2009/05/29
フライデー・ビデオマガジン(No.396)
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 「フライデー・ビデオマガジン」(毎週更新のビデオ紹介マガジン) 【 2009年05月29日号 No.396 】 =================================== !!!今週ご紹介するのは『21グラム』 =================================== <D-Column> 日本経済新聞&朝日新聞&読売新聞の3社によって立ち上げられた、新聞記 事の読み比べができるWebサイト「あらたにす」(http://allatanys.jp/)。 その中の「新聞案内人」というコーナーで、東京大学大学院総合文化研究科 教授の古城佳子さんが、”子供の「議論下手」は大人の責任”というタイト ルで興味深いことをおっしゃっていました。 難しさを増しつつある教育の現場において、教師と親、親と子の信頼関係の 希薄さ、コミュニケーション不足により、文句を言う親が出現。それによっ て学校側が過度に防御的になっていると。親の文句に対する対応に多くの時 間を割かれるよりは、そのようなことが起こらないように対処した方がいい といことなんだそうなんですね。で、結果的にコミュニケーションが”硬直 化”しているとのこと。さらに、大学生になっても、それまでのコミュニケ ーションが硬直化した環境に慣れてしまっているために、討論する力を一朝 一夕に身につけることは難しいと。うむー。 この部分がなぜ気になったかというと、先般このメルマガのコラムでもご紹 介した「スローコメディ・ファクトリー」の須田泰成さんが、とあるトーク イベントでおっしゃっていたことと重なったのです。そのイベントで須田さ んは、「今の子供は人間関係を新しくしない」と(須田さんのご意見なのか 引用されたのかちょっと不明です。すみません)。普通は中学や高校の進学 時などによってがらっと周りの人間関係が変わり、いろんな人とゼロからコ ミュニケーションを取らざるを得ない状況になる。しかし、ネットが普及し た昨今では、従来の人間関係も何不自由なく保てるため、さほどその必要性 がなくなるのではないかと。 以上の2つをまとめると、全くゼロからのコミュニケーションにより人間関 係を構築する場が減り、馴れ合いの人間関係をより強く維持し続ける状況が 生まれているという気がしてなりません。ネットなどのメディアによって、 従来の人間関係を継続できるというのは決して悪いことではありませんが、 見知らぬ人と人間関係を作るのは、対人コミュニケーションにおいて重要な 訓練であり、そのシチュエーションが少なくなっているとしたらやはりそれ は問題だと思います。 個人的に、昨年より渋谷の専門学校にて授業を担当させていただいている身 でもあり、ちょっと掘り下げて考えてみたい問題だと思いました。 いずれにしても、コミュニケーションに限らず、思考であろうと身体であろ うと、硬直している状態というのは避けたいものです。 それでは今週の1本です。 <作品プロファイル> ・邦題:『21グラム』 ・原題:『21 GRAMS』 ・監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ ・脚本:ギジェルモ・アリアガ ・キャスト:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ他 ・公開/制作:2003年/アメリカ ・ジャンル:ドラマ ・上映時間:124分 ・評価:★★★★(評価内容については下記説明をご覧ください) <ストーリー> 建築家の夫と2人の幼い娘と幸せな生活を送っているクリスティーナ(ナオ ミ・ワッツ)。信仰に生き甲斐を見つけている前科者のジャック(ベニチオ ・デル・トロ)。そして心臓移植手術を受けないと余命1カ月と宣告された 大学教授のボール(ショーン・ペン)。全く交わるはずのない3人の人生が、 とある事故をきっかけに繋がり始める ...。 <コメント> 2006年に公開された『バベル』での第59回カンヌ国際映画祭・監督賞受賞 の栄誉も記憶に新しい、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品。 余命1ヶ月と宣告され心臓移植を待つ大学教授、夫と子供二人に囲まれ幸せ な家庭の主婦、宗教によって改心した悪党、と決して交わるはずのない3人 の人間。とある事件をきっかけにそれぞれの人生が螺旋階段のように絡み合 い、人間の背負う業や、魂の救済といった物語を搾り出します。 大学教授にショーン・ペン、家庭の主婦にナオミ・ワッツ、信心深い悪党に ベニチオ・デル・トロという個性的なキャスティングも見所。 この監督の得意とする手法が時間軸の再構成。一旦バラバラにした物語を、 コラージュのように纏め上げていきます。観る側はジグソーパズルのピース を埋めていくかのような感覚に陥ります。最初はそれぞれのピースがかけ離 れているのですが、時間が進むにつれて徐々に全貌が明らかになります。こ の手法に関しては、賛否両論あるかと思いますが、時間軸を再構成すること によって、物語の大枠をあえて早い段階で提示し、観る側に、表層的な事実 ではなく、人々が紆余曲折や邂逅を経て、苦痛や不安、後悔から救済に至る までのプロセスが大事なんだというメッセージを送っているようにも受け取 れます。 個人的には手法も含めて好きな監督なのですが、本作に関しては、どうして も同監督の『アモーレス・ペロス』(2000)のとんでもない”熱”や、『バベ ル』のコミュニケーション不全がもたらす苦難と救済の物語と比べてしまう こと、さらに、犯人探しのような安易なサスペンス的要素が色濃く出てしま ったことなどから、星の数は満点ではなく4つとさせていただきました。も ちろん、前述の主演の3人はそれぞれに素晴らしい演技を見せてくれますし、 一様に死に向かう人間の奥底に流れる葛藤を真正面からぶつけてくるので、 ある程度覚悟して観なければなりませんが、それなりの解放感も得られる作 品だと思います。 by DISK =================================== 「評価」の★の数について 5:これは最高。ぜひ見て欲しい名作。何度でも借りたくなること間違いなし。 4:良く出来た作品。見る人の趣味にもよりますが、とにかく見て損なし。 3:平均的な作品。でも見所はあります。好きな役者が出ていれば迷わずGO。 2:あまり良い出来栄えとは言えませんが、数百円のレンタル料なら許せる? 1:レビューを読んで頂くだけでいいかも。どうしても借りるものがなければ。 =================================== ◆このメールマガジンに関する感想、作品のリクエスト等がありましたら、 発行者宛てメール又は下記ウェブサイト掲示板等からどうぞ。 ・MAIL:d-nakane@dd.iij4u.or.jp ・WEB:http://dmovie.fc2web.com/ ◆全ての文章は個人としての使用以外、転載を禁じます。 ◆このメールマガジンは、以下のサービスを利用して発行しています。 ・『まぐまぐ』http://www.mag2.com/(マガジンID: 0000078785) ・『メルマ!』http://www.melma.com/(マガジンID:00061350) ・『メルマ!』http://www.melma.com/(マガジンID:00152037) 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


