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2009/01/14

秘伝-通算240号  【世界の中心に本があった】

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  ┃ [プロ編集者による] 文章上達<秘伝>スクール
  ┃ http://www.hiden.jp/
  ┃
  ┃ 通算240号  【世界の中心に本があった】
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  § [プロ編集者による] 文章上達<秘伝>スクール」
  §  〓書籍版金言集 No.004〓
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  §  自分が心を動かさないで書いた文章が
  §  人の心を動かすことはありません。
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  § 『文章王 <プロ編集者による>文章上達スクール (2)』
  §  151ページ・【質問】プロになりたい より
  §  書籍紹介⇒http://www.hiden.jp/hidenbook/-1.php
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  ┃<文章秘伝> 反響号 ┃- - - - - - - 【今回はQ&Aなしの号です】
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【世界の中心に本があった】

今回は前回の「子どもが本を読まない」の反響の回です。

少し子どもの頃の話をさせてください。
僕の両親は「童心社」という児童出版社を創立したのです。
だから、生まれたときから周りに本があった。
母は編集長で、新しい本を作ったり気になる本があると、僕に見せたり読ませ
たりして反応をうかがうのです。
いま風にいうと、自分の息子でマーケティングをしていた(笑)ということに
なります。
リトマス試験紙か、と思いますけど、僕はたいへんに感度がよかったので、参
考になったみたいですよ。
児童図書の世界では、古田足日さんという、松谷みよ子さんと双璧をなす大ベ
ストセラー・ロングセラー作家がいるのですが、この人のデビュー作の本が出
たとき、母はあまり感心しなかったけれども、僕が読んで大興奮したので、改
めて執筆を依頼したといういきさつを聞いています。
つまり、僕のテイスティングによって、母はベストセラー作家を一人捕まえた
のです。

そういう環境で育ったので、僕にとっては、30歳くらいまで本は世界の中心だ
ったのです。
いまだに半分くらいはそうですね。銀行や証券会社やITの仕事なんて、何が面
白くてやっているのだろう? という疑問符しかありません。

しかし、お金という観点から見れば、そちらが世界の中心で、出版なんて辺境
に過ぎないでしょう。
でも、創造的なものを担っているのは、出版だからね。


【読書は特別か?】

同じ創造的な領域の中で、映像や音楽や美術や舞台芸術などに比べて読書は特
別か? ということは前回も書いたかもしれませんが、僕にとっては疑いもな
く特別です。
言葉という抽象的なシンボルを通じて、物語も思想も映像も登場人物の感情も
いきいきと流れ込んできて再生される。
その変換のプロセスになんとも言えない栄養になる部分があって、そこには他
のメディア、ジャンルにはない特権性があるように感じています。

「言葉が持つ力」の可能性は人類がある限り開発され尽くすことがないのです。
だから、文芸の開発はイコール人間性の開発なのです。
逆にいうと、文芸の停滞は人間性の停滞と言ってもいいでしょう。
これは人に対して論証できるようなことではなくて、僕の個人的な感覚ですけ
どね。



【『読めない書道』道場〆切ですよ】

『読めない書道』、書道も「道」なので、ふと、教室ではなく道場という言葉
にしてみました。
どうじょご参加ください。

近頃珍しいダジャレはさておきます。
書道というと、普通字をいかに整えて書くか、ということを考えると思うので
すが、『読めない書道』は違います。
昔、女性占い師で、「こんなん出ましたけど」という人がいたでしょう?
つまり、占いの結果を自分で出したのではなくて、天(?)から降りてきたと
いうことです。
『読めない書道』もそれと同じで「こんなん出ましたけど」と、自分の中から
字が出てくる、そういう状態を作る練習です。
つまり、字で表されたものという結果を作るのではなく、それを生み出す創造
的な心理状態を作り出すのです。
ダンスや音楽の即興と同じことです。日本の芸術には様式というものがはっき
りしているものが多いように感じますけれども、様式というものが冷え固まる
前には、即興的直観的なものがあった。
それを見失うとたいへん偏った理解になるのです。
言葉でいうと難しいですけれども、『読めない書道』は、そういうことをやさ
しく遊びながら手ほどきしようというものです。

文章ゼミは敷居が高い、と感じている人も、この機会にぜひ気軽に参加してく
ださい。

詳しくは
http://art.hiden.jp/shodo/

〆切は明日です!! いますぐ申し込みを!



【富と不況のお話】

久しぶりに文章と関係のないことを書きます。
気が向いた方は読んでください。

世の中、不況の話ばかりです。

坂本哲志総務大臣政務官という人が「本当にまじめに働こうとしている人たち
が集まっているのかという気もした」と言ったことに対して、ネットで読むと
「よく言ってくれた」という声が半数近いのに僕は驚きました。

派遣村というものの性格や内情についての反感が多いようですが、それは一つ
のシンボリックな事柄であって、その中に派遣労働者全体に対して、自業自得
である、自己責任である、という空気があるのですね。

細部の議論はいろいろあるでしょう。でもこれが自己責任というのはよくない。
いちばん考えないといけないのは、富の偏在ということです。

世界の資産の約半分は1パーセントの人々が持っているといいます。
そういってもピンと来ないでしょうから言い換えます。
100人の人がいて1人が5000円を持っている。残りの5,000円を残りの99人で分
け合っている。あるいは、奪い合っている、という状況です。

つまり、その1パーセント以外は全員が貧乏人なのです。
日本人はよくセレブといいますが、ずいぶん貧乏臭いセレブです。
海外では、セレブといったら自家用ジェットくらい持っていなければいけない。
それも仕事に使ってはダメで、昼飯を食べにいくのに下駄代わりに使うようで
なくてはダメです。

ジェット機というのは、買うのもたいへんですが、維持するのもたいへんです。
パイロットを雇い、常にメンテナンスをし、格納庫を借りて、燃料費を払う。
この費用の1〜2年分で会社員の生涯賃金なんて飛んでしまうくらいだと思いま
す。
そういう費用が痛くもかゆくみない、という人種が世の中にはいるのです。

その人たちは別にたくさん働いたわけでもなくて、たまたま石油王やら、財閥
の家に生まれただけなのです。
働いてお金を作った、というのは、マイナスです。いわゆる成り上がり者とい
う部類で、セレブの仲間には入れないのです。
ホリエモンも、自家用ジェットを持っていましたが、あっという間に叩き落と
されてしまいました。
成り上がりの末路です。

そういう世界に目をやると、つまり、その1パーセント以外は全員貧乏人だ、
ということがわかります。「目くそが鼻くそを笑う」という言葉がありますが、
派遣の人を蔑んだり、逆に少しだけ生活が上の人をねたんだりするのは、目く
そな態度というべきです。

貧乏人がいがみあってもどうにもなりません。
貧乏人は義理と人情を大切にしないとね。
今の世の中は貧乏人ほど心がささくれていくのが切ないのです。

アメリカでは、大量に食べられる食品が捨てられている。これを拾って食べる
フリーガンという人たちのニュースを見ました。まだ賞味期限も切れていない
食品が大量に捨てられていくシステムなのです。
フリーガンの人たちは、乞食やオームレスではなくて、そういう現状をアピー
ルするために、家も仕事もありながら、活動しているようです。

富は1パーセントに集中し、世界には飢えている子どもがたくさんいるのに、
アメリカでも日本でも食品が大量に捨てられている。
富や食糧がないわけではないのです。

世の中の仕切りが硬直しているから食えない人が出るのです。
仕切り自体をなめらかに流動的にできたら、誰も飢えないだけの生産力はじつ
はあるのです。

ほんの10数年前には、日本は「一億総中流」と言っていたのです。
それだけ豊かなものを実現しながら、今や下手をしたら餓死者が出そうな情勢
です。
そこで何が起きたのかをよく考えなければいけません。

これは、一つはIT化の流れの結果でもあります。これはもともとOAなのです。
オフィスオートメーション。オートメーションとは、つまり自動化による合理
化、人がどんどんいらなくなるシステムをすごい勢いで作っているのです。
だから、IT産業は隆盛ですが、彼らが働けば働くほど失業者が増える。

職人の手作業をコンピュータで代替すれば、職人はいらなくなる。
しかし、職人の手を離れれば技術は硬直して、やがて滅びるのです。

人が単純労働から解放されたら、その分もっと創造的な何かをすればいいと言
われたけれども、現実はそうなってはいない。ますます労働の質は断片的で非
創造的なものになっている。
生産力が上がったら飢える人がいなくなると言われたけれども、富はますます
偏在傾向を強めて逆のことが起きている。

派遣の人たちの労働意欲を云々する前に、そういう全体を真剣に見ないとどう
にもならないのです。

働く気がある人は、豊かではなくても、それなりの仕事がなくてはいけない。
そういう人を社会の外へと押し出してしまえば、結局生活保護にぶら下がり、
僕たちの税金に跳ね返ってきます。
しかし、その人たち個人の責任にして批判する前に、もう少し全体の構造につ
いて公正に考え、発言する人が増えていかないと、ますます住みづらい世の中
になるでしょう。



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◎前号「子どもが本を読まない」の反響



最初の反響は、友人の建築家Iさんからです。

●反響1
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村松さま

今回の質問「子どもが本を読まない」について、思ったことを少し。

私も子供の頃はあまり本を読みませんでした。
父親が本好きで相応な本を誕生日に買ってくれるのですが、どうも自分の興味
が向いたときにしか手が伸びなかったことを記憶しています。
高校の時に課題で出された本なんて、あとがきだけを読んで感想文を書いて出
していたり(笑)。現国とか大嫌いでしたし。

しかし、高校卒業して浪人した時に何となく手にした一冊の小説から変わりま
した。
まさに人生が変わったといってもいいくらいで、一冊の本の中に広がる世界に
のめり込んでいったのです。その最初の本は読みながら泣いてました(笑)。

私自身、小さい頃に読み聞かせをされたかどうかは親に聞いてみないと分かり
ません。
私の子供はまだ小さいのでなるべくしてあげようと思ってしていますが、
それでも、本や読むことに興味を持つ、いつスパークする(笑)かはわからな
い、
私もそうであったように、大人になってからでもいい、くらいに思っています。

ただ「こんなに素晴らしい世界があるんだよ」というきっかけ、餌まき?は
しておいてもいい、いやむしろ親自身が読んで楽しんでいれば、そのうち子供
も興味持つんじゃないかと。

ダラダラとすいません。
最後に、小さい頃だけでなく、大きくなっても大人になっても、読み聞かせは
いいですよね。
詩だけでなく、優れた短編を持ち寄った朗読会などの機会ももっともっとあっ
ていいと思います。(企画しようかな…笑)


●村松コメント

一冊の小説って、何の小説だろう? 前に聞いたかもしれないけれども、忘れ
てしまいました。
音読は大切ですね。ゼミにも自分の作品を家族に音読して聞かせている人がい
て、その人の文章はとてもきれいです。
音読の世界はまだ開発されつくしていない、すごく意味があるアプローチだと
思います。
朗読会、ぜひ企画してください。参加します。


●反響2
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質問・回答ともに興味深く拝読しました。
村松さんの読書遍歴(ルパンやホームズ……)が自分の子ども
の頃、若い頃とそっくりだったので、笑いました。

私の中学生の娘も、積極的に本を読むことはしません。
読書感想文コンクールの大賞賞品が海外旅行である(そんなの
ありませんけど)などの不純な動機でしか本を読みませんが、
それでも読んでいるときは楽しそうです。そして一度読んで面
白かったものを繰り返し借りてきて(我が家はもっぱら図書館
を利用)読むこともしばしばです。
「本の虫」には程遠い状態ではありますが、けっして本を嫌い
ではないのでこれでいいと思うことにしています。
実をいうと、親のエゴで「本の虫」にしたくて、絵本の読み聞
かせはイヤというほどしてきました。大きくなった今でも「読
んで」とせがまれます。しかしながら、そのわりには、自分か
らは読みません。

村松さんがおっしゃるように、ウチの娘も「選ばれなかった」
のでしょう。けれど、選ばれなかった子どもにも、いずれ「大
切な一冊」と出会うときが来る、それを逃さないでくれればと
思いました。


●村松コメント

読み聞かせが必ずしも本好きに直接結びつかない、という一例ですね(笑)。
でも、見えない想像力の畑は確実に耕しているはずです。
ファンタジーの世界を内側に持った子どもは、現実主義一辺倒の子どもより豊
かに生きられると思います。
そういう子どもたちが本当に未来を切り開く力を持っているのです。

それに、タネを蒔いておけば、本好きもそのうちに発芽、開花するかもしれま
せん。まだ諦めるには早いでしょう。


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       ◎○====まだ間に合います!=======================○◎

    ◆『文章王の掌編小説ゼミ』 1月度

     時間:2009年1月30日(金)
           19時より 2時間程度
     場所:東京都豊島区目白3-2-9-4階
     料金:4,000円(1400字)または 5,000円(2800字)
     詳細:http://www.hiden.jp/semi-2008/

    ◆申込み締め切り 1月23日(金) 
    ◆投稿締め切り   1月27日(火) 

       ◎○=============================================○◎



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●質問募集●

えー、皆様。村松恒平です。
質問は全てウェルカムです。

些細な質問/巨大な質問/マニアックな質問/初歩的過ぎる質問/鋭い質問/
鈍い質問/くだらない質問/実際的質問/哲学的質問/個人的質問/普遍的質問/
珍しい質問/陳腐な質問/具体的な質問/抽象的な質問/短い質問/長ーい質問

などなど、あらゆる質問をお送り下さい。 oshiete@hiden.jp

冒頭に「●質問●」と書いてください。
質問は無料です。送られてきた質問は、無記名とさせていただきます。
都合により、長さ、表現などをアレンジする場合があります。
また村松の著作などに流用させていただく場合があります。
ご承知おきください。

この企画の成否はひとえに質問にかかっております。
よろしくご支援のほどをお願いいたします。

●感想等は、こちらにお送りください。お待ちしております。 fan@hiden.jp

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       文章上達<秘伝>スクール 通算240号 2009/1/14 発行
 講師兼編集責任者:村松恒平
 発行:文章学校 http://www.hiden.jp/
 Copyright (c) 2001-2009 村松恒平 All Rights Reserved. 禁複製。
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