2009/04/12
秘伝-通算244号 「構成力がない」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・ ・ ┃ [プロ編集者による] 文章上達<秘伝>スクール ┃ http://www.hiden.jp/ ┃ ┃ 通算244号 「構成力がない」 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・ ・ --文章学校に購買部復活!------------------------------------ ……2006年までの、旧「文章が上達する学校」にあった、 「文章学校購買部」が復活しました。 秘伝シリーズ三部作他、送料&消費税サービスにて販売中! 「文章学校」だけのオリジナルサービスです。 http://www.hiden.jp/shop/ -------------------------------------------------------- 【 村松恒平 既刊・ロングセラー 秘伝シリーズ 】 〈プロ編集者による〉文章上達スクール 『秘伝・改訂新版』 第二弾 『文 章 王』 第三弾 『 書く人 』 -------------------------------------------------------- 【 最新刊・先行予約注文受付中! 】 村松恒平プロデュース 『火星パンダちとく文学』 http://www.hiden.jp/shop/kaspanchi.php 村松恒平最新著作 『達磨』 http://www.hiden.jp/shop/dharma.php ------------------------------------------------------------ ┏━━━━━━━━━┳★ ┃<文章秘伝>ニュース┃ ┗━━━━━━━━━┻★ 【表と裏の出版】 編集者として長い沈黙を破って、久しぶりに本を出します。 表裏の2冊。 1冊は、『火星パンダちとく文学』という『掌編小説ゼミ』の参加者3人の掌編 小説集です。短い小説で57コ入っています。 http://www.hiden.jp/shop/kaspanchi.php 3人がここ5,6年に毎月ポツリポツリと書いてきた作品の中から、厳選したもの です。だから、ぽたりぽたりと垂らす水出しコーヒーのように濃厚なエキスに なっています。 一見、軽くて読みやすいのですが、気をつけないと、ときどき猛毒が入ってい ます。 あたらないように、ゆっくりと読んでください。 普通の小説ではありません。普通の小説って何だっけ? という気分になります。とても変な本なので、万人にお勧めではありません。 しかし、ツボにハマる人には、とても面白い本でしょう。そういう人と幸せに 出会えるかどうかがこの本の勝負です。それはあなたかもしれません。本屋さ んに並んだら、そっと覗いてみてください。 これは僕が編集者としての久しぶりの仕事です。 今までの編集者としての感覚や経験をすべてぶち込んで、あれこれ遊んでみま した。この本で編集者というのは、こんなこともできるのか!とびっくりする 人もいるでしょう。 『プロ編集者による……』というメルマガを出しているので、編集者として、 また文章の先生として、こちらが表の出版物です。 【禅の開祖。降りてきた小説】 裏の出版物は僕が「作家」として書いた『達磨』という短い小説。それに古い 友人でアーティストの高橋キンタローさんに装丁と挿絵を依頼したものです。 http://www.hiden.jp/shop/dharma.php このキンタローがたいへんな凝り性で、原稿を渡してから、入稿するまでに1 年以上かかっています。小説自体は2006年の8月に書いているよ…。 小説書いて、本になるまで3年近く。 しかし、待ちに待ち、気をもんだ甲斐あって、ミニマムアートのような、とて も美しい本になりそう。 七転び八起きのダルマさんと言えば、誰でも知っているけれども、達磨という のは、じつは禅宗の開祖なのです。禅といえば、難解で峻烈であり、不立文字 といいながら、さまざまな美しい言葉や挿話、それをめぐる芸術などが残る僕 の大好きな世界です。 座禅はしたことないけど、玄妙な世界として惹かれています。 でも、ここに出てくる達磨は、よく画像にある、ひげをはやして胆力の強そう な人物とは違います。全然違うタイプの人です。 なんでそんな達磨を小説に書こうと思ったのか、今となっては不思議に思い出 せないのです。あるとき、ふっと小説の頭から尻尾まで、尾頭つきで降りてき たのです。 だから、すんなりと書き終えて何の淀みもかった。 こういう体験は『神様学入門』という著書以来のことです。 ごく短い小説なのですが、降りてきてしまった以上は本にする義務があるよう な気がしたのです。 ………この本について語りたいことはたくさんありすぎて、まとまらないけど、 本屋さんに並ぶのはもう少し先なので、今回はこれくらいにしておきます。 どちらも一般的な観点から見たら、売れない可能性の高い本なので、この出版 不況のさなかに出版すること自体がかなり冒険というか、無謀というか。 でも、どうしても出したい本なので、読者の皆様に応援していただけるような ら、たいへんうれしいです。 なお、2冊とも、文章学校の購買部で予約することができます。 『火星パンダちとく文学』の特製ハガキつきです。 ◆文章学校購買部⇒http://www.hiden.jp/shop/ 【落語会】 『火星パンダちとく文学』の著者の一人、上野家ぱん駄さんが出版記念で落語 の独演会を開きます@新宿。 ぱん駄さんはアマチュアですが、落語歴は古く、なんともいえぬおかしみと風 格があります。ツボにはまると、プロはだしの面白さ。 とくにナンセンスな味わいは非日常の世界にぐいっと連れていってくれます。 初めての独演会でうまくツボにハマるかどうかはわかりませんが、思い切りシ ュールな話をリクエストしておきました。 そして、以下に書かれた『謎のおみやげ本』こそが『火星パンダちとく文学』 なのです。 1200円+税の本がついて、落語がたくさん聞けて2,000円は安い。 当日僕もいますので、声をかけてください。 打ち上げで飲みましょう! 【日時】2009年04月18日(土) 【名称】上野家ぱん駄出版記念大落語会 【会場】プーク人形劇場 http://www.puk.jp/theatre/theater.html 【開場】13時30分 【開演】14時00分 【終演】16時20分くらい 【出演】上野家ぱん駄 上野家小ぱん駄 上野家八重桜 上野家駄ンさん 上野家ぱん子 【木戸】当日2,200円(謎のおみやげ本付き) 前売2,000円(謎のおみやげ本付き) 【予約・問合せ】 以下のサイトからメールフォームで予約または問い合わせください。 未確認迷惑ブンガク物体ブログ(火星パンダちとくのHP) http://kasei.panda.chitoku.net/ 【掌編小説ゼミ】 ついに3人の作家を輩出し、世に問うことになった掌編小説ゼミ。ますます注 目です。4月のお題は『嫉妬』です。嫉妬深い方も、嫉妬深くない方も、ぜひ ご参加ください。投稿〆切は4月21日です。お待ちしています。 文章王の掌編小説ゼミ http://www.hiden.jp/semi-2009/ ************************************************* 「構成力がない」 ●質問● 村松様。 いつも楽しく、時にはあまりに鋭いお言葉に指の間から覗くようにして拝読し ております。 村松様の文章を読むと、モヤモヤしていたものがはっきりして、言葉の持つ力 を思い知ります。 さて、そのお力を是非お借りしたい質問があります。 それは「物語の構成力」についてです。 私はプロを目指して小説を書いております。 投稿作を書き終わった直後は夢中でポストに投函するのですが、 その作品を後から読み返すと、展開のぎこちなさ、ツギハギ感に愕然とします。 これは話を書く時に大まかな流れしか考えていないからいけないのだと思い、 次からはストーリーと登場人物の設定を、交互に計10段階を踏んで決めていく という方法を使ってみたのですが、2作書いてみて、ぎこちなさはぬぐえませ んでした。 一体どうしたら自然な流れの話を書けるのでしょうか? ちなみに書いているのは少女向けライトノベル(ファンタジー)で、 原稿用紙で250枚から350枚位のものです。 こんな根本的なことをお聞きしてしまうのは、虫が良くて申し訳ないのですが、 悩んでいます。 もしお答え頂けたら幸いです。 よろしくお願い致します。 ●答● まず、250枚から350枚の小説を完結させられる、という大したものですね。 それも、複数の作品を書き上げたようですね。 しかし、その話の展開がぎこちない、と。 これはいわゆる「仏作って魂入れず」という状態です。 それで魂はどこにあるか? どうやって入れるか? と質問されているわけです。 僕にとって魂というのは、すべての起点なのです。魂の小さな火花、ほんの一 瞬、どこでもない場所で何が閃く。物語はそこから始まります。 その火花の中に「何が書きたいのか」「どう書きたいのか」「誰に何を伝えた いのか」そういうメッセージが暗号のように、つまり作品を書くという形でし か解いていいくことができないように含まれている。 だから、僕に言わせれば全く順番が逆なわけです。 300枚の原稿を書き上げてから、「つまり僕は何が書きたかったのだろう?」と いう質問をしているに等しい。 300人分の料理を作ったあとで、「つまり僕は何が作りたかったのだろう?」 「おいしいって何だろう?」「どうすればおいしくなるのだろう?」という質問 をするシェフ志望がいたら、話の順番が違わないでしょうか? ……といって、あなたを責めるわけではありません。 今のライトノベル書きは、ほとんど全員が同じようなところから書き始めてい ると思います。最初に言ったように、あなたは長編をきちんと書き上げるだけ 立派です。 料理というのは根本に食べなければ飢える、というものがあるのです。 食物で飢えを満たす。その上で、いかにしてその行為を楽しく、飽きさせず、 健康的で快適にしていくか、という方法が発展してきました。 しかし、飢えることがなくなっても、人はどん欲に楽しみとしての料理を味わ い、新しい味を開発しているのです。 そういう意味でいうと、ライトノベルというのは、主食ではなく、ポテチとか、 スナック菓子に相当するような気がします。 ポテチは、飢えた人が最初に食べたいものではない。もう食べ物は十分にあっ た上で食が足りない人がちょっとつまみたいというものです。 それが元の姿ですが、次第にポテチしか食べない、ポテチでお腹いっぱい。白 いご飯はおいしくない、という人も出てくるわけです。 そうして、抹茶味やら、チョコレート味やら、カレー味やら、お好み焼き味や らと、どんどんバリエーションが発展していく。 ライトノベルの歴史も20年前後でしょう。あなたはそういう歴史の流れに後か ら参加している。だから、ポテチを見て、それをお手本にポテチを作ろうとし ている。しかし、ポテチの原料がジャガイモだということを知らない。 だから、なんとか科学合成だけでポテチを作ろうとしている。 しかし、それは自然の味にはならないわけです。 では、小説における原料のジャガイモとは何か? それは生の人生体験であっ たり、小説を読んでワクワクしたりした体験です。 彼女に告白しようとして心臓がドキドキしたことありますか? ドキドキは頭では作り出せない。 心臓なのです。 心が動く。 前にも言いましたが、作者が心を動かさない小説に、読者は心を動かさない。 大感動でなくても、ごく小さな、ささやかな動きでもいいのです。でも、ポテ チの原料がジャガイモであるように、小説の原料は感動なのです。 ライトノベルは、「誰にでもすぐに書ける」的なテクニカルな部分を強調する タイトルで作法の本がたくさん出ているので誤解されやすいのだと思いますが、 ジャガイモなしにポテチは作れません。 いや、あなたは感動ではなく、具体的な構成力というテクニックがほしいのだ、 というかもしれません。しかし、それは、本当に構成力でしょうか? 人は気持ちさえついていけば、相当強引な展開でも許してくれます。 たとえば、『デスノート』だって、死神のノートを人間が手に入れて名前を書 くと人が死ぬというかなり荒唐無稽な設定でできています。 しかし、それでも人は手に汗握ります。 細部の構成がきっちり考え抜かれているだけでなく、小畑健というすぐれたマ ンガ家がキャラクターをしっかり造形したから成立したと思うのです。 もし、そういう細部の表現力がなければ、あの作品も展開や設定が複雑過ぎて、 たいへんぎくしゃくとリアリティのないものになったでしょう。 悪くいえば絵空事そのもののようなあの作品が成立しているのは、作者たちの 気持ちがしっかり入っているからリアリティを感じるのです。 だから、あなたは「展開のぎこちなさ、ツギハギ感」を「構成力がない」とい う一点に還元していますが、構成力自体は3割くらいの要素でしかないのでは ないか、と僕は想像しているのです。 たとえば、マンガ『デスノート』のノベライズをあなたが頼まれたとしましょ う。構成はしっかりとあります。では、あなたは登場人物をイキイキと血の通 ったものにする自信がありますか? 僕が言いたいのはその部分のことです。 それが決まるのは、小説の中の世界を愛せるか、本気になれるか、ということ です。 あなたは「小説家になりたい」ということには本気なのでしょう。 でも、それよりも大切なのは、小説家になれるかどうかは後回しで、「小説そ のもの」、「小説の内部」に本気になることです。 たぶん、あなたが知りたがっているのはそういうことのような気がしますが、 違いますか? 野球の投手でも、「気合いの乗った投球」というようなことがよく言われるで しょう。たかが球遊びというけれども、その小さいポールを投げることに全身 全霊を乗せ、闘志を燃やし、人生を賭けることで、年俸何億も稼ぐ人がいる。 そういうのが人の世界の面白さです。 小説というのも、吹けば飛ぶようなテキストデータです。 それに対していかに本気になれるか、というのが作家のテーマでしょう。 そういういちばん太くて大きな枠組みを理解すると、僕に質問しなくても、だ んだん自分でものごとが考えられるようになります。 * ……で、たぶん、今あなたは、「では、どうしたら本気を出せるのだろう?」 と首をひねっているに違いありません。 それについてもお答えしましょう。 まず、自分の書いた小説で泣くことです。 それから怒ること。 笑うこと。 楽しむこと。 今まで書いた小説を出してきて、どこか一カ所でいいから、本気で泣けるシー ンを作ってください。泣けるところがなければ、怒るところでも、笑うところ でもいいです。 書きながら自分でも、泣きなさい。笑いなさい(by喜納昌吉)。 そうすると、その頁は生命力をもちはじめます。 そして、一カ所が生命を持ち始めると、他の部分に生命が吹き込まれていない のがわかるようになります。生命を持った部分は色鮮やかに、生命の欠けた部 分はグレーに感じるでしょう。 それが見えてきたら、他の部分も書き直しましょう。 たぶん、書き直しているうちに、後からでは直しても直りきらないものを感じ るでしょう。 そうなったら、新しい作品を書き始めましょう。 その作品には最初から生命が吹き込まれているはずです。 ************************************************* ◎○====2009年度最初のゼミです!=================○◎ ◆『文章王の掌編小説ゼミ』 2009年4月度 時間:2009年4月24日(金) 19時より 2時間程度 場所:東京都豊島区目白3-2-9-4階 料金:4,000円(1400字)または 5,000円(2800字) 詳細:http://www.hiden.jp/semi-2009/ ◆課題「 嫉妬 」 課題の内容に沿って、本当のことに嘘をまじえて 書いてください。それが上達効果を生みます。 ◆申込み締め切り 4月17日(金) ◆投稿締め切り 4月21日(火) ◎○=============================================○◎ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・ ・ ●質問募集● えー、皆様。村松恒平です。 質問は全てウェルカムです。 些細な質問/巨大な質問/マニアックな質問/初歩的過ぎる質問/鋭い質問/ 鈍い質問/くだらない質問/実際的質問/哲学的質問/個人的質問/普遍的質問/ 珍しい質問/陳腐な質問/具体的な質問/抽象的な質問/短い質問/長ーい質問 などなど、あらゆる質問をお送り下さい。 oshiete@hiden.jp 冒頭に「●質問●」と書いてください。 質問は無料です。送られてきた質問は、無記名とさせていただきます。 都合により、長さ、表現などをアレンジする場合があります。 また村松の著作などに流用させていただく場合があります。 ご承知おきください。 この企画の成否はひとえに質問にかかっております。 よろしくご支援のほどをお願いいたします。 ●感想等は、こちらにお送りください。お待ちしております。 fan@hiden.jp ---------------------------------------------------------------------- ●購読と解除● [プロ編集者による] 文章上達<秘伝>スクール は 下記の配信システムのいずれかによって配信されています。 まぐまぐ http://www.mag2.com/ [ID:0000068978] メルマ http://www.melma.com/ [ID:m00042072] 購読および解除は、ご利用の配信システムより 各自でお手続きくださいますようお願いいたします。 (※このメールに返信しても配信停止されませんのでご注意ください。) こちらのページでも購読/解除できます。 http://www.hiden.jp/free/mailmagazine.php ---------------------------------------------------------------------- [プロ編集者による] 文章上達<秘伝>スクール 通算244号 2009/4/12 発行 講師兼編集責任者:村松恒平 発行:文章学校 http://www.hiden.jp/ Copyright (c) 2001-2009 村松恒平 All Rights Reserved. 禁複製。 転載・紹介ご希望の方はメールにてお問い合わせください。 info@school.club.ne.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・ ・


