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2005/11/08

ILO駐日事務所メールマガジン【No. 41】

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    ILO(国際労働機関)駐日事務所マガジン
     2005年11月8日号 No. 41

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■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

:::::::::::<目  次>:::::::::::::::::::::
:《1》数字で見る国際労働基準(2005年11月1日現在)::::::::::::
:《2》ILO駐日代表雑記−エンパワメント:::::::::::::::::
:《3》ILO駐日事務所お知らせ−第13回国際産業保健学会::::::::::
:《4》ILO新聞発表−繊維・衣料産業会議 ほか::::::::::::::
:《5》新刊紹介−労働法・労使関係用語辞典 ほか::::::::::::::
:《6》ILO事務局ニュース−貧困撲滅国際デー事務局長メッセージ ほか:::
:《7》トピック解説−スリランカにおけるILOの平和構築支援活動::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

□■□■□■ 数字で見る国際労働基準 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
                           (2005年11月1日現在)
◇加盟国数..178            ◇日本の批准条約数.......47
◇条約の数..185(うち撤回5、棚上げ25)◇加盟国の平均批准条約数....41
◇勧告の数..195(うち撤回36)     ◇OECD諸国の平均批准条約数.72

□■□■□■ 堀内光子ILO駐日代表雑記 □■□■□■□■□■□■□■□■□

        ★ ☆ エンパワメント ☆ ★

 この1ヶ月間は、アジアとジェンダー・女性の問題に集中していた月でした。10月
初めはマニラで、「ヨーロッパとアジアの対話」としての「女性の経済エンパワメン
ト」について、それが社会に与えるインパクトも含め−平和への貢献も入ります−議
論しました。フランスの各地では今、若者の移民労働者の暴動が起きていて、社会統
合に努力している国でも、不利な立場にある人々の極めて困難な状況が浮き彫りにさ
れていますが、このマニラの会議では、フランスの貧困地域での移民女性を対象にし
たプロジェクトとか、イスラム教徒の女性をターゲットにしたフィリピン・ミンダナ
オの事例など、極めて困難な立場に置かれた女性の経済エンパワメントも話し合われ
ました。この会議でも、仕事のもたらす効果は、本人だけでなく、家族や社会での女
性の発言権、さらには参加を促し、ひいては社会安定に貢献するということで、ディー
セント・ワークの重要性が学者の事例調査によって確認されたことは我が意を得たり
と思いました。しかし、先のフランスの例を引くまでもなく、社会的に困難なあるい
は不利な立場にある人々を社会に統合することはいかに難しいかが分かりますが、で
も、グローバル化の進行する世界において人々の生活が二極化する中で、不可欠なこ
とと言えます。
 9月の初めに中川雄一郎・明治大学教授のご指導で、イギリスのサンダーランド市
という最も貧しい地域のコミュニティ・エンパワメントというべき事例を視察する貴
重な機会がありました。その時にサンダーランド地域選出の国会議員の方とお話しを
する機会にも恵まれましたが、その方は貧富の格差拡大に対して、我々が努力すべき
ことは、底辺層の改善を図ることなのだと明言されました。サンダーランドの小学校
や様々な施設を訪れ、改めて社会的セーフティ・ネットの必要性とその効果を実感し
ました。サンダーランドのプロジェクトを立ち上げた方たちの子どもたちやコミュニ
ティ再生への熱い思いとその思いを実現した行動力に感嘆しました。(詳しくは中川
教授の「社会的企業とコミュニティの再生−イギリスの試みに学ぶ」(大月書店)を
お読み下さい。)余談ですが、21世紀は開発途上国の人口の重心が農村から都市に移っ
てきています。この意味でコミュニティ作りに取り組むことはとても重要だと思って
います。
 マニラの会議では、グローバル化で大企業が席巻し、地域の小さな企業は立ち行か
ないとの声が開発途上国の出席者から聞かれましたが、もちろんそうした競争にさら
される面がある一方で地域に根ざした、地域が必要としているサービスは、地域の人々
が提供し、それを持続させることもできる事例がかなりあることも明らかになってき
ています。
 先週末は北九州市で開催されたアジアと女性という枠組みの中で、「働く」ことに
ついてのワークショップに出席しましたが、人々が生き生きと主体的に参加し、活動
し、生活することへの環境作りを行って、人々が自ら行動することの重要性が認識さ
れました。エンパワメントはそれを作り出す環境だけでなく、人々の「行動」がなく
てはならないので、人々がcapacity(能力)をいかに向上するかが(もちろん環境整
備が必要ですが)、問われていると言えます。

□■□■□■ ILO駐日事務所お知らせ □■□■□■□■□■□■□■□■□■
◆◇第13回国際産業保健学会(宇都宮・2005年12月1〜3日)◇◆
 来る12月1〜3日に栃木県総合文化センター(宇都宮市)において、ILO等後援
で、労働衛生分野の国際研究機関である国際労働衛生委員会(ICOH)の国際産業
保健学会が初めて日本で開催されます。科学的標準として国際的に認められている
「根拠に基づく医療(EBM)」の精神に則り、根拠に基づく産業保健をメインテー
マに、世界各国より産業保健の専門家がこの分野における最新の研究成果を持ち寄り、
将来のための革新的な戦略について話し合いを行います。ILO活動推進議員連盟の
森山眞弓会長による開会挨拶も予定されています。発表の締切は過ぎていますが、当
日傍聴は可能です。詳細は事務局(獨協医科大学公衆衛生学教室 TEL: 0282-87-2133 
FAX: 0282-86-2935 E-mail: ohs2005@dokkyomed.ac.jp)へお問い合わせ下さい。
会議言語:英語。

第13回国際産業保健学会(英語)----->
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/pub/ohs2005.html

★ILO駐日事務所からのお知らせは、What's Newページをご覧下さい----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm#information
★ILO会議・行事予定----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/conf/index.htm

□■□■□■ I L O 新 聞 発 表 □■□■□■□■□■□■□■□■□
                        (10月1日〜11月4日発表分)
◆◇2005年10月11日(火)発表ILO/05/39◇◆
◆◇2005年10月27日(木)発表ILO/05/42◇◆
★MFA後の環境における繊維と衣料の公正なグローバル化の推進に関する三者構成
会議(ジュネーブ・2005年10月24〜26日)

 標記会議では、昨年完了した多国間繊維取り決め(MFA)の段階的撤廃後初めて、
繊維・衣料品の主要な生産国及び消費国の政府、労働者、使用者の代表が集い、繊維
・衣料貿易の自由化によって発生した事態を検討し、社会的に責任ある方法でこの新
たな状況に対処する統合的な戦略について話し合いました。
 会議の討議資料としてILOが準備した報告書「MFA後の環境における繊維と衣
料の公正なグローバル化の推進(Promoting fair globalization in textiles and 
clothing in a post-MFA environment・英文)」は、数十万の企業と約4,000万人
の労働者が関係し、年間総売上高3,500億ドル規模の世界の繊維・衣料産業における
最新の貿易・雇用情勢を分析し、割当制の廃止が惹起した幅広い懸念の一部は確認さ
れたものの全体像は予想より複雑になっていると結論づけています。予想通りMFA
後の最大の受益者は一見中国とインドであるように見えますが(今年1〜4月の中国
の繊維・衣料品輸出高は前年同期比18.4%増、今年1〜3月のインドの繊維輸出高は
前年同期比28%増)、詳しく見ると中国の輸出成長率は実際には月ごとに低下し、イ
ンドの既製服輸出高も24%減を示しているとされます。一方、敗者となると予測され
たアジア一部諸国の業績はそれほど悪くなく、バングラデシュでは衣料品輸出高が
2005年1月こそ前年同月より5,200万ドル減となったものの、2月には1億5,700万
ドル増と反転し、3月もわずかながら前年同月を上回っています。パキスタンの繊維
・衣料品輸出高は2005年1〜4月に記録的な水準に達し、この期間の月平均輸出高は
前年比22.1%増となっています。
 アジア諸国の好業績に比べ、欧米、アフリカは不調で、欧米諸国の繊維・衣料産業
就業者数は、例えば米国では2005年5月に前年同月比6.5%減、欧州連合25カ国では
2005年2月に同5%減と、予測通り2004年末から2005年前半にかけて低下していま
す。2005年1〜3月のアフリカ成長・機会法に基づく繊維・衣料品の対米輸出高は前
年同期比25%減となり、中南米でもアジアの競争力向上によって、最近増加したばか
りの市場占有率の縮小が見られます。
 報告書は、ILOがカンボジアで行っている支援プロジェクトや欧州連合の繊維・
衣料社会対話委員会の活動など、競争力向上に向けて各地で取られている斬新な手法
も紹介しています。
 会議で採択された結論は、繊維・衣料産業がMFA後に直面している革命的事態へ
の取り組みにおいてILOが主導的役割を演じ、この業界における社会的対応策の世
界規模での調整及びMFAの段階的撤廃に対する協調対応の一環としての技能開発プ
ロジェクトその他の措置に支援を提供することを求めています。業界の調整策に対す
るILOの支援は、1)管理職を含む関連部門労働者の技能開発及び労働者の就業能
力向上に向けた大きな動きに対する支援、2)より質が高く、より最新の雇用関連情
報及び中核的国際労働基準遵守に係わる詳しい情報を含む国際的な情報分析サービス
の新たな開発、3)ILOの中核的労働基準の遵守・実施の用意がある輸出国から要
望があればその遵守・是正努力を支援すること、4)繊維・衣料品の需給の流れにお
ける生産側と購買側の政府・労使団体、関連する国際機関その他の団体同士の対話の
ための社会的責任国際フォーラムの開設といった4つの主な要素を含むことが提案さ
れています。
 また、先進国に対しては供給国における国際労働基準遵守努力を支援し、途上国・
後発途上国に技術支援を提供すること、そして社会的責任のある従業員リストラ策の
実施を促進すること、途上国に対しては競争力の改善努力とディーセント・ワークの
推進を結びつけた戦略の採用、特にMFA後の社会・経済環境を監視する政労使三者
構成の全国的機関の設置、後発途上国に対しては繊維・衣料産業のみならず、それ以
外の労働者についても技能及び就業能力向上に向けた訓練・再訓練計画の開発を呼び
かけ、ILOに対してはそれらの努力を支援するよう求めました。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/39.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/42.htm
会議概要・討議資料・議長集約(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/sectors/textile/iloact.htm
ソマビアILO事務局長の開会挨拶(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/dgo/speeches/somavia/2005/mfa.pdf
カンボジアのより良い工場プロジェクト(英語)----->
http://www.betterfactories.org/resources.aspx

 ※PDFファイルをご覧になるためにはAdobe Readerが必要です。
  お持ちでない方は、こちらからダウンロードしてください。
  http://www.adobe.co.jp/products/acrobat/readstep2.html

◆◇2005年10月11日(火)発表ILO/05/40◇◆
◆◇2005年10月17日(月)発表ILO/05/41◇◆
★南アジア地震

 去る10月8日にパキスタン北部で発生し、パキスタン、アフガニスタン、インドに
被害を及ぼした大地震に対し、ソマビアILO事務局長は10月11日に、ILOの心か
らの弔意と連帯を示すと共に、ILOでは各国当局と協力し、地域の復旧、生活の再
建、希望の回復に向け、被災家族と地域社会への支援における自らの役割を果たす用
意があることを表明した声明を発表しました。
 ILOはまた、10月17日に、この大地震の結果、北西辺境州(NWFP)とパキス
タン側カシミールを含むパキスタンでは、少なくとも110万人の雇用が失われた可能
性があるとする初期影響評価結果を発表しました。加えて、被災地はパキスタンでも
最も貧しい地域にあり、地震発生時における推計約240万人の総就業人口中200万人以
上の労働者とその家族が1日1人当たり2ドル未満の貧困線以下の暮らしをしていた
とし、短期的な雇用の喪失でも既に極端な貧困を発生させている危険性を指摘してい
ます。
 地震前の被災地における就業者1人当たりの平均扶養家族数は2人以上であったた
め、110万人の失業はさらに240万人(その半数以上が15歳未満と推計されます)の生
計に影響を与えていることを意味するとして、現在仕事をなくした被災住民の推計40
%以上が従事していた農村経済の再生が緊急課題であるとしています。また、都市部
のほとんどの住民が従事していたインフォーマル経済も破壊されたため、この再生に
向けた最低限の資産の再建も緊急の支援が必要としています。
 被災地住民のニーズに対応するため、ILOは現在進行中の救援努力後に実施が必
要となる復旧・再建計画に、新規雇用その他の収入を生む機会の創出を目指した計画
を組み込むことを提言しています。国連が10月11日に発表した緊急資金要請に含まれ
るILOの提案プロジェクトには、◇再建努力の過程で生じる雇用に関する情報と関
連する短期的な訓練を提供する雇用支援サービス、◇農村部及び都市部における小規
模事業や所得創出資産の再建に向けた金融・制度面のサポート、◇緊急に必要な基礎
サービスの供給に向け、海外からの送金を含む外部からの金融支援を導入する経路の
整備、◇以上の活動を確保できるような制度メカニズムの構築といった要素が含まれ
ています。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/40.htm
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/41.htm
初期影響評価報告(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/employment/strat/download/getpak.pdf
ILOフォトギャラリーのパキスタン地震特集ページ(英語)----->
http://www.ilo.org/dyn/media/mediasearch.special?p_lang=en

◆◇2005年11月3日(木)発表ILO/05/43◇◆
★ILO事務局長、第4回米州サミットへ出席

 11月4〜5日にマルデルプラタ(アルゼンチン)で開かれた第4回米州サミットに
は、米州34カ国の指導者が出席し、「貧困と闘い、民主的統治を強化するための雇用
創出」をテーマに話し合いを行いました。ILOからもソマビア事務局長が出席しま
した。ILOが10月に発表した「労働概観2005年版(Panorama laboral 2005・英/
西語)」は、中南米の都市失業率は2005年半ばに9.6%となり、2003年の11.1%より
低下したとしています。ソマビア事務局長は3日に、「この数字には元気づけられる
が、直面している課題は依然巨大」とし、より多くのより良質の雇用の創出の推進に
向けマルデルプラタで行われる約束が果たされるようILOは諸国を支援していくと
語りました。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/43.htm
Panorama laboral 2005(英・西語)----->
http://www.oit.org.pe/portal/noticias.php?docCodigo=399

◆◇2005年11月3日(木)発表ILO/05/44◇◆
★第294回ILO理事会(ジュネーブ・2005年11月3〜18日)

 第294回ILO理事会で予定されている主な審議事項は以下の通りです。
●ミャンマー
 ミャンマーの強制労働問題に関しては、最新の状況と今後の措置について話し合い
が行われます。今年6月の総会で、総会の基準適用委員会はILO加盟国政労使に対
し、海外直接投資や国有・軍有企業との関係を含み、ミャンマーとの関係を早急に見
直し、11月の理事会までに報告するよう求めました。理事会の報告書は、ミャンマー
に駐在するILO連絡員が今年8、9月に受けた殺害脅迫や反ILOメディア・キャ
ンペーン及び半公式の民衆集会といった最近の動きは連絡員の職務遂行能力を「著し
く阻害した」としています。報告書はまた、10月18〜19日のILOとの会合で、ミャ
ンマー側がILO脱退の意思を表明したことに触れています。ミャンマーは他の選択
肢も検討するため、決定の通知が遅れているそうで、ILOはまだ正式な脱退通知を
受け取っていません。
●グローバル化
 150カ国以上の国家元首・政府首脳が出席し、今年9月に開かれた国連2005年世界
サミットでは「公正なグローバル化を強く支持し、完全雇用、生産的な雇用、全ての
人へのディーセント・ワークといった諸目標を、ミレニアム開発目標達成努力の一部
とする決意」が全会一致で表明されました。理事会のグローバル化の社会的側面作業
部会では、グローバル化政策とディーセント・ワークについて論じるフォーラムの設
置提案などILOがこの表明を具体的にフォローアップしていく方法が検討されます。
作業部会ではこの他に、現在の国際金融制度が企業と労働者に与えている影響、そし
て成長、まともな雇用、投資に向け、国際金融機関を含む国際機関同士の政策整合が
図られるようILOが行うべき提案についても検討される予定です。
●若者の雇用
 今年の総会で採択された若者の就業に関する決議のフォローアップとして、この分
野におけるILOの今後の活動が審議されます。
●多国籍企業
 ILOは「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」の効果について、定
期的なモニタリングを行っていますが、この第8次調査報告が提出され、多国籍企業
小委員会で討議されます。宣言は、雇用、訓練、労働・生活条件、労使関係の分野に
おける原則を定め、多国籍企業が経済及び社会の進歩に貢献していくことを奨励する
ものです。
 この他に結社の自由委員会の最新の報告書も審議されます。

新聞発表本文(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/2005/44.htm
第294回ILO理事会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/gb/docs/gb294/index.htm
多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/pdf/multinational_d.pdf

★ILO新聞発表の日本語概要----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/new/index.htm
★ILO新聞発表(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/pr/index.htm

□■□■□■ 新 刊 紹 介 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
◆◇「労働法・労使関係用語辞典(欧州連合に関する特別の言及も含む)
   Glossary on labour law and industrial relations
   (with special reference to the European Union)」◇◆
   G. Arrigo, G. Casale編 英語 2005年刊 277pp. 5,000円

 本書はこの種のものとしては初めて、グローバル化の社会的側面に関する国際的な
議論の視点から労働法と労使関係の分野における様々な用語について、現行の定義の
みならず、それを取り巻く動きも包括的に概説した用語集となっています。強制労働
の廃止、児童労働、男女賃金格差、結社の自由と団結権の保護、中核的労働基準、労
働時間、移民労働などといった国際労働基準で扱われている各種テーマに加え、ディー
セント・ワークや三者構成主義といったILOの用語や、生涯学習、プライバシー、
若者の雇用といった今日的なトピック、経済協力開発機構(OECD)多国籍企業ガ
イドラインや欧州労使協議会など、ILO以外の機関の活動に関するものも取り上げ
られています。特に欧州連合の指令、決議、規則については、国際労働基準と相互参
照できるように構成されています。
 グローバル化による国際競争の熾烈化、そしてその結果としての世界的規模での生
産拠点移転に対する懸念は、国内労使関係制度と既存の雇用関連基準の国際的な調和
に向けた流れが、市場の力のみによって推進され、しばしば後ろ向きに進んでいく事
態を招いています。本書冒頭には、「労働法及び労使関係の原則と権利:危機、安定
化、現時点の問題点」と題し、1998年の「仕事における基本的原則及び権利に関する
ILO宣言」に帰結した所の、発展度合いにかかわらず全ての国に適用されるべき最
低限の基本的な権利の探求に向けた国際社会の動きと宣言の内容をまとめた論文も含
まれています。

書籍等購入方法----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/index.htm
駐日事務所資料室新着図書一覧(2005年9月分)----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/new.htm

★オンライン無料出版物★
◆◇「メコンの課題双書
   The Mekong challenge series」◇◆
   子どもと女性の人身取引をなくすためのILOメコン小地域プロジェクト発行
   英語・一部タイ語 2005年3冊既刊

 ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)が、日英政府の資金協力を受けて2000
年からメコン河流域5カ国(カンボジア、中国雲南省、ラオス、タイ、ベトナム)で
実施している技術協力プロジェクトの成果物であるこのシリーズは、子どもと若い女
性という最も弱い集団の人身取引問題とその予防策について扱っています。既に以下
の3冊が発表されています。

◎「Employment and protection of migrant workers in Thailand: National 
laws/practices versus international labour standards?(タイにおける移民
労働者の雇用と保護:国内法・慣行と国際労働基準・英/タイ語・156pp.)」
 本書は、タイの移民労働者に対する国内法・慣行と国際労働基準の適用状況を検討
し、政府と非政府部門の双方に向け、人権に配慮した総合的なアプローチを基礎とし
た門戸開放政策の提案から移民労働者が経済や国家にもたらす利点についての国民教
育に至る12の提言を行っています。資料として、タイが近隣諸国と結んでいる雇用協
力と人身取引に関する覚書も掲載されています。

◎「Human trafficking: Redefining demand(人身取引:需要再定義・英語・
84pp.)」
 人身取引予防策を探求する活動の一環として、メコン小地域プロジェクトでは労働
搾取に対する需要の削減に注目しています。問題の理解を図るため、ILOでは漁業
・水産加工業、中小製造業、家事手伝い、農業の4部門を対象に、タイにおける若い
女性と子どもの強制労働及び人身取引の原因、労働条件、傾向に関する調査研究を実
施していますが、本書は予備調査から得られた需要についての研究成果をまとめ、労
働搾取の観点から見た需要とは何かについて提示し、取り組みのための提言を行って
います。

◎「Analysis report of the baseline survey for the TICW Project Phase II 
in Yunnan Province(雲南省における子どもと女性の人身取引をなくすためのILO
メコン小地域プロジェクト第2期基礎調査の分析報告書・英語・106pp.)」
 初め中国語で刊行された本書は、中国雲南省における国内移民及び人身取引被害者
の出身地と受入地で、7,000名以上にその体験について面談調査した結果をまとめた
ものです。報告書印刷版には、ビデオと報告書PDF版を含むCD−ROMも添付さ
れています。

ILOメコン小地域プロジェクト(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/region/asro/bangkok/child/trafficking/index.htm

□■□■□■ I L O 事 務 局 ニ ュ ー ス □■□■□■□■□■□
                    (ILOウェブサイト新着情報等より)
◆◇事務局長◇◆
★貧困撲滅のための国際デー(10月17日)メッセージ
 2005年の貧困撲滅のための国際デーに際し、ソマビアILO事務局長は、世界の貧
困削減に向けた歩みが遅いとして、2015年までに世界の貧困人口半減をめざして講じ
られている経済・社会政策の再検討・再構築を呼びかけるメッセージを発表しました。
事務局長はさらに貧困撲滅のカギはこの課題を人々の目を通して見ることにあるとし
た上で、今後10年間に世界の労働力の伸びに対処するだけでも毎年約4,000万の雇用
を創出する必要があるとしました。そして、今年9月の国連世界サミットにおいて最
も高い政治的レベルで雇用創出に向けた世界的な決意が表明されたことに言及し、I
LOでは良質の雇用と競争力のある企業を創出する、一貫性があり、バランスの取れ
た健全な社会・経済政策に向け協力し合うことを必須と考えていると述べています。

貧困撲滅のための国際デー事務局長メッセージ(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/dgo/speeches/somavia/2005/povertyday.pdf

◆◇南部アフリカ準地域総局◇◆
★ウェブサイト刷新
 ハラレ(ジンバブエ)に位置し、ボツワナ、モザンビーク、南アフリカなどアフリ
カ南部9カ国に対する技術協力・助言サービス活動を行っている南部アフリカ準地域
総局のウェブサイトが新しくなりました。事務所紹介、雇用・社会対話・社会保障な
ど分野別の各種活動概要、担当諸国の情報、域内諸国におけるHIV/エイズ、貧困
削減、小規模金融など幅広いテーマを扱った資料や広報誌、労働力人口、失業率、賃
金、消費者物価指数など域内諸国の各種統計データを含むデータベースなど地域内の
様々な情報が提供されています。

南部アフリカ準地域総局(英語)----->
http://www.ilo.org/harare

◆◇社会対話総局◇◆
★世界教員の日(10月5日)共同メッセージ
 2005年の世界教員の日に際し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、ILO、国連
開発計画(UNDP)、国連児童基金(ユニセフ)の4機関のトップが連名で共同メッ
セージを発表しました。メッセージは、しばしば非常に困難な環境の中で、子どもの
能力と学習意欲の開発といった人間の基礎を築くことによって、持続可能な開発に多
大な貢献をしている教員たちの日頃の努力を讃え、教員自身が携わる教育上の決定に
教員の声が反映されるよう呼びかけています。

世界教員の日(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/sector/conf/wtd/index.htm

◆◇渉外・会議・文書サービス局◇◆
★第94回ILO(海事)総会
 ILOは6月の定時総会と別に、海事問題のみを扱う特別総会をほぼ10年おきに開
催しています。2006年2月にジュネーブで開かれる予定の第94回ILO(海事)総会
では、現在存在する海事関係のほとんどすべてのILO条約・勧告に置き換わる包括
的な条約の採択に向けた話し合いが行われます。総会の日程、議題紹介、討議資料等
を掲載したホームページが開設されました。

第94回ILO(海事)総会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/ilc/ilc94/index.htm

◆◇コミュニケーション・広報局◇◆
 ILOの活動に関わる広報記事が随時掲載されています。最新の記事には次のよう
なものがあります。
★広報記事:インドネシア津波被災地の学力向上支援
 2004年12月に発生したインド洋沖の地震と津波はインドネシアのナングル・アチェ
・ダルサラム州の中高生に長期的な影響を与えています。校舎の破壊や教員不足によっ
教育機会を奪われてしまった結果、約2万人の中学生が卒業時の全国試験に失敗し
ました。不合格者急増の事態に対処するため、ILOとナングル・アチェ・ダルサラ
ム州教育局はバンダアチェ、アチェベサル、アチェジャヤの50の学校の生徒を対象と
した特別訓練プログラムを開発しました。ILO児童労働撤廃国際計画(IPEC)
の支援する中学生補習プログラムは不合格率の高い学校を優先対象校として、第2次
全国試験に再挑戦する約1,000人の生徒の学習を支援しています。同時に、訓練機関
と協力し、数学、英語、インドネシア語の教員に再訓練を施し、教員自身の手による
補習プログラムの開発を支援しています。これは中学生の学校中退予防に向けた短期
プログラムですが、ILOと教育局は第2次試験の不合格率も高かった場合、より長
期的なプログラムの開発も考えています。

広報記事:インドネシア津波被災地の学力向上支援(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/aceh.htm
インドネシア事務所(英語)----->
http://www.ilo.org/jakarta

★広報記事:ブルガリア企業のフォーマル化支援
 2001年に制定されたブルガリアの社会保障法は、中小企業や自営業者の社会保険料
支払いを支援する保険料払込センターの設置について定めています。ILO使用者活
動局は、ブルガリア最大の使用者団体であるブルガリア産業協会(BIA)の各支部
が会員向けに税金や社会保険料などの支払いを支援する賃金台帳管理サービスを各地
に設置することを支援しています。BIAは、現在その活動がインフォーマルである
企業にもサービスを提供するなどして、インフォーマル企業のフォーマル化の動きを
促進しています。

広報記事:ブルガリア企業のフォーマル化支援(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/bulgaria.htm

★広報記事:健やかな企業−より安全で健康な職場に向けて
 精神衛生は知識基盤型経済のアキレス腱であり、鬱病は2020年までに先進国におけ
る障害の原因の第2位になると予想されます。欧州連合(EU)は職場におけるスト
レスの物質的コストは毎年約200億ユーロ(約2.8兆円)に上ると推計しています。I
LOでは、毎年世界のGDPの4%が業務関連の事故や疾病で失われていると推計し
ています。欧州では2000年に安全面に関する企業間の情報交換・経験共有を推進する
「健やかな企業(EfH)」ネットワークが設置されました。2005年10月24〜26日に
デュッセルドルフ(ドイツ)で開かれた「公正なグローバル化と安全な職場:持続可
能な開発のための政策、戦略、慣行」と題するILOの会議では、労働安全衛生の経
済学に加え、EfHの経験など仕事の世界における労働安全衛生上の課題に取り組む
包括的な戦略について話し合いが行われました。例えば、EfHの会員であるドイツ
のエネルギー部門大手RWEライン=ルール社は、サークル活動や訓練を通じた労働
条件改善活動に加え、労働強度の増大や従業員のリストラ不安に応えるため、企業文
化の推進に向けた「偉大なる風土」活動を開始し、職場における回避可能なストレス
要因についての労使対話、芝居や映像を通じた従業員及びその家族に対するストレス
対処策の伝達、職場における福利厚生向上に向けた従業員の具体的な提案活動の奨励
などを行っています。

広報記事:健やかな企業(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/ent_health.htm

★広報記事:貧困撲滅における労働組合の役割
 2005年の貧困撲滅のための国際デー(10月17日)に開幕した、グローバル経済と貧
困との戦いにおける労働組合の役割に関するILOの国際シンポジウム(ジュネーブ
・2005年10月17〜21日)には、世界60カ国の労働組合代表が参加し、労働組合の貧困
対策を評価し、活動を強化する方法について話し合いました。シンポジウムでは、貧
しい人々が発言力を得、自分たち自身の戦略を開発し、生活・労働条件を改善する唯
一の道は団体活動であるとの信念を基礎に各地で展開されている様々な活動が紹介さ
れました。例えば、旧ソ連邦共和国の中で最も貧しいタジキスタンの移民労働者の85
%がロシアを目指し、その9割が不法労働者として働いていますが、両国の建設労働
者組合の間で締結された協定をもとに、ILOはロシアの組合によるタジキスタン人
労働者の組織化努力を支援しています。組合は労働者が確実に賃金の支払いを受けら
れるよう支援し、法的扶助を提供しています。シンポジウムでは貧困との闘いは労働
組合の存在意義であるとの理念が再確認されました。

広報記事:貧困撲滅における労働組合の役割(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/poverty_moscow.htm
グローバル経済と貧困との戦いにおける労働組合の役割国際シンポジウム(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/dialogue/actrav/genact/poverty/index.htm#Symposium

★広報記事:人の動きの管理
 去る10月31日〜11月2日にジュネーブのILO本部では、2006年3月の理事会に
提出されるILOの労働力移動多国間枠組みの草案を検討する専門家会合が開かれま
した。労働力移動は10月3日から始まった欧州連合(EU)とトルコ政府の間の話し
合いにおける主要検討事項の一つでもあります。トルコのEU加盟は人口7,200万人
のこの国から無制限の労働力移動が発生するとの懸念を抱く人々がある一方、その若
い労働力は欧州経済を活性化し、急速な高齢化の影響を相殺するとの意見もあります。
ILOトルコ事務所の所長と国際労働力移動部の専門職員がコミュニケーション・広
報局のインタビューに答えて、トルコのEU加盟が他の欧州諸国の失業率を高めるの
ではないかとの懸念やトルコ人移民労働者の受入国におけるより良い統合を確保する
方法、ILOの多国間枠組みが人の移動の管理において演じることのできる役割など
について見解を述べています。

広報記事:人の動きの管理(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/features/05/turkey_migration.htm
労働力移動多国間枠組み案(英・仏・西語)----->
http://www.ilo.org/public/english/protection/migrant/new/index.htm

□■□■□■ ト ピ ッ ク 解 説 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□
 ILOの活動内容、仕事の世界に関係するトピックの解説を行っていきます。
 第41回は、今年の国連デー公開フォーラムで、クローディア・クーンヤルツILO
スリランカ事務所長が行った平和構築におけるILOの活動に関する発表の要旨です。

    ◆◇平和構築における暮らしの場
        (The place of livelihood in peace building)◇◆

★2005年国連デー(10月24日)
 2005年の国連デー当日、UNハウス(東京・渋谷区)において、ILOを含む21駐
日国際機関が共催で公開フォーラムを開催しました。今年は国連創立60周年、国連大
学創立30周年に当たることから、「21世紀に国連で働く−平和構築への貢献」の総合
テーマの下、午前と午後の2部構成で、午前は「30周年を迎える国連大学:21世紀に
期待される国連大学の役割」について、午後は「60周年を迎える国連:21世紀に平和
構築に取り組む国連」について、ハンス・ファン・ヒンケル国連大学学長やアントニ
オ・グテーレス国連難民高等弁務官による基調講演や国連諸機関の職員をパネリスト
とするパネルディスカッションが行われました。午後に開かれた「アジアにおける平
和構築」のパネルに参加したクローディア・クーンヤルツILOスリランカ事務所長
は以下のような発表を行いました。

★平和構築プロセスにおける「仕事」の重要性
 ILOが介入活動に関する使命と戦略の中核に据えるのは、平和構築と仕事を結び
つけること、そして最初から開発に焦点を当てることです。アナン国連事務総長も、
救援、復興、開発の三つの活動を依然として隔てている人工的な障壁が撤去されるこ
とへの希望をしばしば口にされています。
 スリランカにおける和平プロセスへの支援、そして津波対応活動からも、「生計手
段の回復と雇用の創出は早めに開始しなくてはならない」という教訓が得られました。
つまり、救済機関から開発機関にリレーのバトンを渡すようなことであってはならず、
対応活動の最初から始まる協力関係、つまり使命と活動領域がそれぞれ異なる様々な
機関同士のパートナーシップが必要なのであり、そのことを支援国・機関に理解して
いただきたいのです。
 平和構築を支える過程には、食、住、健康、教育、基盤構造、和解、経済復興など
数多くの要素が必要です。
 しかし、人々を貧困から救い出す助けになるのは生計手段と仕事であり、これが紛
争の直接的・間接的な原因となる場合が多いことはご存じの通りです。人々、特に若
者の才能を開花させ、国家開発に活用し、戦闘員以外の選択肢を与えるには雇用が必
要です。しかし、何よりも仕事は、自分に収入を得る能力があるという事実に気づか
せることによって人々に尊厳を与え、自らの力を自覚させる点で、平和を固めるセメ
ントとなります。自分の経済活動を続けるため、そして個人の希望、家族の希望、地
域社会の希望を達成できるために、仕事があれば誰もが平和を願います。
 にもかかわらず、ILOの前に常に立ちふさがっている障害は、支援国・機関や主
要関係者が平和構築において雇用面をあまり重視していないことです。

★スリランカにおける平和構築
 スリランカにおける戦災地の再建という非常に困難な活動の一端をここにご紹介し
ましょう。
 紛争による死者の数はスリランカ国内で約6万人に達しています。国内避難民は80
万人を超え、これらの人々はほとんど完全に生活扶助に頼っています。膨大な人数が
負傷し、精神的なトラウマ(心的外傷)を負っており、危機を経験したたいていの国
でそうであるように、惨状の影響を真っ先に受けているのは女性です。数千人が、そ
の多くが戦闘に従事した男性ですが、障害を負っています。福祉に依存するこういっ
た人々の意識は、尊厳と自尊心を再び取り戻すことをますます困難にし、大半が貧困
の終身刑を下されたようなものです。スリランカの軍隊は10万人以上の規模ですが、
反乱軍側の戦闘員の数も数万人に上っています。平和の展望に関する話し合いにおい
ては明らかにこの大集団を社会に再統合する必要性を十分考慮に入れる必要がありま
す。スリランカ全土における雇用面の課題は途方もなく大きく、北・東部の戦災地だ
けを対象にしたものではないものの、既に全国規模の雇用創出計画が複数進められて
います。
 島の中心部から北・東部へ移動するには骨が折れます。人々の勇気と忍耐が痛切に
感じられる一方、道路や橋といった基盤構造のみならず、貯蔵施設や商業インフラま
でが荒廃しています。この一部は戦闘が原因で、一部は放置が原因です。これだけで
も多額の投資が必要です。何千人もの男女が生産的な雇用を得ることを考える前に技
能訓練や再訓練を必要としています。大工仕事、石工、れんが敷設などの技能が非常
に求められており、技能労働者不足の現状は再建努力を遅らせる可能性さえあります。
訓練施設も指導員も研修課程も十分ではなく、20年間の内戦を経て、労働市場の監督
機関や開発関連サービス提供機関の機能は深刻な影響を受けており、迅速な進歩の展
望を妨げるものとなっています。長期的な解決のための中心的な要素の一つは地元の
資源の活用・推進である以上、特にそう言えます。
 若者や子どもの多くが戦争以外を知らず、これは就学、学習、開発の機会に影響を
与え、しばしば児童労働を引き起こしています。両親その他の家族を亡くしたり、時
には強制的に戦闘に引きずり込まれたことによって少年少女は心的外傷に苦しみ、地
雷、殺戮、その他の暴力の恐怖におびえながら暮らしています。地元経済の衰退は有
能な起業家の地域からの離脱を招き、新しい起業家の育成が必要になっています。
 2002年に調印された停戦協定は大きな変化をもたらしました。やっと希望が流れ込
み、人々は空を飛ぶミサイルの音や地雷を踏むことの恐怖以外の未来を期待すること
ができました。たぶんようやく、家と食料と学校と仕事のある普通の尊厳ある生活が
現実のものとなるのかも知れません。
 しかし、停戦協定は存在し続けているものの和平プロセスの方はなかなか進まず、
それと共に人々が生活の再建に必要な資源を得ることが難しい状態も続いています。
結果として戦争はないが、平和もない現状です。2003年に開かれたスリランカ復興開
発に関する東京会議で多額の資金供与の公約がなされたとき、和平プロセスの進展と、
対スリランカ金融支援、特に紛争被災地に対する漸増的な金融支援とが明確に結びつ
けられました。和平プロセスに何の進展も見られなかったことから、北・東部への多
額の資金供与の約束は取り消されました。
 2003〜04年に複数国・国際機関グループがまずスリランカ北・東部のニーズ評価を
行った後、和平プロセスに関連した社会・経済面の努力に対する政府の支援要請に応
える対応の一部として移行戦略を開発しました。残念ながら和平プロセスが中断され
たため、それに続く予定であった資金動員はまだ実現していません。

★スリランカにおけるILOの平和構築支援活動
 このプロセス全体において、ILOは非常に積極的なパートナーになっています。
資金基盤はまだ圧倒的に不足しているものの、ILOは戦争から平和への移行期にお
ける雇用面の大切さを十分考慮に入れることの重要性を提言することに成功し、実際、
雇用を最重要事項に押し上げることに成功しました。北・東部における介入活動の大
半は直接的な雇用の創出に重点を置いていますが、経済的側面と社会的側面といった
仕事の二つの側面を認識する権利に根ざしたディーセント・ワーク・アプローチの重
要性を強調したいと思います。ディーセント・ワーク・アプローチとは、雇用は基礎
的な社会保護、仕事上の安全、差別のない労働市場を伴い、労使に発言権が与えられ
たものでなくてはならないというアプローチです。
 この政策提言と介入活動を導く過程で、救援、復旧、和解、再建を一緒にした包括
的な対応を確保するため、ILOは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連
児童基金(ユニセフ)、国連開発計画(UNDP)などの国連諸機関と重要な協力関
係を構築しました。
 スリランカ北・東部におけるILOの介入活動と戦略をもう少し詳しく申し上げま
しょう。戦略は一言で言うと「平和のための仕事」です。この戦略は以下の六つの要
素から構成されています。

[1] 労働市場評価、経済機会の把握と緊急職業紹介所の推進
 労働市場のニーズ、経済機会、利用できる訓練施設に関する理解を得ることを目的
とした簡単な調査を行う方法について、政府その他の主要パートナーの職員に研修を
提供しています。北・東部に二つのジョブズネット・センター(職業紹介所)を設置
し、移動班での活動を開始しました。移動班は、僻地に出かけ、自営に関するものを
含み、訓練や求職に関するガイダンスを提供しています。同じような活動はインド洋
津波の被災地でも展開されています。この活動はUNDP及びユニセフと協力して進
めており、スウェーデン国際開発協力庁(SIDA)の資金協力を得ています。

[2] 再建作業における労働力基盤・機材支援方式の利用推進
 即時の雇用創出機会を構築し、地元経済発展の原動力を提供し、起業家精神を育成
するこの介入活動は、エンジニアその他の主要支援スタッフの訓練を通じた技能形成
に重点を置いています。既に労働力を基盤とする適切な技術について、20名のエンジ
ニアに訓練を提供しました。手っ取り早い現金収入を生むため、短期臨時雇用を提供
する現金獲得労働プロジェクトも実施しているほか、地域社会向けの作業発注ガイド
ライン、現金獲得労働プロジェクト・ガイドラインなどの開発を通じた技術助言によ
る支援も提供しています。このプロジェクトは英国国際開発庁(DFID)及び国連
の緊急資金要請に応えた資金協力を得ており、UNDP、世界銀行、アジア開発銀行
と協力して進めています。

[3] 開業・事業改善計画(SIYB)の活用を通じた起業家精神の育成
 ILOの教材を用いて、45の実施パートナーを通じた訓練が既に約9,500名に提供
されています。製靴産業のように、より規模の大きい企業との連携を推進し、民間部
門やUNHCRと協力して活動を進めています。

[4] 農村及び経済力強化に向けた訓練
 地域社会ベースで地元定着型の雇用機会のための短期訓練を既に2,000名の男女に
提供しています。訓練後のサポート体制も整備されています。この一部はUNDP及
びUNHCRと協力して進めており、デンマークとベルギーから資金協力を得ていま
す。

[5] 元戦闘員の社会的・経済的再統合
 政治的に微妙な状況ですが、能力構築の必要性に焦点を当てています。

[6] 児童労働撤廃国際計画(IPEC)
 元少年兵を含む戦争の被害者である子どもたち5,000名に雇用に向けた技能訓練を
提供しました。この活動は戦災児童対象の機関間計画として、ユニセフその他数多く
の機関と協力して進められており、米労働省、ノルウェー、オーストラリア、デンマー
クの資金協力を得ています。

★「平和を望むならば、正義を培え」
 最後に3点申し上げたいと思います。
 第1に、ILOでは協働によってより多くのことが達成できるよう国連の協力関係
を構築する必要性を強く感じています。それぞれの機関がその機能上の強みを基礎と
していくことが大切です。
 第2に、私たちに今ある資金ではほんの小さな影響しか与えることはできません。
ニーズはあまりにも大きく、以前行われた資金供与の公約が果たされるよう和平プロ
セスがすぐに進むことを望んでいます。
 最後に、私はスリランカやバングラデシュで多くの会議に出席し、資金拠出国・機
関も訪問しましたが、平和構築におけるILOの使命を説明するといつも驚きの目を
もって見られます。「でも、あなた方は国際的な労働組合なのではありませんか。労
働者を保護し、労働運動を支援するのが使命なのでは?」このことは私にとって非常
に衝撃的でした。この事実は、私たちがどういう機関であるのか、人々や資金拠出国
・機関に対して知らせる必要があることを痛感させました。ですから、スリランカに
おけるILOの活動の一端を皆さまと分かち合う機会を提供してくださったことに心
から感謝申し上げます。
 そうです、私たちは働く上での人権を擁護する機関です。そして、価値を基盤とす
る機関です。ILOの憲章には、社会正義は平和へとつながる道であると記されてい
ます。憲章に付属するフィラデルフィア宣言は、「一部の貧困は、全体の繁栄にとっ
て危険である」と謳っています。ILOは1969年にノーベル平和賞を受賞しています
が、この栄誉をとても誇りに思っています。したがって、私たちの使命の範囲が戦争
の被災者にも及ぶのは全く当然のことなのです。被災した男女が、平和の基礎を固め、
平和を永続させるものである生計手段を得ることができるような尊厳をもてるよう支
援することはILOの義務なのです。

ILOスリランカ事務所(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/region/asro/colombo/index.htm
クーンヤルツILOスリランカ事務所長発表資料(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/region/asro/tokyo/downloads/c2005undaypwp.pdf
2005年国連デー記念公開フォーラム----->
http://www.unu.edu/hq/japanese/unday/2005/index2005.html

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