2003/11/07
◆i哲学046◆GLAYが選挙を変えるかもしれないという話
l■■■■■■■■■■■■■■■■■@■■■■■■■■■■■■■■■■■l インターネット哲学【ネット社会の謎を解く】 No.046 2003.11.7. 諸野脇正@インターネット哲学者 l■■■■■■■■■■■■■■■■■@■■■■■■■■■■■■■■■■■l ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ● GLAYが選挙を変えるかもしれないという話 −−選挙のインセンティブを分析する 諸野脇 正@インターネット哲学者 【e-Mail】 ts@irev.org 【Web Site】 http://www.irev.org/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ 選挙になると元気になる土建屋 よく知られた事実がある。 ┌──────────────────────────────────┐ │ 選挙になると土建屋は元気になる。 │ └──────────────────────────────────┘ 選挙になると土建屋は元気になる。土建屋は、特定の候補の選挙活動をする。 候補者自身が土建屋の社長であることも多い。さらに、土建屋同士が対立候補と して選挙で争うことも多い。 様々な選挙に次々と出馬する羽柴秀吉(本名・三上誠三)氏も土建屋だ。 ● 平成14年9月 長野県知事選挙 http://www001.upp.so-net.ne.jp/monzou/hashiba2.html ● 平成12年6月 衆議院議員選挙 http://www001.upp.so-net.ne.jp/monzou/syuin.html ● 平成12年2月 大阪府知事選挙 http://www001.upp.so-net.ne.jp/monzou/P1230383.html このように土建屋は選挙になると元気になる。 なぜ、土建屋は、こんなに選挙に熱心なのか。 それは、自分の生活がかかっているからである。彼らは、公共事業を自分の会 社で受注しようとしているのである。自治体からお金を引き出そうとしているの である。(羽柴秀吉氏の場合、氏特有の別の理由があるのかもしれないが。) ■ 公共事業で食べている山村 次の文章を読んでいただきたい。 共同通信社の伴武澄氏の文章である。 ┌──────────────────────────────────┐ │ かつて生糸生産の取材で群馬県のある山村を訪れたことがある。町長に │ │インタビューし「町の生業(なりわい)は何ですか」と質問した。主な生産 │ │品目を聞いたつもりだった。「養蚕とコンニャクイモ栽培」という答えを │ │期待していたが、「土木です」という意外な答が返ってきた。「何割です │ │か」とたたみかけると「そうですね。95%くらいですかね」と言う。町長 │ │によれば「職業はと聞けば、みんな農業とか山林業とか答えるでしょうが、│ │95%の人が公共事業で食べていて、残りの5%の人も主たる収入源は土木 │ │です」ということだった。 │ └──────────────────────────────────┘ http://www.yorozubp.com/9802/980210.htm この山村の人々は、「公共事業で食べて」いるのである。「主たる収入源」が 「公共事業」なのである。 このような人々が選挙に熱心になるのは当然である。選挙に生活がかかってい るのである。何としても「公共事業」を引っ張ってこなければいけないのである。 「公共事業」が無くなっては、「食べて」いけないのである。 「公共事業で食べて」いる人は、そうでない一般的な人より選挙活動に熱心に なる。この傾向は、山村だけでなく日本全国で見ることが出来る。 ■ 歪んでいる選挙結果 次の事実を確認しよう。 ┌──────────────────────────────────┐ │ 選挙結果は歪んでいる。 │ └──────────────────────────────────┘ 選挙結果は、国民全体の意向を正確には反映していない。 なぜか。一部の人だけが投票に行くからである。投票に行く人に特定の傾向が あるからである。母集団が歪んでいるのである。 投票に行った人と国民全体とでは、違った傾向を持っている。 これは土建屋の例を考えればよく分かる。土建屋は選挙に熱心である。土建屋 の関係者は必ず投票に行く。「公共事業で食べて」いる人は必ず投票に行く。 それに対して、一般的な人は、そんなに選挙に熱心ではない。誰が当選しよう と、自分の生活に直接影響はないからである。だから、必ず投票に行く訳ではな い。雨が降ったら投票に行くのは止めてしまう。投票日が旅行の予定日とぶつか れば、投票には行かない。 つまり、投票とは、行きたい人だけが行くものなのである。行きたい人には、 ある傾向がある。だから、国民全体の意向は正確には反映はされない。 例えば、土建屋の意向の方が強く反映されることになる。国民全体の意向以上 に公共事業がおこなわれることになる。望んではいない道路や橋が作られること になる。 それは選挙結果が歪んでいるからである。道路や橋を作りたい人の方が熱心だ からである。 ■ インセンティブ 土建屋と一般の人とでは、選挙への熱心さが違う。気合いの入り方が違う。 それは、インセンティブが違うからである。選挙の重要さが違うからである。 土建屋にとって、選挙は非常に重要である。生活がかかってる。だから、選挙活 動に強く引きつけられる。選挙活動をしたくなる。(注1) だから、土建屋の意向の方が通りやすくなっている。 現状では、このように選挙結果は歪んでいるのである。 この歪みを正すためには、どうしたらいいのか。より多くの国民の意向を選挙 結果に反映させるには、どうしたらいいのか。 インセンティブを変えればよいのである。 思考実験をしてみよう。例えば、投票を棄権した者から罰金を取ることにする とどうなるか。みんな「熱心に」投票に行くようになる。罰金を取られたくない からである。インセンティブが変わったのである。 実際に、罰金を取る制度を採用している国もある。 しかし、今のところ、日本ではこのような制度が採用される可能性は少ないで あろう。 インセンティブを変える他の方法は無いのか。 ■ カニが選挙を変える とても、スマートな方法がある。 カニである。 ┌──────────────────────────────────┐ │山形 うん。たとえば、ここに希少動物の生息地があるけど、ここを潰す │ │ような開発は賛成ですか、反対ですかって投票をするでしょう。すると投 │ │票しに来るようなやつというのは、たいていが反対派なわけ。ほとんどの │ │人はそんな、何とかっていう鳥がいようがいまいが知ったこっちゃない。 │ │代わりに公園を作ってくれるんなら、それでかまわないとは思っているん │ │だけれど、でもそういう人は、わざわざそれを言いに投票所まで来るほど │ │この問題に対する関心も熱意もないのね。すると、ふつうに投票させると、│ │反対派のほうが有利になってしまうわけ。 │ │ でもそれなら、そのふだん投票所にわざわざ来ない人たちを、なんとか │ │来させるような手だてを考えれば、勝てることになる。……〔略〕……で、│ │何をしたかっていうと、投票所の横で一大バーベキュー・パーティーを開 │ │いて、投票したら……。 │ │西村 タダでくれる。 │ │山形 そう。ただでカニが食えますって。そこの住民特性を分析したら、 │ │なんとかいう特別なカニに目がない人がやたらに多い、というデータが出 │ │てきたんだって。……〔略〕……それによって今まで選挙に来ようと思わ │ │なかった人がカニ目当てに来る。……〔略〕……で、見事に開発賛成で投 │ │票の決着がついたんだって。 │ │ 〔山形浩生氏と西村ひろゆき氏との対談、井上トシユキ・宮前.org │ │『2ちゃんねる宣言 挑発するメディア』文藝春秋、2001年12月、 │ │260〜262ページ〕 │ └──────────────────────────────────┘ カニが選挙を変えたのである。インセンティブを変えたのである。 カニを食べたいというインセンティブのおかげで、本来は投票に行かない関心 の薄い層が投票に行った。その結果、選挙結果が大きく変わった。(ハワイでの 話である。) ■ GLAYが選挙を変える 確かに、カニは選挙を変える。 投票所でカニが食べ放題ならば、投票に行く者は増えるであろう。 しかし、問題がある。コストがかかりすぎるのである。カニは高い。そんなお 金は無い。 カニの他に、日本人が好きなものはないか。特に、投票率が低い若者が好きな ものはないか。 GLAYがある。GLAYのライブには、途方もない数の若者が集まっている。 ものすごい人気である。GLAYなら、カニに匹敵するインセンティブになる。 GLAYのファンの集いを各投票所付近で開催しよう。TAKURO氏に、そ のようにホームページで呼びかけてもらおう。(注2) また、投票に行った人に特典を用意しよう。ホームページ上に投票に行った人 だけが聞ける新しい曲を用意しよう。投票に行った人だけが見られる画像・メッ セージを用意しよう。 このようにすれば、GLAYファンは投票に行くであろう。あまり選挙に関心 の無い一般的な若者の投票率が上がるであろう。インセンティブが変わったから である。 これは一例である。インターネットを利用することで、お金をかけずにインセ ンティブを変えることが出来る。 選挙のインセンティブを変える様々な方法があるのである。 ■ インセンティブを考えよう 選挙結果は歪んでいる。 しかし、歪みを正す方法はある。 インセンティブを変えるのである。 ┌──────────────────────────────────┐ │ 1 投票棄権に対する罰金 │ │ 2 カニ │ │ 3 GLAY │ └──────────────────────────────────┘ どれも、インセンティブを変える方法であった。 もう一つ挙げよう。 ┌──────────────────────────────────┐ │ 4 インターネットによる投票の実現 │ └──────────────────────────────────┘ インターネット上で投票が出来るようになれば、インセンティブが変わる。自 宅で簡単に投票できるようになれば、インセンティブが変わる。携帯電話から簡 単に投票できるようになれば、インセンティブが変わる。今まで棄権していた人 が投票するようになる。 例えば、現状では、雨が降ると投票率が下がっている。しかし、インターネッ トによる投票が実現されれば、自宅から投票できるようになる。だから、雨が降 っても投票率は下がらなくなる。 例えば、現状では、旅行に行くという理由で棄権する人がいる。しかし、携帯 電話のネット機能を使って投票できれば、旅行先からも投票できるようになる。 だから、棄権する人は減る。 インセンティブを変えることによって、選挙を変えることが出来る。世界を変 えることが出来る。(注3) 選挙のインセンティブを考えよう。 世界は変えられるし、変えなくてはならないのだから。 (2003年11月7日) (注1) 土建屋にとって、選挙に勝つことは非常に重要である。死活問題なのである。 山梨の知事選で勝ち組に入った土建屋は売り上げが十倍になった。 井尻工業の売上げは、〔昭和〕六十年十二月期で約五十八億円。うち 官公庁工事が六〇%を占める。資本金も選挙後に二回の倍額増資を行ない、現在 四千万円。県内大手企業になったと言ってよい。同業者によれば、選挙後に十倍 は伸びたという。五十三年当時は売上げが数億の企業にすぎなかったわけである。 「だって、井尻んとこはもともと大工あがり。五十三年には土木部門など持って いなかったんですよ。それが選挙後に手を出し、その売上げだけで七億円になっ ていますから」と先の業者は教えてくれた。社長の井尻は金丸信とも親しい。 〔米本和広「集票と利益配分を担う後援会が血で血を洗う政争史を演出した!」 『別冊宝島62 自民党という知恵』JICC出版局、1987年3月、229 ページ〕 この土建屋は、選挙に勝った後に、売り上げが「十倍は伸びた」のである。 「土木部門など持っていなかった」のに「選挙後に手を出し」たのである。 選挙に勝てば、公共事業を受注できるようになるのである。 そして、もし負ければ、公共事業を受注できなくなるのである。 このような状況ならば、土建屋が選挙に熱心になるのは当然である。 (注2) GLAYの公式ホームページは次のものである。 ◆ GLAY : HAPPY SWING SPACE SITE http://www.glay.co.jp/ (注3) さらに、次のように思考実験してみよう。 公共事業を全く無くしたら、どうなるか。 そのような状況ならば、土建屋は選挙になっても元気にはならない。 元気になっても、意味が無いからである。公共自治体から工事を受注できない からである。 公共事業が全く無ければ、選挙は全く変わる。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ メールマガジン インターネット哲学【ネット社会の謎を解く】046号 登録・解除・バックナンバー閲覧は次のページから。 http://www.irev.org/file/touroku.htm この文章は、転送、転載、複写、大歓迎です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──────────────────────────────────── ● サイトにアップしました ──────────────────────────────────── 上の文章をサイト上にアップしました。 ●GLAYが選挙を変えるかもしれないという話 −−選挙のインセンティブを分析する http://www.irev.org/senkyo/glay.htm 選挙のインセンティブを考えましょう。 リンク大歓迎です。 ──────────────────────────────────── ● すみません! ──────────────────────────────────── 執筆が難航し、発行が大変遅くなってしまいました。すみません。 メールをいただいた方にも、お返事を書けませんでした。これから、お返事を 書く予定です。すみません。 「Re:『インターネット哲学』」、楽しく読んでいます。なかなかお返事でき なくて、すみません。 ● Re:「インターネット哲学」 http://b-51.hp.infoseek.co.jp/magazine.html#philosophy それでは、皆さん、これに懲りずに、お付き合いいただければ幸いです。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ◆ インターネット哲学 【ネット社会の謎を解く】(週刊?すみません!) 転載、転送、選挙などでの利用、大歓迎です。 【筆者】 諸野脇 正 (しょのわき ただし) 【e-Mail】 ts@irev.org 【Web Site】 http://www.irev.org/ 【登録・解除】 http://www.irev.org/file/touroku.htm  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ----------------------------------------------------------------------- このメールマガジンは,インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して 発行しています。( http://www.mag2.com/ ) マガジンID 75412 -----------------------------------------------------------------------



