2009/10/09
フライデー・ビデオマガジン(No.415)
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 「フライデー・ビデオマガジン」(毎週更新のビデオ紹介マガジン) 【 2009年10月09日号 No.415 】 =================================== !!!今週ご紹介するのは『過去のない男』 =================================== <D-Column> 先日、とある映画制作団体の方から、うちのギャラリー(世田谷233)を 撮影に使わせて欲しいと依頼がありました。こういうお話は基本的にお断り しないことにしておりまして、今週の水曜日、お店の定休日を利用して実際 に撮影が行われました。久しぶりに映画の撮影現場が見られて楽しかった。 ちょっと失礼な言い方ですが、思ったより本格的に活動されていらっしゃる 方のようで、3カット程のシーンの撮影でしたが、監督や俳優さんも含め、 15名程度のスタッフさんが集結。あらためて映画作りって多くの人が関わ るんだなあと感心。しかも、当日は結構強い雨が降っていて、それに伴って いろいろと撮影場面も変更されたようでみなさん大変そうでした。 残念ながら、あまり時間がなく、監督さんに詳しいお話を伺うことが出来な かったのですが、どうやらアメリカで映画制作を学ばれた方のようで、機会 があればインタビューしてみたいと思いました。それにしても、映画作りは お金と時間がかかるものです。脚本、演出、美術、編集などなど、さまざま な専門職の方がいて、それぞれの役割を果たしている。そしてそれを束ね、 作品に仕上げる監督。映画が”総合芸術”と呼ばれるのも納得です。 インターネットやコンピュータ・テクノロジーの台頭によってテレビや映画 の存在価値があらためて問われていますが、こういうある意味、物的・経済 的な資本を大量に投入して作り上げられる芸術、という軸足が残り続ける以 上、テレビや映画も存在価値を保ち続けるかもしれません。そこを惜しんで、 製作プロセスを安易な方向に舵を切ると、そこから衰退が始まるような気が します。 逆に言うと、例えば最新型の携帯電話やipodの動画機能を使って映像を撮り、 それを編集した作品があったとして、いかにそれが撮影や編集過程において、 既存の映画制作のプロセスを踏襲していたとしても、おそらく流通やアウト プットの方法は違ってくるはずですから。それらは全く違うメディアとして 扱うべきなのかもしれません。 あらゆる表現の分野で、個人で作ることが基本となっても、古くからの映画 ファンとしては、人やモノをある程度ちゃんと投入して作る”映画”は”映 画”として存在し続けて欲しいと願います。 ちなみに、今回撮影にご協力させていただいた映画作品、来年の夏に公開予 定だそうで、また具体的になりましたらこちらでもご紹介させていただこう と思います。ひょっとしたら、ですが、私もちょこっと映っているかもしれ ません(笑)。 それでは今週の1本です。 <作品プロファイル> ・邦題:『過去のない男』 ・原題:『THE MAN WITHOUT A PAST』 ・監督:アキ・カウリスマキ ・脚本:アキ・カウリスマキ ・キャスト:マルック・ペルトラ、カティ・オウティネン他 ・公開/制作:2002年/フィンランド、ドイツ、フランス ・ジャンル:ドラマ ・上映時間:97分 ・評価:★★★★★(評価内容については下記説明をご覧ください) <ストーリー> ある日、列車に揺られ、夜のヘルシンキに流れ着いた一人の男(マルック・ ペルトラ)。辺りに誰もいない公園のベンチに座り、一休みしていたところ、 突然、3人組の暴漢に襲われる。身体中を殴られ瀕死の重傷を負った男は、 病院に担ぎ込まれる。奇跡的に意識を取り戻すが、自分の名前を含め、過去 の記憶を全て失っていた...。 <コメント> 『マッチ工場の少女』(1990)、『浮き雲』(1996)など、小津安二郎的間合い が特徴の映像作家、アキ・カウリスマキ監督が、記憶を失った男を主人公に、 人間の悲哀と希望を描いた作品。主演はマルック・ペルトラ。お相手役には カウリスマキ作品に欠かせないカティ・オウティネンがキャスティング。ち なみにマルック・ペルトラ氏は荻上直子監督作品『かもめ食堂』(2006)にも 出演されていましたが、2007年に亡くなられたそうです。残念。 暴漢に襲われたことによって、突然、過去の記憶をなくした男。自分が誰か すらわからない。通常ならパニックになるところですが、主人公の男はその 状況を受け入れるかのように、淡々と過ごします。 主役が瀕死の重傷を負うほどの冒頭シーンでありながら、アキ・カウリスマ キ監督の手にかかるとなぜかほんわかとしたムードになってしまい、どこか 可笑しささえ感じられます。 すべての記憶を失った男が、周りの人たちに支えられながら、人間らしい生 活を取り戻していく様子からは、物質的に貧しくても心の豊かさを失ってい ない、非常に人間的なコミュニティの優しさが感じられます。 コンテナ住まいでも、飯が食えて音楽が聴ければこんなに楽しい、みたいな ノリも、カウリスマキ作品の持つ情緒にあふれています。作中、男の世話を した登場人物が語るように、人生は前にしか進みません。そして、前に進ん でいればきっといいこともある。すべてのしがらみを断ち切られても、しっ かり生きていけるだけのたくましさを我々は持っている、そんな人間賛歌が 聞こえてきそうです。クレイジーケンバンドらによる音楽もいい。 ラスト、再度めぐり合った男と女が町に消えていくシーン、列車が目の前を 通り過ぎて二人の姿が見えなくなります。キスシーンや抱擁シーンで終わら せなかったところに、カウリスマキ監督のリアリティを感じます。生きてい ればいいこともある、だけど現実は厳しい。それでもなお、生きていく、そ れが本当の強さということなのでしょう。 by DISK =================================== 「評価」の★の数について 5:これは最高。ぜひ見て欲しい名作。何度でも借りたくなること間違いなし。 4:良く出来た作品。見る人の趣味にもよりますが、とにかく見て損なし。 3:平均的な作品。でも見所はあります。好きな役者が出ていれば迷わずGO。 2:あまり良い出来栄えとは言えませんが、数百円のレンタル料なら許せる? 1:レビューを読んで頂くだけでいいかも。どうしても借りるものがなければ。 =================================== ◆このメールマガジンに関する感想、作品のリクエスト等がありましたら、 発行者宛てメール又は下記ウェブサイト掲示板等からどうぞ。 ・MAIL:d-nakane@dd.iij4u.or.jp ・WEB:http://dmovie.fc2web.com/ ◆全ての文章は個人としての使用以外、転載を禁じます。 ◆このメールマガジンは、以下のサービスを利用して発行しています。 ・『まぐまぐ』http://www.mag2.com/(マガジンID: 0000078785) ・『メルマ!』http://www.melma.com/(マガジンID:00061350) ・『メルマ!』http://www.melma.com/(マガジンID:00152037) 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


