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今、時代は大きな転換期にあると思います。この時代の性格と、今後わたしたちに何が問われているかを、世界や日本の主な出来事の分析を通じて考えます。

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2007/09/13

インターナショナル51

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
                  ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
【月刊ニュースレター:メール版】 イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                 ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第51号(通巻175号)      2007年9月13日発行
 発行所:MELT
     ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
          Eメールアドレス   melt-ks@jn3.so-net.ne.jp
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わたしたちはいま、大きな時代の転換点に生きているのではないでしょうか?
だから今とは、人間の自立と自律や民衆の自治という新しい民主主義のあり方
と、旧い代行民主主義の葛藤の時代でもあるのでしょう。 
 次々と起きるいろいろな事件や社会現象の分析をとおして、そんな問題を考
えてみたい人たちのためのメールマガジンです。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
今号の内容:
1:私たちの時代とは(日本):【07年参院選のバランスシート】
     挫折した自民党改革路線と民主党の「バラマキ」公約
       −格差是正ではなく、生存権の防衛へ−
2:運動と組織のありかた(政党と民主主義):
     【投稿】参院選・ある実感の報告
       憲法の危機は9条だけの危機なのか
        −「護憲派選挙」の現実と限界−
3:運動と組織のありかた(労働組合):非正規雇用の拡大と労働運動【補足】
     日本と韓国に貫徹された労働法制のグローバル化      
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1:【07年参院選のバランスシート】

         挫折した自民党改革路線と民主党の「バラマキ」公約

●格差是正ではなく、生存権の防衛へ

▼党派別獲得議席と得票率

 7月29日に投開票された第21回参議院選挙は、民主党の大躍進と安倍自民党の
歴史的惨敗という結果になった。
 自民党は、改選64議席を37議席にまで減らし、連立与党の公明党も12議席か
ら9議席に後退した。対する野党は、共産党が改選5議席から3議席に、社民党も
改選3議席から2議席に後退したが、民主党が改選32議席に対して60議席を獲得
し、共産、社民両党の後退を補って余りある躍進で圧勝し、小沢が公言してき
た参議院の与野党逆転が現実となったのである。
 ちなみに、自民党の郵政造反組が結成した「国民新党」は改選2議席を維持し、
田中康夫・前長野県知事を代表とする「新党日本」は新たに1議席を獲得、本紙
前号で触れた東京選挙区の川田龍平氏は、自民党2候補との競り合いを制して当
選した。
 また昨年来の「護憲統一候補擁立運動」(本誌167号「政党に物申す市民運動
の登場」参照)の理念を客観的には継承したものの、結局は新社会党が中心勢
力となった「9条ネット」は、273,755票(得票率0.46%)に止まり、議席獲得
には至らなかった。
                           *
 こうした議席の増減を、党派別得票率の増減で比較してみると、自民党は選
挙区得票率が31.4%(1860万票余)で、小泉政権の下でも民主党に敗れた前回
04年選挙の得票率35.1%(1968万票余)から更に3.7ポイント減少し、比例区得
票率でも30.0%(1679万票余)から28.1%(1654万票余)と、こちらも1.9ポイ
ント減少した。
 また連立与党の公明党は、選挙区得票率では前回04年選挙の3.9%(216万票
余)から6.0%(353万票余)と140万票ほど増やしたが、獲得議席は3から2に後
退し、比例区得票率は15.4%(862万票余)から13.2%(776万票余)と、2.2ポ
イント減少した。
 公明党が選挙区得票率を増やしながら議席を減らしたのは、今回の選挙区公
認候補5人に対して、前回04年選挙では3人だったからである。しかも5人の現職
候補は、小泉ブームで自公連立与党が圧勝した01年選挙の当選者であり、この
党の実力を越えたバブル議席だったと言えなくもない。
 それでもこの党の選挙戦が、投票率の上昇(前回56.57%→今回58.64%)や、
今回の場合は民主党を押し上げた無党派層の投票行動など、選挙情勢に大きく
影響されることが改めて確認できよう。つまり埼玉、神奈川、愛知という、い
ずれも定数3の選挙区で、現職が民主党候補と最後の議席を競ったあげく次点で
落選したのは、安倍自民党の連立与党として、その責任を問われた結果と言う
ほかはないからである。
 これに対して民主党は、選挙区で39.1%(2193万票余)から40.5%(2400万
票余)に、比例区でも37.8%(2113万票余)から39.5%(2325万票余)と、そ
れぞれ1.4ポイント、1.7ポイント増加し、自民党との差を選挙区で4.0から9.1
ポイントに、比例区でも7.8から11.4ポイントにまで広げた。
 投票総数6千万票余の10%=600万票という自民党と民主党の得票差は、公明
党の基礎票800万票に匹敵する大差であり、それは民主党の当選者が20だったの
に対して、自公両党合わせても21であった比例区当選者数に端的に現れている。
 一方、改選議席を減らした共産党は、選挙後のコメントで「比例区〃得票数〃
が増加した」などを強調して敗戦を認めようともしないのだが、この党の比例
区〃得票率〃は、前回の7.8%(436万票余)から7.5%(440万票余)と0.3ポイ
ント減少しているのである。さらには、ついに東京の議席を失うことになった
選挙区の得票率は、9.8%(552万票余)から8.7%(516万票余)へと、1.1ポイ
ントも減少している。
 また社民党は、選挙区得票率を1.8%(98万票余)から2.3%(135万票余)に
増加させたが、これは、東京や千葉など定数増の選挙区で新たに公認候補を擁
立したためであり、事情は少し違うが、公明党の選挙区得票率の増加と同じで
ある。だが選挙の見通しを楽観し過ぎた選挙区での公認候補擁立は、結局は14
選挙区の全敗に終わり、比例区の得票率も前回の5.3%(299万票余)から4.5%
(263万票)へと0.8ポイント減少した。

▼総括の焦点は何か

 こうした選挙結果は、年金記録の紛失や相次ぐ政治資金疑惑を契機に、安倍
内閣の支持率が急落したことで事前に予測されていたことであった。さらには、
1人区で自民党が6勝23敗と大敗した「地方の反乱」が象徴するように、小泉−
安倍とつづいた「構造改革」が生み出した格差拡大への不満が、「生活が第一」
を掲げた小沢民主党を押し上げたことも明らかである。
 したがって選挙総括の焦点は、その勝敗の原因を探ること以上に、この選挙
結果が、変革主体の再生を含むわたしたちの今後の闘いにとって、どんな意味
を持つのかを見極めることであろう。
 その意味で第1の焦点は、小沢民主党を押し上げた有権者の選択が何を意味
するのかを明らかにすること、言い換えれば「バラマキ政治」への回帰とも言
える民主党の選挙公約が、はたして「構造改革」への現実的対案たり得るのか、
という問題である。
 というのも、小泉政権が推進し安倍へと引き継がれた改革路線は、右肩上が
りの経済成長を前提とした「バラマキ政治」が、赤字国債の累積で持続不能と
なった結果の転換だったのであり、旧来型の自民党的政策が今後、本当に可能
か否かが検証されなければならないからである。
 そして第2は、年金記録問題や政治資金疑惑を契機にして、改革路線が生み
出した社会的格差に対する広範な批判が野党・民主党を大勝させた選挙で、護
憲を全面に打ち出した共産党と社民党という「戦後革新勢力」が、両党合わせ
ても12%(比例区)の支持しか獲得できない惨敗を喫したのは何故か、を明ら
かにすることである。
 少なくともこの両党の敗北は、有権者の圧倒的多数の関心事であった格差拡
大を厳しくそして全面的に批判することもなく、改憲を掲げた安倍政権の思想
的外観に囚われ、さらには9条護憲を自らの専売特許であるかのように振る舞う
ことで、これまでの「ゆるやかな支持層」にさえ見放されたことを強く示唆す
るからである。
                          *
 ところでわたしは、05年9月のいわゆる「郵政解散・総選挙」で、小泉自民党
が都市と地方を貫く大勝を収めた直後に、以下のように書いた。
 「だがその上で、都市と地方を貫く改革幻想が間もなく(と言っても2〜3年
を要するかもしれないが)裏切られるのは、これまた断言することができる」
(158号『都市と地方を貫く小泉圧勝の意味』)と。
 確かに自民党の歴史的大敗は、改革幻想の「崩壊のはじまり」と言うことが
できる。だが問題なのは、いわば「構造改革」の必然的結果であった社会的格
差の拡大を、かつての自民党的な「バラマキ政治」で解消もしくは是正できる
か否かである。

▼経済成長と格差是正の矛盾

 前述のように、01年の自民党総裁選で、主流派つまり当時の橋本派から、小
派閥の「変人」小泉へとドラスティックな政権移行が起きたのは、膨大な赤字
国債を累積させた利権まみれの「ムダな公共事業」が厳しい批判に晒され、
「バラマキ政治」の破綻が露呈したからだが、それはまた資本主義・日本が、
グローバリゼーションという世界的分業の再編成に直撃され、輸出産業が牽引
する経済成長戦略の展望が失われ、「バラマキ」を可能にした潤沢な国家資金
が枯渇しはじめたからでもあった。
 こうして、グーバリゼーションに対応する「構造改革」を掲げる小泉政権が
登場したのだが、竹中をブレーンとして推進された新自由主義的改革の実態は、
国際競争の激化に直面する日系多国籍資本を支援するために、企業収益の一部
を社会的格差の是正に投入してきた旧来の再分配システムを「ぶっ壊し」、国
家資金の流れを逆転させるシステムに転換することであった。
 自治と分権を口実にした地方交付税や補助金の大幅削減と、介護保険の改訂
や社会保険料の相次ぐ値上げは、都市と地方の、あるいは都市内部の「格差是
正」に投じられてきた国家資金の削減だったし、大幅な企業減税と、社会保険
料の企業拠出分を含めた人件費=労働分配率の切り下げを可能とする労働法制
の規制緩和などは、企業が負担する社会的費用を軽減し、多国籍資本に資金を
集中する施策に他ならなかった。
 もちろん小泉は、企業業績の改善が景気を回復させ、それが労働分配率を再
び上昇させて豊かな生活が戻るという期待を抱かせることを忘れなかったが、
それ自身、輸出産業の活況が国内景気をリードして経済成長を達成するという、
旧来型の成長モデルを前提とする幻想であった。
 なぜならグーバリゼーションの進展は、市場の狭隘化つまり過剰生産に直面
した戦後資本主義が、リスクの高い金融投機や目まぐるしい商品開発競争によ
ってしか利潤を確保できない状況の反映であり、だからまた高付加価値商品を
次々と市場に投入する技術革新への投資=資金の集中を継続し、1%でも多い国
際シェア(市場占有率)を確保しようとする、いわば「自転車操業」を企業に
強いる経済システムへの移行だからである。そうである以上、国際競争でしの
ぎを削る多国籍資本は、文字通り生き残りをかけて、1円でも多くの余剰資金
を留保する欲求に突き動かさざるを得ないのだ。
 かくして、国家の支援によって潤沢な資金を手にした多国籍資本が、最高収
益記録を次々と更新する一方で賃金は一向に上昇せず、格差を緩和する国家資
金の削減が、地方の疲弊と都市貧困層の増加を加速し、「痛み」ばかりが人々
を襲う格差社会が人々の実感となり始めたのである。
                         *
 ところが今回の選挙で民主党は、地方農村部では「農家の所得補償」を訴え、
都市部では、特に若い世代の強い関心事である「子育て支援」を訴え、小泉−
安倍の改革が生み出した「痛み」を、民主党が緩和・是正するというメッセー
ジを全面に押し出すことで勝利したのである。
 それは、自動車や電機など、輸出産業多国籍資本が要求した農産物自由化の
進展で苦境にある地方農山村部と、「グローバルスタンダード」と称する労働
規制緩和が促進した低賃金で、結婚や子育てが困難になった都市の下層民衆に、
新たなバラマキを約束する選挙戦術だったが、その財源、つまり「枯渇した国
家資金」を回復する手段が同時に提示されなければ、これらの公約は絵に描い
た餅に過ぎまい。
 もちろん、企業減税をやめ、社会保険料の企業拠出も含めた労働分配率を元
に戻すことは可能だし、消費税率などを引き上げることで、税収を増やすこと
も可能である。だが前者は、自動車産業の一部を除けば依然として弱いとされ
る日系多国籍資本の「国際競争力を強化しない」道であり、後者の対策は、人
々の大衆的反感に直面するリスクを覚悟しなければならない。
 いずれにしろ民主党の格差是正策は、右肩上がりの経済成長を求め、多国籍
資本の国際競争力を強化しようとする限りは〃絵に描いた餅〃であり、増税を
してでも「高負担による高福祉」システムに転換するのであれば、「アメリカ
経済のキャッチアップによる経済大国・日本」という「戦後レジーム」に代わ
る、新たな戦略的レジームが提示される必要があるだろう。
 だが民主党のマニフェストを見る限り、この党にそうした戦略的準備がある
とは、とうてい考えられない。だとすれば、この参院選の延長上に民主党の政
権奪取が実現したとしても、そこには新たな幻滅が待ち構えているだけであろ
う。

▼格差問題と乖離した「護憲」の限界

 だが、民主党の選挙公約にはらまれた矛盾は、実はひとり民主党が抱える矛
盾なのではなく、戦後日本の保守勢力を引き裂く矛盾でもある。
 自民党が、参院選の大敗にもかかわらず安倍続投の選択しかできなかったの
は、この同じ矛盾に引き裂かれた自民党が、改革路線を進むも地獄、そこから
撤退して「バラマキ政治」に戻るも地獄の立ち往生に陥ったことを示している
のであり、小泉−安倍両政権による「改革政党」への転換の試みが頓挫し、こ
の党の戦略的転換が決定的に制約されることになったからなのである。
 こうして自民党は、格差に対する大衆的不満を沈静化させる対処療法の優先
に追い込まれ、内閣改造に際して、政権批判を公言してきた舛添要一参院議員
を厚生労働相に抜擢するなど、小手先の対応に終始せざるを得ない事態に直面
したのだ。
 ところが、こうした戦後保守勢力の危機的状況にもかかわらず、「たしかな
野党」を自認してきた共産党も、「民イズム」を唱えてきた社民党も、まった
く有効な対案を持っていなこともまた、今回の参議院選挙で明らかになったの
である。
                           *
 前述のように共産・社民の両党は、「戦後レジームからの脱却」と称して、
9条改憲を争点にしようとした安倍政権の思想的外観に囚われ、いわば改憲阻
止の「決戦」を挑むかのように、護憲を前面に押し出す選挙戦を展開し、結果
として、人々の最大の関心事だった格差問題から目を背けることで惨敗を喫し
たと言える。
 しかもこの両党は、同じような改憲の危機感から、「護憲統一候補」の擁立
を求める市民派や環境派の運動にも背を向け、自らだけが「真の護憲勢力」で
あると言う内向きで独善的な態度に終始し、支持基盤をむしろ狭めたとさえ思
われる。
 もちろん、自民党が進めようとする改憲に反対することは、単に戦後日本の
平和主義を守るためだけではなく、日本国憲法に明示された民衆の諸権利を発
展させ、あるいは国家権力の横暴を抑止し、「健康で文化的な最低限度の生活
を営む権利」(日本国憲法第25条)を実現する、そうした「市民社会の理想」
を追求する社会的運動の、ひとつの道標としても必要である。
 だがそうだとすれば、小泉改革が生み出した社会的格差の問題と切り結び、
自民党の国家主義的改憲を批判する護憲の訴えは、社会的生存権の保障を明示
した前掲25条の「完全実施」を前面に打ち出してこそ、効果的だったとは言え
ないだろうか。
 なぜなら、社会的格差を象徴する「ワーキング・プア」や「ネットカフェ難
民」の急増は、労働規制緩和という「改革」の直接的結果であるだけでなく、
前掲25条の後段にある「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保
障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定を、自民
党政権が踏みにじっている証拠に他ならないからである。
 つまり参院選最大の争点となった社会的格差の問題は、それ自身として、自
公連立政権による「憲法違反」を追及する内容をはらんでいたのだが、共産・
社民の両党はこれを無視するように9条護憲、つまり平和主義の擁護に「護憲
の理念」を切り縮めたと言っても過言ではない。
 それではなぜ、共産・社民両党は護憲の理念を切り縮め、25条に明記された
社会的生存権の擁護を全面に押し立てて護憲を訴えることができなかったのだ
ろうか。
 実はここに、共産・社民両党が惨敗した本質的要因が隠れている。

▼護憲の理念と時代認識

 戦後革新勢力の護憲の理念は、敗戦後のアメリカによる占領期にまで、その
源流をさかのぼることができる。
 「『非武装中立』という戦後革新の国際戦略は、日本を無力な小国に再編し
ょうと試みたアメリカの『前期占領政策』に依拠していた」のだが、それはま
た「・・・朝鮮戦争特需を契機に、本格的な経済復興がはじまるのと軌を一に
して、『非武装』は条文護憲へと矮小化され、『中立』は、冷戦という国際関
係から日本だけを切り離す『局外中立』という願望に転落し、積極的な国家目
標や理念としては劣化しつづけてきた」(本紙161号「条約改定のない日米安保
の変質」)。
 しかも戦争放棄を謳う9条に関しては、当初は共産党が自衛戦争の観点から
これに異議を唱え、むしろ当時の吉田首相が、国会答弁で「自衛の戦争も放棄
する」のだと明言していたのである。
 つまり共産・社民両党の護憲の理念は、第二次大戦後の東西冷戦という国際
的条件の下で、日本が再び戦争に〃巻き込まれる〃ことを拒否しようとする、
敗戦直後の保守・革新両派に共通する外交戦略の基本理念だったのであり、逆
に言えば外交戦略以上の意味を与えられなかった結果として、社会的生存権と
の関係を極めて希薄にしか認識しない内容だったとも言える。
 だがこれだけが、護憲の理念が「切り縮められた」理由ではない。というの
も、いわば「究極の人権侵害」である戦争に反対して基本的人権を擁護する護
憲の思想は、「平和的生存権」として、すでに60年代には提唱されていたから
である。
                            *
 ところで憲法9条には、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力
の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とある。
 つまり憲法9条の規定は、単に「国際紛争を解決する手段」として戦争を放
棄しただけでなく、第二次大戦後も容認されてきた「国家の権限である戦争の
発動」を放棄するというものであり、9条の最後にも、「国の交戦権は、これ
を認めない」と明記されているように、「国家の権限の放棄」が、いわば二重
に確認された9条の理念的核心と言うことができる。
 ところが戦後革新勢力は、この「国権の発動たる戦争」の放棄、言い換えれ
ば「国家主権の一部を自らすすんで放棄する」という9条が含意する理念を、
必ずしも明確にしてはこなかった。かつて共産党が、自衛戦争という「国家の
権利」を擁護したように、「国家主権の自発的放棄」について、戦後革新はそ
の最左派を含めて、極めて曖昧でありつづけてきたのである。
 しかし「国家主権の自発的放棄」という理念は、民衆のあらゆる権利を超越
する「国家の権限」を制限して、「市民社会の理想」である「自律的社会」の
発展に期待する、当時もそして今でも十分に「進歩的」な理念というだけでな
く、マルクス主義が提唱する「国家の止揚」にも通ずる、優れた現代的理念と
は言えないだろうか。
 だが共産・社民両党は、国家権力に依拠して「社会変革を代行する」自らの
戦略を批判的に検証しないことで、結果としてではあれ、戦後資本主義の下で
発展した進歩的諸成果を過小評価し、だからまた基本的人権思想の発展など、
これまた戦後資本主義の下で台頭した進歩的思想についても一貫して懐疑的だ
ったと言えよう。
 9条護憲と、社会的生存権の擁護とを分断した共産・社民両党の選挙戦術は、
旧い時代認識を継承する両党の、綱領的破産の現れだったのである。
 いずれにしろ、憲法25条の規定にもかかわらず、改革路線が強いた社会的生
存権の侵害という「痛み」と非和解的に対決する姿勢を鮮明にすることなく、
日本一国の平和を守る9条護憲を訴えるのは、格差の拡大を無視して改憲を振
り回す安倍に劣らず、人々の生活実感からは掛け離れた観念論と受け取られて
当然であった。

▼不断の努力による権利の保持

 結局のところ共産・社民両党は、冷戦時代の護憲の理念に固執し、「生活防
衛」というお得意のスローガンさえ後景に追いやり、多くの支持者に〃見捨て
られた〃と言っていいのかもしれない。
 だが同時に、「生活が第一」を掲げた民主党の公約も幻想に終わる可能性が
強いのだとすれば、新自由主義的改革によって生じた社会的経済的格差に対し
て、いかなる対案が求められているのだろうか。
 それはまず何よりも、小泉−安倍とつづいた新自由主義的改革がもたらした
社会的格差が、憲法25条に規定された社会的生存権の侵害であるという、明快
な認識から出発しなければならない。
 この点では、民主党の「農家の所得補償」や「子育て支援」の主眼は、「拡
大し過ぎた格差」の是正にとどまり、社会的生存権という基本的人権の侵害で
あるとの認識は、ほとんどない。
 と同時に「わたしたちの対案」は、国家による社会保障に没主体的に依存し
たり、行政的な「バラマキ」補助金に寄りかかるのではなく、わたしたち民衆
自身が、再分配の優先順位を当事者として考え、グローバリゼーションの時代
に、言い換えれば右肩上がりの経済成長が望めない時代にも適合できる、自発
的な相互扶助や住民自治によって補完される必要があるだろう。
 なぜなら、あらゆる福利厚生を国家に依存することは、いずれにしろ国家の
増収のための増税や、基幹産業とされる多国籍資本への国家的支援を必要とす
るのは前述のとおりだからである。だがさらに言えば、国家の施策への過度の
依存は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によ
って、これを保持しなければならない」という憲法12条の規定に背を向け、結
局は政党や官僚機構による「福祉の代行」に追従し、国家官僚の恣意的な行政
指導を容認することになるからでもある。
                            *
 こうした、一見「理想論」と思える対案の姿は、もちろんいまだ微力で萌芽
的であるとは言え、着実に日本社会に広がりつつある新たな動向の中に、その
現実的可能性を見いだすことができる。
 資本にとって都合のいい、非正規・低賃金労働者として使い捨てにされてき
た若い労働者たちが、個人加盟の一般労組(ゼネラル・ユニオン)に結集して
権利の回復を要求しはじめた現実は、「企業にとって有用な人間」だけを「労
働力商品」として評価し、生存権の否定すら厭わない新自由主義的システムに
対する、自発的抗議を通じて現れた「当事者による対案」でもある。
 あるいは過疎と財政難に直面した農山村部の自治体で、雪下ろしなど一人暮
らしのお年寄りの支援に、都市の若い世代のボランティアが参加しはじめたこ
とも、国家や行政機構に過度に依存しない、社会的生存権を保障する自発的な
社会運動の萌芽と言うことができるだろう。
 これらの事例は、「低成長時代」の社会的生存権の保障に欠くことのできな
い、自発的な相互扶助と住民自治の芽生えであり、自民民主の二大政党も、そ
して戦後革新たる共産社民の両党も組織できていない、「もう一つの世界」の
基盤である。
(9/7:きうち・たかし)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2:【投稿】参院選・ある実感の報告

        憲法の危機は9条だけの危機なのか

        −「護憲派選挙」の現実と限界−

 7月29日に実施された参議院選挙は、すでにマスコミでも様々な角度から分析
されているように、〃歴史的様相〃を呈するものとなった。
 私はこの選挙に「9条ネット」というマイナーな団体の一員として関わった
のだが、そこからは護憲勢力のプラス・マイナスを実に鮮明に見て取ることが
できた。その実感を報告する。

▼「9条ネット」=経緯と反響

 「9条ネット」結成の経過は、昨年の「平和共同候補」擁立運動にまで遡る。
危機に瀕する憲法9条を守るためには、すべての護憲勢力が共同して07年の参議
院選挙を闘うべきであるという「平和共同候補」擁立運動は、昨年7月7日に日
本教育会館で開かれた1千人集会の成功で、1つのピークを迎えた。
 しかし共産党は昨年5月の段階で、社民党も昨年末に拒否の姿勢を明らかにし
たため、この運動は頓挫することになった。また、比例区では政党の利害と共
同候補運動が直接ぶつかるので、千葉選挙区などいくつかの選挙区で共同候補
擁立の努力が続いたが、それらの選挙区でも共産党、社民党が独自候補を立て
たために、すべての試みは失敗に終わったのである。
 こうした中で今年2月、「9条ネット」が結成されたのだが、この組織は、平
和共同候補運動の一定部分を継承する性格を持っていた。なぜなら、同運動の
中心だった前田知克弁護士が、「9条ネット」結成の中心を担っていたからで
ある。また「9条ネット」が掲げる理念は、「憲法9条改悪反対の1点で同意す
るすべての勢力、団体、個人に開かれた組織」であり、このような組織が確認
団体の資格をとって国政選挙を闘うこと自体、画期的といってよかった。
 こうした「9条ネット」の理念は一方で、自らの政党維持という党派的エゴ
イズムを露骨に示した共産党、社民党に対して、道義的優位性を示すものでも
あった。
 ただし、全国組織としての「9条ネット」を支えたのは新社会党だけであり、
そこから来る幅の狭さは、「9条ネット」を最後まで苦しめることになった。
もちろん新社会党は、開かれた共闘組織としての「9条ネット」の実現に、真
剣に取り組んだ。自らの党派的利害を後景に退けたその努力は、高く評価され
ねばならない。しかし、〃「9条ネット」は新社会党の別働隊〃というレッテ
ルが、最後までついて回ったことも否めない事実なのである。
                          *
 いずれにしても、こうした背景を持って「9条ネット」はスタートした。し
かし、確認団体の資格要件である10人の候補者擁立は困難を極めた。元レバノ
ン大使の天木直人、ミュージシャンのZAKI、元三派全学連副委員長の成島忠夫
など、候補者10人が出揃ったのは5月末であり、選挙態勢は大きく出遅れること
となった。
 それでも、「9条ネット」発足の反響は悪くはなかった。「美しい国日本」
「戦後レジームの転換」を掲げ、憲法9条を改悪しようとする安倍政権に対する
危機感は、根深く存在していたからである。
 事実、選挙戦中盤にNHKの政見放送と選挙公報が出され、人々の目に初めて
「9条ネット」の存在が明らかになると(マスコミは「9条ネット」をまった
く報道しなかった)、事務局の電話は、問い合わせで鳴りっ放し状態になった
のである。また、天木直人を支持する勝手連などが、遅まきながら各地で産声
を上げた。
 「9条ネット」に寄せられた応援メッセージの中には、自衛隊高級幹部のも
のもあり、そこにはこう記されていた。
 「自衛隊と米軍との関係では近年、屈辱的とも思える事態に数多く出会って
いる。私が自衛隊員になったのは日本国民を守ろうと考えたからであり、その
ために命を落すこともやぶさかではない。しかし(外征軍となった)自衛隊を
利用した米国のために命をかける気にはなれない。それを阻止するためには
(外征軍化の歯止めである)憲法9条を絶対に守らなければならない」。
 このメッセージは、日米軍事態勢の矛盾と憲法9条を結びつけた鋭い指摘で
あった。
 だが、そのような流れを生み出したにもかかわらず、「9条ネット」が獲得
した得票は27万票でしかなかった。民主党の大勝と自民党の〃歴史的大敗〃、
そして27万票という現実をどのように見るのかが極めて重要になるのである。

▼一面化された「憲法の危機」

 現在の日本が抱えている危機は、極めて深刻である。老人や若者を直撃する
格差の拡大、農業の危機、シャッター街に象徴される地方都市の衰退。
 これらはいずれも、小泉政権がもたらした新自由主義政策による弱者切捨て
政策の結果であり、老人や若者、農村、地方都市は生存の危機に立たされてい
るのである。
 このようなときに、日本政治の危機を〃憲法9条の危機〃に特化したり、9条
を軸とする〃憲法決戦〃に一面化するのは、大衆的に存在する危機意識とは遊
離していたと言わざるを得ない。日本国憲法の危機とは、憲法で保障されてい
るはずの生存権、労働権、基本的人権の危機であり、その一部である平和的生
存権(9条)の危機なのである。
 従来、憲法9条の危機を訴えれば、平和意識に基づく〃左翼バネ〃が働くとい
う感覚が、戦後左翼には根強く存在していた。
 しかし、危機がここまで広がった今日にあっては、そのように単純な〃左翼
バネ〃は作動しないのである。その現実を見ずに、憲法の危機を9条の危機に特
化させたという点では、「9条ネット」に限らず、共産党、社民党も含めた日
本の左翼勢力全体が完敗したのである。
 こうした中で民主党は、平和的生存権の危機には口を閉ざしたまま、格差社
会と農村、地方都市の危機を全面に押し出すことによって大勝した。
 民主党は、大衆的に存在する生存権の危機意識を掘り起こして勝利したので
ある。だが彼らの解決方法は、戦後保守政治の決まり手であった〃ばら撒き財
政〃の枠組みを一歩も出ていない。次の総選挙を経て、仮に民主党が政権を握
るならば、この矛盾はたちまち露呈することになるだろう。自民党に方針がな
く、民主党の政策も対案たり得ないという羅針盤なき時代が始まろうとしてい
る。
 そうした中で問われているのは、憲法改悪反対運動の幅と質である。3年後の
〃国民投票法〃に向けて、生存権、労働権、基本的人権から平和的生存権まで
を射程に入れた、オルタナティブを持つ運動と政治勢力を作り出さねばならな
い。
 そしてこのような三極目を形成することによって、民主党の矛盾に介入すべ
きではないだろうか。
 これが「9条ネット」として選挙に関わった、私の偽らざる感想である。
(8/27:えとう・まさのぶ)
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3:●非正規雇用の拡大と労働運動【補足】

    日本と韓国に貫徹された労働法制のグローバル化

▼韓国への「グローバル化」提案

 日本の労働政策・雇用状況を考察するとき、外国の状況から探ると客観的に
見えてくるものがある。
 韓国が「IMF事態」(韓国ではこう呼ぶ)に陥る直前の1997年に発行された、
アメリカの経営コンサルタント会社のブース・アレン&ハミルトン著『韓国報告
書―日本型経済システムのゆくえ』(朝日新聞社刊)の中から、雇用・労働問題
について触れている箇所を検討してみよう。
 著者は、韓国経済は自由化を積極的に推進してこなかった、日本経済と中国
経済の挟み撃ちにあっている、さらに東南アジア経済との競争の中で取り残さ
れる危険性があるので、グローバル化が早急に必要であるという観点から提案
を行っている。
  しかしこの提案は、アメリカが推し進めるグローバル化による韓国への「侵
略」のための戦略であり、その戦略は日本でも進められているものが多々ある。
                           *
  「第一の問題は、韓国の新しい経済ビジョンは、政府、企業、労働者の間の
新しい社会契約を含むものであり、実際にそれが必要不可欠であるということ
だ。」
 「韓国の労働法は1997年初めに改正され、労働者を解雇する雇用者の権利に
わずかな修正が加えられた。とくにこの改正によって、単なる緊急事態以上の
『緊迫した緊急事態』の場合に限り、労働者を解雇することができるようにな
った。また、改正法は、雇用者が労働者の解雇を避けるために誠実な努力をす
ることと、解雇の決定に当って公正で開かれた基準を用いることを求めている。
 改正労働法は、韓国企業が現在直面しているさまざまな困難に対処するため
に十分な柔軟性を持っていない。むしろ改正法によって企業は、倒産寸前にな
るまでじっと待つしかない立場に追いやられている。これを正すために韓国は、
深刻な事態になる前に労働者を解雇する権利を企業に与える必要がある。」
 「この変化のために必要なことは以下の3点だが、とくに重用なのは危機が
来る前に、企業に労働者を解雇する権利を与えることである。
 第一に、1997年の改正労働法の原案を採択・実行し、これによって、企業に
よる整理解雇に必要な『緊急事態』の条件を緩めなければならない。これは労
働の無制限の異動と、経営者が不当な干渉なしに解雇できることを保証するた
めだ。こうした措置は変化への信管に点火するために極めて重要な要素である。
 第二に、現在、制限されている派遣労働制や、(例えばパートタイムや短期
契約ベースでの)一時雇用を認める。これは労働市場の柔軟性を高めるのにさ
らに貢献することになる。
 第三に、民間部門が、労働者の新規募集サービスや臨時雇いの供給に参入す
るのを認める。これは柔軟な労働市場をつくるのに極めて重要で、とくに熟練
労働者にとってそうである。なぜなら彼らは、高付加価値部門で企業家的活動
が成長するのに極めて重要だからである。こうした市場メカニズムの労働市場
への導入は、韓国の報酬制度が現在の年功序列から実績主義に変わるのを促進
することにもなる。」

▼日本における労働法制の変遷

  閉鎖的な韓国経済を変えるグローバル化推進戦略ということだが、それは
「困難に対処するために十分な柔軟性」が必要だということで、労働者に犠牲
=解雇を強いることを合法化しようとしている。
  これを、1980年代にアメリカからの圧力を受けて、貿易摩擦問題解消のため
にとった日本政府の施策と比較すると、あまりにも重なる部分が多過ぎないだ
ろうか。
  自動車、木材、煙草と並んで、日米貿易摩擦の原因となっていた通信機器を
含むエレクトロニクスの輸出のためとして、アメリカ政府は電電公社の解体・
民営化を含む構造改革を提案し、日本政府は受け入れた。
  この構造改革を押し進めるとき、抵抗力となる労働組合を弱体化させるため
の政策が総評解体であり、その牙城であった国鉄労働組合の解体であった。
  それと同時に、すでに述べたように、日本における労働法制は、1985年を大
きな転換点として進められていった。
  構造改革で労働者の権利は剥奪され、生活スタイルが変えられ始めた。
  「とくに重用なのは危機が来る前に、企業に労働者を解雇する権利」を使用
者に付与しようとしたことであり、解雇制限・整理解雇の四要件をめぐっては、
裁判所は判例の軌道修正を行なった。しかし多くの労働者の共同行動で押し返
したのは、記憶に新しい。
  また「政府、企業、労働者の間の新しい社会契約」という提案は、労働基準
法、労働組合法に代わって、現実の労働者と使用者側の力関係を無視し、立場
の弱い労働者に個別に契約を結ばせようという「労働契約法」と重なるもので
ある。
  こうしたことを含めて、政府・使用者は、労働基準法に保障されている労働
者の権利を覆そうとしているだけでなく、労働組合法の団結権をも奪おうとし
ていることを見逃してはならない。
  「高付加価値部門で企業家的活動」をするのは、本来はホワイトカラーエグ
ゼンプションの対象者である。彼らに労働者意識を捨てさせ、経営者の一翼を
になう労働者に変えよう、またはその方向に一般労働者の意識も誘導しようと
いうのが、「労働契約法」とホワイトカラーエグゼンプションがリンクしてい
る真の理由なのである。
  さらに提案は、「労働委員会」(日本の労働委員会とは違う)にも言及して
いる。
  労働委員会は、「より効果的な労働市場への移行を推進するために必要であ
り、自由化された市場の枠組みで、労働者の利益を守ることである」という。
 この視点から、最近の日本の労働紛争処理機関を検討してみよう。
 たしかに日本でも労働者の多様化が進み、集団的紛争では、かえって解決が
難しい事案も増えてきている。そして昨年4月から、労働紛争を迅速に処理する
制度として、労働審判制が開始された。
  しかしこれは、個別紛争を集団的紛争に進展させないための、あるいは「紛
争」を労働組合法の枠外に置く対策であることも見逃してはならない。労使紛
争を、当事者間での解決から第三者のジャッジに委ねるという方向に、変化さ
せるものである。

▼非正規雇用の増加と労組の反撃

 前回(本紙174号)、5月31日に厚生労働省が発表した「毎月勤労統計」によ
る「企業間格差」と「雇用形態間格差」について触れたが、2007年3月発表の
『財政金融統計月報』(財務省財務総合政策研究所編)から、さらに細かく分
析をしてみよう。
  労働力人口は、2002年6,689万人、2003年6,666万人、2004年6,642万人、
2005年6,650万人、2006年6,657万人と多少の減少傾向にある。その中の就業者
を見ると2002年6,330万人、2003年6,316万人、2004年6,329万人、
2005年6,356万人、2006年6,382万人と少し増えている。
 この労働力人口の増加にはパート・契約社員などが含まれていて、それが急
増している事実がある。
  しかし見逃していけないのは、非労働力人口の増加である。2002年4,229万人、
2003年4,285万人、2004年4,336万人、2005年4,346万人、2006年4,355万人と、
5年間に100万人増えている。
  政府は、完全失業者と休職意欲喪失者を分けている。完全失業者とは、就業
を希望し且つ就業が可能であって求職活動をしている者をいう。そして非労働
力人口を、学生、結婚などで退職した家事従事者、求職意欲喪失者つまり求職
活動をしても就職できないと諦めている人たち、フリーター、ニートなどをひ
と括りにして定義づける。
  その結果、完全失業者と失業率は減少している。しかしこの間、求職意欲喪
失者は急激に増加している。
  また政府は、正規労働者は増えていると説明しているが、その数字の中の派
遣労働者は、派遣元との関係では正規労働者である。その派遣労働者は、2002
年に130万人、2003年140万人、2004年170万人、2005年240万人で、2006年はさ
らに増えている。6年間で100万人以上増えている派遣労働者を就業者全体から
引き算すると、正規雇用労働者の減少は明らかである。
 しかも派遣先における派遣労働者には、人件費が適用されない。会計処理上
は「物」である。「派遣労働の労働力」はすっかり「商品」にされている。
  派遣労働者を非正規労働者に含めると、06年の就業者総数における非正規労
働者の割合は33.2%に及び、正規労働者と非正規労働者の比率は2対1になって
いるのが現実なのである。
                            *
  ではこのような雇用格差に対して、現場は黙ってみているだけだろうか。い
や、反撃も始まっている。
  全国の労働金庫で働く労働者を組織する全労金は、2004年以降、正規労働者
のベースアップ要求を放棄し、職員増、非正規労働者の正規労働者化、非正規
労働者の処遇改善を要求して成果を上げ、組織拡大を前進させているという。
  また2007年2月17日付『朝日新聞』は、宮崎市の大型リゾート施設の運営会社
「フェニックスリゾート」が、来年春をめどに600人いる非正規社員の待遇を引
き上げ、正社員(約800人)に一本化する方針で労組との交渉を開始することを
明らかにした。人材の士気向上や、人材定着を図るためだという。
  他にも『朝日新聞』には「労働運動再生/広島電鉄の好例に学べ」の見出し
で、広島電鉄の格差縮小が紹介されている。
  広島電鉄は、5年前に契約社員制度を導入したが、労働組合との交渉で、採用
3年後には希望者全員が正社員に採用されている。
  昨年の秋闘では、「正社員・契約社員の賃金体系と労働条件の統一を目指す」
ことで労使が合意した。これは契約社員制度の廃止につながる。
  さらに今春闘の一時金交渉では、前年実績に正社員のベア相当分を上積みさ
せた。つまり正規社員と契約社員の格差を縮小させた。
  「労働条件は必ず低い水準に並んでいく。契約社員が多数になれば、労働条
件は契約社員の方にそろえられる。契約社員の組織化は正社員にとっても死活
問題なのだ」という視点で、労組が取り組んだ成果だという。
  このように、正規労働者と非正規労働者の処遇格差は、決していい成果を生
み出さないということが、経営者の側からも言われ始めている。
  そのときに、使用者のヘゲモニーで、使用者の秩序維持政策の一環として格
差是正をさせるのか、労働組合が均等待遇=「同一労働同一賃金」の要求を掲
げ、仲間作りと連動して労使間協議を行い、心身ともに働きやすい職場環境作
りとして取り組むかで、結果は大きく違ってくる。
  そのような取り組みの中からもう一度、労働組合の団結と「決定権」を強め、
会社への提案などをおこなう労働組合の再生を、勝ち取っていかなければなら
ない。
(7/24:いしだ・けい)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【お知らせ】07年8・9月合併号をお送りします。選挙総括に思いの他時間
がかかったため遅れました。7月号は休刊とさせていただきました。次号は10
月号として来月に発行したいと思います。
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                ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
【月刊ニュースレター:メール版】イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第51号(通巻175号)      2007年9月13日発行
 発行所:MELT
    ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
         Eメールアドレス   melt-ks@jn3.so-net.ne.jp
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