地の高
齢者世帯を直撃している。それでもこれは、なお値上げの連鎖の〃はしり〃に
過ぎない。
 各地の漁業協同組合は船舶用軽油燃料の高騰に苦慮しており、いずれは海産
物の価格に跳ね返るだろうし、DVDディスクの素材であるポリカボネート樹脂
の値上がりも、IT関連機器の価格上昇圧力である。そしてトイレットペーパー
が店頭から姿を消した1973年の第一次オイルショック時のように、製紙業界大
手各社は、出荷価格の10%以上の引き上げを検討しており、いずれは火力発電
用重油の値上がりを理由に電気料金の値上げが検討されるだろうからだ。
 しかもこれだけの値上げがあっても、様々な業種で減収と減益が続出するだ
ろうと見られてもいる。燃料としてであれ原材料としてであれ、石油はほぼす
べての産業の必需品だからである。
 さらに現在の原油の高騰は、石油代替品の原料である大豆やトウモロコシの
価格上昇を招き、あるいは「ドル安」を介して希少金属などの高騰に連動し、
「原料インフレ」の様相を呈してはじめている。

▼投機マネーと商品市場

 原油価格急騰の要因として、1)掘り易い油田(イージー・オイル)の発見
が減少し、原油採掘コストが上昇しているという供給不安、2)中国やインド
など、経済成長をつづける新興諸国の原油需要が増加しているという需給逼迫
が指摘されるが、現状の原油価格は、そうした実際の需給などのファンダメン
タルズ(基礎的条件)とは懸け離れた値動きだとの見方が強い。
 IEA(国際エネルギー機関)が予測する08年の世界の原油需要は、07年見込み
との比較で2.4%増とされているが、住宅バブルの破裂でマイナスに転じたアメ
リカの需要などを考慮すると、むしろ価格の下振れの可能性もあるというのが、
石油業界の一般的な見方である。もっともIEAは、1)と2)の要因から、09年
頃から需給逼迫の可能性があるとし、11月7日には、「想定を越える高成長が続
いた場合、2030年には原油価格が159ドルの水準になる」との見通しを明らかに
した。原油先物価格の上昇圧力が高まっているのも現実なのだ。
 こうした原油をめぐる諸条件は、価格の値上がり傾向は今後もつづくが、「
今後5年程度は、70ドルプラスマイナス5ドルが、普通の需給バランスを前提にし
て考えた場合の価格帯」(内藤正久・日本エネルギー経済研究所理事長)だと
言う、専門家の見方を裏づけるものであろう。
 そこで、100ドルに届こうかという現状の原油価格の急騰要因として、3)サ
ブプライムローン問題が発端となった世界の株安や証券市場の低迷から逃避し
た投機的資金が、原油など一握りのリスク投資である商品市場へと流入し、実
需とは乖離した原油高を演出しているとの指摘があるのだ。
 わたし自身、「ここ10年にわたってアメリカに流れ込んできた巨額の投機資
金が行き場を失い、商品市場や為替市場へと大規模にシフトチェンジすること
で新たな〃根拠なき熱狂〃を演出し、石油や原材料価格を急騰させて世界中に
インフレの種が蒔かれる懸念ともなる。現実に石油市場では、1バレル=90ドル
を超える高値相場が現れてもいる」と指摘したのは、本紙前号(176号)の「〃
根拠なき熱狂〃をあおった米住宅バブルと債務担保証券」でのことだった。
 つまり原油価格急騰をはじめとする商品市場の価格上昇の連鎖は、あえて言
えば「予測の範囲内」の出来事と言えるが、改めて注目しておきたいのは、こ
れが呼び起こしつつある「戦略物資」の復権と、「ドル安と原油高の強い連動
性」という現象である。

▼戦略物資化する有限資源

 10月末、ロンドンで開かれた「オイル・アンド・マネー」と題した石油業界
関係者を集めた会議で、中東・カタールのアティーヤ・エネルギー産業相は、
「スケープゴートをつくるべきではないし、我々(産油国)を非難するのはや
めてほしい」と、息巻いた。増産を渋り、原油の高値維持を図っていると非難
されているOPEC(石油輸出国機構)の主要メンバーとして彼は、投機マネーこ
そが原油高の原因だと強調したのだ。
 そしてアティーヤ・エネルギー産業相は、「原油価格が低迷していたころ、
〃破綻しそうだ、何とかしてほしい〃と消費国の大臣に話したら、〃市場が決
める値段だから何もできない〃と取り合ってくれなかった。いまの高値も市場
が決めているのに、消費国は何とかしてくれと言ってくる」と皮肉った。
                        *
 たしかに原油をはじめとする資源は、その持てる国家の思惑で動かされるよ
りも、市場で自由に取引できる「商品」であることが望ましいし、グローバリ
ゼーションを推進した新古典派経済学が掲げた大義名分も、「完全に自由な市
場は、最も効率的な資源配分を可能にする」ということだった。
 だが現実には、そのグローバリゼーションが推し進められた結果として、世
界の商品市場には利回りを競う巨額の投機マネーが流入し、需給の実態とは乖
離した価格の乱高下を演出し、それが実態経済に悪影響を与えるという、市場
の「効率的な資源配分」機能の不全を顕在化させたのである。
 それは原油など、近代化された経済活動に必要な一握りの資源を世界中が奪
い合う、いわゆる「戦略物資」という亡霊を復権させる可能性を高めている。
しかもそうした戦略物資の復権は、その持てる国家や民族をして、これを政治
的目的を達成する手段にしようとする「資源ナショナリズム」を助長すること
にもなるだろう。
 アティーヤ・エネルギー産業相は、こうした欧米金融資本による「市場の失
敗」を痛烈に皮肉ったのだが、同時に彼は、中東で台頭しつつある資源ナショ
ナリズムを刺激してはならないという警告、もしくは懇願したと受け取るべき
であろう。
 なぜなら、世界の原油輸出量の6%を占め、アメリカによる敵視政策に対抗
して核開発を進めるイランが、あるいはキルクーク油田の占有を要求するイラ
クのクルド人は、「資源ナショナリズム」の潜在的な震源地なのであり、ブッ
シュ政権が示唆するイランの核施設への攻撃は、こうした「地政学的リスク」
を爆発させる、だから何としても回避すべき最悪のシナリオだからである。

▼ドル安・原油高の連動

 これと並ぶ重要な動向が、サブプライムローン問題を契機にした「ドル安」
基調と、原油高の強い連動性である。
 前出WTI価格で見ると、10月19日に1バレル=90.7ドルにまで上昇した後、
22日には4ドル以上も下落、23日には同85ドルを割り込むまでに急落したが、
実は22日には1ユーロ=1.4348ドルの高値から、同1.4124ドルまでユーロが急
落していたのだ。ところが23日になってユーロが反発、11月2日に同1.4528ド
ルの史上最高値にまで上昇すると、原油相場も85ドル割れの水準から、11月
1日には1バレル=96.24ドルの史上最高値をつけ、その後も98ドル台にまで続
騰したのだ。
 つまり「ドル安」に連動して、原油相場が上昇したのである。
 このドル安と原油高の連動は、インターコンチネンタル取引所に先物が上
場されている「ドルインデックス」(=ユーロ・円・ポンド・カナダドル・
スウェーデンクローネ・フランスフランの6通貨の加重平均)との比較でも確
認できるが、この6通貨のうち対ドルレート上昇率が大きいのはユーロとカナ
ダドルであり、カナダドルの上昇は、サウジアラビアの原油埋蔵量に匹敵す
ると言われるオイルサンドの開発が進み、原油高で利益を得る「産油国の通
貨」という性格が強まってきた結果である。
 そしてこの「産油国の通貨」の対ドルレートの上昇が、産油国のもうひと
つの不満でもある。つまりドル安・自国通貨高という状況では、原油の高値
でドル建て輸出代金が増えても、自国通貨ベースではそれが大きく目減りす
るからであり、このドル安基調がつづく限り、原油価格が急落するリスクを
負ってまで産油国が増産に踏み切ることは、できない相談というものだ。
 同時にドル安の趨勢は、産油国や資源をもつ国や地域が、輸出代金が目減
りするリスクを回避しようと「ドル離れ」を模索する動きを加速するが、そ
れがまたドル安に拍車をかける「ドル安スパイラル」の懸念を増幅するのだ。
サブプライムローン問題を契機とした原油価格の急騰は、基軸通貨・ドル暴
落の危機をはらんで、「戦略物資」をめぐる激しい奪い合いを呼び起こし、
原油価格の高騰圧力を高めつづける。
 こうして世界は、正確にはG7諸国は、70年代のオイルショックとドル下落
を押し止どめた「プラザ合意」のような枠組みを、いま一度構築する余力と
能力があるのかを問われているのだ。(12/17:さとう・ひでみ)
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3:【時評】神話が崩壊した 日本の高い技術

●紐つき援助とベトナムの橋梁事故

 少し旧聞にぞくするが、9月26日にベトナムのカントー市でおきた、日本の
ゼネコンが施工中の橋が崩落した事故が、両国関係に微妙な影響を与えている。
 事故の原因とみられる仮設支柱の崩壊について、施工管理業務を請け負って
いたコンサルタントが、事前に仮設支柱を補強する必要性をゼネコンに対して
指摘したメモのあることが、事故原因を調査してきたベトナム国家調査委員会
の調べで明らかになった。なのにゼネコン側は、「調査委員会の要請」を理由
に地元マスコミへの説明を拒み、不信が高まっているからだ。
 ベトナム政府は、「原因究明などで日本政府や企業は積極的に協力している」
と日本側に配慮を見せてはいるが、親日的と言われるドン首相の面目が失われ
るとの見方もではじめているという。
 事故のおきた橋は、日本の途上国援助(ODA)で建設中だったが、コンサルタ
ント業務は日本工営・長大のコンサルタント共同体が、施工も、大成建設を主
幹事にした鹿島・新日鉄エンジニアリングの共同企業体と、ともに日本企業が
受注する、タイドという「ひもつき援助」だったことも、地元の不信感の背景
にあるのかもしれない。
                          *
 日本のODAは、かねてから「ひもつき」の多さを欧米各国から批判され、政
府もタイドを減らしたことがある。だがその結果は日本企業の受注が激減し、
これに経済界が強く反発することになった。結局は、ODAの一部でタイドを復
活したのだが、そのときの大義名分は、「日本の高い技術を生かす」という
ものだった。
 カントー市の橋梁崩落事故で、この傲慢な大義名分は吹き飛ばされてしまっ
たのだが、これには、現地の日本企業の駐在員の間からも、「税金を使いなが
ら、他の産業が培った『日本ブランド』を台無しにしてくれた」と厳しい声が
あがっている。
 日本の土木建築技術が高い水準にあるだろうことは、国内の巨大建造物の林
立や、本四架橋などの巨大橋梁が見本と言えるかもしれない。それでも「高い
技術力」をタイド復活の名分にしたことには、途上国を見下すような日本の傲
慢さがにじみ出る。
                          *
 前述の説明拒否もふくめて、事故後の対応にもそんな傲慢さが透けて見える。
 施工主幹事ゼネコンである大成建設は、事故から1カ月後の10月26日、担当
役員2人を降格し全取締役の報酬一部返上を決めたが、これについても、日本
企業の現地駐在員からは、「日本で同じ数の犠牲者(死者54人、負傷者80人)
を出しても、同じ処分で済んだのか」と、疑問の声があがる。日本でこれだけ
の大惨事をおこしたら、担当役員は降格ですむはずはないし、刑事責任の追及
をもとめる声もあがるだろう。
 BSE感染牛の発見で崩壊した「安全神話」もだが、ODAによって途上国におし
つけられた「技術神話」の崩壊も、この国の国家官僚たちの傲慢さと、これと
癒着して官僚たちのやりたい放題を許してきた自民党政治がまねいた人災なの
だ。ところが、湾岸戦争で欧米諸国から吹きだした札束外交批判を「人的貢献」
の必要にすりかえた国際貢献の議論が、ODAにまつわる傲慢さをおおいかくす
ことになったと思えてならない。
 結局そのツケが、「日本ブランド」を台無しにする、ベトナムの大惨事につ
ながってしまったのだ。【T】
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4:【時評】●排出権取引と日中関係

           環境ビジネスの効果と課題

   −環境技術うり込む日本企業は、和諧社会に貢献できるか−

▼日本企業のイメージチェンジ

 かつて中国に進出した日系企業のイメージは、中国の消費者にとっては製品
の優秀さ、とくに家電製品のそれだった。ところがここ数年は、中国国内メー
カーや韓国メーカーの追い上げでこのイメージが後退し、それに代わるように
「省エネと環境技術で先進的」というイメージを作ろうとする動きが、日本企
業に広まっている。
 11月1日、東芝は「省エネ・環境保全技術フォーラム」を北京で開催し、自
社の省エネ技術を大々的に紹介したが、今年の1月と4月には、日立製作所も省
エネと水処理に関するフォーラムをそれぞれ開催し、これまた自社の省エネ技
術と汚水処理技術をアピールしているのだ。
 東芝、日立と言えば日本を代表するエレクトロニクスメーカーだが、それが
そろって環境保全と省エネのイメージを中国で打ち出したのは、もちろん偶然
ではない。
 背景のひとつは、地球温暖化対策をまとめた京都議定書である。これを批准
した各国には、温室効果ガスの排出量削減目標が割り当てられたが、その目標
達成の手段として「排出権取引」が認められたことで、日本の商社も、排出権
取引を仲介する環境ビジネスに乗り出したことである。
 もうひとつは、今年3月に開催された中国の第10期全国人民代表大会(全人
代)と、10月の中国共産党第17回大会が、経済成長一辺倒だった経済戦略を見
直し、環境対策やセーフティネットの構築を重視する「和諧社会」を目指す戦
略に転換することを、共に決定したことである。
 中国の経済戦略の転換は、安倍前首相と温家宝首相の訪中・訪日を通じて、
両国政府が環境分野での協力を積極的に打ち出したり、かつての日本でも、現
在の中国と同じような環境汚染で多くの被害を生み、それが数々の環境技術の
開発を促したことが中国でも報じられるようになったりと、日中環境ビジネス
の追い風になっている。

▼環境ビジネスの功罪

 排出権取引の仕組みは、エネルギー消費と温室効果ガスを減らすプラントを、
削減目標の割り当てが無いか少ない途上国に納入し、それによって減った温室
効果ガスの排出量を「権利」として受け取り、これを、削減目標を割り当てら
れた国や企業に転売して利ざやを稼ぐというものだ。
 日本の排出権購入費用の相場は1トン当たり2千円程度で、その1〜2%が手数
料収入として見込めるという。
 もちろん、プラントを供給する環境技術先進国が排出量削減の努力を怠るモ
ラルハザードや、排出権取引が投機マネーの標的となるリスクも無視はできな
いが、途上国にとっては環境・省エネ技術の導入が促進されて外貨収入も得ら
れるこの仕組みは、過渡的な対策としては容認できるのではないかと、わたし
は考えている。
 日本の商社が排出権取得を本格化させたのは、京都議定書が成立して8年後
の05年ごろからだが、三菱商事は昨年、中国でのフロンガス分解事業に関連し
て年間1011万トンの排出権を取得し、国連に登録した排出権の総量は1188万ト
ンと、日本企業としては最大になった。他に丸紅も、同じく中国の水力発電事
業などで年間1200万トンの排出権を取得して日本企業に販売するとしているし、
三井物産も中国を中心に年間600万トンの排出権を取得しており、交渉中の案
件が成立すれば800万トンになるという。
 この排出権獲得にともなう環境保全技術の供給が、深刻な中国の環境汚染に
どれほどの効果があるかは判然としない。それでも、現在の中国における深刻
な環境汚染を軽減しようとする取り組みの、端緒となることだけは確かだろう。
しかも中国政府が、前述のように経済成長一辺倒の戦略を転換し、環境対策や
省エネ対策を強化することで産業構造の高度化を進めようとしている今は、そ
うした政策全体に対する「側面支援」の意味をもつことにもなるだろう。

▼リース型ビジネスモデル

 小泉政権の5年間に険悪化した日中関係は、安倍前首相の訪中でとりあえず
修復はされたが、対中国ODA(政府開発援助)が大幅に削減されたままの現状
では、こうした側面支援ですら、日中関係を好転させるそれなりの効果も期待
できよう。
 それでも、問題がない訳ではない。最大の課題は、中国側が環境技術や省エ
ネ技術を導入する際の資金調達である。中国の地方政府の多くは財政難に直面
しており、民営の中小企業も資金調達に苦労している。彼らがこれら最近技術
の導入を望んでも、資金の手当がかなり難しいのが現実だ。
 この問題を克服するビジネスモデルとして注目されるのが、日立の取り組み
だ。同社は環境改善や省エネのための設備を中国企業に貸し出し(リース契約)、
省エネによる二酸化炭素削減分を排出権として取得する方式を導入しようとし
ている。
 今年8月、雲南省政府と省エネについて全面的に協力する協定を結んだ日立
(中国)有限公司の子会社が、省エネ型の配電用変圧器の技術を山東省の企業
にリースするという形で取り組みが始まっているが、こうした資金調達を軽減
するビジネスモデルと共に、中国の実情に適合した環境・省エネ技術を提供で
きるか否かが、日中間の環境ビジネスが、両国関係の改善に資する「側面支援」
たり得るかどうかを決めるだろう。
 いずれにしても中国の環境汚染は、黄砂に含まれた有害物質が、日本の山間
地に酸性雨を降らせていることでも解るように、文字通りの意味で他人事では
ない。
 環境ビジネスや排出権取引に問題が無いとは言えないが、わたしたちも、こ
うした現実的効果について、もう少し冷静な評価をもつ必要があるのかもしれ
ない。
(12/20:いつき・かおる)
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【お知らせ】おそくなりました11・12月合併号を配信します。
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【月刊ニュースレター:メール版】イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第53号(通巻177号)      2007年12月24日発行
 発行所:MELT
    ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
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