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福岡では毎年「アジア映画祭」が開かれます。劇場での一般公開の予定がない作品が多く、一期一会となってしまいそうなすばらしい作品にたくさん出会いました。映画の感想をこのメルマガで書いていきたいと思います。

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2005/06/30

★福岡発アジア映画行き★第17号 「ゴビを渡る映画」

★福岡発アジア映画行き★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
                                 第17号
                                             
                                            発効日2005年6月30日
                               発行部数      55部
                        発行人  Jun Rajini

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 
  日曜日に、「モンゴルの過去と現在」という講演を聞いた。
 二年前にアジア映画祭で観た、モンゴルの映画「ゴビをわたる映画」を思い出した。
 モンゴルの人口は約二百五十万人、首都ウランバートルには八十九万人が生活して
いる。遊牧民が多いため、小学生は寄宿舎に集められて勉強をする。しかし、就学率は
八十パーセントほどである。

 都市部に住む者を除くと、モンゴルの遊牧民族たち、メディアと隔絶された世界で
生きている。
 テレビどころか、ラジオも新聞もない環境で、遊牧民族たちは、毎日何を考えて生き
ているのだろう。夜に外を出ると、満天の星が出ているに違いない。なんとぜいたくな
環境だろうと思うけれど、当人たちにとっては、娯楽が少なく、変わり映えのしない生
活なのかもしれない。
 小学生の頃、家族で能古島でキャンプ場に泊まったときに、弟は、漫画もテレビもな
いので早く帰ろうと言い続けた。僕もラジオを持ってきてなかったので、たいくつで仕
方がなかった。薄暗くなると本が読めなくなってしまった。
 モンゴルの人たちと一緒に暮らすとしたら、何か月まで僕は耐えられるだろうか。取
材目的で滞在をし、文章を書いて、日本人に伝えるという回路が開かれていない限り、
一週間以上は耐えられないと思う。

 広大な草原で放牧をする遊牧民たちは、羊や山羊が草を食いつくしてしまわないように、
年に三度、大移動をする。しかし、彼らの移動場所は決まっているという。さもなくば、
他の大家族と場所がかち合ってしまい、喧嘩になるからだ。実際に、時々、争いが起こっ
てしまうのだそうだ。
 映写技師たちは、点在する遊牧民達の居住地を訪ね歩いては、娯楽の乏しい人たちに、
映画を見せる仕事をしている。映写機は古いので、必要な設備をすべて合わせると、重さ
が百キロ以上にもなる。それをラクダに背負わせ、技師はラクダには乗らずに草原や砂漠
を歩く。村から別の村までは百キロを超えることもざらである。何しろ、人口密度は一平
方キロメートル辺り、一・八人なのだ。
 モンゴルが社会主義国だった頃、大学に映画をつくる人材を養成する学科があったそうだ
。年に十数本の映画が作られていたこともあった。だが、ソ連が崩壊し、社会主義国からの
援助が期待できなくなったため、現在は、映画はほとんど作られていない。だから、古いフ
ィルムを修復しては、重い映写機を持ち歩くより他、ないのである。

 映画技師が近づいてきたことに気づくと、放牧の羊や山羊の世話をしていた者は、農作業
を止めて、合図をする。たしか、角笛だったと記憶している。ぞろぞろと村長の家にみんな
集まってくる。一日だけの宴が始まるのだ。お礼をするお金がないので、遊牧民達は、技師
にごちそうを振る舞う。
 住居の壁がスクリーン代わりである。
 「この映画を見るのは三度目だよ。話の筋はほとんど覚えているよ」とある老人が言った。
それでも、何度見ても面白いのだそうだ。
 情報の渦の中で、何が必要かを見極めようと必死でもがき、時間をかけて、何かを書こう
としている僕よりも、過酷な環境に生きるモンゴルの人たちは、生き生きとした顔をしてい
るように思う。
 

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