2008/01/07
[NYニッチ激コラム]2008-1-7
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○ 2008-1-7 NYニッチ激コラム http://www.nyniche.com ○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○● ニッチをご愛読のニッチな皆さま 明けましておめでとうございます。 本年も個性溢れるライター陣が、多彩なニューヨークネタをお届けします。 引き続きご愛読の程、どうぞよろしくお願いします! ニューヨーク・ニッチ一同 ==================================================== NO.268 今週の記事 ◎逃げて行った二匹目のドジョウ「ヤング・フランケンシュタイン」 ◎ウェブマガジン www.nyniche.com のお知らせ ==================================================== 逃げて行った二匹目のドジョウ「ヤング・フランケンシュタイン」 Text by リル・アキーム ブロードウェイじゃ二匹目のドジョウは釣りにくい。 この金科玉条を教えてくれるのが、11月に鳴り物入りでオープンした「メル・ブルックス の新作ミュージカル、ヤング・フランケンシュタイン」だ。 御丁寧且つお下品にも自分の名前をタイトルに入れてくれとるので既にお気づきだろうが、 このミュージカルでドジョウを狙うのは前作「プロデューサーズ」でブロードウェイの記 録を塗り替える空前の大ヒットを飛ばしたメル・ブルックス大先生。 その大先生が自らの最高傑作である1974年のコメディ映画「ヤング・フランケンシュタイ ン」をミュージカルにして、ブロードウェイに再登場あそばした。 え? 「ヤング・フランケンシュタイン」なんて映画は知らない? ふとどきな奴め。 「ヤング・フランケンシュタイン」と言えば、1930年代の白黒ホラー映画を徹底的にパロ ディにしつつオマージュを捧げた、おバカギャグ満載の泣く子も笑うゴシックホラーコメ ディではないか! いや、マジで名作なんだから、あまり大きな声で「知らない」と言うと恥かくぞ。 で、その名作を1600万ドルもの予算でもって豪華なセットと衣装、派手な照明、スターキ ャストを投入して作ったのがこのいささか長いタイトルのミュージカル。 しかし、世界中に五万と居る「ヤング・フランケンシュタイン」ファンの期待を一身に背 負ったこの新作、非常に残念なことに実は元映画ほどには面白くない。前作「プロデュー サーズ」と比べるのも可愛そうなくらい面白くないもんだから、なんでこいつをわざわざ ミュージカルにしたのか考え込んでしまうほどだ。 いや、正確を記して言うと、一応そこそこには面白い。 たぶん、全役代役バージョンの吉本新喜劇くらいには面白い。 しかも吉本とは違ってキャストは歌って踊ってくれるし、舞台のセットは立派且つド派手 だし、轟く雷に稲妻といった視覚音響効果もたっぷりある。元映画でおなじみのギャグも ずらりと登場するし、この手の人気コメディ映画のミュージカル化で観られる特殊現象、 つまり、お約束ギャグの発射1秒前に観客が笑い始めるという現象も健在だ。 しかし、残念なことに面白さはやはりそこそこ止まり。 だって、映画を観ている時には同じギャグで何度でも爆笑できたこのワタスともあろうも のが、お気に入りのギャグが舞台に登場してもちっとも笑えないのだ。それどころか「な んで今までこんなギャグに腹をかかえて笑ってたんだ?」と自分のユーモアセンスを疑っ たほど。 い、いったいワタスに何が起こったというのだ? いや。実のところワタスには何も起こっていない。ギャグのほうに何かが起こっていたの である。 ま、そいつを説明する前にもっぺんとっくりと復習していただきたいのが、映画「ヤング・ フランケンシュタイン」の面白さの所以。 そう、ずばりパロディだ。 この映画は1930年代ホラー映画、特に31年の「フランケンシュタイン」と35年の「フラ ンケンシュタインの花嫁」をパロディにする為にメル・ブルックスと睫毛ぱっちりのジー ン・ワイルダーが作った映画である。しかも、奇跡的に残っていた「フランケンシュタイ ン」映画のセットをそのまま使っているところもミソ。 パロディは元ネタの形式を借りて表現するところに醍醐味がある。 だろ? 30年代当時の映画表現方法とフランケンシュタイン映画を徹底的にパロってゴスなホラ ー映画の体裁をとりつつ、おバカギャグを連発しているからこそ、映画「ヤング・フラン ケンシュタイン」は抜群に面白いのである。 さあ、そこんとこがよーくわかったところで、映画のパロディ映画を舞台ミュージカルに してしまうとどうなるかちょっくら想像してくれたまえ。 そうなのだ。もはやそれはパロディではなくなり、後に残るのは「モンスターを創りだし てしまった有名な爺ちゃんを嫌う孫が、遺産相続のために赴いた先祖のお城で結局自分も 爺ちゃんのようにモンスターを創っちゃいました」なんてどうでもいいストーリーと古く さくなったギャグだけなのである。 そしてそいつを観ているワタスは、誰もがオチを知ってるギャグでもって皆を必死で笑か そうとする服装ばっか派手な間抜けな友達を見ている気分を味わい、うまくいけばかなり 笑えるおなじみギャグにも腹の底から笑うことができないというワケなのだ。 但し、もしも450ドルもしやがるプレミアシート(注1)を買って観劇していたとしたら 話は別だ。そんな大金をかけていたなら、何が何でも笑ってやるぞと腹をくくり、後ろの 席で携帯電話が鳴っても大爆笑したはずである。 しかし、ワタスのお席はプレミアシートではなく、このミュージカルがそこそこにしか面 白くない理由は他にもまだあったのだ。 そう、それはミュージカルとしては致命的な、帰る道すがらに口ずさんでほくそ笑む曲が ちーっとも無いというもの。 まあ正直に言うと、耳に残って頭から離れない曲が1曲あるにはあるのだが、しかしそい つは1930年の同名タイトルのミュージカル映画「プッティン・オン・ザ・リッツ(Puttin' on the Ritz)」中の名曲。もちろん元映画でも使われていた曲で、ありとあらゆるスター がカバーしているスタンダードナンバーでもあるのだから、頭に残るのもそりゃ当然の話 なのである。 しかも、なんとも皮肉なことに、このミュージカルの一番の観どころはこの拝借ナンバー 「プッティン・オン・ザ・リッツ」だったりする。 フレッド・アステアとビング・クロスビー主演の1941年の映画「ブルー・スカイ(Blue Skies)」を観たことがある方ならよくご存知だろうが、この映画の中でアステアはトップ ハットと燕尾服にステッキを持ってバックダンサー9人を従えて(つってもアステア自身 の合成映像なのだが)(注2)この曲で素晴らしいタップダンスを踊ってくれる。 その史上に残る名場面を彷彿させるがごとく、ミュージカル版「ヤング・フランケンシュ タイン」では、トップハットと燕尾服を着てステッキを持ち、原宿ガールズなみの厚底ブ ーツを履いた怪物が、怪物の扮装をしたバックダンサー達と一緒にタップを踏んでくれる のだ。 元映画では非常に短かったこのシーンをグンと膨らませて「ブルー・スカイ」のワンシー ンのパロディに仕立て上げ、さらにフレッド・アステアへのオマージュにしてくれた演出 /振付けのスーザン・ストローマンのこのシーンでの仕事ぶりは実に素晴らしい! ゴシックホラー映画にオマージュを捧げて作られたパロディ映画「ヤング・フランケンシ ュタイン」を元に作られたこのミュージカルで、唯一元映画の精神の片鱗を見せてくれる のがこのシーン。 ミュージカル版「ヤング・フランケンシュタイン」の存在理由、ここにあり! ジャジャーン! でも、悲しいかな、やっぱりこれだけなのである。 ちっ。 なんでミュージカルにしたのかわからん度:★★★★★ クラッシック映画へのオマージュ度:★("Puttin' on the Ritz"のみ) チケットに払ってもよい金額:50ドル 注1:このミュージカル、「プロデューサーズ」ですっかり定着してしまった「プレミアム シート」よりもさらにお高い「プレミアシート」なるものを販売し始めた。こいつは週末 450ドルもしやがるのだが、このミュージカルにはそんな価値は無いので、決してプレミ アシートもプレミアムシートも買うべからず。 そんなにお金を使いたければ、元映画「ヤング・フランケンシュタイン」(995円)とそ の元の映画「フランケンシュタイン」(980円)に「フランケンシュタインの花嫁」(980 円)、ついでにアステアの素晴らしいダンスが見られる「ブルー・スカイ」(5040円)のDVD を買うべし! ほんでもってこいつはロッタリーチケットも用意されているので、当日、開演3時間〜 2時間15分前までに登録し、開演2時間前に劇場の向いのマクドナルドで行われるクジ引 きでマックフライポテトを食べながらくじに当たるのをじっと待つべし。当たりが出たら 最前列席が26.25ドルで買えるぞ。 注2:中央で踊るアステアの後ろで、9人のアステアがバックダンサーとして踊る合成映 像なのだが、実は後ろで踊る9人のアステアは、アステアがご丁寧にそれぞれ別々に踊っ て撮影した映像を合成して作られているんだそうな。アステア様があまりにも寸分の狂い 無く踊るもんだから、一つの映像をコピーして合成したようにしか見えないところがアス テアのアステア様たる所以なのである。この贅沢なシーンはミュージカルファンなら必見 だぞ。 "The New Mel Brooks Musical: YOUNG FRANKENSTEIN" 劇場:"Hilton Theater" 213 West 42nd Street (7th & 8th Avenue) URL: http://www.youngfrankensteinthemusical.com/ パフォーマンススケジュール:火 午後7時/水・土 午後2時&8時/木・金 午後8 時/日 午後3時 かぶりつき!ブロードウェイ観劇レポート No.8 http://www.nyniche.com/soul/broadway/index.html ○━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○ 本誌のウェブマガジン NYNiche はこちらをクリック。 http://www.nyniche.com さっそくあなたの「お気に入り」「ブックマーク」に加えてくだされ! WEB更新は第一&第三月曜日! ○━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○ =登録/解除方法= http://www.nyniche.com/ 画面右下から登録/解除へお進みください。(マグマグ・メルマ) 発行責任者:NY Niche (info@nyniche.com) 編集:Sally ◎恋とセックスと流行ネタをナマ出し NYニッチ激コラムのバックナンバー・配信停止はこちら⇒ http://blog.mag2.com/m/log/0000074477/


