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2009/12/26

江戸時代の怪談[3-093]

◇江戸時代の怪談 三輯◇09/12/26號

◇こんばんは。
2009年最後の配信となります。

++其の九拾参++

  宵の猫

 むかしのこと。

 大阪の町奉行、嶋田越前守(えちぜんのかみ)は、
妻を江戸に残したまま。
 身のまわりの世話を焼く女もおらず、一人住まいの寂しさに、
せめて男ならばと、小姓や茶坊主を多く出入りさせていた。
 かれらは、日常の世話から夜伽までつとめていた。

 ある夜、池田匂当(こうとう)という琵琶法師がおとずれた。
 演奏があり、酒盛りの後、辞して隣の部屋へ下がった。

 しばらくして、匂当の連れていた十二、三歳の盲目の小坊主が、
「どなたか。小姓のかた」
 と、しつこく騒いで起こそうとする。

「何事か?」
 だれもが熟睡して起きてこないうちに、越前守が目を覚まして訊いた。
「たった今、ふすまや障子をすらすらと開けて、入り口の間から
この部屋へ入った者があります。お確かめください」

 さあ大変とばかりに、小姓たちが叩き起こされ、
蝋燭をともして探したものの、侵入者はどこにもいない。
 ただ、一匹の飼い猫が尻尾を振っていたけれど、
べつにいても不思議はないので、気にとめる者はいなかった。

「寝言を言いやがって」
「確かに入ってまいりました」
「まだ言うか」
 小坊主は頭をぽかぽか殴られた。
「まったく、眠いのに小うるさいやつめ」
 その場は坊主が叱られて終わったのである。

 別の日、越前守は昼寝から覚めて、庭の植え込みをぼんやりと眺めた。
 すると、かれの猫が、四、五歳の子供の帷子(かたびら)をくわえて現れた。
 それを身につけて、すっと立ち上がったのである。

(何をやっているのだ?)
 見る間に猫は、美しい姫君に化けた。
(さては、小坊主はこいつのことを言っていたのか。そういうことか)
 猫が化けた姫君は、高い塀を楽に跳びこえ、出ていった。

 帰るのを待って、越前守は猫を捨てさせた。誰もわけがわからず、
「よくネズミを捕ってくれたのに」
 と惜しんでいた。
(「宿直草」巻四 荻田安静著/延宝五年刊より)

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捨てるなんてもったいないと思ってしまいますが、
昔の人にとって、妖怪変化は「洒落にならない」できごとなのでしょう。
化け猫を飼っていたかどで、家を潰されたりしてはたまりません。

けれど、猫が子供のカタビラを着て立ち上がった姿を想像すれば、
どうしても微笑ましく、やはり捨てるくらいなら欲しいところですね。

狐がドクロを頭にのせ、月を拝んで化けるのは有名ですが、
猫の化けかたは、こんなふうなのでしょうか。

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〔へんしう後記〕
とまあ、本年も気まぐれな配信でしたが、
一年間、あたたかく見守っていただき、ありがとうございました。
よいお年をお迎えください。

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