2008/09/10
秘伝-通算234号 「衝動と目的」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・ ・ ┃ [プロ編集者による] 文章上達<秘伝>スクール ┃ http://www.hiden.jp/ ┃ ┃ 通算234号 「衝動と目的」 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・ ・ ★━…‥…━…‥…━…‥…━…‥…━…‥…━…‥…☆ ◆『文章王の掌編小説ゼミ』 9月度 時間:2008年9月26日(金) 19時より 2時間程度 場所:東京都豊島区目白3-2-9-4階 料金:4,000円 詳細:http://www.hiden.jp/semi-2008/ ◆申込み締め切り 8月20日(土) ◆投稿締め切り 8月23日(火) ※初めての方は、早めのメンバー登録をお願いします。 ★━…‥…━…‥…━…‥…━…‥…━…‥…━…‥…☆ ┏━━━━━━━━━┳★ ┃<文章秘伝>ニュース┃ ┗━━━━━━━━━┻★ 【ごぶさたです】 久しぶりです。最近、メルマガを書くのがめっきり遅くなりました。夏か年齢 のせいで頭がボケてきたのか(笑)、我ながらややこしいテーマを扱うように なったからなのか、自己評価できません。 今回の質問は初期衝動の続きです。えー? 何の話だか忘れちゃったよ、とい う方もいるでしょう。本当はもう少しタイムリーに書きたいのですが、勘弁し てください。 【プリントアウト】 最近、「何回かじっくり読むので、プリントアウトしている」という声を何人 かに聞きました。一回ではどうもわかりにくいらしいのです。そうやっててい ねいに読んでもらえるのはまことにありがたいことです。 今回のも、よく文脈がわからなくなったら、以前の関連号と付き合わせてもら えれば幸いです。 僕も「何回読んでもわからない」と言われないようにがんばります(笑)。 【オンラインゼミ、新規受付中止】 オンラインゼミの新規の方の受付を当分停止します。初めてゼミに申し込まれ る方、という意味で、いままで、ゼミ、オンラインゼミを受講された方は、こ の限りではありませんので、ご遠慮なく継続、お申し込みください。 【目白ゼミは今まで通り】 文字数と〆切違反に関して若干の規約変更がありますが、目白ゼミは今まで通 りです。今月は26日。楽しい打ち上げともどもご参加ください。 詳しくはここです。 http://www.hiden.jp/semi/ 【質問、感想募集中】 質問枯れ気味です。「質問いっぱい届いていて読まれなかったり、採用されな いのではないかな?」という心配はご無用です。 また「こういう質問は前に出たのではないかな?」と心配でもとりあえず送っ てみてください。もちろん、僕の既刊の本を読んでみて確認してくださっても うれしいですが、既出の質問でも、気を悪くしたりはしません。 また似たような質問があっても、その人らしさがあって、微妙に違う場合は、 お答えすることがあります。 というわけで、まあ、必ず採用するとはもちろん言えないのですが、質問を送 ってみてください。 感想もときどきぽちぽちっと来ますがうれしいものです。必ず読みますのでお 送りください。返事は(ときどき)書きます。 どうぞよろしく。 ************************************************* 「衝動と目的」 ●質問● こんにちは。 いつもメールマガジン楽しみにしております。 **といいます。 (以前にご質問、カウンセリングでお世話になりました) 今回の「表現にとって技術とは何か?」、 とても興味深く読ませていただきました。 今日は「いまここ」に関して質問させてください。 ※以下、ずっと自分の中で整理できずにきたことなので 言葉の定義がぐちゃぐちゃだったりするかもしれませんが、 どうかご容赦ください。 「いまここ」、哲学とか仏教に出てくる言葉でしょうか。 これまでにも何度か聞いたことがあるような気がします。 村松様は「初期衝動」と表現されていましたが、 例えば「これが好き!」「やってみたい!」「楽しそう!」 というような気持ちだと言い換えてよいでしょうか。 私はいつも「思い立ったが吉日」で、 夜中に部屋の模様替えを始めてみたり 突然、旅行に行ってしまったり、ということが多いです。 とにかく夢中で何かをしているときだけが 生きていると感じられる瞬間です。 今、編集の仕事をしているのも、 「好き!」という思いだけで続けてきました。 ところが世の中ではいつも「理由」を求められます。 例えばマスコミの入社試験では、 いつも「なぜこの仕事をしたいのか」という作文を書かされるのですが どんなに理屈をつけても、自分の「好き」「楽しい」という感情は 説明できるものではないという違和感がありました。 「どうして好きという気持ちだけじゃだめなんだろう」。 いつもそう思います。 一方で、目指すところがないと、 なんだかふらふらと刹那的に生きているような 不安にかられることもあります。 特に、「やりたい!」という衝動だけで動いていると、 それがなくなってしまったときに突然、空虚になります。 「何のために生きてるんだろう」「何がしたいんだろう」 さらには「このまま消えたらラクだな」……などと。 以前、村松さまが「目標と目的」というテーマで 説明されていましたが、ようするに私は「なぜ?」を 考えていないということなのでしょうか。 人生の目的を探求していくことと、 自分の中の衝動とはどういう関係にあるのでしょうか。 あるいはセンタリングの感覚というのはどういうことなのでしょうか。 ●答● 231、232号で、初期衝動というものを技術主義との対立的に扱ったわけです。 技術だけではなく、世の中のしくみ全体が、初期衝動というものを前提にせず にもっと継続的なものをベースにできあがっています。 たとえば、バンドが人前で演奏しようとしても、ライブハウスを何週間か前に おさえなければなりません。 人気のあるアーティストなら、1年後までライブのスケジュールが埋まってい るかもしれません。 ストリート・ミュージシャンなら、「今日は気分が乗らない」とか「調子が悪 い」といって、その日の気分で決めることができます。 しかし、プロになってしまえば、そんなことは言えません。あらかじめ決めら れた場所と時間で自分の最高のパフォーマンスを見せなくてはなりません。 気分がのらなくてもなんとか鼓舞しなければなりません。 お金がからんだり、社会性が高くなるほど、こういう決まり事に縛られていく ことになるのです。 こうなると、初期衝動ではなく、意志がなければ務まりません。 個人の意志と社会的要請は、世でよく使われる比喩でいえば、縦糸と横糸です。 それが一つの織物のようになって社会が成り立っています。 しかし、この社会的な要請の横糸に、近年大きな変化があります。 社会がコンピュータシステムによって合理化され、また大規模化して、融通が 利かなくなって来ました。 たとえば、地上波デジタル、というのがいつの間にか、どこかで決定された事 項として降りてくる。莫大な国家的コストと、個人のテレビの買い換え、装置 のつけかえコストがかかるのですが、個人がこれに異議を申し立てようとして もできない。テレビを見なくなるしかないかもしれない。 これは国策で進めていますので、どんなにムダでも(お役人には新たな天下り の受け皿になるようです)、今さらやっぱりやめよう、ということにはならな い。 会社でも、新しいシステムが導入されました、といえば、ワークスタイルもそ れに合わせなければいけない。システムの中では、例外というのは、認められ ませんから、それについていけなければ無能力者ということになります。 考え抜かれたよいシステムであれば、まだいいですが、たとえできの悪いシス テムでも、簡単には変更ができません。 そういう大きな状況があって、個人の意志という縦糸はなかなかまっすぐに通 りにくいのです。 初期衝動というのは、直観的なものですから、こういう社会的な要請と意志の マトリックスの上の宙空に、いきなり斜めに棒をひっぱってしまうようなこと です。 社会的要請とはほとんど接点がないので、限りなく自由ですが、逆に社会に響 いたり、何かメリットがあるということも少ないのです。 いわゆる芸術など、こういうベクトルにあります。だから、一般人はほとんど 興味がないのです。 そして、芸術の99パーセントはお金にならないのです。 初期衝動のいいところは、こういう無意味なところです。 よく衝動的な殺人とかいいますが、この世へのうらみつらみとかと結びつくと ロクなことがありません。 アーティストも商売っ気がありすぎると、不純な感じになります。 要するに初期衝動の純粋なあり方は、社会との接点が限りなく少ないのです。 だから、他人を傷つけたり、無理して自分を消耗したりするべきことではない のです。 社会のマトリックスからの一つの無重力的な逸脱の運動なのです。 それ自体は無意味であるがゆえに、逸脱することによって、ふだんと全く違う 視野を得ることができます。 この視野が意志の先行きの見えない個人にも必要だし、社会のマトリックスを リフレッシュしたり更新したりするときにも必要なのです。 そういう無意味の意味、というものがないと意味だけの世界では人は息が詰ま ってしまいます。 無意味もあまりに役割づけて功利化すれば、意味になってしまいますが、おお よそ、そのような現象が起きるのです。 衝動的に行動したあと、虚しくなるということですが、それは、そこに何か意 味づけをしようとするからではないでしょうか。 もう一度言いますが、衝動的な行動は無意味です。 無意味だから、いいのです。 しかし、無意味な行為は積み重ねられません。 続けていると、狂気の世界に近づいていきます。 やはり、いずれは現実のマトリクスに還ってくるのです。 それは遊び疲れた子どもが家に帰るようなものかもしれません。 家に居れば外に遊びに行きたくなる。外で遊んでいれば、そのうち家に帰りた くなる。どちらかにずっと居られるとか、居るべきだと思うと辛くなるのです。 バランスと切り替えが大切でしょう。 そのことと生きる目的とがどのように結びつくかということも、ご質問ですね。 小さな子どもは、発達段階に応じた遊びによって必要な能力を身につけていき ます(現代は携帯やゲームなどでこのような段階も壊れていると思いますが)。 それと同じことが大人にもあるというのが、僕の基本的な考えです。 いつもいきいきとして暮らしている人は、数値では測れない部分で少しずつ精 神的な発達を遂げているのです。 人の肉体的な成長は20代くらいで止まるし、社会人になって一人前にお金を稼 ぐようになれば、だんだん精神的な成長は問題にされなくなりますが、僕は30 代でも40代でも50代(今の僕の年齢です)でも人の精神は成長すると思ってい ます。 成長を止める要因を自分で作り出さなければ、という条件でです。 なぜ生きるか、というのは、むずかしい質問ですが、この成長し続けるという ことが、一つの目的や目安と考えることもできましょう。 親は子どもの成長に無条件に目を細めます。ということは、自分自身が成長す るということにも同様に喜びや意味を感じていいはずです。 成長するということは、可能性が増えることです。 その可能性を使って何をするか、ということが目的と捉えられることが多いで すが、その何かした結果もまた成長にフィードバックされます。 年をとると可能性が限定されるというのが世間一般の考え方、感じ方ですが、 じつは年をとればとるほど自由になっていくものが、本来の精神なのです。 センタリング、というような言葉を使ってモノを考えるとき、この本来の精神 に戻ろうとしているかどうか、を基準にすればいいでしょう。 本来、自然の自分に近づいているか。 より自由になっているか。 人は振り子のように揺れながら、そういう地点をめぐって生きていくものだと 僕は思っています。 追記。 「いまここ」という言葉の起源を遡れば、たぶん『ビー・ヒア・ナウ』という 本から来ています。かつてヒッピームーブメントのバイブルだった本で、アメ リカのスピリチュアリズムの源流のような本でしょう。 例によって、僕は未読ですが、読んでみてはいかがでしょう。意外に波長が合 うような気がします。 ビー・ヒア・ナウ―心の扉をひらく本 (mind books)/ラム・ダス (著) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4892031410/bunshounogakk-22 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……・・ ・ ●質問募集● えー、皆様。村松恒平です。 質問は全てウェルカムです。 些細な質問/巨大な質問/マニアックな質問/初歩的過ぎる質問/鋭い質問/ 鈍い質問/くだらない質問/実際的質問/哲学的質問/個人的質問/普遍的質問/ 珍しい質問/陳腐な質問/具体的な質問/抽象的な質問/短い質問/長ーい質問 などなど、あらゆる質問をお送り下さい。 oshiete@hiden.jp 冒頭に「●質問●」と書いてください。 質問は無料です。送られてきた質問は、無記名とさせていただきます。 都合により、長さ、表現などをアレンジする場合があります。 また村松の著作などに流用させていただく場合があります。 ご承知おきください。 この企画の成否はひとえに質問にかかっております。 よろしくご支援のほどをお願いいたします。 ●感想等は、こちらにお送りください。お待ちしております。 fan@hiden.jp ---------------------------------------------------------------------- ●購読と解除● [プロ編集者による] 文章上達<秘伝>スクール は 下記の配信システムのいずれかによって配信されています。 まぐまぐ http://www.mag2.com/ 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