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編集長猪瀬直樹。混迷する現代の諸問題への処方箋を経済を中心に提示します。コンセプトはジャーナリズムと歴史的視点の新しい融合。30歳代の現場人間による寄稿、座談会、書評等で構成しています。

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2009/08/06

[MM日本国の研究558]「北海道開発局『廃止』猪瀬私案 VS国土交通省」

2009年08月06日発行 第0558号 特別
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 ■■■    日本国の研究           
 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
 ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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              http://www.inose.gr.jp/mailmaga/index.html

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 一昨日4日火曜日、夕刊各紙は金子一義・国交相が閣議後の記者会見で、北
海道開発局の解体を含めた改革に言及したことを報じました。
 
「国土交通省の北海道開発局で、官製談合事件や違法な労働組合活動の発覚な
ど不祥事が続発していることについて、金子国交相は『抜本的な改革をしない
とダメだと思う。解体を含めて考えてもらいたい』と述べ、廃止を含めた組織
の見直しが必要との認識を示した。金子国交相は、今後の地方分権に絡む国交
省の出先機関の組織再編の議論の中で検討されることを想定。『地方分権、ほ
かの整備局の組織再編の議論の中であわせて考える必要がある』と述べた」
(朝日新聞)
 
               *  

 猪瀬直樹はすでに1年前の昨年6月26日の地方分権委員会で、談合事件をき
っかけに北海道開発局の「廃止」私案を提言した発信源です。金子大臣の発言
は選挙対策とも言えますが、出先機関の中でも極端に閉ざされた北海道開発局
の解体が実現すれば、出先機関改革の大きな一歩となるはずです。総選挙を通
じて議論が深まることが期待されます。
 
               *  

 今週のメールマガジンは、『霞が関「解体」戦争』(草思社)より、北海道
開発局の廃止論についての抄録をお送りします。
 分権委員会を舞台にした北海道局長への追及や、開発局廃止についての猪瀬
私案についてわかりやすく記しています。

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「北海道開発局『廃止』猪瀬私案 VS国土交通省」

 2008年7月2日付の毎日新聞1面に、「北海道開発局 廃止へ」という記事
が載った。これをきっかけに「統廃合 首相、前向き姿勢」(7月2日付朝日
新聞夕刊1面)、「廃止論 加速」(7月7日付日経新聞)と報道がつづく。

 北海道開発局の廃止論は、6月26日、分権委員会に僕が提出した私案「北海
道開発局の組織、人員を丸ごと北海道庁に移管する」がきっかけである。
(その後、「猪瀬私案」と呼ばれる。下記URL参照)
http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/kaisai/dai50/50shiryou11.pdf
 
 北海道開発局を呼んで早急にヒアリングを求めたが、分権委員会事務局の対
応は遅かった。松田敏明事務局次長は6月26日の委員会で、「地方分権のテー
マが委員会の基本でございまして、不正を追及するという場ではございませ
ん」などと言う始末。役人の事なかれ主義の発想では分権改革は実現しない。
 
 一方、新聞はすぐに反応した。翌6月27日には読売新聞が僕の問題提起をと
りあげて、7月2日には毎日新聞が冒頭の記事を掲載。他紙も追随した。福田
首相が「地方分権の趣旨をしっかりとわきまえて、合理化をしていくというこ
とは必要ではないか」と、2日夕方の記者たちのぶら下がり会見で答えている。
地元の北海道では、サミットの記事どころではないというほど大騒ぎだった。

 北海道開発局といわれても、ほとんどの人はよくわからないだろう。

 ほかの都府県と違って、北海道は、歴史的・国土的に特別な地域とされてき
た。そのせいもあって、北海道開発庁は国土交通省のなかに、北海道開発局と
してまるまる残ってしまった。名前が変わっただけで、組織はまったく同じだ。
 
 ややこしいことに、北海道開発庁は、国土交通省のなかで北海道局と北海道
開発局に分かれている。霞が関にある北海道局は現地の北海道開発局を指揮監
督する立場にある。
 
 北海道開発局という官僚機構は、極端に閉ざされている。北大閥が幅をきか
せていて、人生の終わりまでレールが敷かれている世界だ。事業はすべて北海
道で閉じているから、業者との付き合いも長く、みんな顔見知り。北海道開発
局OBがこれら業者に天下ることで、談合が繰り返されてきた。
 
 公共事業への依存が深いから、事業の地元負担率が他府県より低めに設定さ
れる「北海道特例」と呼ばれる優遇制度がある。たとえば河川改修や農業農村
整備の場合、ほかの都府県の約67パーセントに対して、北海道は80パーセント
を国庫負担してもらうことができる。国から手厚く配分された予算を、道内の
業者とパイを分け合う、密な空間がそこにはある。
 
 このように北海道開発局は、北海道の特殊性を象徴する存在となっている。
国土交通省は全国に八つの地方整備局を出先機関として置いているが、北海道
だけは北海道開発局として別扱いだ。地方整備局は全国八局で2万人の職員だ
が、北海道開発局は一局だけで6000人近い職員を抱えている。
 
 公共事業の落札率(発注者が想定した価格に対する受注者の提示した価格の
比率)に着目すると、北海道開発局の特殊性がさらにはっきりする。06年度の
全国平均が83.5パーセントであるのに対して、北海道はトップの94.4パーセン
トである。競争入札がおこなわれていないということは、この数字を見ても明
らかだ。
 
 北海道に公共事業の投資が必要だ、ということはわかるとしても、その投資
が北海道民の全体に行き渡るならよいが、官製談合により一部の既得権益者た
ちにむしりとられるのは許せない。

■奥平聖・北海道局長を追及(第52回分権委員会議事録、08年7月11日)

●猪瀬委員○ これからどういうふうに談合をなくすかということと、北海道
       開発局としてこれから国民のため住民のためにどうやったら良
い仕事ができるのかということを考えたほうがよいかと思います。

 内部努力をされてきたこともわかります。しかし、これを見ていると、コン
プライアンスのいろいろなマニュアルとか、委員会とか、29項目つくっても解
決しないということだと思います。そうすると、個人の性格の善し悪しの問題
ではなくてシステムの問題であろう。
 
 そこで、北海道開発局を北海道庁にくっつけたらどうかという私案を前に出
しました。そうすると北海道開発局は廃止ということになります。ただし北海
道特例をなくすという意味ではありません。なぜそういうことを提案したかと
いうと、その理由をちょっと説明させていただきたいのです。
 
 本日の資料4ということで提出資料がありますが、非常に基本的なことをこ
こに記しました。国と地方自治体における公共工事のチェックのシステムがど
れだけ違うかという例としてこれを出しました。
http://www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/kaisai/dai50/50shiryou5.pdf

 国の出先機関、北海道開発局がそうですが、国の出先機関を誰がチェックで
きるのかということを考えた場合に、そもそも徹底した情報公開や議会での行
政監視機能を強化するとか、住民の監視をするとかいうことになるのですが、
そこで国のチェックシステムとしては、ここで5項目を挙げてあります。
 
 予算の段階では、国会で予算を決める。そして決算では、会計検査院が検査
をして、それから事前の事業評価と事後評価がある。こういったものが一応、
決められています。
 
 それに対して、地方自治体は、都道府県や市町村では、まず予算はもちろん
議会が議決、決算は監査委員審査、議会承認とあります。締結時に議会の議決
が必要である。支出について会計管理者の適正な確認というものがある。
 
 あと事務監査請求、監査委員の監査あるいは包括外部監査なり住民監査請求、
住民訴訟ができる。いざとなれば職員の賠償責任が生じるし、首長の予算執行
状況調査というものがある。

 地方自治体がちゃんとチェックしているかという問題はなくはないが、仕組
みとしては都道府県のほうがチェックの体制ができているのではないか。出先
機関という非常に宙ぶらりんな機構というものは官製談合を生みやすいのでは
ないか。
 
 したがって、北海道開発局を北海道庁に吸収する。ただし、吸収したときは
別に人の数がそのまますぐ減るわけではありません。それは北海道庁が行政改
革をしながらやっていけばよい。北海道の住民、納税者が、きちんと決めてい
けばよいということだと思います。   

 地方整備局もいろいろ問題はありますが、やはり北海道開発局独特の世界が
ある。しかし、そういうくらい大きく方向転換をすれば、特例法を残しても問
題を解決できるのではないかと思います。それについて奥平局長の個人的な意
見でも構いませんので伺いたいと思います。

●奥平局長○ 先日来のいろいろな新聞記事にも出ていますが、まさにこの場
       で、国土交通省の出先だけではなくて、ほかの省庁の出先機関
のあり方も含めて、これから議論されていかれるものと理解しています。

●丹羽委員長○ 本日のこの場で決めるわけではなく、局長のお答えで可能だ
        と言ったから全部それをやろうということでもありませんか
ら、参考意見としてお訊きしたい。

●奥平局長○ そういうつもりで申し上げているわけではないので、個人的に
       どうと言われても、こういった場ではなかなか発言しにくい話
題ですので、別の場であれば、ざっくばらんに申し上げることができるかもわ
かりません。

●猪瀬委員○ 国土交通省としても、北海道局も含めて北海道開発局はちょっ
       と厄介だなというか、迷惑だなと思っているところがあったり
するのですよね。北海道局にさせられたりして困っているのではないですか。
そのあたり、もう少し正直にお話しされたほうがよいと思います。

●奥平局長○ 決してそんなことはありません。2月のヒアリングのときも申
       し上げましたが、北海道については、たしかにご指摘のように
いろいろな違いがありますが、その違いというのは、歴史的にいろいろな経緯
があってそうなっているということですので、違いがあるということはもちろ
ん承知しています。その違いがどうであるということですね。そこらあたりの
評価というのはなかなか申し上げにくいところです。

■北海道開発局「廃止」私案

「官製談合の組織ができあがっている」と書いた。「三重行政」になっている
現状では、事実上、北海道開発局を監視するシステムが存在しない。その最大
の原因は住民によるチェックができない組織だからだ。
 
 これを北海道庁に移すことで、まず北海道議会によるチェックが可能となる。
さらに、自治体には外部監査制度があるから、公認会計士のグループによる監
査もおこなわれる。国の出先機関にはチェックシステムがない。官製談合の構
造を根本から切り替えないと、談合は永遠になくならない。だから私案では冒
頭に「北海道開発局の事業執行の方法、ガバナンスのあり方を見直すのであっ
て、北海道開発局の果たしている役割を否定するものではない」と書いた。

「北海道開発予算の総額は従来と同様、必要な額が確保されるべき」とした上
で、「地方分権することで公共事業の執行を住民が監視する仕組みとする」と
書いた。住民によるガバナンスが効く組織に変えることである。

 しかし、誤解している人がまだまだ多い。高橋はるみ・北海道知事は「財源
が来るのが大前提だ。これがないかぎり、現在の財政状況ではお引き受けでき
ない」と発言している。北海道開発局の予算を肩代わりさせられると思ってい
るのだろう。「猪瀬私案」では、いわゆる「北海道特例」によって査定された
国の北海道開発予算を、当分の間、「北海道開発特例補助金(仮称)」として
北海道庁に全額交付するとしている。
 
 このように私案では、かなり気をつかった提案をしているつもりだ。それで
も反対する人は、北海道開発局が北海道庁に「吸収合併」されることを嫌って
いるのだろう。反対派の主張は、北海道開発局をスリム化してから北海道庁と
「対等合併」しろ、である。しかし、スリム化はいつまでもできないから、結
局、「対等合併」はできない。巧妙な改革つぶしだ。「猪瀬私案」はそれを読
み込んでの提案である。
 
 まずやるべきなのは、北海道開発局の廃止である。北海道庁に現状のまま
「吸収合併」されることで、仕事の無駄や重複がはっきり見えてくる。そうす
れば、北海道庁のガバナンスで組織は自然とスリム化できる。
 
             (『霞が関「解体」戦争』(草思社)より抜粋)

               *  
               
 09年1月22日配信の「北海道開発局との往復書簡」もあわせてお読みくださ
い。 http://www.inose.gr.jp/mailmaga/mailshousai/2009/090122.html
 
               *  

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