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2009/06/09

老裏5[88]介護者よ、己が虐待を知れ

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  老人ホームの裏事情Part5     [NO.88] 2009/06/09

 〜学校では教えない本当の社会福祉〜

      ◆エル・ドマドール
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リア10年以上の福祉界の猛獣使いことエル・ドマドールが暴く福祉の本当
の姿、そして痛烈な真実。
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第88回

■介護者よ、己が虐待を知れ

いいかげん食傷気味だろうが、今回も虐待を中心に話を進めたい。

ところで諸君は虐待は何を指して、虐待と言うのかご存知だろうか?馬鹿な質
問を・・・と思われるだろうが、世間の人々を含め福祉関係者さえも何が虐待
なのか案外判っていないことが多い。当然のことだが、何が虐待か判らなけれ
ば自分がしていることが虐待かどうかも当然判らないことになってしまう。そ
してただでさえ独善的な福祉関係者の中で自分が虐待していると認める者はま
ずいない。だが、俺に言わせれば虐待をしていない福祉職員などまずいない。
まずは教科書のように虐待の種類から教えよう。

(1)身体的虐待

これは誰でもわかるだろう。文字通り殴る蹴るなどの物理的な攻撃のことだ。
オムツをいじるのを防ぐためにつなぎ服を着たり、手にミトンをつけさせるの
もこれに当てはまる。

(2)精神的虐待

言葉による暴言などを主に指すがその範囲はかなり広い。おむつ交換の時にそ
の様子が周囲から見える状態にしているのも羞恥心を負わせていると解釈がで
きるため、精神的虐待に属する。

(3)性的虐待

文字通り、性行為の強要などを指す。詳細な解説は割愛する。

(4)ネグレクト

介護放棄、養育放棄とも言われる。介護や養育が必要な利用者を放置すること
だ。ナースコールに応答しないのもこれに入る。

(5)経済的虐待

本人が所持しているお金を渡さないことを主に指す。児童の場合、食事代や文
具代などを渡さないことなどが(4)ネグレクトとこれに該当する。児童のお
金は親が稼いだものだから、児童に渡す渡さないは親の裁量ではないのかとい
う声が聞こえてきそうだが、最低限必要な費用は出す義務がある。

主な虐待として5種類紹介したが、是非覚えて欲しい大原則がある。それは
「大人の人間が社会的にできることは誰にでもできる」ということだ。つまり、
施設にいるから、障害を持っているから、子供だからという理由で「できない」
と言うのは基本的に許されない。勿論、喫煙や風俗など年齢的な理由で止むを
得ず禁止にされる場合もある。しかし、それでも基本的に自由意志は尊重しな
くてはいけないのだ。この原則に沿うと、福祉で行われる事の多くは虐待にな
ってしまう。

例えばどこの施設にもある無断外出防止策。利用者が施設を無断外出して、付
近を捜索したり警察に届け出る事はよくある。無断外出した利用者を探す施設
側の労力は大変だ。行方不明者が見つかるまで何時間でも探さなくてはならな
いのだ。しかも事故に遭う危険性も高く、その心労は経験したものでないとわ
からないだろう。そのため、殆どの施設はこのような事態を避けるためにナン
バーロックなどで施錠し、簡単に外出できないようにしている。しかし、気の
毒だが本来このような施錠策は許されない。また厨房や倉庫など危険なものを
保管している所に入られるのを防ぐためにドアを施錠することがあるが、それ
も許されない。

「じゃあ、どうすればいいんだ?施錠しなければ外出されてどんな目に遭うか
もわからないのに!」という声が聞こえてきそうだが、その矛盾こそが現在の
福祉そのものだ。人権を尊重し、拘束は駄目だという。しかし、それら抜きに
成り立たないのが福祉なのだ。

しかも、多くの福祉関係者が無意識にしていることは虐待に相当するか、人権
を守っていないことが少なくない。その例を挙げよう。

―無断で写真を撮る―

お気に入りの利用者を携帯のカメラで写真を撮ったりしている介護者は実を言
うと結構多い。本人の承諾があれば問題ないが、そうでない場合は「肖像権の
侵害」に当たる。肖像権とは判りやすく言えば「自分の姿を勝手に写真に撮ら
れない権利」だ。本人の承諾と言っても認知症や知的障害などで自分の権利を
主張することができない場合は「写真撮影してはならない」と解釈しないとい
けない。どうしても必要な場合、例えば本人の身元確認の書類のために撮影す
る場合は承諾が得られなくても仕方ないが、そうでない場合は許されない。よ
く病院で褥瘡(床ずれのこと、同じ箇所を長時間圧迫して皮膚組織が壊死する
こと)など患部の写真を撮っているがあれも同様だ。褥瘡を撮られたい人など
誰もいない。いい加減非常識なのでやめるべきだ。多くの施設では行事など事
ある毎にベタベタ利用者の写真を撮って、無断でホームページなどに掲載して
いるが本人の許可を得ようとさえしていない。福祉関係者の人権感覚がいかに
希薄かわかるものだ。

―通信を妨害するー

通信を妨害すると言っても何の事かわからないかもしれないが、手紙や電話な
どの連絡をさせないことを意味している。福祉施設ではたまに「家族に電話し
て欲しい」と訴える利用者がいる。その際、家族側は利用者から電話を何度も
掛けて来られるのに嫌気がさして、施設に利用者に電話させないで欲しいと要
請をすることがある。驚くことに施設側も家族からのこのような要請を受け入
れることが殆どだ。かくして、「家族に電話したい」と訴えても連絡してもら
えないかわいそうな利用者が発生するわけだ。ここではっきり言っておく。こ
んなものは犯罪に近い。原則として利用者が家族に連絡を取りたいと申し出た
場合、それを断ることはできない。健常者はいつでもどこでも家族に電話でき
るのなら、障害者だろうが認知症だろうが電話する権利がある。「利用者に電
話させるな」という家族の要請は基本的人権の見地からしても認められないし、
施設側は断らなければならない。大体、施設に利用者を入れたら家族としての
義務や関係がなくなるわけではない。勿論、深夜だったり、何度も電話するな
どあまりにも社会常識に沿わない場合は仕方ないが、原則は最大限利用者の通
信の自由を尊重しなくてはいけないのだ。

―金銭の所持を妨げる―

認知症などの理由で利用者に金銭を持たせないことはよくある。あるいは持た
せても千円位など小額のことが多い。預かる理由は「本人が管理できない」
「なくすから」などが多い。しかし、本人が希望する場合はたとえ管理能力に
問題があっても金銭を渡さなくてはならない。それが認知症であっても知的障
害があっても、何万円でも自分のお金を好きなだけ持つことができるのだ。お
金を持つことは社会的人間としてのステータスシンボルと言ってもいい。福祉
を受ける利用者からすると非常に大事な意味があるのだ。だから、彼らが「自
分のお金を持ちたい」と言うのは当然の主張だし、それは当然の権利でもある
のだ。そもそもノーマライゼーションの理論を持ち出す福祉関係者は多いが、
それと金銭の所持を制限している現状はどう見ても矛盾している。しかし、利
用者側にも問題はある。現にお金を無くした場合、殆どが「お金を無くした
(盗まれた)。探してくれ」と職員に泣きを入れてくる。お金を持つ自由があ
るなら、それを管理するのは自己責任だ。自由にはそれなりの対価と責任を果
たさなくてはならないだが、それを理解している利用者は少ない。だからこそ、
施設側が金銭管理に乗り出さなくてはならなくなるのだ。


エル・ドマドール

【関連記事】

[87]なぜ虐待するのか?
http://www.tamagoya.ne.jp/cms/senior5/archives/2009/06/87.php

[83]虐待から助ける方法はあるか?
http://www.tamagoya.ne.jp/cms/senior5/archives/2009/05/83.php

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