2007.4.17 メネフネニュースレター
LOCAL SHAPER NEVER DIE
一本のサーフボードが目の前の台に乗っている。長さは6フィート2インチ。古臭い
イメージを漂わせる三角形のフィンが一本だけついたシングルフィン。スピードとル
ースさを感じさせるフラットなボトム。
シンプルなボトムラインにテールエリアのVEEが僅かな変化を加えている。レール
はシングルフィン全盛の時代そのままの厚くボリュームがあるダウンレール。レール
のボトム側には、はっきりとポイントがつけられ、テール近くから手触りも鋭くエッ
ジが立てられている。デッキはレールに厚みを持たせるためにフラットに近いシェイ
プ。ダウンレールはサーフボードの両サイドから緩やかな曲線を作ってノーズで交わ
り、イーグルノーズというクラシカルな形状を作り出している。
ラミネートの樹脂に透明感がある明るいグリーンのカラーが混ぜられた古典的な着色
方法。トップコートの樹脂がその上を包み込み、絶妙な力加減で磨き上げられた表面
は深みのある光沢を放ち、廻りの景色を映し出している。ボトムからのラミネートの
トリムラインには几帳面さと勢いを感じる極めて細いピンラインが一本、デッキのク
リアをくっきりと引き立たせるアクセントになっている。
30年昔の時代に戻ってしまったかのようなデザインのボードだが、3日前にできた
ばかりのブランニューボードだ。もう40年近くもサーフボードを削り続けているサ
ーフボードシェイパーが削ってくれた、1970年代そのままのデザインのシングル
フィン。現在のほとんどのショートボードに付けられているトライフィンがまだ無か
った時代、当時のサーファーはこんなシングルフィンのサーフボードで波に挑み、さ
まざまなテクニックに挑戦していた。
このサーフボードは、ダウンザラインとシングルフィン特有の大きなラインでのサー
フィンに加えて、テールのVEEを使うことによって今のトライフィンに負けないマ
ニューバを描けるシングルフィンとして作られた。まだ海で使ってはいないが、シェ
イパー曰く、いまのトライのショートボードでリップしている若いサーファーたちに
試してもらいたいデザインだということだ。トライフィンと違ってフィンの限界を超
えればスピンアウトしてしまうシングルフィン。限界を超えないぎりぎりのところを
見極め、一つしかないフィンとレールを使ってのサーフィンはきっとトライフィンの
サーフィンの役に立つはずだし、新鮮な経験になるはずだと言う。
このシェイパーは、自らの豊富なサーフィンの経験を活かして、様々なタイプのサー
フボードをシェイプする。南の島のシャローなリーフに砕けるチューブラースウェル
日本が世界に誇るパワフルなリバーマウス、湘南のリーフやビーチで割れるメローで
優しい波。それぞれの波をイメージし、数多くあるブランクスの中から最適と思われ
るサイズ、ロッカーを選び出し、大きなウレタンフォームの固まりを素晴らしいサー
フボードに変身させる。一本一本のシェイプを味わい、楽しむようにじっくりと時間
をかける。一月のあいだにシェイプするサーフボードは10数本。商業的に成り立つ
とは考え難い数字。一本ずつそれぞれのシェイプを楽しんでいる様をみていると、お
そらく彼の頭の中ではオーダーシートに書かれた顧客より一足先にそのボードでのサ
ーフィンをイメージの中で楽しんでいるように見える。
サーフボードは柔らかい発泡ウレタンを樹脂を含ませたガラスクロスで薄くラミネー
トすることによって作られるとてもデリケートなこわれ物だ。こわれやすいという悩
みを解消するために素材とラミネートの方法を変えた壊れにくいサーフボードの人気
も高まってきた。このサーフボードはシェイプではなく、「型」から出てきた時点で
サーフボードの形をしており、それを着色、仕上げすることによって完成される。大
量生産をするのが容易な合理的な製法で作られるのだが、実際のところアジアのある
一つのサーフボード工場では年間27万本ものサーフボードが作りだされているとい
うから驚きだ。「型」(モールド)ボードだけでなく、従来の方法で作られるウレタ
ンとガラスクロスのサーフボードもシェイプマシンを使うことによって、シェイプの
手間が減りボードの生産数を増やすことが可能になった。
サーフボードを大量生産し、スポンサードするライダーでブランドイメージを作り出
し、多くの宣伝費用を投じてサーフボードを販売する。サーフウェアという位置づけ
で、ブランディングと販売戦略を展開するアパレルメーカーやウェットスーツメーカ
ーを含めてサーフィンの一大産業を作り出している。サーファーたちはそれらの中か
ら自分の好みに合ったサーフボードとウェットスーツを手に入れ、サーフウェアを着
こんで海へと向かう。それが現在の一般的なサーファーの姿だ。
頑固という訳でも、変わり者という訳でもない。一枚のA4サイズのオーダーシート
から広がるイメージを楽しんでいるかのように、ブランクスにマーキングをし、テン
プレットを当ててボードのアウトラインを引く。大切なのはビジネスのペースよりも
自分のペース。それがシェイプという「仕事」を楽しむコツのようだ。派手な宣伝は
しない(できない)が、評判を聞いた地元のサーファーたちがシェイプを依頼にやっ
てくる。出来上がってくるサーフボードは有名なサーフボードメーカーにも負けない
出来映えだ。なによりも地元の波を知り尽くしているのも強味になっている。
有名なインターナショナルブランドやモールドボードがサーフボードマーケットのシ
ェアのほとんどを占めるようになったとしても、地元のシェイパーはそんなことには
関係なく地元のサーファーのためにサーフボードを削り続ける。量販店の店先に並ぶ
色とりどりのボードから自分が気に入る一本が見つかったときの嬉しさも格別だしス
トックとして量産されたサーフボードだって調子は変わらず良いものだ。
インターナショナルなブランドをチェーン店の飲食店に例えるなら、地元のシェイパ
ーたちはご当地自慢の味の料理を出す昔ながらの料理屋のようなものだ。どの地域の
店で食事をしても同じ味を提供してくれるのがチェーン店の良いところなら、地元で
ないと味わえない特別な味もある。地元で地元のサーファーたちのためにボードを削
り続けているシェイパーは皆さんの意外と近くにいるかもしれない。地元で評判の料
理店なら、地元にしかない食材を使って、その旨みを最大限に引き出す調理法で自慢
の一皿を提供してくれるだろう。地元のシェイパーもそれと同じだ。地元の波に乗っ
て集められたデータと経験をもとに、インターナショナルブランドのサーフボードに
は無い、地元ならではの特別な一本を作り出してくれる。
パワフルなインターナショナルブランドに負けない魅力を持つアンダーグラウンドな
ローカルシェイパーのサーフボード。そこには大量生産品にありがちな均一感は存在
しない。生産効率よりも乗り手と作り手のコミュニケーションから生まれる相互の理
解が重視される。そして同じシェイパーのボードを使うものどうしの連帯感。人と情
報の交流がある種感情的なエッセンスとなったローカルシェイパーが作り出すサーフ
ボードには、乗り手と作り手の顔が見え隠れしているように思えてくる。
地球上のどこかでは今この瞬間にも、白い粉にまみれながら海岸近くの秘密基地のよ
うなシェイプルームの中で密かな楽しみに没頭しているローカルシェイパーがいるに
違いない。
**************************************
こんにちは。メネフネビーチストアの宮嶋です。今回は、おそらく世界中に無数に存
在しているに違いない地元のシェイパーのことを考えてみました。メネフネで扱って
いるカツカワミナミは湘南の、もっと地域を細かく言えば鎌倉のローカルシェイパー
ですし、クリス・クリステンソンも(最近は世界的に人気が高まっていますが)大量
生産をせず、自分のアトリエでだけでシェイプとグラッシングを行っているサンディ
エゴのローカルシェイパー的な存在です。
川南活さんとは常にコンタクトを取って
オーダーシートの内容をオーダーいただいた方の代弁者になるべく、具体的な数値に
し、数値で表現できない部分は感覚的にニュアンスを伝えシェイプをしてもらってい
ます。
クリス・クリステンソンとも、もし距離的な問題がなければ(あと言葉の問題も…)
同じような関係を築くことができるに違いありません。
ローカルシェイパーのボードに乗る楽しみは作ることから自分も参加できることです。
自分だけの一本を作ってもらえるのですから出来上がってから満足感も格別なものが
あるのだと思います。「地元のシェイパーに削ってもらったボードで、地元の波に乗
る。」なんとなく響きが良く聞こえるのは私だけ?
■メネフネ新着情報
●SURF LINE HAWAII
その昔、ハワイにあった伝説的なサーフショップから生まれたブランドです。今回ち
ょこっとですが、ロゴTシャツとサーフショーツが入荷しました。ブッチ・ヴァン・
アーツダレンのJAMSのポスター、
http://file.menehune.blog.shinobi.jp/butchjams.jpg
見たことあるでしょう?。
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/clothing/other.htm
●カツカワミナミサーフボード
今回のメルマガで書いた、シングルフィンの「LOVEE」出来上がりました。KK
NEWSにシェイプ画像と一緒にご紹介しましたのでご覧ください。
KK NEWSのもう一本。MINI
FISH。カツさんのフィッシュのページで、以前ご紹介したのですが、これが現在
密かな人気です(フィッシュのページの一番下に出ている赤いフィッシュです)ノー
ズのボリュームでテイクオフを楽ちんにしてツインフィンのようなフィンとフィッシ
ュテールでマニューバが楽しめるボードです。逗子方面の掘れるリーフブレイクでか
っ飛んでいるのが目撃されております。私のようにパドルが衰えてきたサーファーに
もお勧めのフィッシュです。
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/boards/katsu/katsutop.htm
●クリステンソンフィッシュ新古ボード
未使用のフィッシュ5.8とサーフボードハワイのロングボードが入荷。
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/boards/used.htm
ちょいと条件付いてますがどーしても欲しいとおっしゃられる方配送もしますので、
こっそりご相談ください。メルマガ読者特典ですな。新品で購入するより、ケース分
と消費税分くらいお得。
サーフボードハワイのロングボードはダウンレールのノーズとしっかり入ったロッカ
ーが面白そうなボードです。テールはノーズライディングのためのアッシュトレイテ
ールになっています。シングルフィンで動かせるボードを探している方にお勧めです。
●フィッシュ&エッグ用ボードケース入荷
短いけど幅と厚みがあるボード用。6.0から8.0まであります。
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/boards/fishcase.htm
それではまた次回まで!
MENEHUNE BEACH STORE
宮嶋憲士
東京都町田市原町田2-2-5 オードリービル102
Phone&fax 042-732-1206
http://www.menehune.on.arena.ne.jp/
menehune@mbp.ocn.ne.jp


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