2009/11/05
[MM日本国の研究571]「東京都派遣職員の挑戦」
2009年11月05日発行 第0571号 特別 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■ 日本国の研究 ■■■ 不安との訣別/再生のカルテ ■■■ 編集長 猪瀬直樹 ********************************************************************** http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ □□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□ ■□■ 『東京からはじめよう』(MXテレビ) ■□■ 次回放送:11月7日(土)21:00-21:55(毎月第1土曜日) ゲスト:辻川泰史(株式会社はっぴーライフ代表取締役社長) 高校3年時よりボランティアを始め、福祉業界に進むことを志した辻川さん は、老人ホーム、在宅介護会社勤務を経て2002年に25歳の若さで訪問介護やデ イサービスを手がける有限会社はっぴーライフを設立しました。 介護現場の給与水準は低いといわれますが、辻川さんは多いひとには月40万 円を払っているそうです。10月23日金曜日放送の「朝まで生テレビ!」で同席 した辻川さんからその話を聞いた猪瀬は「それが可能ならば介護現場に活力が 生まれる。もっと話が聞いてみたい」と思い、今回のゲストとして招くことを 決めました。 ■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■ 東京ではないのですが、11月3日火曜日付けの各紙北海道版に以下のような 記事が出ています。 「夕張市民や北海学園大の学生らでつくる『夕張再生市民アンケート実行委員 会』(鈴木直道代表)は2日、8~9月に実施した市民の生活実態に関する調 査の報告書を道の高井修副知事に提出し、除雪体制の強化や、老朽化した市立 診療所の改築に向けた道の支援を要望した。 道庁を訪れた鈴木代表は『高齢化が進む夕張には、全国、全道の自治体が抱 える問題が集約されている』と指摘した。これに対し、高井副知事は、夕張市 が現在策定中の財政再生計画について『市民が不安のない生活が送れる内容で あってほしい。道としても協力する』と述べた」(北海道新聞) また、4日付け朝日新聞夕刊では全国版に掲載されました。 「来年から全国初の財政再生団体となる北海道夕張市で、市民有志と学生ボラ ンティアが全戸対象のアンケートを実施したところ、半数が財政赤字解消と生 活維持は両立しないと考えていることが分かった。市民の代表が9日に渡辺周 総務副大臣と面会し、支援強化を求める」(朝日新聞) * 要望をした「実行委員会」の「鈴木直道代表」は、猪瀬直樹が夕張市に派遣 した都庁職員です。28歳の若者は、一市民として夕張にできることを考え、有 志を募って市民生活の実態の調査をしたのです。鈴木さんは、都庁職員として の仕事だけでも、派遣された先の夕張市職員としての仕事だけでもなく、日本 全体のことを考えて仕事をしようと格闘しています。 今回は、その鈴木さんからリポートです。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 「東京都派遣職員の挑戦」 東京都福祉保健局総務部総務課(夕張市派遣) 鈴木直道 ■やり残したこと 今年8月17日、「市役所の連絡所がなくなり、市役所へ行くのもバスを使っ て1日がかりです」。東京23区より広い夕張市に住む80歳代の女性が、私に語 りかけた。 私が東京都庁から夕張市役所へ派遣され、1年7か月を迎えていた。当初1 年の任期であったが、「やり残したことがある」と派遣期間の延長を申し出た。 その「やり残したこと」とは、「市民の声」を行政へ届け、今年度中に策定さ れる財政再生計画に反映させることである。 具体的には、夕張市内全世帯を対象としたアンケート調査を実施すること。 私が所属する市民団体「ゆうばり再生市民会議」には既に提案していたが、「 調査を実施することには賛成だが、ボランティアの集まりである私たちにはと てもできるものではない」との判断であった。 諦め切れない私は、以前から夕張市で調査活動を行ってきた北海学園大学( 経済学部准教授 川村雅則)と、私の母校である法政大学(法学部教授 宮崎伸 光)へ協力を依頼し、「夕張再生市民アンケート実行委員会」を立ち上げ、8 月17日から調査を開始したのである。 ■第一次調査 調査は、学生2人1組による聞き取り調査とアンケート調査により行い、結 果として第一次調査及び第二次調査を合わせ、全世帯数の26パーセントに相当 する1661世帯から回答を得た。 北海学園大学が第一次調査を担当し、約30名の調査員が8月17日から23日ま での7日間で「夕張市民の暮らしの実態や声」を明らかにした。 <平成21年9月15日 北海道新聞社 朝刊>・・・・・・・・・・・・・・・・ 「夕張市民7割『地域悪化した』 医療・除雪体制改善求める声 北海学園大 ・市民団体が実態調査」 2007年3月に財政再建団体となった夕張市で、市民の7割近くが「地域が悪 化した」と感じ、医療体制や冬の除雪の改善を希望していることが、北海学園 大などが実施した生活実態調査で明らかになった。 北海学園大や市民団体などでつくる夕張再生市民アンケート実行委員会が、 8月中旬~9月上旬、聞き取りとアンケート方式で実施し、全世帯数の2割に 当たる計1170世帯から有効回答を得た。 この結果、財政再建団体に指定されて以降、「地域が悪化した」との回答が67 パーセントに達した。具体的な変化として、「友人・知人の引っ越し」が最も多 い60パーセントで、「店・事業所の廃業」(55パーセント)、「町内行事の減少」 (53パーセント)と続いた。 暮らしや生活上の不安では、高齢世帯の多さや市内に総合病院がないことなど から「医療・救急体制の不備」(48パーセント)を挙げる人が最も多く、次いで 「冬の除雪」(45パーセント)だった。 今後、改善すべき事業でも「除雪体制」を挙げる人が35パーセントと最も多く、 「消防・救急体制」(28パーセント)「市立診療所の改築」(27パーセント)が 上位に並んだ。 夕張市は財政再建団体になって以降、巨額の赤字を解消するために、除雪車の 出動基準を厳しくしたり、公共施設の休廃止や、市立病院の診療所化などの歳出 削減を進めている。 調査を行った北海学園大の川村雅則准教授は「夕張で暮らし続けることに希望 が持てない人が多い。財政的な再建計画も大事だが、産業育成や交通政策など未 来に希望が持てるビジョンづくりも必要だ」と指摘する。 実行委は近く、調査結果を夕張市に提出し、同市が本年度中に策定する財政再 生計画に反映するよう働きかける予定だ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ■ 第二次調査 法政大学は、第二次調査を担当し、約40名の調査員が9月14日から16日の3日 間「市が示した新しい計画案に対する市民の声」を明らかにした。 <平成21年10月10日 北海道新聞社 朝刊>・・・・・・・・・・・・・・・・ 「夕張再建期間延長で人口流出進む 市民調査の9割懸念」 財政再建期間を延長すると人口流出が加速すると市民の9割が考えている。こ うした調査結果を、夕張再生市民アンケート実行委(鈴木直道委員長)が9日、 発表した。市の財政再建に対する市民の不安が浮き彫りになった形だ。 法政大や北海学園大、市民などでつくる実行委が9月14日~16日に市民から聞 き取り調査し、全世帯の約12分の1に当たる491世帯から回答を得た。 市は策定中の財政再生計画に市民生活に必要な事業57項目を盛り込むと約15 0億円の赤字が解消できずに残る見込みのため、再建期間の延長が取りざたされ ている。 調査では、再建期間を延長した場合の人口への影響について、「人口が流出す る」との回答が最多の50パーセント、次いで「特に若い人の人口流出が進む」 (39パーセント)で、約9割が人口流出に拍車をかけると答えた。 「再建期間を延長すべきか」という問いには、「市民生活を維持しながら赤字解 消は難しい」が最多で49パーセント、次いで「延長はやむを得ない」(36パーセ ント)、「歳入歳出を見直して現行計画の期間内で赤字を解消すべきだ」(11パ ーセント)と続いた。ただ、再生計画への協力の賛否については「協力したい」 が76パーセントに上った。 この日、鈴木委員長から調査結果を受け取った藤倉肇市長は、「再生計画の策 定作業に反映させたい」と述べた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ■ 財政再建団体の限界と一点の好機 誰もが多くの悩みを抱えて生活しているが、その悩みが行政サービスにあたるも のであるならば、行政は「市民の声」に耳を傾け、最良の方法を検討し、実行して いく義務がある。財政再建団体となった夕張市でも当然に行われるべきものである が、夕張市では「市民の声」が必ずしも届く環境には無かった。 なぜなら、市は「全国最高の負担、全国最低のサービス」と言われる財政再建計 画に基づき、18年間で353億円の赤字解消することを目標としており、新たな事 業を実施したくともできない状態にあるからである。 一方で市民は、若くて力のあるものは夕張を去り、結果として市は全国一高齢化 率の高いまちとなり、「市民の声」を集めて行政に働きかけるという行動も起こり にくい現状があった。 しかし、財政再建団体となり3年目を迎えた夕張市に最後の好機が訪れた。新た に施行された自治体財政健全化法に基づき新しい計画(財政再生計画)を策定する という好機である。 この計画は、自治体の財政破綻に対する予防措置との法の主旨から考えれば、既 に財政再生段階(レッド・カード)にある夕張市においては、何も行動を起こさな ければ「看板の付け替え」に終わるが、財政再建計画が6回もの計画変更を余儀な くされる中で、多くの問題点が現計画にあることは明らかであり、新計画には「市 民の声」を反映させるとともに、「夕張の再生」が見えるものとしなければならな い。 ■ 真のモデルケースとして この調査結果を報告書として取りまとめ、11月2日月曜日には北海道知事に提出 したが、9日月曜日には総務大臣へ提出する。 夕張市民は、道民であり国民である。自治体間における行政サービスの格差が全 国的な問題となっているが、夕張市はその「最低のライン」となっている。聞き取 り調査でも「ここに住むなと言っているようだ」との声が多かったが、この事態は 異常であり深刻である。 夕張市が本当の意味で再生することは、日本にとっても大きな意味を持つ。市が 抱える巨額の赤字、43パーセントを超える高い高齢化率、住宅の集約化など、多く の課題は他の自治体又は日本自体が抱える問題とも言える。 その問題を棚上げすることなく、夕張市と北海道及び国が協力体制の基で解決し ていく道こそ、日本にとっての自治体再生の「モデルケース」となると考える。 ■著者略歴■ 鈴木直道(すずき・なおみち) 東京都福祉保健局総務部総務課主任(夕張市派遣)。 1999年東京都入庁、東京都健康安全研究センター、東京都立北療育医療センター、 保健政策部疾病対策課を経て、今年1月から現職。夕張市ではNPO法人ゆうばり 観光協会、ゆうばり再生市民会議等の地域社会活動に参加。夕張再生市民アンケー トを企画・実施(同実行委委員長)。 * メールマガジンの感想をお待ちしております。 「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp 猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■掲載情報 ・発売中の『週刊現代』11月14日号の巻頭記事「鳩山政権『子ども手当』と『 大増税』」にコメントを寄せました。 ・日経BPネットの好評連載「猪瀬直樹の『眼からウロコ』」最新号がアップ されました。「「日常性」に生きることを嫌った太宰治 悩める青少年のバ イブル、『人間失格』の読み方」はこちら。 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091104/193296/ ・東京都公式ホームページに、財政再建中の北海道夕張市に派遣された東京都 職員のレポートが公開されました。ぜひご覧ください。 http://www.soumu.metro.tokyo.jp/03jinji/yuubari/index.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バックナンバーはこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html ご意見・ご感想はメールでどうぞ。 info@inose.gr.jp 配信解除の方はこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga.html まぐまぐの配信解除は http://www.mag2.com/m/0000064584.html 猪瀬直樹の公式ホームページはこちら。 http://www.inose.gr.jp/ ○発行 猪瀬直樹事務所 ○編集 猪瀬直樹 ○Copyright (C) 猪瀬直樹事務所 2001-2009 ○リンクはご自由におはりください。ただしこのページは一定期間を過ぎると 削除されることをあらかじめご了解ください。記事、発言等の転載について は事務局までご連絡くださいますよう、お願いします。


