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今、時代は大きな転換期にあると思います。この時代の性格と、今後わたしたちに何が問われているかを、世界や日本の主な出来事の分析を通じて考えます。

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2007/06/25

インターナショナル50

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
                  ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
【月刊ニュースレター:メール版】 イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                 ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第50号(通巻174号)      2007年6月25日発行
 発行所:MELT
     ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
          Eメールアドレス   melt-ks@jn3.so-net.ne.jp
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
わたしたちはいま、大きな時代の転換点に生きているのではないでしょうか?
だから今とは、人間の自立と自律や民衆の自治という新しい民主主義のあり方
と、旧い代行民主主義の葛藤の時代でもあるのでしょう。 
 次々と起きるいろいろな事件や社会現象の分析をとおして、そんな問題を考
えてみたい人たちのためのメールマガジンです。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
今号の内容:
1:私たちの時代とは(日本):【安倍内閣支持率の急落】
               参院選の様相かえる具体的な争点の浮上
      −社保庁長官に天下った「薬害エイズ」官僚の責任を問え−
2:運動と組織のありかた(労働組合):非正規雇用の拡大と労働運動【下】
               「人の尊厳を大切にする労働」へ
             −社会的責任と投資としての職業訓練−
3:私たちの時代とは(世界):【フランス大統領選挙】
             「パリの5月」を非難した右派の勝利
       −代行主義を越える、労働者の大衆自治の復権を−
4:夏季一時金からのカンパを呼びかけます         
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1:【安倍内閣支持率の急落】

               参院選の様相かえる具体的な争点の浮上

      −社保庁長官に天下った「薬害エイズ」官僚の責任を問え−

▼暗転した世論調査

 6月4日朝、首相官邸と自民党に衝撃が走ったに違いない。この日の朝日新聞
朝刊が、6月2日、3日に行った世論調査で、安倍内閣の支持率が発足以来最低の
30%になったと報じたからである。しかも前日の6月3日朝にも、東京新聞が、
共同通信が行った世論調査(同1日、2日)で安倍内閣の支持率が35.8%に急落、
これまた内閣発足以来最低になったと報じていたからである。
 それは、下降しつづけてきた安倍内閣の支持率が、統一地方選挙の前半戦(
4月8日投票)直後には下げ止まりを見せ、4月中旬の新聞各社の世論調査では一
斉に支持率が上昇し、4月22日投票の参院補選を1勝1敗で切り抜けてからは、統
一地方選の退潮にもかかわらず「強気」を見せるようになった自民党に、冷水
を浴びせるものだった。
 なによりも安倍内閣の支持率が一転して急落したことは、「『旧い』自民党
支持基盤の衰退」を補う、「『理念型総裁の支持率』に依拠した集票機能」(
本紙173号『退潮つづく自民党はなぜ「強気」なのか』)を模索してきた自民党
にとって、「新しい選挙戦術」の危機であると同時に参院選敗北の予感に他な
らないからである。
                          *
 昨年9月の首相就任直後、小泉政権下で険悪化していた日中・日韓関係を打開
する首脳会談を相次いで実現し、70%に届こうかという高い支持率で好スター
トを切った安倍政権だが、以降の支持率は「郵政選挙造反組」の復党を認めた
頃から下降の一途をたどり、今年3月31日と4月1日の朝日新聞による世論調査で
は、不支持が支持を6%も上回る「危険水域」に達した。
 その危機感が、参院選の争点に「改憲」を掲げたり、改憲手続きを定めた「
国民投票法案」を強引に成立させるなど、靖国参拝問題の曖昧戦術などで薄ら
いだ「戦後レジュームからの脱却」といった、いわゆる安倍カラーを押し出し
て党内タカ派のタガを締め直し、支持率の低迷に歯止めをかけようとする動き
を加速した。
 前述した参院補選の「勝利」と統一地方選挙後の支持率上昇は、こうした安
倍カラーの押し出しが功奏したと言われてきたが、今回の支持率の急落は、独
自色なるもので回復したかに見えた安倍人気が、実は争点が観念的で具体性に
欠ける「平和時」の現象に過ぎないことを明らかにした。
 なぜなら、すでに周知のことではあるが、安倍内閣の支持率の急落は、5000
万件にもおよぶ「宙に浮いた年金記録」の存在が明らかになり、さらには納付
記録の「不在」を理由に年金を支給されない被害者が存在するという、生活に
密着した具体的争点の浮上を契機にしていたからである。
 これに追い打ちをかけたのが、政治資金疑惑で追及されていた松岡農水相の
自殺であった。農水省管轄下にある「緑資源機構」の官製談合事件をめぐって、
松岡大臣の地元・熊本で6人が逮捕され、これに追い詰められたかのように死を
選んだ松岡農水相の事件は、疑惑解明と彼の更迭を拒みつづけてきた安倍首相
の対応に強い不信感を抱かせ、政治資金の透明化という、これまた具体的な争
点を浮上させたからである。

▼政党支持率と参院選への影響

 こうした人々の意識は、前述の2つの世論調査にも現れている。
 年金に関する安倍内閣の取り組みについて、共同通信の調査では「評価しな
い」が52.5%で「評価する」の38.6%を上回った。朝日新聞の調査では、1年以
内に記録を点検するといった政府の対応を、「適切だ」とする回答は49%で「
適切でない」の38%を上回っが、同じ調査でも、現在の政府の対応では年金が
正しく支給されない恐れがあるという野党の主張については、「その通り」が
62%に達し、衆院で強行採決された年金関連法案の審議についても、「十分で
はなかった」の78%が、「十分だった」と回答した7%を大きく上回っている。
 また自殺した松岡大臣をかばいつづけたことについても、共同通信の調査で
は、安倍首相が任命責任を「果たしていない」が69.5%と、「果たしている」
の19.9%を大きく上回り、朝日新聞の調査でも、松岡大臣の政治資金疑惑に対
する安倍首相の対応を「適切ではなかった」が69%で、「適切だった」の14%
を大きく上回った。
 総じて「政治とカネ」問題での安倍内閣の対応について、朝日新聞では具体
的な質問項目は無かったが、共同通信の調査では、この問題に対する安倍首相
の取り組みについて、「評価できない」は71.8%、「評価できる」は17%であ
った。
                                *
 こうした世論調査の結果は、公示を1カ月後に控えた参議院選挙に影響を与
えずにはおかないだろう。
 もっとも、内閣の支持率が急落したとは言え、世論調査に現れた支持政党率
や投票する候補者では自民党と民主党との差は依然として大きく、与党VS野党
は僅差であることも確認しておくべきだろう。
 たしかに、調査時点で参議院選が実施された場合の投票先について、共同通
信の調査では民主党が28.8%と自民党の26.5%を越え、「民主党中心の政権を
望む」も36.6%と、自民党中心の政権を望む35.7%を僅かながら上回ったし、
朝日新聞の調査でも、参院選で民主党など野党が多数を占めてほしいが49%と、
自民党など与党の多数を望む28%を大きく上回ってはいる。
 だが政党別支持率を見ると、共同通信の調査では自民党31.5%に対して民主
党は22.2%であり、自民・公明の与党支持率は36.5%(公明5.0%)で、野党の
合計支持率27.7%(民主以外は共産3.1%、社民1.3%、国民新党0.6%、新党日
本0.5%)を上回っており、朝日の調査でも自民28%、公明2%で与党合計は30
%、野党合計は民主17%、共産2%、社民1%で20%と、依然として自民・公明
連立与党が優勢である。
 また朝日の調査で、「仮にいま投票するとしたら?」の質問には、比例区で
は自民・公明両党が26%(自民24%、公明2%)なのに対して、民主、共産、社
民の合計は27%(民主23%、共産3%、社民1%)とやや優勢だが、選挙区での
投票先は自公の合計が30%(自民27%、公明3%)で、民主、共産、社民の合計
29%(民主24%、共産3%、社民2%)をやや上回ってもいる。
 もちろん、ようやく上向きに転じた安倍内閣の「人気」が、デタラメな年金
記録問題と松岡大臣の自殺によって陰りが生じたのは明らかだし、「支持政党
なし」と答えた無党派層が、共同通信の調査で35.5%、朝日の調査でも43%を
占める以上、この「第1党」たる無党派層の動向が参院選の行方を大きく左右
することは疑いない。
 こうして参院選は、連立与党と野党勢力とが、鎬(しのぎ)を削る接戦の様
相を呈し始めたと言うことはできても、小泉−安倍とつづいた自民党の「新た
な選挙戦術」=「『理念型総裁の支持率』に依拠した」劇場型選挙に終止符を
打つ現実的可能性が決定的になったとまでは言えないだろう。

▼天下りした「薬害エイズ」官僚

 ところで、「『旧い』自民党支持基盤の衰退」を補う、「『理念型総裁の支
持率』に依拠した集票機能」を模索する自民党の「新たな選挙戦術」は、必ず
しも政治理念や政策によって支持政党を選択する選挙と同じではないことは、
本紙前号でも指摘した通りである。それは所詮、マスメディアの〃扇動〃がつ
くり出す「人気投票」のレベルを越えるものではなく、些細な事件を契機に、
いつでも豹変する可能性も秘めている。
 つまり参院選で自公連立与党を過半数割れに追い込み、安倍内閣を窮地に陥
らせるためには、内閣支持率急落の契機となった具体的争点=大量の不明年金
記録を放置してきた社会保険庁(以下:社保庁)を管轄する厚生労働省、正確
には国民生活に直接かかわる年金や衛生・薬事行政を管轄する旧厚生省という
国家官僚機構の、腐敗と堕落とを徹底的に暴き出す必要がある。それは同時に、
「改革」を掲げた小泉政権とこれを引き継いだ安倍政権が、「行政のムダ」を
声高に非難しながら、官僚機構の不作為を何一つ変えることができなかった現
実を、事実をもって明らかにすることでもある。
                          *
 実は、不明な年金記録問題に関して、厚生省の天下りキャリア官僚の無責任
ぶりを象徴する事実が、マスメディアではほとんど報じられていない。
 それは年金記録の大半が電算化された1985年、各都道府県の年金担当者宛に、
原本である手書き台帳の破棄が通知されていた事実であり、これを命じた当時
の社保庁長官は、厚生省薬務局長時代に、「薬害エイズ」問題でその不作為を
厳しく批判された人物であるという事実である。
 不明年金記録の大半が、70年代後半から始まった電算化の過程で生じた入力
ミスと見られているが、原本となる台帳が保管されていれば、時間と手間はか
かるとしても、再照合と訂正も可能だったろう。
 ところが厚生省のキャリア官僚・正木馨が社保庁長官に天下りした直後の85
年9月、この原本となる手書き台帳の破棄が、全国に通知されたのである。こ
うして「宙に浮いた年金記録」は、照合と訂正がまったく不可能になってしま
ったのだ。
 そしてこの正木馨こそは、刑事事件にまで発展した「薬害エイズ」事件で厳
しく批判された厚生省薬務局長(当時)として、血友病患者団体による「HIV感
染の危険のない加熱製剤の早期供給」の要望に背を向け、薬害エイズの拡大を
招いた非加熱製剤の輸入継続を容認した張本人に他ならない。
 そればかりではない。正木の前任長官である持永和見・元自民党衆院議員も、
同じ薬務局長時代、輸入非加熱製剤の供給元として刑事責任を問われた製薬会
社・旧ミドリ十字との「密接な関係」を指摘され、非加熱製剤の危険性を知り
ながら放置したのではないかと批判を受けた人物なのだ。
 要するに、人々の退職後の貴重な生活資金となる年金の記録を破棄した責任
を問われるべき社保庁長官は、厚生省の天下りキャリア官僚と言うだけでなく、
「薬害エイズ」という、厚生省の不作為によって多くの被害者が不条理な死を
強制された事件で、重大な責任を問われてしかるべき官僚たちなのだ。彼らキ
ャリア官僚たちが、「薬害エイズ」事件の責任も問われずに「華麗な天下り人
生」を謳歌してきたとすれば、ここにこそC型肝炎の感染拡大やインフルエン
ザ薬「タミフル」の異常行動被害を放置するなど、繰り返される薬害の本質的
な原因がある言って過言ではないだろう。
 そして、こうした官僚機構の不作為を事実上黙認し、それによって政治権力
を保持してきた戦後日本の保守勢力と官僚機構の癒着、すなわち戦後日本の「
政官癒着」の果てに、今回の不明な年金記録という大問題が起きたのは明らか
である。それは結局、小泉と安倍の「改革」路線が、この政官癒着にメスを入
れはしなかったことを、雄弁に物語っているだけである。
 そう!改めて言うが、戦前から引き継がれた日本の国家官僚機構の「再構築」
は、天下りの部分的禁止や口先だけの官僚批判によってではなく、徹底的した
「当事者主義」へと政治を転換することによって、つまり介護サービスは介護
を必要とする当事者の、医療システムは医療を必要とする当事者の、年金もま
た給付を必要とする当事者の要望に応える当事者主義へと、政治を転換するこ
とではじめて実現されるのである。

▼川田龍平という「当事者」

 川田龍平という、薬害エイズ訴訟で始めて名前を公表した当時19歳の原告の
少年が、参院選東京選挙区への立候補を表明したのは、昨年の暮れであった。
12年の時をへて、彼は参議院議員の被選挙権をもつ31歳の青年に成長した。
 「龍平くん」(勝手にこう呼ばせてもらうことにするが)は、選挙公約(マ
ニフェスト)に「薬害を繰り返さない監視体制をつくる」ことを掲げたが、そ
れは薬害被害を受けた当事者として政治家と官僚の癒着したシステムに立ち向
かい、不条理な薬害をこれ以上繰り返さないためのシステムづくりに果敢に、
そして本気で挑む決意を固めたことを意味していると思う。
 どれほど多くの人々が官僚機構の不作為によって被害を受けようが、その責
任を一切問われることもなく天下りするキャリア官僚たちと、これを黙認する
ことで権力の座に居座りつづけてきた自民党の、骨絡みの癒着関係にメスを入
れる「当事者たち」の闘いなしには、消えた年金記録のような問題も、そして
薬害という悲劇も、何度も繰り返されるに違いない。だから彼のマニフェスト
には、「当事者やNPOと共に法律をつくる」という一項もあるのだろう。
 その意味で彼が、「良識の府」と言われる参議院の選挙に間に合って被選挙
権を得、立候補できたことは、本当の意味で「国家から自立した」社会運動の
必要が、これまでになく大きな課題となっている「時代」を象徴するように思
えるのだ。
 だからわたしは、「龍平くん」の当選のために、微力ながらも全力を尽くし
たいと思っている。(6/10:いつき・かおる)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2:●非正規雇用の拡大と労働運動【下】

        「人の尊厳を大切にする労働」へ

       −社会的責任と投資としての職業訓練−

▼いくつかの統計資料

  景気は回復しつつあり、ベースアップも復活し、失業率が下がっていると言
われている。
 しかし、5月31日に厚生労働省が発表した『毎月勤労統計』によると、4月の
正社員やパートを合わせた常傭労働者の所定内給与は、前年同月比1.0%減の
25万969円だった。1%台の減少は、2年7カ月ぶりだという。しかし所定内給与
は減小しているが、残業代などの所定外給与は増えている。
 所定内給与の減少分を、所定外給与でカバーして生活維持をはからざるをえ
ないのが、長時間労働の原因の1つにもなっている。
 事業規模別で見ると、従業員30人以上の企業は前月比0.2%減だが、5人から
29人の企業では2.1%減である。「企業間格差」は明らかである。
 また、同期の雇用形態別労働者数は、パート労働者が前月比3.6%増の1135万
2000人、正社員や派遣社員などは0.8%増の3277万人だった。中小・零細企業で、
パート労働者は増加している。「雇用形態間格差」が言われて久しいが、その
傾向も拡大している。
 これに「男女間差別」が加わり、格差が拡大し続けているのが現在の労働者
の状況である。
 もうひとつの資料をあげる。
 『法人企業統計調査』では、いま資本金10億円以上の大企業は空前の高収益
をあげている。株主優遇政策を進め、役員報酬も増大している。しかし労働分
配率は55%で、過去30年間の平均を5%下回る歴史的な低水準になっている。
労働者の労働の成果が、労働者にではなく株主に配分されている。労働者は、
株主配当が欲しければ株を購入しなければならない。
 社員株主制度を導入している会社も増えているが、配当は株主配当収益に対
して行なわれるため、社員株主はその収益のためにますます懸命に仕事に邁進
しなければならない。社員株主制度を、社員に忠誠心を迫る手段にしている。
 そしてこのような意識を持つ労働者群のための労働法制が、ホワイトカラー
エグゼンプションである。労働基準法を基盤にしたを労働者の意識が、株主配
当をエサに経営者的に変えられようとしている。労働者の意識基盤が変えられ
ようとしている。まさしくアメリカのグローバル経済化による雇用政策の導入
である。
 これを「役職間格差」というかどうかはさておくとして、「持てる者」と「
持てない者」の差は、労働者の状況を無視してどんどん拡大している。

▼ある生産現場の実態

 2000年代になると、「リッチ」と「ミゼラブル」、「勝組」と「負組」など
と格差が客観的に語られた。その「ミゼラブル」、「負組」の底辺を「フリー
ター」、「ニート」が構成していた。
 しかし経営陣と政府は「フリーター」を、当事者の切実さとは裏腹に、雇用
の流動化を推し進める中で、雇用関係に縛られず、自由な生活スタイルを「選
んだのだ」ともてはやした。
 実態はどうであろうか。
 「請負会社の短期契約スタッフとして、毎日の行動は時間で厳しく管理され
る。
(仕事初日)眠そうな顔をした若者たちを乗せて、バスは工場へと向かって行
った。 ・・・・・(中略)
 請負会社が下請けをしている携帯電話の組み立てラインで働くことになった。
  ラインメンバーは15人。 ・・・・・(中略)
  携帯電話の頭脳にあたる部分の組み立ては高度な技術が必要なため完全に機
械化されていたが、その他の部分は手作業が中心だった。携帯電話はモデルチ
ェンジが頻繁に行なわれるため、すべての工程をいちいち機械化していてはと
ても採算が合わないからだという。・・・・・(中略)
 組み立てに限らず、通話テストや梱包などの作業も、請負会社の下で働くフ
リーターの仕事になっていた。
 メーカーはこの3年間で20%のコストダウンに成功していた。
 山端さんが携帯電話の組み立てラインで働き始めて3日目、請負会社の担当
者が急遽工場に呼び出された。・・・・・(中略)
 『私も今日の朝、現場の方から始めてくわしい事情を聞きました。もういま
の機種の仕事がなくなってしまうので、ラインを中断して、新機種のラインを
応援してもらいたい』・・・・・(中略)
 『こちらのラインの方の仕事は今日で終了になります。今日でまあ終りと、
あの、いちから出直しと言うか、またまったく新しい仕事にチャレンジするこ
とになりますけど、まあ、ご理解を頂いてですねえ・・・』・・・・・(中略)
 『もう異動しますからね』・・・・・(中略)
 その姿は生産変動のなかで働くフリーターを象徴しているようだった。」
(松宮健一著『フリーター漂流』旬報社刊)
                          *
 大量消費で景気回復をねらうIT関連企業の生産現場は、このようにして維
持されている。親会社は、労働者の大量解雇などの問題に関与することはない。
一方で末端の労働者に対しては、労働基準法が守られない契約解除がまかり通
っている。もちろんこのような生産現場の状況は、IT関連企業に限ったこと
ではない。
 消費者の欲望を刺激して商品の購入回転を早める親会社の行為が、不安定労
働者を必要とする一因となっている。

▼「再チャレンジ」の現実

  格差社会が社会問題となっている現在、「ミゼラブル」や「負組」の当事者
は、自分たちの置かれた状況は「自己責任」だけではない、「再チャレンジ」
とか「自助努力」が可能な社会的条件は確立していないと主張し始めた。「ワ
ーキングプア」が語られるようになっている。
  前回、佐藤俊樹著『不平等社会日本』(中公新書)を紹介し、「選抜社会を
うまく運営していくためには、『敗者』とされた人々が、意欲と希望と社会へ
の信頼をうしなわないようにしなければならない。・・・そこには敗者を『再
加熱』するしくみが欠かせない。」との部分を引用した。
  しかし政府の無策の中で、「努力すればナントカなる」と「再加熱」させる
こと、「再チャレンジ」の提案は虚妄でしかない。
  同じく前回紹介した本田由紀著『「ニート」というな』(光文新書)は、現
在の若者労働市場の現状分析すると非典型(非正規)雇用が拡大しているが、
離就時に非典型雇用だった労働者は、典型(正規)労働者になりにくい状況が
あると指摘する。
 そして最近さらに深刻なのは、ニート・NEET(Not in Employment, 
Education or Training)に「House」が加わっていることである。社会問題化
している「ネットカフェ難民」などである。
                           *
  しかしこのような問題に対して、政府の政策はまったく不充分としか言いよ
うがない。
 現在、資金がない労働者が職業訓練を受けるには、公的職業訓練校か、雇用
保険受給中に民間の委託訓練校に通うしかない。その期間は33カ月から1年。
しかし、いったん解雇・退職に至った事情がある労働者が、これだけの期間で
キャリアアップが充分にできるはずがない。
 ましてやフリーターや請負労働者などが、企業が雇用保険にすら加入してい
ない条件の下で解雇になった場合、雇用保険受給資格すら発生しない。
 一方、駅前には大学・大学院の社会人講座が開設され、高価な授業料にもか
かわらず、多くの労働者が通っている。「勝組」の労働者は「自己責任」で「
さらなるチャレンジ」に挑戦しようとしている。
 この「職業訓練格差」は、究極の「リッチ」と「ミゼラブル」の格差である。
  佐藤俊樹著『不平等社会日本』は、「実績主義には高い学歴の人間が多く、
・・・その父親の学歴も高い。・・・実績主義の人々も別の資産の『相続者』
なのである。」と述べているが、そのようななかで格差は拡大しているのであ
る。

▼職業訓練という「社会的投資」

 では、『格差』解消のためには、どのようなことが必要なのか。
  かつて会社は、社会的責任を含めて、新入社員の教育を行なっていた。
  しかし最近は、新卒者に対しても即戦力を要求する。会社そのものが、経営
の先行きがはっきりしない中でゆとりが失われている。このような中で、会社
のニーズに叶わない労働者は、能力不足を理由に簡単に解雇・退職勧奨される。
「社風」に適合しない、仕事に自信を持てない労働者は、適応性に欠けると判
断されて退職に至る。
  職業訓練は、期間の問題ではない。イギリスなどでの職業訓練は、まずは労
働者の現在の職能レベル、適正、適用性、自己開発などを細かく分解・分析し
ながら能力アップをはかる。
 労働者の権利と義務などの知識も習得したうえで、労働者と指導者は一緒に
なって、再就職にはどの業種・職種がふさわしいかを検討し、自信をもって再
スタートさせる。
  当然、職業訓練は、どの業種がどのような労働者を要求しているかを把握し
て方向性が定められる。そして訓練に要する期間は、33カ月や半年では少ない。
  NEETをNEED(必要)な人材に養成することが、問題解決の根本課題
である。
  かつて日本は、明治維新以来、事業体、会社の内部に訓練制度を確立し、そ
の終了生が技術力と献身性で経済成長を支えた。この歴史を忘れてはならない。
もっとも、こうした労働者が、企業内労働組合を支える基盤でもあったが・・。
  数年前まで、東京の高校では就職する卒業生に対して、労政事務所の紹介で
労働法に詳しい弁護士を招いて労働基準法等の講習会を開催して社会に送り出
した。しかし石原都政となり、学校現場も萎縮する中で、いつのまにか消えて
しまった。
  労働者が、権利と義務を自覚して働き続けるためには、最低限の知識である。
この習得をどこかで保証しなければならない。
 職業訓練は、離職・失業者に対してだけではなく、希望者に低資金で保証さ
れなければならない。そのためには、公的職業訓練校の充実がはかられなけれ
ばならないし、例えば高卒の労働者に対してでも、定時制高校などで、働きな
がらの教育・職業訓練の機会が与えられる必要がある。
 教育・訓練に対しては奨学金制度の拡充も必要である。
 また、ニート・NEETにHouseが加わっている労働者のために、住居の保証
が行なわれなければならない。労働者が安心して、安定した生活を維持するの
に必要な衣・食・住のなかで、日本では「住」はステータスや投資の手段とさ
れ、高価な売買、賃貸が当たり前のようになっている。
 しかし本来「住」は安価なもの、生活困窮者に対しては、国家が貸与するも
のでなければならない。日本でもかつては、雇用促進住宅や、部落解放同盟が
要求して実現した解放住宅などの例がある。そのような住宅・寮を復活させて
対応しなければならない。
 このようなことを実行に移すことは、無理ではない。前述の、所定内給与の
減少分を、所定外給与でカバーしている労働者や雇用形態はさておくとして、
雇用労働者の増大は、国家財源の基礎である所得税の増大をもたらしている。
さらに納税可能な労働者を養成するための職業訓練の支出は、政府としては先
行投資でもある。
 このような考えが、ヨーロッパでは雇用政策の基礎になっている。同じ捉え
方は、現在問題になっている年金問題にも当てはまる。

▼どんな運動をつくるのか

 前々回に述べたように、経営者と政府は、使用者にとって使い勝手がいいよ
うに、労働法制の改正を行ってきた。労働者の権利は奪われ、労働者が分断支
配されている。
  労働者の働きづらさが増している。それは状態は違うが、「勝組み」も「負
組み」も、正規も非正規も、生産性向上システムに組み込まれて、そうなって
いる。
  労働者の権利は会社内だけで、部署だけで守られるものではない。そこでは
自分たちの状況を標準ととらえ、社会的、法律的問題では目くらましに合って
いることが多い。そして社内組合は、往々にしてもうひとつの管理支配装置に
なっている。
  前々回述べたように、どのような働き方をしていても安泰ということはない
し、それぞれの立場で権利や生命までが奪われている。そのような中で、労働
者の権利の視点から、あらためて自分たちの働き方を検証しなければならない。
  歴史的に検証するなら、1944年のILOの「フィラデルフィア宣言」は、
「労働力は商品ではない」と、労働者の尊厳を宣言した。置かれている状況を
相互に理解しながら、「人の尊厳を大切にする労働」=ディーセント・ワーク
を共同で要求する原点がここにある。
 グローバルがすすむなかで、「富の分配・再分配」が 地球規模、地域間、
1国内、労働者間で広がり、格差は複合的である。成果主義賃金制度に見られ
るように、絶対的人件費の削減は進行している。人権、生きる権利が否定され
ている。このようななかで、もう一度労働者・生活者の観点から問題を捉え直
さなければならない。
  「フィラデルフィア宣言」は、賃金のダンピングが戦争を招いたという教訓
にもとづいていた。格差の拡大は、様々な衝突を招請するのだ。
  人権、生きる権利にたいする緊急かつ最低限の生活権の要求として、最低賃
金の大幅アップをとおして、格差の停止、生活権の回復を社会的運動として構
築していかなければならない。
(6/20:いしだ・けい)
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3:【フランス大統領選挙】

        「パリの5月」を非難した右派の勝利

      −代行主義を越える、労働者の大衆自治の復権を−

▼検証されない選挙結果

 4月22日の第1回投票で、31.18%を獲得して1位になった民衆運動連合(UMP
=右派)のニコラ・サルコジ候補と、25.87%を獲得して2位となった社会党の
セゴレーヌ・ロワイヤル候補による決戦投票は、5月6日に投票が行われ、
53.06%(1898万3408票)を獲得したサルコジ候補が、フランス第5共和制の第
6代大統領に当選した。
 2期12年つづいたシラク大統領の保守派から政権の奪還をめざした元環境相
・ロワイヤル候補は、決戦投票では46.94%(1679万0611票)の得票にとどまり、
社会党による政権奪還はならなかった。
                           *
 今回のフランス大統領選挙は、イラク戦争をめぐる対米関係の悪化や、05年
5月の国民投票で否決された「EU憲法」の成否など、国際政治に大きな影響
を与えるフランス外交の今後を焦点に、日本でも大きく取り上げられたが、右
派の勝因や左派の敗因を探るような報道は多くない。
 というよりも、「大きな政府との決別」を訴え、「働けばより稼げる社会」
を唱たサルコジの勝利を、グローバリズムの支持やアメリカとの関係改善への
期待から歓迎する論調と、右翼・国民戦線(FN)のお株を奪う、強硬な「移民
排斥」の主張に危惧を抱く批判的論調とに二分され、この選挙結果にフランス
社会の何が投影されているかは、ほとんど論じられなかった。
 しかもサルコジ新大統領は、5月18日に発足させた新内閣人事で、中道派ば
かりか、必ずしもロワイヤル支持で結束できなかった社会党からも閣僚を抜擢
し、15人の閣僚中7人の女性を指名して史上初の「男女平等政権」を実現して
みせるなど、選挙戦での「右翼的言動」から軌道修正をはじめているようにさ
え見える。
 それは、選挙戦での言動だけでは、この選挙の本当の争点が明らかにならな
いことを、改めて示している。

▼68年「5月革命」の清算

 歴史的に見ればフランスは、共和主義をかかげる「保守王国」であり、第二
次大戦後の第5共和制で、社会党のミッテランが大統領だった1981年から95年
の一時期が、むしろ例外的であった。そしてまたミッテラン大統領は、1968年
の「パリの5月」を担った世代が大量に社会党に流入したことで誕生したこと
も、よく知られている。
 ところで今回の選挙戦でサルコジ陣営は、この68年「5月革命」の清算を掲
げていた。具体的には、社会党のイニシアチブで達成された社会保障などの福
祉政策、とりわけ週35時間労働制や最低賃金制などの労働法制を、高い失業率
や個人所得低下の元凶として攻撃したのである。
 それは決戦投票を前にした5月2日、サルコジとロワイヤル両候補によるテ
レビ討論でも、最大の争点であった。
 公務員の大幅削減を主張するサルコジ候補は、「(公務員の削減で)女性警
官が襲われ、学校が荒れ、病院は悲鳴を上げている」と非難するロワイヤル候
補に、以下のように反論した。「人手不足は(世界でも最短レベルの)法定労
働週35時間が原因」だとし、「時短で雇用は創出できない。個人所得は伸びず、
税収も増えない。働くほど稼げる制度に変えるべきだ」と。
 つまりサルコジ陣営のキャンペーンの核心は、68年5月革命の成果である労
働規制を清算し、「働けばより稼げる社会」に変えると言うことだったのであ
る。
 それは、グローバリゼーションの先駆けだった北米自由貿易圏(NAFTA)が、
アメリカの労働者を低賃金の中南米労働者との「最底辺に向けた競争」に直面
させたように、あるいは労働基準法の改悪を契機に、日本の労働者がアジア諸
国の低賃金労働者との競争に駆り立てられたように、フランスの労働者を、東
欧やアラブの労働者との賃金ダンピング競争に駆り立てる政策である。
 つまり大統領選挙でのサルコジの勝利は、戦後ヨーロッパの社民主義の中心
を担ってきたドイツ社民党の敗北につづいて、フランス社会党も手痛い敗北を
喫し、グローバリゼーションを推進する勢力が、ヨーロッパ連合(EU)の枢軸
たるドイツとフランスで台頭しつつあることを示したのだ。
 もちろん、サルコジとロワイヤルの得票差は219万票(6.1%)と、依然とし
て強い抵抗力も存在しており、白票と無効票も182万票(4.2%)あり、サルコ
ジが圧倒的に支持されたとまでは言えない。
 にもかかわらず、前回の大統領選挙で躍進した右翼・国民戦線(FN)の票を
吸収した右派大統領の登場は、ヨーロッパ社民主義が、戦後の経済的成長を基
盤にして築き上げてきた「福祉国家」モデルが、その経済的基盤を失って限界
を露呈しはじめている現実を示したと言えるだろう。
 なによりも、戦後に継承されたフランスのエリート主義と権威主義に打撃を
与え、労働者大衆の政治参加を促進した、その意味では「進歩的闘争」と評価
されてきた68年「パリの5月」が、大統領選挙において公然と非難され清算の
対象とされる事態は、フランスの左翼を含めた左派全体の歴史的退潮を象徴し
ているのである。

▼フランス左派の歴史的衰退

 こうした左派全体の歴史的衰退は、フランス共産党の凋落と、革命的共産主
義者同盟(LCR=第四インターナショナル・フランス支部)を含む、左翼とエコ
ロジー諸潮流の分裂と停滞に端的に現れている。
 第二次大戦中、ドイツ占領下にあったフランスでレジスタンス(抵抗運動)
の主軸を担ったフランス共産党は、70年代までは25%前後の支持を集める、ヨ
ーロッパ共産党の「優等生」であった。
 その共産党は今回の大統領選挙でも、選挙資金の払い戻しが受けられる5%
を回復できなかったばかりか、前回2002年選挙の3.37%も下回る1.93%(70万
7268票)と、2%を切る惨敗を喫した。しかもこの凋落は、「失業や治安の悪
化に悩む産業地帯では、犯罪対策や移民排斥を説く右翼・国民戦線(NF)に支
持者が続々と転向する」(4月19日:朝日)と報じられたように、支持基盤の
歴史的な崩壊を伴っているのである。
 もっとも、共産党に代わる左翼政党の台頭があれば、それはフランス左派の
新しい可能性を示すことにはなるだろう。
 だが今回の選挙で、左翼諸派の中では1位となったLCRも、得票数では28
万票ほど上積みして149万8581票を獲得したが、投票率が上昇した(71.6%→
83.77%)分、得票率では前回の4.25%を下回る4.08%という結果に終わって
いる。
 こうした左翼諸潮流の敗北の原因は、諸勢力の〃分裂状態〃と候補者の乱立
にもあると思われる。というのも前回選挙では、「労働者の闘争=LO」(5.72
%)、「緑の党」(5.25%)、そして前述したフランス共産党とLCRの合計得
票率は18.59%もあり、社会党・ジョスパン候補の16.18%も、決戦投票に進出
してヨーロッパ中を驚かせた右翼・国民戦線・ルペン党首の16.86%をも上回っ
ていた。ところが今回は、この4つの勢力に、無所属で立候補した農民運動家
・ボベ候補の1.32%を加えても、合計得票率は10.23%へと減少しているのだ。
 中でもLOと緑の党は、それぞれ1.33%、1.57%と得票率を激減させたが、
それは前回選挙で、ルペンが17%の得票で決選投票に進出した事態を深刻にと
らえた人々の多くが、左翼潮流ではなく、社会党に票を集中した結果と考えら
れる。
 こうしてフランスの左翼諸潮流は、68年5月革命のエネルギーを取り込むこ
とで一世を風靡したフランス的社民主義、すなわちミッテラン大統領を擁した
フランス社会党の歴史的限界を見据えて、グローバリゼーションに対抗する〃
左翼戦線の再構築〃を真剣に模索しなければならない、大きなな転機を迎えつ
つあると言えよう。

▼「パリの5月」−何を継承するのか

 1968年の「パリの5月」は、学生街・カルチェラタンでの学生たちの街頭闘
争に呼応して、国営企業・ルノー自動車工場の青年労働者が大衆的ストライキ
に決起し、ヨーロッパを震撼させる「革命」の様相を呈した歴史的事件であっ
た。
 いま、この「パリの5月」が右派によって非難されているのは、この大衆闘
争が掲げた多くの要求の一部だけが、しかも中途半端に制度化された結果であ
ろう。
 なぜなら、当時の学生と青年労働者が掲げた要求は、ドゴール大統領(当時)
に代表される、第二次大戦中にイギリスに亡命していたフランスのエリート官
僚たち(軍人もまた武装した官僚に他ならない)の権威主義的支配に抗して、
労働者の大衆自治を対置する性格を帯びていたからである。
 アメリカ資本主義の圧倒的な労働生産性を実現した「テーラーシステム」が
導入されたルノー工場の青年労働者は、この最新システムに適応できない旧い
エリートの無能を越えて、労働者自身による直接民主主義、すなわち「自己決
定に基づく大衆自治」を要求したのは明らかである。
 だが、そうしたラディカル(本質的)な要求は、フランス社会党によっては
実現されなかった。ヨーロッパの伝統的な社民主義は、代議制民主主義に基礎
をおく代行主義、つまりエリート政治家による政治的代行を越えることはなか
ったからである。
 例えば「週35時間労働」つまり時短は、本来はワークシェアリング(WS=決
まった仕事量の分かち合い)と組み合わせることで、より多くの雇用の確保を
目的とする。だがWSが義務化されない労働時間の短縮は、それが可能な企業
に働く労働者の「特権」に容易に転化するし、WSもまた労働者の大衆自治が
なければ、エリートによる恣意的な再分配に陥る以外にはない。
 そしてこれが、右派が「週35時間労働」を攻撃する口実になっているのだ。
 しかもフランスの左翼諸勢力は、革命的前衛党の組織原理とされる民主集中
制にも、大衆自治を阻害する代行主義の危険が付きまとっていることに留意し
なければ、新たなフランス左派の可能性を自ら切り開くことはできないだろう。
 改めて言うまでもなく革命的前衛党の思想は、少数精鋭つまり「革命的エリ
ート」が労働者大衆を指導する、機動戦のための組織論だからである。
 こうして、フランス〃左翼戦線の再構築〃は、サルコジがいみじくも明らか
にしたように、グローバリゼーションに対峙する思想的再構築をともなうこと
になる。
 それは、68年「パリの5月」がはらんでいた「自己決定にもとづく労働者の
大衆自治」という、ラディカルな思想の復興という性格を持つだろう。
(6/15:きうち・たかし)
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4:夏季一時金からのカンパを呼びかけます

 読者、友人のみなさん。4月の統一地方選挙と参議院補選とは、自民党とい
う「包括政党」の衰退を、改めて確認する結果になりました。
 それでも安倍政権は、「国民投票法案」を衆院与党だけで強行採決、改めて
参院選の争点に改憲を打ち出そうとしています。
 もちろん「消えた年金記録」の暴露や、松岡農水相の政治資金疑惑と自殺に
よって内閣支持率は急落し、安倍政権は窮地に立っています。しかしだからこ
そ、いわゆる重要法案を成立させようと、さらに強引な議会運営にのめり込ん
でもいます。
 これは安倍政権という、戦後生まれの閣僚が多数を占める政権の「危険性」
を示すものですが、この政権の本当の「危険性」は、改憲への固執や右翼的言
動というよりも、近代史に関する無知と、これに起因する「国際感覚の欠如」
にこそあると言うべきだろうと思います。
 そのひとつの典型が、「従軍慰安婦」問題に対するウソとごまかしです。
                           *
 アメリカ議会では、「従軍慰安婦」に対する日本政府の「公式の謝罪」を求
める決議案が上程されようとしていますが、6月14日付け「ワシントン・ポス
ト」紙に掲載された、日本の右翼的な議員や言論人63名が署名した、「慰安婦
の動員に強制は無かった」とする内容の意見広告に、不信感と不快感が広がっ
ています。ネオコンの大物・チェイニー副大統領さえ、この広告に対する不快
感を韓国の関連団体に伝えたと言います。
 これは、自民党政権の命綱でもある「良好な日米関係」に悪影響を及ぼすば
かりか、自ら国際的孤立を招いて、日本外交を危機に直面させかねない事件で
す。
 そしてこの事件は、安倍政権の「危険性」との対決が、「皇国史観」を完全
に清算する「国民的近代史観」の再構築というイデオロギー的な課題でもある
ことを、すべての変革主体に突きつけています。
 それは戦後民主主義の弱点、つまり「日本だけ」の平和を願い、アジアへの
加害に目を閉ざしてきた「平和主義」の限界を越えて、世界中の貧困に援助の
手をさしのべ、あらゆる戦乱の抑止と停止のために尽力する、「日本人」とし
ての新しい国際的存在価値の創造を、近代史の多面的実像の解明を含めて、す
べての左派・革新勢力の協働によって推進する必要を明らかにしています。
                         *
 05年末、『戦後左翼はなぜ解体したのか』を刊行したわたしたちは、この出
版を契機にして、党派・潮流を越えた多様な人々との真摯な討論を積み重ねて
きましたが、こうした作業をさらに広げより有意義な「討論の場」として発展
させるために、読者、友人のみなさんが、夏季一時金からカンパを寄せられる
ように訴えます。
        ****【カンパの送り先】****
          ●郵便振替:00180−0−355270 メルト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【お知らせ】07年6月号をお送りします。次号は7・8月合併号として8月
はじめに発行したいと思います。
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                ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
【月刊ニュースレター:メール版】イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第50号(通巻174号)      2007年6月25日発行
 発行所:MELT
    ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
         Eメールアドレス   melt-ks@jn3.so-net.ne.jp
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