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編集長猪瀬直樹。混迷する現代の諸問題への処方箋を経済を中心に提示します。コンセプトはジャーナリズムと歴史的視点の新しい融合。30歳代の現場人間による寄稿、座談会、書評等で構成しています。

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2009/12/23

[MM日本国の研究578]「『12・23 天皇誕生日』になぜA級戦犯は処刑されたのか」

                  2009年12月23日発行 第0578号 特別
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 ■■■    日本国の研究           
 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
 ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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              http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html

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   ◆◇◆        猪瀬直樹最新刊        ◆◇◆
 ◆◇『ジミーの誕生日―アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』◇◆
◆◇◆         (文藝春秋)税込1500円         ◆◇◆
 
   
   昭和23年12月23日、真夜中の巣鴨プリズン。

   時計の針が午前零時を回るとともに、7人の男たちは13階段を
   昇り始めた。

   東條英機、土肥原賢二、武藤章、松井石根、板垣征四郎、
   広田弘毅、木村兵太郎。

  「大日本帝国万歳! 天皇陛下万歳!」

   最期の声が、凍てつくコンクリートに響いた。

   ・・・だが、なぜ彼らはその日に処刑されなければならなかったのか?
   その日は、皇太子明仁の15回目の誕生日だというのに・・・。

               *

   猪瀬直樹からのメッセージ。
  「これは単なる偶然ではない。
   皇太子明仁の誕生日に東條英機が処刑されたという歴史的事実を
   ひとつの暗号とみて戦後史を読み解くべきではないか」

   http://www.amazon.co.jp/dp/4163721304

               *

  先週に引きつづき各紙に続々と書評が掲載されています!
              
 「スポーツニッポン」(12月23日水曜日付)、「東京新聞」(12月20日日曜日
 付)、「WILL」2月号(12月21日月曜日発売)、「GOETHE」2月号(12月24日
 木曜日発売)、「日刊工業新聞」(12月21日月曜日付)、「朝日中学生ウィー
 クリー」(12月20日月曜日付)、「朝日小学生新聞」(12月22日火曜日付)な
 ど、ぜひ手にとって下さい。

 「文藝春秋」1月号(12月10日木曜日発売)の論考『「ジミー」と呼ばれた天
 皇明仁の呪縛』もあわせてどうぞ。

               *

  さらにブログでも『ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗
 号」』がとりあげられています。その一つをここで紹介させていただきます。

 Espresso Diary@信州松本
 http://blog.livedoor.jp/takahashikamekichi/archives/cat_50001257.html


               *
               
 
 本日のメールマガジンは、「週刊現代」12月26日・1月2日合併号(12月14日
 月曜日発売)に掲載された著者インタビュー「『12・23 天皇誕生日』になぜ
 A級戦犯は処刑されたのか」をお届けします。

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「『12・23 天皇誕生日』になぜA級戦犯は処刑されたのか」

――猪瀬直樹氏が上梓した『ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ
「死の暗号」』(文藝春秋)が話題を呼んでいる。

 まるで歴史ミステリーのような“謎かけ”から始まる本作は、戦中・戦後の
日本国内の混乱と人びとの苦悩を描き出すと同時に、GHQ(連合国軍総司令
部)の司令官だったダグラス・マッカーサーが敗戦国・日本に背負わせた、巨
大な“十字架”の秘密に迫っていく。

○猪瀬● 「ジミー」とは、本書のサブタイトルからも連想できると思います
     が、天皇明仁、つまり今上天皇のことです。僕は1980年代に『天皇
の影法師』や『ミカドの肖像』を書いた経験から、学習院時代の皇太子明仁に
英語教師バイニング夫人がつけたニックネームが、「ジミー」だということを
知っていたんです。

 ではなぜその誕生日が「暗号」になるのか。実は皇太子明仁の15歳の誕生日
だった昭和23年12月23日に、東條英機ら7人のA級戦犯が巣鴨プリズンで処刑
されているのです。

 僕は、この日付の符合が果たして偶然なのか、ずっと気になっていました。
今作では、この長年抱いてきた「謎」の答えに、迫ることができたと考えてい
ます。


■マッカーサーの時限装置


――東條英機元首相らの処刑は、昭和23年12月23日に日付が変わった直後の午
前0時1分30秒に実行された。元首相らが獄房から出され、教誨師による最後
の祈り、バンザイ三唱などを経て、絞首刑台の前に立たされたのが午後11時59
分・・・・・・。

○猪瀬● これらの事実からは、GHQサイドが事前に準備を整え、綿密なシ
     ミュレーションを行なっていたことが窺えます。彼らは、紛れもな
く「12月23日」という日付に意味を込めて、A級戦犯を処刑したのです。

 もともと、このように「記念日」を重視するというのは、GHQの占領政策
の特徴でもありました。昭和23年にA級戦犯が起訴されたのは、昭和天皇の誕
生日である4月29日。現行憲法が施行された昭和22年5月3日は、その1年前
に東京裁判が開廷された日です。だから12月23日にA級戦犯が処刑されたとい
う事実も、明確な意図が込められていないはずがないのです。

――『ジミーの誕生日』では、マッカーサーらが、本国=アメリカや他の連合
国の意思が錯綜する中で、いかに“安く効率的に”日本を支配するか、陰謀と
工夫を巡らす姿が描かれる。新憲法の制定を急ぐGHQが、独自憲法にこだわ
る吉田茂元首相らの元に直接赴き、あらゆる手練手管と恫喝の手法を使ってG
HQ案の憲法を呑ませる場面などは、本作の見どころの一つとなっている。

○猪瀬● 当時、連合国側には「ヒロヒト」と「ヒトラー」を混同するような
     雰囲気もあり、ヒトラーと同様に、「天皇の責任を追及せよ」とい
う意見も根強かった。しかし、日本通でもあったマッカーサーは、そうした声
を無視して、あくまで「占領コスト」を優先しました。

 終戦前後の日本社会は、敗戦を受け入れられない元軍部らによる、武装蜂起
が起きる可能性も孕んでいた。実際、そうした暴動やテロを恐れ、皇太子は側
近らによって奥日光に疎開させられ、緊急時には「山越え」をする準備と訓練
まで行なわれていました。

 マッカーサーにとって、日本社会が速やかに秩序を取り戻し、米国中心の占
領政策を進めるためには、天皇の存在を利用しない手はなかった。だから天皇
からは権力を取り上げ、権威だけを残す形にしました。

 しかし、その一方でマッカーサーは、天皇の責任を完全に否定したわけでは
なかった。死刑判決を受けた東條らには「われわれは天皇を裁かないが、代わ
りにお前たちを裁く」という背景を、東京裁判の過程で十分に理解させていま
す。そしてその上で、昭和天皇と当時の皇太子には、「あなたたちも戦争責任
と無関係ではない。それを忘れてはならない」という重大なメッセージを送り
ました。

 それこそが、昭和23年「12月23日」という、皇太子明仁の誕生日に処刑日を
ぶつけた理由なのです。


■十字架を背負わされた


――運命の日、皇居では皇太子の15歳の誕生祝賀会が催されるはずだった。だ
が、未明に行われた東條元首相らの処刑に昭和天皇は衝撃を受け、歓談の声で
沸くはずの皇居は、終日静まり返ったままだったという。

○猪瀬● 皇太子、つまり今上天皇にしてみれば、天皇誕生日が来るごとに処
     刑されたA級戦犯のことを思い出すわけですから、これはマッカー
サーが日本に仕掛けた、壮大な「時限装置」だったと言えます。

 ただ、さすがのマッカーサーも昭和天皇が87歳まで長生きするとは予想して
いなかったのでしょう。終戦から10年、20年くらいで亡くなっていれば、「新
天皇の誕生日はA級戦犯の処刑日なのだ」という事実がクローズアップされ、
「時限装置」が激しく作動して、日本人全体にあらためて、戦争責任を思い起
こさせる作用があったでしょう。

 ところが、皇太子が即位したのはそれから40年以上も経ってからだった。ほ
とんどの日本国民は「天皇誕生日が4月から12月に移った」くらいの感覚しか
なかったはずで、マッカーサーの仕掛けは、ある意味で不発に終わりました。

 でも時限装置の存在を、決して忘れなかった日本人が一人だけいるはずです。

 自分の15歳意の誕生日に、戦争責任を背負って処刑された人たちがいる――。
この事実は、絶対に忘れることはできません。今上天皇は、若い頃から、沖縄
やサイパンといった国内外の激戦地に足を運んで、戦没者を慰霊して回ってい
ます。マッカーサーによって自身の誕生日に刻印された「十字架」を、十分に
自覚しているからなのでしょう。

――本作で特筆すべきは、こうした「秘められた歴史の真実」に迫るきっかけ
が、「ある貴婦人の日記」だということ。この子爵夫人は魅力的な女性で、終
戦前後の混乱期を、良家の子女とは思われない逞しさと機知で乗り切っていく。
 そんな子爵夫人がなぜ日記に「ジミーの誕生日」という、歴史を検証する上
で極めて重大な一文を残すことになったのか。この貴婦人がとった行動は、あ
る意味で非常に現代的なものでもあり、そこに到る人間ドラマも、この作品の
“キー”の一つになっている。

○猪瀬● 僕が以前著した『天皇の影法師』や『ミカドの肖像』も基本的には
     「謎解き」の物語です。これは僕の個人的な見解として、本という
のはたとえノンフィクションのジャンルに入る作品であっても、読者には手に
汗を握るような感覚を味わって欲しいと考えているからでもあります。

 だから今回の作品には、部分的に意図的な「仕掛け」を施してあります。も
ちろん、歴史上の事象に関しては、すべて事実です。しかし、より多くの人に
楽しんでもらえたらと考え、ある種の「味付け」を意識的にしている箇所があ
ります。

 僕は東京工業大学で講座を持っていることもあり、最近の若い人たちが、あ
まりに日本の近代史を知らないことに危機感を覚えています。大学で50人程の
学生に「高校で日本史を履修した人は?」と尋ねたら、なんと4人しかいなか
った。

 いまの日本は、歴史の積み重ねをみんな忘れてしまっているから、まるで
“一国ディズニーランド”状態です。機関銃を抱えたアメリカ兵に門番をして
もらっているのに、自分達は浮世離れした架空の世界に引きこもっている・・・
・・・。

 日本人の劣化を食い止めるためには、自分たちの歴史をきちんと知る必要が
ある。われわれは、みんな歴史の地層の上に存在している。歴史を背負ってい
るのは何も天皇だけじゃない。足下をじっと見つめ、自分が背負っているもの
をもう一度、考えてみる。この本をきっかけに、一人でも多くの人が「自分た
ちの歴史」に目を向けてくれればいいと思っています。

              (「週刊現代」12月26日・1月2日合併号掲載)


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