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クラシックの作品、作曲家、演奏家にまつわるエピソードも書きますが、「音楽を聴きた〜い」という気持ちにさせる呪文みたいなものなので気楽に読んでください。お勉強に利用するのはオススメしません(笑)。さあ、魅惑のクラシック音楽探究の旅に出かけましょう。

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2006/12/30

クラシック音楽夜話 Op.193

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     クラシック音楽夜話 Op.193 2006年12月30日(土)

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         彷徨うのは…、そろそろ終わりにしよう

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【お詫びと訂正】

先号op.192で重大でお恥ずかしい記述ミスがありました。

誤 ラヴェルの「喜びの島」
     ↓
正 ドビュッシーの「喜びの島」

頭の中はドビュッシーだったのに、指が自然とラヴェルと打ちました。という
の単なる言い訳に過ぎませんね。上のように、訂正すると共に、お詫び申し上
げます。

Op.193 CONTENTS━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

1.モーツァルトの楽譜を無料ダウンロード
2.シューベルト ピアノソナタ第21番

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1.モーツァルトの楽譜を無料ダウンロード

すでに新聞等で報道されていますので、ご存じの方も多いでしょう。
モーツァルト(1756〜91)の文化遺産を管理する国際モーツァルテウム財団
がwebサイトにおいて、全作品の楽譜を閲覧、ダウンロードしてプリント可能
なサービスを開始しました。

これで私たちは、インターネットを使える環境さえあれば、全世界どこからで
も、モーツァルトの600曲以上の名作の楽譜を手に入れられるのです。

全作品というのがすごいです。しかも、利用は無料。実現するまでには、解決
されなければならないさまざまな問題があったでしょう。

インターネットを使ったサービスという現代ならではの発想も、技術面では実
現可能な環境が充分整ってきました。問題は、それを誰が実行するか。どう運
営するか。そして資金をどうやって調達するかです。

いえ、この三点は、それなりに使命感のある団体や個人がいれば、実現は可能
でしょう。もっとも大きな問題は、版権だと思うのです。版権はいまやりっぱ
なビジネスですから、そう簡単に楽譜を無料公開するはずはない、利用料を当
然徴収することになるはずです。インターネットでの楽譜ダウンロードサービ
スはほとんどがこの類です。

たとえばの例ですが、私がモーツァルトの作品のスコアを楽譜作成ソフトで作
り、無料公開するのは良いのです。たぶん世界には同じことを考え実行してい
る人がいるはずです。しかし、スコア化する元の版はどうするか?かりにその
点クリアされたとしても、はたして600曲以上のスコアデータを用意できるで
しょうか。仮にできたとしても、スコアに信憑性があるかを、誰が判断するか。
そこが問題ですね。

モーツァルテウム財団のサービスは、なんとあのベーレンライター版をそのま
ま使用しているのです。同社が財団と親密な関係があり、今回のサービスに対
し大いに賛同しない限り実現できるわけはありません。楽譜が売れなくなるん
じゃないか?なんて私たちの心配(余計なお世話かもしれませんが)をよそに、
どーんと全部無料公開に同意したのですから、驚きです。文化というものを尊
重する精神がなければ決してなしえない偉業ともいえるでしょう。

ということで私たちは多くの関係者の厚意により、モーツァルトの作品の楽譜
を自宅にいながら入手できる術を得たのです。

さっそく、次のURLへ飛んで試してみましょう。
http://nma.redhost24-001.com/mambo/index.php

赤印の"Search the NMA Online"をクリックする前に、
次の文を読み、了承する必要があります。

I agree to use this web site only for personal study and
not to make copies except for my personal use
under "Fair Use" principles of Copyright law
as defined in this license agreement.

【意訳】
私は、ライセンス契約に明記されている著作権法の「公正使用本則」に基づき、
本webサイトの使用を、個人的研究のためのみの目的とすること、ならびに、
個人的利用以外の目的で複製しないことに同意します。

Lisence Agreement第一ページには大切なことが書いてあります。こちらも、
私の意訳を掲載しておきます(括弧内はmusikerの補足。英語がわかる方は原
文をお読みいただくことをオススメします)。
------------------------------------------------------------------------------------
【ライセンス契約】
本WEBサイトは、モーツァルトの音楽作品を、個人的な研究、教育、授業など
の用途で、幅広く、かつ便利に接する機会を作る、ことを目的としています。
商用、非商用を問わず、販売目的によるダウンロードや、webサイトのコンテン
ツの複製使用は、どんな場合でも禁じております。
モーツァルトの作品はパブリックドメイン(=権利消滅。つまり、誰もが自由に
利用できる共通資産)と見なされなければなりません。しかしながら、学術研究
(作品の研究書等)、画像(挿絵、資料を参考に創られたイメージ等)、根本資
料の再生資料(直筆譜面、手紙等のファクシミリ等か?)についての使用は制限
されています。
モーツァルトの作品は200年以上の歳月(生き続けてきた)を誇る歴史的遺産
です。
『新モーツァルト・エデッション』は1955年からベーレンライター(カッセル)
により出版されており、印刷ヴァージョンは公認ディーラーから入手可能です。
詳細については出版元へお問い合わせください。
商用利用、あるいは公正使用を超えるオンライン出版を目的とする場合は、DME
(デジタル・モーツァルト・エディッション)、国際モーツァルテウム財団宛に
直接コンタクトを取ってください。
Digitale Mozart Edition (DME)
Internationale Stiftung Mozarteum
Schwarzstr. 26
A-5020 Salzburg
Austria 
------------------------------------------------------------------------------------

赤印の"Search the NMA Online"をクリックすると、検索画面が現れます。
表示がドイツ語なのでとまどうかもしれませんが、
・左のKVの欄にKV(ケッヘル)番号を入れ、goを押す。
・番号がわからないときは、Suchbegriff の欄に、アルファベットでキーワード
を。たとえば"Figaro""Don Giovanni""Piano Sonata"などを入れてgoを押す。
(画面下部には、ジャンル毎の目次があります。ここから入っていくのもよいで
しょう)。

すると、候補がリスト表示されます。リストの中の該当項目をクリックし、リ
スト右側に音符が表示されれば、そこをクリックしてください。楽譜が画面表
示されます。楽譜の表紙からはじまり、前文等も表示されますので、根気よく
ページを追ってください。観るだけならこれでOK。ただし、このままでは、
複数ページダウンロードやプリントはできません。

まとめてダウンロードする場合は、画面左上の"Inhalt"という部分をクリック
してください。すると、楽譜の目次が表示され、項目右側にPDFマークが表示
されるはずです。そこをクリックすることにより複数ページ単位でダウンロード
でき、ダウンロードしたPDFでプリントが可能です。

私も、モーツァルトの歌劇の楽譜をダウンロードしてみました。

歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より、レポレッロの「朝から夜まで働きづくめ」、
「カタログの歌」、ドン・ジョヴァンニとツェルリーナの「手に手をとって」、
フィナーレ「晩餐の準備が整った」そして、おどろおどろしい、騎士長幽霊の
有名な「ドーンジョヴァーーーンニ」の部分です。スキャニングされた画像の
pdfですが十分な解像度があり、とてもきれいにプリントされました。

きれいなぶん、データはネットにしては大きめですので、ダウンロードやプリ
ントには時間がかかります。高速ADSLできれば光ファイバーが必要です。

それにしても、自宅にいながらモーツァルト作品の楽譜が手に入るなんて夢の
ようです。これから、曲を取り上げる際に、楽譜はもちろん、重要な研究資料
にも目を通せます。嬉しいったらありゃしません。ただし、ドイツ語です。
手強い相手ですね。むむむむ……。

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2.シューベルト ピアノソナタ第21番 D.960 変ロ長調

「クラシック音楽夜話」草創期、シューベルトの「ピアノソナタ第20番」を取
り上げたことがあります。はつらつとして躍動感あふれる曲想に心奪われたに
もかかわらず、私は、20番を
「元気になりたい時、孤独をかみしめたい時、に聞きたいソナタ」
と書きました。

聴くたびに哀しみを消してくれ、聴くたび力が湧いてきた。でも、聴いた後残
るいちまつの寂しさは何だろう、そんな経験が頭を離れなかったので、あの明
るいソナタに、少し意味深なコメントをつけました。

そんな心情を見透かすように、お一人の読者からメールをいただきました。

「シューベルトは21番も素晴らしいですよ。ブレンデルで聴いてみてください」

そのアドバイス通り、数ヶ月後、ブレンデル演奏のシューベルト「ピアノソナ
タ第21番」をいきつけの中古CD店アンサンブルで買いました。すぐに聴いた
のですが、なんとなく退屈に感じ一度きりで止めました。以後何度か試みたも
のの、常に第一楽章の途中でスイッチを止めてしまいます。

しかし…。あれから5年の月日が流れた今。長いとか、抑揚がないなんて、勘
違いもはなはだしい、と思うようになりました。なぜでしょうか。

この曲の第一楽章は歌曲そのものなのです。動きの少ないメロディ。飛躍のな
い淡々としたメロディラインが伴奏部と絡み音楽は進んでいる。メロディには、
和音が同時進行のリズムで付随しています。だから、曲に慣れてきたら、旋律
を口ずさめばいい。自分の好きな詩を歌詞にして歌う。ピアノの音を伴奏だと
思って、自分の体に染みこんだ歌と同化させる。すると、抑揚のないと思って
いた第1楽章が活き活きと輝いてきたのです。

こうして、シューベルト最後のこのソナタが、最もいとおしく感じられてきま
した。しみじみと、シューベルト晩年(といっても31歳なのですが…)の傑
作ソナタを聴く毎日です。

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【第1楽章】Molto moderato
前奏のような静かな始まりです。低音の不気味な揺れがはさまると、さあ、歌
が始まる、と思いきや冒頭に似たメロディが繰り返されます。少し風味を変え
た後、再び冒頭の旋律をメインディッシュ風にアレンジ。新たなメロディが何
食わぬ顔をして滑り込んだり、一度提示した旋律を短調に変えたりするのです
が、彷徨のように、方向が定まらず、そして、時には途中で立ち止まるのです。
ベートーヴェンのような複数のテーマの糸紡ぎを期待してはいけません。そう、
交互に出てくる歌曲のメロディに身をゆだねるように、静かに味わいましょう。

【第2楽章】Andante sostenuto
動きの少ない和音をともなうメロディにさりげない低音がサポート。短調が心
に染みます。澄み切って何も見えない雪原を思わせる、シンプルな曲想。メロ
ディではなく、和音。いやこれも歌曲のピアノ伴奏に似ている。本当のメロディ
は別に存在するのではないだろうか、と錯覚してしまいます。
中間部、低音からおもむろに始まる長調のメロディ。ここはシューベルトの本
領発揮といえるでしょう。彼は孤独に埋没してなんかいないのです。最後は消
え入るように、音色をいとおしむように。

【第3楽章】Scherzo,Allegro vivace con delicatezza
さて、この楽章から、少し様子が変化してきます。第一楽章、第二楽章ともに
ゆったりとした歌曲に似た調べでしたが、歌詞を添えることの出来ない器楽曲
に音楽が変わるのです。氷の妖精のようなキラキラした音の粒が降り注いでく
る光景を思わせます。その可愛らしい曲想に思わず微笑んでしまいます。あち
こち寄り道を楽しむ子供みたい。中間は少し生真面目に、大人っぽく。でもす
ぐに、あどけない表情が戻ってきます。

【第4楽章】Allegro ma non troppo
終章はもう歌の世界ではありません。少しハンガリー舞曲風匂いのメロディが
ちょこちょこ走り回る楽しい楽章。短調の旋律の変化を堪能してください。し
かし、中間部では再び歌曲兼伴奏風音楽。ちょっとお休みという感じでしょう
か。雰囲気を変えてドラマチックな展開。堂々とした音楽のたたずまいですね。
メロディが七変化しつつ、この楽章冒頭のテーマへと導かれていきます。彷徨
いで始まったこのソナタも終章で、ついに目を覚まし、力強く骨太な音楽へと
転じ、ドラマチックなフィナーレを迎えるのです。

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◆私が聴いているCD
シューベルト ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調
アルフレッド・ブレンデル
曲目
ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D.960
幻想曲ハ長調op.15 D.760「さすらい人」

http://www.musiker21.com/cdinfo.html
※シューベルト「ピアノソナタ第21番」とリスト「村の居酒屋での踊り」を含む
リスト超技巧練習曲集を加えました。

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【あとがき】

大晦日手前の30日。「クラシック音楽夜話」op.193を配信します。

今年は25回の配信でした。2月と11月と、二度にわたる一ヶ月のブランクを
含め、週間配信がほとんどできない年となってしまいました。心からお詫び
申し上げます。来年こそは週間配信復活をめざして…、といいたいところです
が、いうは易し行うは難しですから、大風呂敷を広げるのは控えます。とにか
く続けます、とだけ申し上げましょう(笑)。
「クラシック音楽夜話」を来年もよろしくお願いいたします。

来年が読者の皆様にとってますます素晴らしい一年でありますように。
では、新年、op.194まで、お元気で。

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