2009/10/08
[MM日本国の研究567]「複眼的な視点で120点の“首都公務員”をめざせ」
2009年10月08日発行 第0567号 特別 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■■■ 日本国の研究 ■■■ 不安との訣別/再生のカルテ ■■■ 編集長 猪瀬直樹 ********************************************************************** http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本日、10月8日木曜日14時半、地方分権改革推進委員会は国が自治体の仕事 を細かく縛る「義務付け・枠付け」の廃止・縮小を求める第3次勧告を鳩山首 相に提出しました。 すでに昨年12月の2次勧告で、4076項目の「義務付け・枠付け」を見直すよ うに指摘していましたが、今回はとくに問題のある892項目について、規制 の廃止や地域の実情にあった基準づくりを進められるよう求めています。 * 「義務付け・枠付け」によって具体的にどのような規制が生じているのでしょ うか? たとえば地方自治体が保育所の施設をつくる際には、赤ちゃんがハイハイす るための部屋(ほふく室)の面積は1人あたり3.3平方メートル以上と定めら れています。 なぜ3.3平方メートルか。ちょうど「1坪」だから、ということにすぎませ ん。戦後、すぐに決めたので、単位が旧式だったのをメートル法で換算しただ けなのです。科学的な根拠があるわけではないのに、この基準を満たしていな ければ、国は「保育所」として認めず、補助金を出しません。 このため、地価が高い東京のような都心では、用地の確保ができず保育所不 足の大きな原因のひとつになっているのです。 保育所の待機児童は全国に2万5000人、東京都だけで8000人にのぼります。 東京は独自に基準を緩和した「認証保育所制度」を創設しています。国の補助 金が出ないので、東京都が補助金をだしているのです。そもそも「義務付け・ 枠付け」がなければ、もっと自由に保育所をつくれるはずです。 * 昨日7日水曜日の朝日新聞夕刊を引用します。 「分権委は、安倍政権下の07年4月に地方分権改革推進法に基づいて発足し、 これまで国の出先機関の統廃合などを勧告してきた。新政権に対する勧告は初 めて。 今回の勧告が実現すれば、保育所の面積や職員配置、生活道路の傾斜や歩道 の幅などを自治体が条例などで独自に決めることができ、地域の実情に合わせ た行政サービスが可能になる。 また、全国知事会などが求めている『国と地方の協議の場の法制化』につい て、「国地方調整会議(仮称)」を新設するとの試案も提示。協議する事項は 地方自治・税財政制度、社会保障、教育などに関する重要事項とし、政府側は 首相、官房長官、総務相、財務相ら、地方側は全国知事会など地方6団体それ ぞれが指名する者で構成する」 (朝日新聞 10月7日水曜日夕刊) * 07年4月に発足した分権委員会はこれまで97回に渡って議論を重ねてきまし た。民主党内には自民政権下で発足した分権委員会に対する反発もあるようで すが、重要なことはどの政権下で議論したかではなく改革の中身のはずです。 * 今週のメールマガジンは「月刊ガバナンス」9月号に掲載されたインタビュ ー「複眼的な視点で120点の“首都公務員”をめざせ」をお届けします。 地方分権が進み地方自治体の自由度が向上しても、ひとりひとりの職員がつ ねに問題意識をもって仕事に取り組まなければ改革の成果はあがりません。 東京都副知事・猪瀬直樹の考える都職員のあるべき姿勢とはなにか。キイワ ードは「首都公務員」です。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「複眼的な視点で120点の“首都公務員”をめざせ」 私が地方分権改革推進委員会委員に就任する直前の07年3月、夕張市は財政 再建団体になった。夕張市では多くのハコモノをつくるなどして借金を重ね、 財政破綻した。人口はピーク時の10分の1に減り、1万2000人が東京23区より 広い面積に住む。高齢化率は40パーセントを超えている。これはある意味、8 00兆円の借金を抱え、少子高齢化、人口減少社会に直面する日本の縮図でも ある。 一方、東京都は日本一金持ちだといわれる自治体。職員が働いているのは、 一等地の高層ビルだ。民間企業では、九州や北海道に転勤することがあるが、 東京都の職員が転勤するのは都内だけ。それではなかなか世界は見えてこない。 よく「東京富裕論」が唱えられるが、実は東京都の税収の波は大きい。景気 が良いときはいいが、減るときには一気に減ってしまうため、常に危機意識が 必要だ。夕張市に職員を派遣したのは、職員が相次いで退職していくなかでの 「人的支援」とともに、都の若い職員に、そういう視点をもってもらう意味も ある。 夕張市がなぜ財政破綻したのか、財政破綻するというのはどういうことなの か、常に「現場」から報告してもらえば、派遣された職員以外にも貴重な情報 になる。たとえば夕張では、文書を保管するファイルは何度も再利用したりし てボロボロになっている。また、市役所では冬でも4時すぎには暖房を切って いた。それでも職員はスキーウェアなどの防寒具を着て、手袋をしながらパソ コンに向かい、遅くまで仕事をしている。2人には、そんな夕張の現状を伝え てもらった。 派遣から半年後に都庁で夕張メロンなどを販売する夕張観光PR物産展を開 催したのにあわせて2人に講演してもらったが、集まった職員たちは、食い入 るようなまなざしで、みんな真剣に聞き入っていた。やはり若い職員にとって はこうした「現場」の話は刺激になる。この講演会での反応などを見て、さら に08年秋から「タイムリー研修」という形で短期の派遣を始めた。 最初は6人が4日間、廃校での備品整理などを行った。冬には10人が雪かき などを実施。今年6月には、6人がメロンの収穫などを手伝った。雪かきには 都だけでなく、大阪府と広島市からも2人ずつが参加している。タイムリー研 修の職員は公募で選んだが、なるべくさまざまな部局の人間が行けるようした。 女性職員にも入ってもらっている。 当初、人事サイドは懐疑的だったが、派遣された職員たちの反応はすごくよ かった。地方自治体が置かれた厳しい環境や「現場」を見ることの重要さ、住 民の目線に立つことの意味など、それぞれ大切な何かを学び、元気になって帰 ってきている。その後の仕事への取り組みも意欲にあふれているようだ。都の 研修はお台場で机に座ってやる座学が中心だが、逆にいえばこういう機会を求 めていたのではないだろうか。 “首都公務員”である東京都の職員に求められるのは、100点満点ではな く120点満点の目標だ。地方公務員として東京のためにただ一生懸命働くだ けではなく、プラス20点分、国民のため、日本全体のために働いてもらいたい。 そのためには複眼的な視点が必要になる。 東京生まれで地方を経験していない人はどうしても地方を見下ろしがちだ。 だが、東京からだけでなく、地方から見なければ、日本全体や世界の中での東 京の位置や、自分のことは見えてこない。その意味で東京とは対極にある夕張 での経験は、都の職員にとって、大きな財産になるはずだ。 (「月刊ガバナンス」9月号掲載) * メールマガジンの感想をお待ちしております。 「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp 猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■掲載情報 ・10日土曜日発売「週刊現代」に、愛犬のオーストラリアン・ケルピーと共に 撮影したグラビア「人生の相棒」が掲載されます。 ・日経BPネットの好評連載「猪瀬直樹の『眼からウロコ』」最新号がアップ されました。「『環境オリンピック』招致を振り返る 『闇将軍』の影響力 と、『南米初』のリオデジャネイロ」はこちら。 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20091006/186594/ ・東京都公式ホームページに、財政再建中の北海道夕張市に派遣された東京都 職員のレポートが公開されました。ぜひご覧ください。 http://www.soumu.metro.tokyo.jp/03jinji/yuubari/index.htm ――――――――――――――――――――――――――――――――――― □□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□■□□ 猪瀬直樹新番組・放映開始! ■□■ 『東京からはじめよう』(MXテレビ) ■□■ 次回放送:11月7日(土)21:00-21:55(毎月第1土曜日) 第7回(10/3) ゲスト 藤原庸介・東京五輪招致委員会企画/広報担当委員 第6回(9/5) ゲスト 田原総一朗・ジャーナリスト 第5回(8/1) ゲスト 渡辺喜美・衆議院議員 第4回(7/4) ゲスト 竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長 第3回(6/6) ゲスト 増田寛也・安心社会実現会議事務局長 第2回(5/2) ゲスト 河野一郎・東京オリンピック招致委員会事務総長 第1回(4/4) ゲスト 丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長 ■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■□■■ ◆◇◆◇◆◇ 猪瀬直樹最新刊 ◇◆◇◆◇◆ ◆◇◆◇ 『霞が関「解体」戦争』 ◇◆◇◆ ◆◇◆ (草思社) ◆◇◆ 日本の権力構造のド真ん中に猪瀬直樹が切り込んだ! 地方分権改革推進委員会を舞台に繰り広げられた 官僚とのバトルを大公開。 何を、どう変えれば日本は再生するのか? この国を覆う閉塞感に風穴をあける痛快な書! 草思社の民事再生第一号です。乞う、応援。 http://www.amazon.co.jp/dp/4794216815 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ バックナンバーはこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html ご意見・ご感想はメールでどうぞ。 info@inose.gr.jp 配信解除の方はこちら。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html まぐまぐの配信解除は http://www.mag2.com/m/0000064584.html 猪瀬直樹の公式ホームページはこちら。 http://www.inose.gr.jp/ ○発行 猪瀬直樹事務所 ○編集 猪瀬直樹 ○Copyright (C) 猪瀬直樹事務所 2001-2009 ○リンクはご自由におはりください。ただしこのページは一定期間を過ぎると 削除されることをあらかじめご了解ください。記事、発言等の転載について は事務局までご連絡くださいますよう、お願いします。


