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編集長猪瀬直樹。混迷する現代の諸問題への処方箋を経済を中心に提示します。コンセプトはジャーナリズムと歴史的視点の新しい融合。30歳代の現場人間による寄稿、座談会、書評等で構成しています。

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2009/04/09

[MM日本国の研究542]「石原慎太郎×猪瀬直樹対談 不況下で勝ち残る男の資質とは?」

                  2009年04月09日発行 第0542号 特別
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 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
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 いつもメールマガジン「日本国の研究」をご愛読いただきありがとうござい
ます。
 
 今週は『BIG Tomorrow』4月号に掲載された石原都知事と猪瀬直樹の対談を
お届けします。テーマは「不況下で勝ち残る男の資質とは?」。対談の中で導
き出されたキーワードは「感性」でした。

 感性を磨くにはどうすればいいのか、感性が磨耗するとどうなってしまうの
か。同じ「都庁」というフィールドでたたかう作家同士だからこそ見えてくる
風景があるようです。

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「石原慎太郎×猪瀬直樹対談 不況下で勝ち残る男の資質とは?」

――石原都知事から要請を受け、猪瀬氏が副知事に就任して約1年半。当時は
意外な印象を受けました。

●石原○ 猪瀬さんに副知事就任を要請したのは、感性に期待したからですよ。
     基本的に役人は無個性で、右も左も同じ顔をしたのっぺらぼうなん
です。彼らは平気で「自分たちの取り柄はコンティニュイティ(継続性)とコン
システンシー(一貫性)」と言う。

 変化の激しい時代に、そんな態度でいたら生き残れない。その点、猪瀬さん
は好奇心が旺盛で、オリジナルな発想を持っていたからね。でも、一番よかっ
たのは、僕より怒りっぽいことかな。僕は役人にけっこう遠慮しているけど、
猪瀬さんは下からつまらないペーパーがあがってくると、「こんなくだらない
ものを俺のところに持ってくるな」と言って突き返すんだよ(笑)。

●猪瀬○ 役人は、感性が欠けているんです。それが書類にも表れるから、抽
     象的で形式的なワケのわからないレポートがあがってくる。ただ、
これは役人に限った話じゃない。誰だって感性を失くしたら終わり。つまらな
い仕事しかできなくなります。

●石原○ 作家もそうだね。僕と同世代の作家で、いまも面白い作品を書き続
     けてる人はいないでしょう。それは、感性が死んじゃって新しい発
想が出てこなくなったから。仕方がないから、過去の自分の作品を真似て書い
ている。

●猪瀬○ 「俺は知事になってから長編の構想を7本考えた」といきなり言っ
     て、「副知事をやってくれないか」と(笑)。じつはそれを聞いて
「あ、そうか」と思った。作家としての感性を培うには、新しい世界に飛び込
んで、絶えず自分を更新する必要がある。

 東京都という巨大な官僚組織と格闘してきた石原さんならではの思いつきだ
な、と感心した。僕も、作家業のために副知事を引き受けたわけじゃないけれ
ど、石原さんの口説き文句がうまかった(笑)。
 
――ビジネスマンにとっても、感性は重要ですか?

●石原 もちろんだよ。味の素の売上が落ち込んで、会議でブランド戦略を難
    しく論じていたとき、誰かが思いつきで「売上を伸ばすにはたくさん
使ってもらえばいいんだから、容器の穴を大きくしてみたらどうか」と言った。
そこでさっそく穴の大きい容器を作ったところ、本当に売上が伸びたという。

 僕はこの話が好きでね。いつの時代も、世界を変えるのはちょっとした発想。
会社を変えることができるのも、こうした感性を持った人材ですよ。
 
●猪瀬○ ビジネスマンや役人の多くは、もともとみずみずしい感性を持って
     働いていたはずです。ところが、組織に長く身に置くと発想が官僚
化して、自分で感性を委縮させて建前の序列ばかりを気にするようになる。こ
れは本当にもったいない。

 本来、感性や好奇心の前では、年配であろうが若かろうが、地位が高かろう
が低かろうが平等で、年齢もキャリアも関係ない。感性から発せられた言葉な
ら、20代の人でも、石原さんや僕と肩書を飛び越えて対等に話ができるのに…
…。
 
●石原○ じつは東京都にも、現場レベルではいい思いつきを持ってる人材が
     たくさんいるんだよ。東京都職員提案制度でアイデアを募集したら、
上の人間が思いもしなかったユニークな発想がポンポンと出てきた。

 たとえば、階段で作業をするときに便利な、脚の長さが違う脚立とか、手近
な材料でガードレールの傷を修復する方法とか。民間企業も、現場にはこうい
った創意工夫があふれているはず。ところが、猪瀬さんが言ったように、ビジ
ネスマンが官僚化して失敗を恐れるようになり、何も挑戦しなくなっちゃった
んだな。
 
●猪瀬○ そういう意味では、技術一本で市場と勝負する中小零細企業の経営
     者のほうが頼もしいかもしれません。中小零細は同じことを繰り返
しているとつぶれてしまうから、官僚化する余裕もない。

●石原○ 小さな組織がすべていいわけじゃないが、たしかに感性が鈍いとや
     っていけないだろうね。東京都ベンチャー技術大賞で表彰された「
マゴットセラピーシステム」というすごい技術がある。

 糖尿病が進むと脚が壊死していきますが、このシステムでは、手術では取り
除けない部分をウジに食べさせてきれいに除去してしまう。これをやってる会
社は、従業員が2人ですよ。たった2人で大企業と渡り合おうと思えば、こう
やって誰もやらないことに目をとめて、イノベーションを起こすしかない。
 
●猪瀬○ 逆に言うと、大企業に勤めているから安心という幻想も危険。ボー
     ッとしていると、感性の鋭い中小零細にすぐひっくり返されます。
結局、どんな会社に勤めていようと、感性の冴えがない限りビジネスで生き残
ることはできないんです。

――では、感性を磨くにはどうすればいいですか?

●猪瀬○ 僕は外に出るべきだと思う。「書を捨てよ、町へ出よう」ではない
     か。建物の中に閉じこもっていると、その世界の基準でしかものご
とを考えられなくなるんですよ。僕が副知事就任の要請を受諾した理由とも重
なるけど、異質な世界を体験すると、自分が上書きされるというか、新たな視
点が獲得できるわけです。

 1月に都の若い職員10人と一緒に夕張の雪かきボランティアに行ってきまし
たが、みんな非常にいい顔になって帰ってきた。都庁とはまったく別の世界を
経験して、感性が刺激されたからです。
 
●石原○ 雪かきのような体を動かす作業は、脳幹を刺激するんだ。脳幹は、
     闘争心、恐怖、悲しみといった人間の本能を司る大切なところ。感
性も脳幹だから、外に出て体を動かすのは、違う世界を体験すること以上の効
果があるかもしれない。

 いまの若い人は、大脳ばっかりでしょう。知識を詰め込んだら、それでなん
とかなると思ってる。首都大学東京で教授をしている宮台真司が、「最近の若
者は、情報を情報で整理している」と言ったんだよ。つまり、自分が見聞きし
た情報の価値を自分の感性で判断するのではなく、ヨソから借りてきた情報に
よって判断しようとするわけだ。これじゃ感性が磨かれるはずがない。もっと
脳幹を使わなきゃダメだ。
 
●猪瀬○ 若い人にあきらめが早い人が多いのも、そのせいかもしれませんね。
     マイナスの情報ばかり探してきて、「だから自分にはムリだ」と決
めつける。本人は冷静なつもりかもしれないけど、自分で自分の可能性をつぶ
していることに気づいてない。

●石原○ 最近の若者は失恋しないそうだよ。僕らの若い頃は、理想の女性が
     いると、高嶺の花だとわかっていても、どうしようもなく好きにな
って苦しんだでしょう。でも、いまの人は大脳だけで考えるから、ものわかり
がよすぎて自分でブレーキをかけてしまう。

 パリの雑踏で女性とすれ違い、一瞬のうちにお互いに運命的な恋をしたが、
言葉を交わす間もなくすれ違ってしまったというボードレールの有名な詩があ
るけど、それくらいの激しい思い込みをしたっていい。理屈で割り切れない思
い込みや勘違いが感性を育てるんだから。
 
 それから猪瀬さんの言うように、作家のワクにとらわれることなく行動する
ことも大事。具体的には、趣味を持てばいい。テニスでも俳句でも音楽でも、
何だってかまわない。好きなことに打ち込めば、もっとうまくなりたいと工夫
するだろう。それが脳の柔軟体操になって、感性を伸ばすことにつながるんで
す。
 
●猪瀬○ 目の前の仕事を汲々とこなしているだけの人はダメですね。忙しく
     て趣味なんてできないと嘆いているヤツほど、自分しか見ていない
    から本業でもパッとしない。

●石原○ 心から楽しいと思えるものがあるのなら、会社なんてサボってもい
     いんだよ。感性を磨けば、それが必ず仕事にも返ってくる。

●猪瀬○ いまのビジネスマンに欠けているのは、まさにその部分でしょう。
     若い人には、ぜひいまの仕事のワクを飛び越えてもらいたい。一見、
遠回りに見えるけど、そうすることで、きっと視野が広がって成長できるはず
ですから。

                  (BIG tomorrow 09年4月号掲載)

                *                 

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猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■掲載情報

・4月10日(金)発売『文藝春秋』に論考「官僚から皇太子夫妻を守れ 役人
 の無責任体制が事態を悪化させた」が掲載されます。

・今週4月6日(月)発売『週刊ポスト』に、『「高速無料化より『2兆円国
 道』の地方移管を急げ」――「税金を投入せずとも借金は45年間で完済でき
 る。無料化は民営化の否定に他ならない」――』が掲載されました。

・日経BPネットの好評連載「猪瀬直樹の『眼からウロコ』」最新号がアップ
 されました。「日本医科大多摩永山病院の成功例に学ぶ 周産期医療体制を
 整えるには強いリーダーシップが必要だ」はこちら。
 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090407/144392/

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         猪瀬直樹新番組・放映開始!
     
    ■□■ 『東京からはじめよう』(MXテレビ) ■□■  

    次回放送:5月2日(土)21:00−21:55(毎月第1土曜日)
          
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 猪瀬直樹がホストをつとめ、毎回多彩なゲスト迎えて「東京のいま」を語る
トーク番組がはじまりました!
(第1回放送:4月4日(土) ゲスト:丹羽宇一郎・伊藤忠商事会長)
 
 07年6月の東京都副知事就任時、猪瀬は「東京は世界との経済戦争に勝って
いかなければならない任務を帯びている。日本という国の全体のためにも東京
の力が必要だろうと思っています」と語りました。
 
 新番組『東京からはじめよう』では、日本全体を牽引する役割を担う東京都
の現状と問題点、さらにはその解決策を各分野のスペシャリストを招いて探り
ます。

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    ◆◇◆◇◆◇     猪瀬直樹最新刊       ◇◆◇◆◇◆
  ◆◇◆◇      『霞が関「解体」戦争』       ◇◆◇◆
 ◆◇◆                (草思社)                   ◆◇◆
    
           日本の権力構造のド真ん中に猪瀬直樹が切り込んだ!
       地方分権改革推進委員会を舞台に繰り広げられた
               官僚とのバトルを大公開。
         何を、どう変えれば日本は再生するのか? 
       この国を覆う閉塞感に風穴をあける痛快な書!
       
       草思社の民事再生第一号です。乞う、応援。

        http://www.amazon.co.jp/dp/4794216815

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