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2009/06/17

老裏5[89]もしあなたが認知症になるなら

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  老人ホームの裏事情Part5     [NO.89] 2009/06/17

 〜学校では教えない本当の社会福祉〜

      ◆エル・ドマドール
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第89回

■もしあなたが認知症になるなら

よく老人福祉をやっているとこんな意見を聞くことがある。

「もうボケてああなるなら、いっそそうなる前にポックリ死にたい」
「認知症になるかならんかって事前にわからないのかな?」
「ボケて何にも判らんようになるのは本当に恐ろしい」

差別意識丸出しの発言もあるが、これは普通の一般の人だけの発言ではない。
同業者からもこんな発言が飛び出ることがある。いずれにしても認知症になっ
た後、自分が正気を失い人間らしさの失った振る舞いをしてしまう未来を恐れ
ているのだ。将来、自分が自分自身でなくなる恐怖心は確かに恐ろしいものが
ある。そこで今回はまた認知症について語ろう。

認知症になる人とならない人との差はどこにあるのか?

よく本などで「手先を器用に使っていると、脳が刺激されてボケにくい」「怒
りっぽいと認知症になりやすい」など言われていることがある。しかし、こん
な助言は気にしないほうがいい。ふざけたでたらめもいいところだ。現段階で
は認知症の原因についてはよく判っていないのが現実だ。アルコール中毒や脳
血管障害など個人の食生活が反映される病気を通じて、認知症になることはあ
る。しかし、個人の若いころの生活習慣や食生活、性格などと認知症の間に明
確な因果関係は未だに発見されていない。

かつて書いたように認知症とは一言で言えば「気質的疾患による脳機能の低下」
だ。一番多いのはアルツハイマー病だが、その原因もよくわかっていない。他
にも認知症の原因となる疾患でレビー小体型、ピック病も原因が不明だ。高齢
化社会の現実に直面するようになったのがここ20年ほどだが、まだまだ認知症
についてはわかっていない部分が多すぎるのだ。だからこそ人々の恐怖心を煽
りやすいのかもしれない。

認知症になる確率はどのぐらいなのかご存知だろうか?

65歳以上の高齢者の場合、3パーセントから8パーセントぐらい。調査によって
ばらつきが多く信用に欠けるが、それでも案外低いなという印象を受けるので
はないだろうか?年間の有病率は65歳以上で1〜2パーセントでしかない。しか
し、80〜84歳では8パーセントと数字が急に上がる。「ボケたらどうしよう?」
と恐怖におののく中高年は多いが、案外数字で見ると低く感じるのではないだ
ろうか。認知症になるかならないかは誰にもわからない。しかし、一つだけ確
かなのは認知症になるぐらいの長寿が今の日本社会では当然とみなされている
ことだ。

人間社会かつては平均寿命が50歳ぐらいの時代もあった。今でも発展途上国に
はそういう地域もあるのが現実だ。中にはテロや戦争でいつ死亡するのか判ら
ないところもある。人類の歴史はそもそも血塗られた戦争の記録と言ってもい
い。認知症になれるくらい安全に長く生きられるのは戦争や食料不足もない人
類が長く求めてきた理想でもある。その恵まれた現状を嘆いて「ボケるぐらい
ならポックリ死にたい」「障害を持って生きるのは辛い」など言うのは、ある
意味自分がどれだけ恵まれているのか判っていない傲慢不遜さの表れだ。

そういう人間に中東などの爆破テロで死ぬほうがいいのかと聞くとそれも嫌だ
と言うだろう。人間は強欲だ。日本のように餓死や戦争などと程遠くても生き
がいだの悔いのない人生などと言い出すのだからどうしようもない。100パー
セント満足できる理想的環境などこれまでもないし、これからもありえない。
結局は人生の捉え方は自分次第なのだ。自分が不幸だと思うならそうなるし、
恵まれていると思うなら幸せになれる。人生は見方によって映り方が違うのだ。

認知症になると人格的にどういう変化がでるのだろうか?軽い認知症状が出て
いるときは従来の人間性や性格が反映されることが多い。しかし、脳卒中など
は感情の抑制が効かない症状があり、怒りや衝動性が強くなり不安定になるこ
とも少なくない。認知症もかなり進行すると人格が荒廃してしまうことがある。
結局どうなるのかは予想がつかないのが正直なところだろう。しかし、認知症
になっても変わらないものがある。それは健全なときに築いた人と人との絆だ。
家族関係が良好な利用者はやはり健全な時に家族や友人を大事にしていること
が多い。何度も言うがヒューマンスキルは偉大なのだ。


エル・ドマドール

【関連記事】

[36]認知症シリーズ―(1)定義
http://www.tamagoya.ne.jp/cms/senior5/archives/2008/05/36.php

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