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今、時代は大きな転換期にあると思います。この時代の性格と、今後わたしたちに何が問われているかを、世界や日本の主な出来事の分析を通じて考えます。

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2007/04/11

インターナショナル48

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
                  ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
【月刊ニュースレター:メール版】 イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                 ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第48号(通巻172号)      2007年4月11日発行
 発行所:MELT
     ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
          Eメールアドレス   melt-ks@jn3.so-net.ne.jp
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わたしたちはいま、大きな時代の転換点に生きているのではないでしょうか?
だから今とは、人間の自立と自律や民衆の自治という新しい民主主義のあり方
と、旧い代行民主主義の葛藤の時代でもあるのでしょう。 
 次々と起きるいろいろな事件や社会現象の分析をとおして、そんな問題を考
えてみたい人たちのためのメールマガジンです。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
今号の内容:
1:私たちの時代とは(世界):【「和諧社会」と中国全人代】
          始まった成長戦略の大転換
       −「福祉国家」への挑戦が直面する課題−
2:運動と組織のありかた(労働組合):
【非正規雇用の拡大と労働運動【上】】
          労働法制規制緩和の進展
        −20年前に始まった処遇差別化の流れ−
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1:【「和諧社会」と中国全人代】

           始まった成長戦略の大転換

        −「福祉国家」への挑戦が直面する課題−

▼「和諧」を鮮明にした全人代

 3月5日から16日まで開催された中国の第10期全国人民代表大会(全人代)は、
最終日の16日午前、07年度の経済成長目標を8%程度に設定した政府活動報告な
どを可決して閉会した。
 今年の全人代では、10年越しの議論を経て私有財産の不可侵を明記した物権
法や、外資に対する優遇税制を廃止する企業所得税法が提案・可決されたが、
2月末に世界同時株安の契機となった上海市場の株価暴落の不安にも影響されて、
日本ではこれらが重要な焦点として報じられてきた。
 たしかに物権法は、04年の憲法改正で私有財産の保護が明記されたとは言え、
なお「私有財産の不可侵」を保障するに不十分な現状を補完する法律であり、
だからまた私的所有を廃した社会主義を掲げる中国で「なぜ私有財産の保護法
が必要なのか」をめぐって、90年代半ばから議論がつづていきた懸案ではあっ
た。今回の法案も02年以降、全人代常務委員会で7回もの審議と修正を経て今回
の全人代でようやく成立したのだが、それでも物権法の成立自身は、「憲法上
の権利」を保証する具体的な立法措置という以上の意味はないだろう。
 結局04年の共産党大会で私営企業家=資本家の入党を容認した時から、私有
財産の不可侵を保障する立法処置は、いずれにしろ不可避だったからである。
 同様に外資に対する優遇税制の廃止も、外資側に強い反発がある訳ではなく、
対中投資を鈍化させる可能性も極めて低い。そうした意味では、中国の経済と
社会を激変させるような処置ではない。
 では今次全人代の焦点は、何だったのだろうか。それは中国の経済と社会に
広範に、そして確実に影響を与えると言う意味で、「和諧社会」の建設が前面
に押し出されたことにある。
 急激な経済的膨張にともない、中国社会が直面する様々な歪みに対処しよう
とする「和諧」すなわち「調和のとれた」社会建設が戦略目標として鮮明にな
ったことは同時に、胡錦濤・温家宝体制という、理工系テクノクラートを中心
とした「近代的で洗練された」国家官僚たちが、江沢民に代表されたいわゆる
「革命第3世代」に代わって、党と政府における主導権を確立しつつあること
を象徴してもいるからである。
 だがもちろん、物権法の成立や外資優遇税制の廃止が、胡錦濤・温家宝体制
が掲げる和諧と無関係な訳でもない。そこには、経済の量的拡大をひたすら追
求し、その牽引車となる外国資本の対中直接投資を呼び込みつづける経済構造
の限界を見すえて、その「量から質へ」の転換をを推進しようとするねらいが
込められている。
 以下、和諧という戦略目標の意味するところと、これを掲げる「近代的で洗
練された」中国国家官僚指導部が直面しつつある課題について考えてみたい。

▼成長戦略の一大転換

 今回の全人代で焦点となった和諧社会のグランドデザインは、昨年公表され
た「第11次5カ年計画」である。
 1953年以来、社会主義経済の根幹として策定されてきた経済計画だが、「11.5」
と略称される今回の計画は「規画」と名づけられ、目標数値の達成に重点が置
かれる経済計画というよりも、市場経済下のガイドラインであることが強調さ
れている。
 さらに「11.5」は、必達目標とされる数値が明示された「約束性」項目と、
同じ数値目標でもガイドラインとしての性格が強い「予期性」項目とに区分け
され、「約束性」項目のいずれもが、省エネなど環境対策と年金や医療保険な
どセーフティーネット構築に関する内容である一方、国内総生産(GDP)の成
長率などは「予期性」へとトーンダウンしいるのが最大の特徴である。
 その「11.
5」は、いまブレークダウンされて具体化されている最中だが、例えば2006年
から2010年の5年間の必達目標つまり約束性として、「GDP一単位当たりのエネ
ルギー消費量20%削減」「工業生産増加額一単位当たりの水使用量30%削減」
「主要汚染物の排出量10%削減」など省エネ・環境対策が並び、さらに「都市
部の養老保険(年金)カバー人口を1億7400万人から2億2300万人へ(年率5.1%
増)」「農村人口の医療保険カバー率を23.5%から80%以上に」など、セーフ
ティーネット拡充政策が並んでいる。
 そして他方、GDPの成長率7.5%増や都市化率4%増などは、達成目標と言う
よりは経済動向の予測や見通しといった性格が強い予期性とされているのであ
る。
 明らかに「11.5」は、成長一辺倒の経済政策からの転換を意図した「規画」
であり、しかも省エネや環境に関して数値を設定した目標化は、最終的には温
家宝首相の決断で決まったと言う。
 ところで約束性項目である省エネ・環境対策は、もちろん鉱工業の急激な発
展が中国各地で引き起こした大気や河川の汚染など、深刻な公害への対策であ
る。だが同時にそれには、工業生産の急膨張にともなって急増した原油輸入な
ど、国際的懸念が強まっている問題を緩和するために、石油などのエネルギー
消費を抑制し効率化を図る、「産業構造の高度化」へと経済を誘導しようとす
る意図も込められている。
 現に「11.5」のブレークダウンにともなって、中央政府は、地方政府と党の
幹部の評価基準であった「担当地域のGDP成長率」を見直し、環境保護・省エネ
の進捗度を評価項目に加えている。これは単なる評価基準の変更という以上に、
GDP成長率を追い求める地方幹部が「国有」の農地や企業用地を強制的に接収し、
そこに外資を呼び込むといったビジネスモデルからの転換を促進せずにはおか
ないだろうからである。
 つまり全人代で成立した物権法も、国営企業を凌駕しつつある私企業や個人
の私有財産の保護と共に、地方政府による外資誘致のための「土地の安売り」
に歯止めを掛ける意図を含んでいると考えられるのであり、それは昨年末、工
業用地払い下げの最低価格を中央政府が設定し、地方政府の独断による外資誘
致の「安売り合戦」を規制しはじめたこととも符号している。
 外資系企業と国内企業の税率を一本化する外資優遇税制の段階的廃止もまた、
外資の誘致に過度に依存する、これまでのビジネスモデルの転換を促進する政
策という側面を持つと考えられるのだ。
 かくして、胡錦濤・温家宝体制が目指す和諧社会は、中国国内で急速に広が
った公害や経済的格差を是正し、社会の不安定化を回避する上で必要な対策と
いうだけでなく、「大量の安価な労働力」を武器に、労働集約型産業を外国か
ら誘致する成長戦略を抜本的に見直し、加工輸出産業に大きく依存する経済産
業構造の一大転換を図ろうとする、きわめて野心的な挑戦であると言っても過
言ではないだろう。
 だがもちろん、こうした大転換は容易ではない。何よりも現実の中国は、経
済規模の巨大さで世界経済に大きな影響を与える存在である一方で、国民一人
当たりの総生産と所得とはなお発展途上国の水準であることを、当の政府自身
が強調しなければならない矛盾を抱えているからである。

▼都市化と消費市場の拡大

 「量から質へ」の大転換を進めようとする中国の基本国策は「四つの化」、
すなわち工業化、情報化、都市化そして国際化として打ち出されている。
 工業化と情報化は、前述のような労働集約型産業から高付加価値型産業への
転換や、省エネ技術をはじめとする先端技術の導入を含む「産業構造の高度化」
の追求である。そして国際化は、胡錦濤国家主席による活発な外交が象徴する
ように、蓄積された巨大な生産力が要求する原材料の調達先と、新たな輸出先
を確保しよとする対外戦略であり、これを実現しよとする外交も「和諧」、つ
まり世界貿易機構(WTO)などを通じた国際協調が掲げられている。
 もっとも国際化については、米中関係やアジア経済圏の展望など、論じなけ
ればならない課題も多いが、それは本稿のテーマではないので別の機会にゆず
りたい。
 そして本稿のテーマである成長戦略の大転換という観点からすれば、最も大
きな課題は「都市化」である。
                           *
 いま中国では、年間1500万人もの規模で農村部から都市へと人口が移動する
都市化が進行中である。「11.5」でも「農村から都市への移転労働力」は、予
期性としてさえ5年間で4500万人とされている。
 しかも少し前までは、都市に流入する労働力の大半は出稼ぎであり、いずれ
は農村に帰る「農工」だったのに対して、今や沿岸部の都市に流入する若年労
働者の多くは、都市に定住して働く傾向を強めており、それが農村人口の受け
皿となる都市化を急がせる圧力にもなっている。
 もちろん5年間で4500万人もの農村人口の受け皿としては、北京、上海、広
州の3大都市圏だけでは全く不十分である。今でさえこれら都市圏の生活イン
フラ整備は、流入人口に追いついていないのが現実であり、これ以上の急激な
人口移動は、都市のスラム化を招くだろうからである。
 こうして中国政府は、「11.5」を補完する都市化促進のために、「三海・三
陸」という経済開放の新ビジョン、すなわち1)北京、天津を中心とした環渤
海地区開発、2)上海を中心とする長江デルタ開発、3)広州を中心とする珠
江デルタ開発の「三海」と、1)中国東北地方におけるロシア、北朝鮮、韓国
そして日本との経済協力の拡大、2)ASEAN(東南アジア諸国連合)との自由
貿易圏設立による中国西南部開発、3)ロシア、ウズベキスタン、カザフスタ
ン、タジキスタンなど、中央アジアの「上海協力機構」加盟諸国と隣接する中
国西部地区開発の「三陸」で通商開放をすすめる6地域の開発構想を打ち出し、
受け皿の拡大を図ろうとしている。
 だがこうした中国国内の事情とは別に、ここ数年、中国に進出する多国籍企
業の大きな関心は、巨大な消費市場としての中国に向けられはじめている。と
同時に、輸出に依存してきた中国国内産業も、国内市場向け出荷比率を引き上
げはじめている。
 もちろん「13億人の巨大市場」は、地域間と階層間の格差の大きさを考えれ
ば絵空事にすぎない。それでも2015年までには、沿岸部を中心に9000万人に達
するだろうと予測されている、年収1万ドルから4万ドルのアッパーミドル層の
台頭は、サービス産業の発展をともなった新たな消費市場の拡大を期待させる
に十分な規模である。
 例えば昨年、クレジットカード大手のマスターカードが中国のアッパーミド
ル層を対象に生活スタイルの調査を行っているが、それによれば年収が2万ドル
を越えると頻繁に海外旅行に出かけ、2万4000ドルを超えるとゴルフを始め、
2万8000ドルを超えると輸入車を購入するという(『週刊東洋経済』2月3日号)。
こうした消費性向と人口規模は、それ自身として、総人口1億2000万人の日本
の消費市場にも匹敵する。
 つまり「都市化」は、都市部そのものを増やして移動人口の受け皿を拡大す
ることとあわせて、消費市場の拡充を中心とする都市経済の発展という2つの
ことが意図されていると言えよう。
 それは外資による設備投資と、そこで生産した工業製品の輸出を成長エンジ
ンとする現在の発展モデルから、サービス産業の拡大をともなう個人消費の増
大を牽引車とする発展モデルへの転換という、「野心的挑戦」の傍証でもあろ
う。

▼世界最大の「ニューディール」

 こうした野心的挑戦は、胡錦濤・温家宝体制を支える「近代的」国家官僚が、
自覚的に選択したものである。
 専門家委員の一員として「11.5」策定に関わった、清華大学公共管理学院の
胡鞍鋼教授は胡錦濤のブレーンと言われるが、その胡教授は、前出『週刊東洋
経済』のインタビューに以下のように答えている。
 『中国は(大規模な財政出動を伴う)世界最大の「ニューディール政策」に
取り組んでいます。われわれが目指しているニューディールは、労働人口だけ
で7億人、総人口13億人という環境で行われています。今回打ち出した計画では
都市部の養老保険のカバー人口を、1億7400万人から2億2300万人に広げたいと
思っています。この規模自体、ルーズベルト時代の米国の人口を超えているわ
けです』『1820年からの100年間、欧州から全世界に6000万人が移民しました。
年平均で60万人です。中国では過去27年間、農村から都市に年平均1480万人が
移動しました。このように大規模な都市化は中国にとっても、世界にとっても
未曾有の発展のチャンスであり、チャレンジでもあります』と。
 改めて数字を示されると、改革開放に転じて以降の中国が、驚異的なスピー
ドで変化してきたことに驚かされる。ちなみに、前述の「11.5」で、都市部養
老保険カバー率とならんで掲げられた「農村人口の医療保険カバー率を80%以
上に」する目標も、人口に換算すれば『7.5億人から8億人の農民に医療サービ
スが届くようにしたい』(胡教授)と言うことになる。
 しかも「11.5」に示された「世界最大のニューディール政策」は、沿岸部先
行の経済開発とは比較にならない中国全域の広範囲な地域を対象に、これまで
の変化を上回るスピードで「福祉国家・中国」を建設しようとするものであろ
う。
 もちろん今日の中国は、戦後資本主義が生み出した最新の金融決済システム
や、最先端技術を利用できる「後発性利益」を享受できるし、重化学工業とい
う産業構造を基盤としてではあれ、短期間でアメリカに次ぐ世界第2位の経済大
国となったソ連邦の経験から多くを学ぶこともできる。
 それでも「福祉国家・中国」の前には、なお大きな壁が立ちはだかっている。
 こう言うとすぐ、民主化など政治改革を最大の課題として指摘するのが欧米
や日本の論調だが、それは現時点ではそれほど切迫した問題とは考えられない。
というのも、「過剰投資とバブルの懸念」という中国経済最大の不安定要因の
多くは、中央集権的な経済のマクロ管理に起因するのではなく、むしろ目先の
利益を追い求める地方の政府と党の幹部たちによる「独断専行」に起因してい
るのは、前述した外資誘致と国有地の安売りで指摘したとおりだからである。
 しかも日本におけるこうした論調は、北朝鮮の「体制転換」に過大な期待を
かけるのに似て、朝鮮半島や中国大陸の政治的混乱が、日本を含む東アジア経
済に及ぼすリスクを軽視する、旧態依然たる「反共主義」ドグマに囚われてい
ると言える。
 もちろん将来的には、市場経済という物質的基盤に対応した政治改革が日程
に上らざるをえないだろう。だが「福祉国家・中国」の前に立ちはだかる現実
的課題は、経済的には内需の拡大がもたらす中国国内のインフレの進行と、こ
れにともなう為替調整圧力つまり通貨(=人民元レート)の切り上げであり、
政治的には、経済開発の総司令部たる共産党の権威が、反腐敗闘争の成否によ
っては動揺する可能性である。

▼「元」切り上げと農村経済

 中国通貨「人民元」の切り上げは、これまで「米中貿易不均衡」との関係で
語られ、貿易赤字が膨らみつづけるアメリカも、元の切り上げを迫りつづけて
きた。
 だが、為替レートの調整が貿易不均衡の是正に効果がないことは、85年のプ
ラザ合意で円の対ドルレートが大幅に切り上がっても、日米の不均衡が解消し
なかったことでも明らかである。そのうえ中国の対米貿易黒字の大半は、台湾
やアメリカの中国進出企業の加工輸出によるものなのだ。
 一昨年(05年)、在中外資企業の貿易黒字は567億ドルに達し、中国内資企業
の454億ドルを初めて上回ったが、対米黒字だけを見れば、99年以来一貫して外
資の貿易黒字が内資を凌駕してきたし、品目別で言えばPC関連機器の98〜99%
、携帯電話の93%は外資企業の輸出額が占めている。
 この実態は、PC関連機器や携帯電話に代表されるネットワーク機器の国際分
業体制が劇的に変化したことを示しているだけであり、人民元レートの上昇は、
中国に進出し、対米輸出用にネットワーク関連機器を生産しているアメリカや
台湾企業への打撃になることである。つまり米中貿易不均衡は米中両国のジレ
ンマではあっても、元切り上げの圧力の本質ではないのだ。
 むしろ重要なのは、消費財を中心とした生産価格が最新技術の導入などで低
下しつづける中で、昨年から政府が「要素市場改革」に取り組んでいること、
つまり賃金や土地といった「生産要素」の価格引き上げを進めていることであ
る。
                           *
 「11.5」は、「技術革新」や「自主ブランド育成」を掲げ、生産価格の低下
を促進する一方、一種の要素価格引き上げ政策である環境対策を盛り込んだ。
 「技術革新」によって生産価格の下落を加速する一方、政策的に要素価格を
引き上げれば、企業すなわちサプライ・サイド(=供給側)は高付加価値化や生
産性向上に取り組まざるをえなくなるが、これと平行して賃金や資産(土地)
価値を増加させれば、社会的購買力が高まるのは当然だろう。
 要するにこれは、消費を牽引車とする経済構造へと、経済・産業構造の転換
を促進する政策なのである。
 だが問題は、この先にある。というのも要素価格を政策的に引き上げて消費
を拡大し、これを牽引車に経済成長を目指す政策は、必然的に国内のインフレ
を促進するからだ。それは1960年代、池田内閣の下で「所得倍増政策」が進め
られた日本で、実際に起きたことでもある。
 もちろん内需拡大に伴うインフレは、経済的には当然の現象であり、経済的
活況の推進力でもある。だが問題は、中国国内のインフレが人民元の「内外購
買力格差」をいやおうなく拡大し、為替相場の調整圧力を高めずにはおかない
ことである。もちろん人民元レートの上昇は輸出産業には打撃だが、内需への
シフトチェンジを促進する上ではむしろ好都合だとも言える。
 しかし農業だけは、これと同列に論ずることはできない。いまなお8億人もの
人口を抱える農村部の所得増加には、まったく別のアプローチが必要であろう。
日本では米価買い取り価格を毎年引き上げ、農村所得の増加を促進したように
である。
 そもそも農業生産は、土壌や気候の影響が大きい分だけ、工業生産ほど容易
に生産性の向上を達成できはしない。その上さらに、現在の中国農村部で好況
を甘受している地域の大半は、外国の商社が持ち込んだ種子などで輸出用作物
を大量に生産し、これを商社が買い上げることで現金収入を得るという、安い
要素価格に全面的に依存する「輸出産業」地域でもあるからだ。
 つまり人民元レートの上昇は、輸出用農産物の競争力を低下させ、都市部の
輸出産業以上に、農村部に大きな打撃をもたらす可能性があるのだ。それは都
市と農村の格差をさらに拡大することでもある。
 それでも中国政府が、1月20日の緊急会議で金融市場改革と為替制度改革の実
施を決定したのは、『中国がグローバルな経済、貿易と投資に参加している』
(胡教授)以上、金融と為替の改革開放もまた避けることができないからである。
もっともこの決定は、「今後2年間に」という条件を付けて経済的激変を慎重に
回避しようとしており、先の全人代でも、農業と生活の補助金やインフラ整備
など「農村対策費」は、15.3%増の3719億元と大幅に増額された。
 それは胡錦濤・温家宝政権が、インフレがもたらす農村部への打撃を覚悟し
てでも、なお「技術革新」や「自主ブランド育成」を推進して「自前の先端産
業」を創出することで和諧を達成しようとする、強い決意を示唆している。

▼反腐敗闘争と人材の育成

 こうした成長戦略の大転換を遂行するにあたって、もうひとつの大きな懸念
材料が汚職の蔓延である。
 今回の全人代でも、昨年一年間で4万人の公務員が汚職などで立件されたとい
う最高人民法院(最高裁)と最高人民検察院(最高検)の活動報告には、17%
という大量の「批判票」が投じられた。物権法への反対・棄権が3%に過ぎなか
ったことを考えれば、その不満の大きさが判るだろう。
 だが4万人という数は、「例年並」でしかない。しかし「反腐敗闘争」を宣言
し、民衆の不満を鎮めようしてきた胡錦濤政権の取り組みにもかかわらず、汚
職が減っていないことにその深刻さがある。
 何よりも汚職の蔓延は、官僚的権威主義によって「上から」経済開発を推進
してきた共産党の権威(改革開放政策の展開とその経済的期待によって勝ち得
たそれ)を足元から掘り崩し、大きな格差と矛盾をかかえた路線転換に不可欠
な「指導部の権威」を失墜させる危険である。
 その意味で「反腐敗闘争」は重要な意味を持つが、ここでもまた民主化など
の政治改革が腐敗を無くすと言うのが、欧米や日本の論調である。政治的自由
を制限した独裁体制による経済開発は、フィリピンのマルコス政権やインドネ
シアのスハルト政権などの「開発独裁」が、汚職を蔓延させたのと同じだと言
うのである。
 こうした、経済成長を達成した中国の共産党一党独裁体制を、「アジア的開
発独裁」になぞらえる論調は、数年ほど前から中国人研究者の間にも見られる
ようになった。もっとも「開発独裁」なる用語は日本でしか使われておらず、
中国の政治経済体制は、「官僚的権威主義政体」による「開発主義」という規
定が一般的であろう。
 いずれにしても、生産力の脆弱な地域や国家において、工業化による経済的
発展を強権的に推進しようとする権威主義と開発主義の融合体は、1917年革命
後のロシアで「スターリン主義」と呼ばれた一種のボナパルチズム=権威主義
的独裁にも共通するものであり、「反共」を掲げて欧米諸国の援助や投資に期
待する手法を除けば、外観上は「開発独裁」の諸特徴を備えている。
 それでも前者、つまり中国の政治腐敗が官僚機構と公務員の汚職なのに対し、
「開発独裁」下の腐敗は、独裁者と地縁や血縁で結びついた私人たちの不正利
得と蓄財であり、同列には論じられない。と言うよりも、官僚機構に蔓延する
中国の汚職は、所得格差に対する民衆の不満が政権批判に転化する可能性を増
幅するという意味では、むしろ深刻な問題と言えるだろう。
 ところで、全人代直前に公表された温家宝首相の声明文には、「・・中国は
発展途上国である。生産力を高めること、格差是正もさることながら、国民の
資質向上、思想道徳を強化すべきである」との提言が盛り込まれていた。いう
までもなくこれは反腐敗闘争を意識した提言だが、「国民資質の向上」には、
もっと深刻な問題意識がはらまれているように思われる。
                          *
 三菱商事中国総代表補佐の小山雅久氏は、「都市と農村」「沿海と内陸」な
どの中国国内の格差もさることながら、「より本質的な格差」として「国民間
の知識、モラルなど『資質の格差』」こそが、いわゆる「中国リスク」の根源
ではないかとする、興味深いレポートを書いている。
 彼は「中央政府の官僚は、地方の公務員、企業経営者、さらには農民などに
ついて(表には出さないが)、資質の低さを嘆くし、悩ましく思っている」と
言う。さらに、「もちろん地方にも優秀で人格も優れた幹部はいるが、交流し
てみるとその知見の乏しさに気がつく。また、純朴なのかもしれないが、法的
観念が薄く人治で事を進めようとする傾向が強い。中央のエリートを除けば、
都市でも見られる問題だ」と指摘している(『週刊東洋経済』3月24日号)。
 彼の言う「資質」は、いわゆる欧米的な意味の「近代化」に必要とされる、
知識やモラルといったガバナンス(統治機能)の素養ということだが、それは
情報を含む知識格差や地域と階層間の教育格差によって、経済と政治の末端指
導部の知見やモラルが急速な経済発展に立ち遅れ、それが地方に限らず、行政
や経営の現場で無用の混乱を引き起こすリスクへの懸念である。
 こうした、中国官僚機構の危うい現実を前提に、先の温家宝首相の声明文に
盛り込まれた「国民の資質向上、思想道徳を強化」を読むなら、反腐敗闘争が、
同時に「近代的で洗練された」行政と企業の現場幹部の育成と不可分だと考え
る、中国政府の意図が滲み出ているように思えるのだ。
                           *
 中国が直面する人材育成の課題は、技術革新や外資導入などとは違って、蓄
積されたノウハウや時間を要する大事業である。それは胡錦濤政権の独力では、
極めて困難な課題と言ってもいい。
 しかし現実の世界経済が、中国の高成長とアメリカの過剰消費ぬきにバラン
スを維持できないとすれば、大きなリスク要因である中国の「資質格差」すな
わち人材難を克服することは、日本を始め、中国進出企業をかかえるすべての
諸国にとって有益であろう。つまり留学や研修を通じた中国の人材育成事業へ
の積極的支援と、前述した、新たな打撃を受けるであろう農村部への「純粋な」
経済援助とは、結局は各国の「国益」なるものにも合致すると言えるだろう。
 それは、13億人の「健康で文化的な生活」を模索する中国が直面する政治と
経済の核心問題に目を塞ぎ、一般的な「民主化」を声高に唱えるより、よほど
建設的で「攻勢的」な対応とは言えないだろうか。
                   (4/7:きうち・たかし)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2: 非正規雇用の拡大と労働運動【上】

           労働法制規制緩和の進展

        −20年前に始まった処遇差別化の流れ−

▼松下電器の早期退職者募集

 今年3月10日、新聞各紙は、松下電器が早期退職5000人を募集すると報道した。
 経営陣の中で松下電器は、雇用問題を牽引する位置にある。2001年に松下電
器が早期退職者1万3000人を募集すると、他社は、「雇用を大事にする松下電器
がするのなら」と真似をした。その結果、失業率が5%台に跳ね上がった。
 松下電器が雇用を大事にしていたといっても、労働者がみな正規社員や直接
雇用だったわけではない。ご多分にもれず請負労働者や派遣労働者が製造現場
を支えていた。
 実は雇用問題は、正規社員の問題がクローズアップされているときに、非正
規労働者の問題が深刻化を増す。非正規労働者の問題でも、パート労働者問題
が論議されているときに、派遣労働者の処遇が悪化する。この間は、非正規労
働者の問題がクローズアップされている間に、請負労働者、個人事業主・偽装
雇用の問題が深刻化していた。フリーター、ニートの問題もある。
  そして今回、非正規雇用・請負労働者、個人事業主・偽装雇用の問題がクロ
ーズアップされている最中に、松下電器が早期退職者を募集した。松下電器に
「勇気」をもらって、今後は正規社員の大量早期退職募集が行なわれることも
予想される。
 これに対する労働者側からの歯止めはあるのか? 早期退職者の受け皿はど
うか? 雇用状況は、松下電器が早期退職者を募集した6年前と比べて、よくな
っていると言えるものはない。

▼転換点だった1985年

  1985年は、日本の雇用問題を語るとき、大きな転換点であった。
  この後の転換を、労働者の多数を占めていた「正規男性労働者」を軸にとら
え返すと、経営陣がどのような雇用関係を目論んでいたかがはっきりする。一
言でいうと、正規労働者からはじき出された非正規労働者が増大してきた。ま
た、女性労働者が働きにくい労働環境が作られてきた。
  85年5月17日、「男女雇用機会均等法」が成立した。男女差別禁止事項が盛り
込まれはしたが努力目標でしかなく、その一方で女性の時間外労働、休日労働
の規制が一部解除になった。女性労働者は「男性労働者と均等のチャンス」を
保証されたことになるが、現実には「男の『戦場』に均等に『出兵』させられ
た」のだった。
 同年6月11日には、「労働者派遣法」が成立した。これまで制限されていた労
働者派遣事業は、専門的な知識・技能・技術を必要とする業務に限ってだが、
民間業者が行なうことが容認された。総合職ではない専門職の人件費を低く抑
えるためのものとして、派遣労働者が広く活用された。雇用先には雇用関係が
なく、労働力の調整弁にもなる労働者群が登場した。
  そしてこの年の12月19日、労働基準法研究会が最終報告書を提出した。その
内容は、労働時間の規制緩和ということで、変形労働時間制、フレックスタイ
ム制、裁量労働制などが含まれていた。
  次ぎは1987年、労働時間の規制を緩和させる政策として、労働基準法が改正
された。裁量労働制の導入は、残業をしても割増賃金を支払わない賃金制度を
事実上合法化するものであった。
  裁量労働制などの導入は、これまでの賃金が労働時間の対価としてあったも
のを、業績に対して支払われるものに変えることを承認することで、労働基準
法の根幹を揺さぶる転換であった。このような賃金支払方法の転換は、生活時
間と睡眠時間を労働時間が大きく侵略し、労働者の人権や生活権を否定するも
のになっていった。成果主義賃金制度、現在の「ホワイトカラー・イグゼンプ
ション」の萌芽は、この頃にあった。
                            *
 85年12月19日、労働基準法研究会は、契約が個人事業主か雇用契約関係かを
判断する基準である「研究会報告書」も提出した。
  商品販売など最終段階の業務が、社会的状況に左右されることが大きい営業
や運送業について、業務上の拘束や指揮命令の対応によって雇用関係の有無を
峻別する、裏を返せば「こうすれば労働者ではない」と会社が主張できる、
「労働者性」を拒否できる「判断基準」が発表されたのである。
 一方、73年のオイルショック以降、労働の長時間化と過密化が進み、過労死
する労働者が増加してきた。そのようななかで88年4月、大阪で弁護士有志が
「過労死110番」のホットラインを開設、10月には過労死弁護団全国連絡会議を
結成した。

▼労働法制規制緩和の進展

  1985年9月22日、ドル高是正のため5カ国の大蔵大臣・中央銀行総裁が出席し
た会議で、国際的協調が合意された、いわゆる「プラザ合意」が発表された。
「プラザ合意」では、米国の経常収支赤字を解消するために、保護主義圧力に
抵抗することが不可欠であると確認された。 
  これを受けて86年4月、「国際協調のための経済構造調整研究会報告書」いわ
ゆる「前川レポート」が発表された。日本の貿易黒字に対する国際的批判への
対応策として、「外需依存型」から「内需依存型」への構造転換が提唱された。
  そして外国製品およびサービスに対する日本の国内市場の一層の開放、強力
な規制緩和措置の実施による民間活力の活用などの政策が実施されることにな
った。円高が進み、輸出産業は「円高不況」に陥った。
 これに対して、日銀が7回の公定歩合の引き下げによる金融緩和政策を行なう
と、海外投資が急増し、87年頃からは「バブル経済」になっていった。 未曾有
の、だが見せかけの好景気が続くと、労働者の危機感は消えていった。「中流
意識」が支配的となり、消費が拡大した。労働法制も、労働者の抵抗が小さい
中で「保護主義」から解放され、規制緩和に拍車がかかった。
 93年6月11日、「パートタイム労働法」が成立した。だが実際は事業所の努力
義務を規定しただけで、効果は薄いものだった。
 このような中でも96年3月、長野地裁上田支部で係争中だった「丸子警報機パ
ート賃金差別訴訟」は、労働時間が長い「にせパート労働者」に対して「正社
員の8割以下の賃金差別は違法」という判決を勝ち取った。
 また男女賃金差別訴訟においても、長い闘いのすえ勝利判決を勝ち取った。
 しかしバブル経済が崩壊すると、雇用問題は深刻になった。
                                *
  1995年、日経連は「新時代の『日本的経営』」を発表した。この内容を要約
すると、「必要なときに、必要な人を、できるだけ安い賃金で働かせて、いつ
でも首が切れる」雇用戦略をうたっていた。
 労働者を、1)「長期蓄積能力活用型グループ」(総合職正規社員)、2)
「高度専門能力活用型グループ」(一般正規職員)、3)「雇用柔軟型グルー
プ」(パート、臨時、派遣)に分けた雇用の方向づけをした。
 これらの政策は「雇用の流動化」と呼ばれたが、1から2、3に、2から3
に異動することはあっても、逆流はない一方通行の流動化である。再構築の意
味合いである「リストラクチャー」の言葉で惑わせる「リストラ」が行なわれ
たが、その実態は、年功序列賃金制度と終身雇用制度を廃止し、解雇の意味も
含んでいた。
 人件費削減を目的とする政策は、職場では「窓際族」などの「いじめ」を伴
なって進行した。
 そして同じ95年、富士通は「成果主義賃金制度」を導入した。その後それは
、多くの企業で導入されていった。
  「成果主義賃金制度」は、賃金が成果に基づいて支払われる制度だと説明さ
れるが、まず「成果」ということについての定義自体がまちまちである。
  日本の労働者は「職務」ではなく「職能」で業務を遂行しているが、「職能」
を分析・評価するのは至難の業である。「能力」はストレートに「業績」に結
びつかないし、「業績」と「成果」も違う。さらに日本の職場には、「評価」
が馴染んでいなかった。結局、成果主義賃金制度は、人件費削減政策として運
用されているのが実態である。
 労働者の「職能」における「成果」は、経験を積むほど発揮される。逆に労
働者の「能力」は一夜にして落ちることはない。つまり「成果」は短期間で下
がることはない。だから年功序列賃金制度は、実は成果主義賃金制度なのであ
る。
 その「成果」が下がるとしたら、職場環境や評価制度が変わったり、「成果」
を恣意的に「評価」した場合である。
  そのうえで年功序列賃金制度と成果主義賃金制度の違いは、成果主義賃金制
度のもとでは労働者が常に「評価」が下げられるという不安のもとで働かされ
ることであり、高給の中高年労働者が、終身雇用を期待しない低賃金の若年労
働者から疎まれる職場環境になったということである。大企業では、早期退職
優遇制度も導入された。
  「成果」といいながら実は恣意的「評価」を行い、これにもとづいた「業績」
を重視する賃金制度として、「年俸制」が導入され始めた。
  賃金決定が、労働組合の集団交渉から個人交渉に移行していった。職場では
360度ライバルが存在し、労働者の職場秩序、団結を破壊した。

▼価値観の強制的変革

 97年12月11日、労働時間法制と「労働契約法」の見直しについて審議してい
た中央労働基準審議会が、建議を行なった。そこでは裁量労働制の対象業務の
拡大を打ち出すとともに、対象労働者の範囲、賃金、評価制度等については、
事業所内に設けられる労使委員会で決めることがうたわれていた。
 労働時間とその対価としての賃金を保証する労働基準法、使用者と労働者の
関係を整理した労働組合法とは別の、会社が労働組合を無視して牽引できる
「労働法規」の内容が提案された。
  企業において、成果主義賃金制度を導入するにあたっての評価規定は就業規
則の一部であるが、現在は評価を規定する法律はなく、企業が「自主的」に制
定してきた。その結果、労働基準法では懲罰としての「減給」は月額賃金の1
割を超えてはいけないが、評価規定の「降給」には制限がないということがま
かり通ることになった(裁判判例では歯止めが掛かりつつあるが)。
  現在、「労働契約法」法案の成立は阻止されているが、労働基準法と労働組
合法に則さない、労使委員会による就業規則の制定・変更は、労働組合をない
がしろにするものである。実際に現在の労使の力関係の中では、労働基準法と
労働組合法を無視した、会社の言いなりの労働条件が強制されかねない。
                                   *
 「バブル経済」状況で労働法制の規制緩和に拍車がかかっている中でも、女
性労働者は声を挙げ続けた。
  97年6月11日、男女雇用均等法と労働基準法の改正された。均等法では男女差
別禁止の強化がはかられたが、引き換えに女性労働者に対する時間外労働、休
日労働、深夜労働の規制などが撤廃された。時間外労働、転勤などを了承して
男性なみに働く女性労働者については、男性と同じ処遇を受けるチャンスを与
えるというものである。
  97年から、98年9月25日に成立するまで、労働基準法反対闘争が全国で展開さ
れた。この時に問題になったのは、裁量労働時間制が11の専門業務からホワイ
トカラー全体に拡大されたことである。
 反対闘争が大きく展開されたことの成果としては当初の目論見から外れた使
い勝手が悪い裁量労働時間制となった。
 99年6月30日、改正した労働者派遣法と職業安定法の改正法が成立した。その
結果、派遣業務が港湾運送などを除いて原則自由化になった。
 そして、ホワイトカラーイグゼンプションの導入が提案された。
 このような労働法制の流れを見るなら、ホワイトカラーイグゼンプションの
導入は、単に過労死が増大するという問題だけではなく、労働者の働き方(働か
され方)、労働者の価値観の強制的変革が行なわれようとしている。自社株を持
ち企業年金制度を保証された労働者にとっては、労働時間に関係なく労働して
会社の成果を上げないと賃金も配当も年金も保証されないという危機感を持た
せられる。労働者の側が自ら、がむしゃらに働く労働者群を作り出す。
  労働基準法が労働契約法に取って代わられ、労働組合の役割が減少し、労働
者個人が分断されて存在することになりかねない。
  このような、労働者の団結を破壊し、心身も破壊するホワイトカラーイグゼ
ンプションは絶対に葬り去らなければならない。
                           *
  賃金と労働時間の規制緩和は、20年間に堰を切ったように進行した。しかし
労働者の保護規定の整備は遅々として進んでいない。正規社員と同じ業務をこ
なしながら、パート労働者、派遣労働者らの賃金差別は縮まっていない。請負
労働者・個人事業主は最低賃金すら保障されない。女性労働者が、その流れに
投げ込まれた。競争に対応できない労働者は排除され、取り残された。
 95年に発表された「新時代の『日本的経営』」のグループ化は、さらに細分
化している。2の「高度専門能力活用型グループ」には非正規労働者が侵入し、
3の「雇用柔軟型グループ」の末端には、請負労働者・個人事業主が加えられ
た。
  最上層は、労働者意識を払拭し経営者意識をもった高収入の労働者、最底辺
がワーキングプアである。
 格差は確実に拡大しているが、労働者の「自助努力」で縮小するのは、不可
能なことである。【つづく】
                     (4/4:いしだ・けい)
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【お知らせ】07年4月号をお送りします。
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【月刊ニュースレター:メール版】イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル
                ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
 メール版第48号(通巻172号)      2007年4月11日発行
 発行所:MELT
    ホームページアドレス http://www014.upp.so-net.ne.jp/tor-ks/
         Eメールアドレス   melt-ks@jn3.so-net.ne.jp
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