2009/10/05
<国際派時事コラム>環境関連記事の読み方が変わる、こんな常識
↓ 週3回更新のブログはこちら http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi ◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ 環境関連記事の読み方が変わる、こんな常識 ■■■■第278号■■平成21年10月5日発行■■■◆ 前号(9月16日号)の復習から。 わずか11年後の2020年に達成すべき温室効果ガス削減公約 の数値を比較するときには、 自・公政権公約 ⇒ 民主党政権公約 ▲8% ⇒ ▲25% (1990年比) または ▲15% ⇒ ▲30% (2005年比) という数字で論じなければならないということを述べた。 (1990年から2005年までに温室効果ガスの排出量が 7.7%増 えているため、こういう数字になる。) 新聞やテレビで「 25%削減」のスローガンを見るたび、 「 30%削減、だろ」 と つぶやいている。 実現のため、本来はスピード感をもって政府が全体構想を 示す必要があるが、 「米国がついてくるまでは何もしなくていい」 というみごとな免罪符つきの公約だから、なかなかスイッチ が入らない。 民主党政権発足後、日本経済のカネの流れにブレーキをか けること(=景気対策の補正予算の一部停止など)が最優先 になっている。 たしかに、民主党大不況を推進して、2020年までに経済を 15%ほど凹ませれば、その分だけ温室効果ガスは減る。 残りの削減義務は麻生政権と同じく「15%削減」だ。 民主党政策の卓見に感服しているこの頃である。 ■ まず日経の中国報道記事から ■ 冗談はさておき、この号と次号では 狭い日本の国土で、風力発電と太陽光発電がどれだけ頼りに なるものか、じっさいに手を動かして計算してみたい。 日本の電力の1割ずつを風力発電と太陽光発電でまかなう ために、どれだけの土地が必要かを次号で書く。 風力・太陽光の有効利用には大賛成だが、幻想・錯覚はい けない。 * 再生可能エネルギー関連の記事にはしばしば、錯覚の落と し穴がある。きょうはその話から。 たとえばこんな記事がある。8月5日の日経から。 ≪中国、再生エネルギー13倍 太陽光や風力、2020年目標 【北京=多部田俊輔】 中国政府は地球温暖化対策を強化する。 2020年末までに太陽光など再生可能エネルギーの発電能力を 08年末の13倍に引き上げ、総発電能力に占める比率を08年末 の 1.9% から 12.5% に高める方向で検討を始めた。≫ (全文はこちらで読める↓) http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090805AT2M0403D04082009.html これを読むと、2020年までに中国が 「電力量の12.5%を再生可能エネルギーでまかなう計画だ」 と早とちりし、仰天するひとが多い。 電力関係者が同じ記事を読むと、中国の2020年計画は 「電力量の3%ていどを再生可能エネルギーでまかなう」 ものにすぎない(それでも大したものだが)と読み取れる。 いったい、どういうことなのか。 ■ 発電能力と発電量は異なる ■ 1万キロワットの発電能力がある火力発電所と 1万キロワットの発電能力がある風力発電所は、 どう違うか。 発電量ベースの「設備利用率」が 3.5倍 くらい違う。 火力発電所の場合、定期検査や修理のために停めるとき以 外は、電力需要さえあればフル稼働が可能だ。 新鋭のガスタービン火力発電所なら、年間の9割以上フル 稼働できる。 原子力発電所も、欧米並みに定期検査期間を短縮させれば 年間の85%近くフル稼働できる。 ところが、風力発電はそうはいかない。 風がなければ動かない。弱ければ、発電量も落ちる。 風力発電所を作るときは、計画段階で年間を通した風力測 定をして、強風が1年じゅう見込める場所を択ぶ。 それでも、火力発電所の8~9割台に対して、風力発電の 設備利用率は25%ほどにしか達しない。 たとえば東伊豆町風力発電所のデータでは、平成21年4~ 9月の設備利用率は22.53%だった。 http://www.town.higashiizu.shizuoka.jp/bg/furyoku/riyoritu/001204.html ■ 時間的には63%も回る風車だが…… ■ 1年中フル稼働する場合の発電量を100%とすると、この 風力発電所の発電量はたかだか 22.53%だった。 風力発電としては普通の数値であり、成功例である。 ただしこの発電所は、風車が回るとき出る低周波音が公害 問題になっている↓ http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20090928-OYT1T01234.htm 設備稼働率(設備が稼動する時間の比率)は62.54%だった。 つまり風車が回っていた時間は62.54%もあった(立派です)。 しかし、発電能力をフルに発揮できるほどの強風がいつも 吹くわけではない。 出力が低いときが多いから、設備利用率も下がるわけだ。 燃料を燃やせばいつでもフル稼働できる火力発電所と、こ の辺で差がつく。 1万キロワットの発電能力のある火力発電所に匹敵するの は、3.5万キロワットの風力発電所だ、ということになる。 ■ 太陽光発電のキロワット数は 5.5 で割って考える ■ 太陽光発電では、その差はさらに拡がる。 実例を見ると、設備利用率は15~16%あたりである。 http://www.eps4.comlink.ne.jp/~satoruot/dainihatuden.htm 太陽光発電は、日の出から日の入りまでだ。 直射日光を垂直に近い角度で受けてはじめてフル稼働でき るわけだから、フルの発電能力を発揮する時間は限られる。 (太陽電池の効率の問題ではありません。) 太陽光発電の設備利用率は、この実例から分かるように 火力発電のおよそ 5.5 分の1だ。 「だから太陽光発電は劣る」と言いたいのではない。 太陽光発電について華々しい報道を読んだら、キロワット の数字を 5.5 で割って考えてほしい、ということだ。 「1万キロワットの太陽光発電所が完成」 という報道を見たとき、数字に幻惑されることなく 「火力発電所に換算すれば1,800キロワット分だな」 と換算できてはじめて、エネルギー政策の議論ができる。 ■「キロワット」と「キロワット時」■ ここで、最初の日経記事に戻る。 ≪2020年末までに太陽光など再生可能エネルギーの発電能力 を 08年末の 13 倍に引き上げ、総発電能力に占める比率を 08年末の 1.9% から 12.5% に高める方向で検討を始めた。≫ 発電量ではなくて、発電「能力」に占める再生可能エネル ギーの比率のことを言っている。 つまり、設備の定格出力(最大出力に近い値)を単純合計 した数字がベースだ。 温室効果ガスの削減に風力や太陽光がどれだけ貢献するか を論じるには、火力発電の発電量を風力・太陽光でどれだけ 代替できたかを見なければいけない。 つまり、発電能力(キロワット)で論じても、的外れ。 発電量(キロワット時)で論じねばならない。 日経記事にある「12.5%」が仮に全て風力だったら、 3.5 で割って考えれば発電量比較の正しいイメージが得られ る。 「12.5%」がすべて太陽光なら、5.5 で割って考える。 風力と太陽光の占める比率がわからないと計算できないが、 おおよそ総発電量の3%ていどを再生エネルギーでまかなう 計画について書かれたものだと読み取れる。 ■ おあとは次号で ■ 以上の常識を共有したうえで、 日本の電力の1割ずつを風力発電と太陽光発電でまかなう ために、どれだけの土地が必要かを次号で計算してみたい。 === ▲ 後記 ▼ さいきんのコラム子のブログ記事から ―― (全文を読むにはリンクを開いてください) 民主党の離島・無人島政策はどちらへ向かうのか http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200909250000/ 国土交通省には、国境付近の離島・無人島の管理強化とい う大事な役目もある。 安全保障に通じる政策分野だから、前原誠司さんもご自分 のいい面を出せるはずだ。 前原さんの頑張りどころはここである。 <おすすめ> 映画「幸せはシャンソニア劇場から」 http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200909210001/ 心にしみる絶品。 2晩連続で退勤後に足を運びました。 もう1度、見るつもりです。 == <泉 幸男 著> 『中国人に会う前に読もう 第一線商社マンの目』 『日本の本領(そこぢから) 国際派商社マンの辛口メモ』 通 信 販 売 も 受 付 中 http://homepage2.nifty.com/sai/mart/ == ■主宰 泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio) http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ (旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます) http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/ (週に3回ほど更新しているブログ) ■発行者への通信は mailto:t-izumi@f5.dion.ne.jp いただいたメールは、引用することがあります。 引用内容が政治性を強く帯びたものについては、掲載につ いて ご本人の事前了解をいただくつもりですが、 この辺の 采配は発行者にお任せいただくしかありません。 発信者氏名は原則として公開しません。公開する際は、ご 本人の事前了解をいただきます。 掲載するメールは、発信者の居住地名(市ないし県名)を できるだけ書かせていただきたく、それについてお問合せを することがあります。 ■このメールマガジンの転送・転載はご自由にどうぞ。 ■このメールマガジンの内容は、主宰の勤務先の見解とは無 関係です。このメールマガジンは、主宰の勤務先による監修 その他のサポートを一切受けておりません。主宰の勤務先に おいて守秘対象とされる事項は一切含まれておりません。 ■メールマガジン(配信誌)のお申込み・解除は、以下のペ ージでどうぞ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/mailmag.htm ------------------------------------------------------ このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐま ぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000063858) ------------------------------------------------------



