2009/09/16
<国際派時事コラム>二酸化炭素排出削減の決め手は最新鋭火力発電だ
↓ 週3回更新のブログはこちら http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi ◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ 二酸化炭素排出削減の決め手は最新鋭火力発電だ ■■■■第277号■■平成21年9月16日発行■■■◆ 鳩山由紀夫氏が首相として近く連合国組織(国連)の会合 で国際公約するかもしれない民主党の公約は 「二酸化炭素25%減」 と新聞の大見出しにある。 「ああ、二酸化炭素排出を4分の1だけ減らすんだな。 麻生政権のいう15%が鳩山政権では25%になるんだな」 と、人びとは誤解する。 民主党が 2020 年実現を公約しているのは、25%減では なく、じつは「30%減」である。 ■ ひょっとして、魔球? ■ 麻生政権といえば「15%減」。これは2005年比の数字だ。 2005年比で15%減。 1990年比では8%減。 いっぽう、民主党のいう「25%減」は1990年比の数字。 2005年比では 「30%減」 である。 (1990年から2005年までに温室効果ガスの排出量が 7.7%増 えているため、こういう数字になる。) つまり、自・公政権 ⇒ 民・社・国政権の温室効果ガス削 減公約比較は ▲8% ⇒ ▲25% (2005年比) または ▲15% ⇒ ▲30% (1990年比) という数字で論じなければならない。 2020年までに、現水準から30%も削減しなければならな い。 麻生政権の言っていた線なら国際合意は可能と見られた。 (05年比でEUは13%減、米国は14%減の目標を掲げる。) だが、鳩山政権の線に米国は絶対についてこない。 鳩山公約の 「30%減」 は、 「他国がこの線についてくるなら」 という但し書きがついている。 温室効果ガス削減の国際合意つぶしを狙った魔球だとした ら、脱帽するしかない。 ■ 経産省系の研究所は「問題外」と ■ 政府系の研究所も、温室効果ガス削減目標について研究し てきた。 環境省系の国立環境研究所は、民主党公約の「2005年比 30%減」は何とか実現可能と結論づけているそうだ。 (その前提条件についてわたしはまだ勉強していない。) 経産省系の日本エネルギー経済研究所は、 麻生政権のいう「2005年比15%減」は ぎりぎり達成可能 とみたが、「2005年比25%減」は達成不可能と結論づけた。 民主党公約の「2005年比30%減」は とても達成不可能 と考え、計算すらしていないという。 * 民主党公約の達成のためには、国家予算の構成を大々的に 変えなければならない。 上策、中策、下策、そして論外の策がある。 温室効果ガス排出削減というと、太陽光発電、風力発電の 推進というイメージがある。 しかし、牧草地も土漠もろくにない日本では、発電所建設 地を妥当な価格で大量に確保するのはむずかしい。 太陽光発電・風力発電の意義は否定しないが、日本のよう な国土には向かない。 次号で詳しく説明したい。 ■ 今後10年間に原発10基建設 ■ ではどうすればよいかというと、本来の上策は原子力発電 所の建設だ。 原子力発電所は発電の過程で二酸化炭素を発生させない。 いろいろな施策とあわせ、原発を10基つくれば麻生政権の 想定目標「15%減」は達成できる計算だった。 原発の定期検査の頻度も西欧諸国並みに引き下げ、設備利 用率を向上させれば申し分ない。 ところが、民主党の公約は「15%減」でなく「30%減」で ある。 では原発を20基作るか……。 2020年までに原発10基建設というのも非現実的だから、そ れ以上の数字を言っても意味がなかろう。 (きょう9月16日の産経1面記事によると、「連合」があす 9月17日の中央執行委で、原発の「新増設の着実な推進」を 政策方針として了承する見通しという。) ■ 高効率のガスタービン発電 ■ 現実的な上策は、火力発電所の高効率化だ。 同じ電力を作るのにも、設備の効率が高ければ燃料が少な くて済むから二酸化炭素が減る。 日本の二酸化炭素排出量の3分の1は発電所から出る。 http://www.jccca.org/content/view/1046/786/ 日本の発電量のうち60%が火力発電だ。 http://www.enecho.meti.go.jp/faq/electric/q1.htm 日本の火力発電のエネルギー効率は、通常は稼動させない 油焚きの火力発電所なども入れれば、50%には遠く及ばな い。 現在開発中の最新鋭火力なら70%まで達成できる。 火力発電所を最新鋭設備に続々入れ替えて、エネルギー効 率を50%⇒70%へとアップしたら、二酸化炭素排出量はどれ だけ減るだろう。 33% × 60% × 20/70 = 5.6% なんと、現在の二酸化炭素排出量の 5.6 %を削減できる。 (これと同じ規模の二酸化炭素削減を太陽光発電と風力発 電で行おうとするとどういうことになるか、次号で紹介する。) * 熱効率の高い発電設備の製造でも、日本は世界の最先端を 走っている。 1950年には最先端の発電設備でも熱効率は20%以下だった。 それが1960年には30%に達した。 1995年にはガスタービン+廃熱利用発電で熱効率は55%に 達し、現在の最先端の設備はガスタービンの耐熱温度を上げ ることにより出力アップを図り、熱効率は60%だ。 ガスタービンの入口の温度を高くすると、出力は上がる。 現在使われている最先端のガスタービンは、入口温度が 1,500℃である。 金属をそのまま さらすと融けてしまう。高度な冷却技術 が使われている。 入口温度 1,600℃の設備が開発できたと聞いたときは、頭 がくらくらするほどの喜びをおぼえたが、日本の技術者は、 そんなことでは満足しない。 今や、入口温度 1,700℃のガスタービンの開発を目指して いる。 このガスタービンをつかい、さらに固体酸化物燃料電池を 組み合わせると、熱効率は70%を超えるというのが専門家の 計算だ。 ■ 低効率発電所をスクラップ ■ 麻生政権の公約レベルであれば、老朽発電所の代替として このような最新鋭発電所を建設すれば達成には間に合った。 鳩山政権の極端な公約を達成するには、現在十分に稼動中 の発電所を熱効率の低い順に続々と最新鋭設備に入れ替える 必要がある。 (それでも目標達成は無理だが。) * 中策が何かといえば、二酸化炭素の分離・回収・貯留だ。 わたしの勤務先も目下この技術開発に関わっている。 技術の開発は、いろいろ研究の副産物も産む可能性がある から意味があると思う。 しかし実際に大規模な二酸化炭素貯留に乗り出すことには、 わたしはまだ賛成しかねている。 ■ 二酸化炭素回収・貯留技術への抵抗感 ■ 発電所の排気(二酸化炭素が多い)を特殊な溶液に通して、 二酸化炭素を溶液に溶かし込むことにより回収する。 集めた二酸化炭素はパイプラインなどで適地に輸送し、深 海や地中に閉じ込める。 これだけ聞くと科学小説的で美しいが、これをやるには 大量のエネルギーが必要だ。 100の電力をつくる発電所で二酸化炭素回収・貯留を行う と、せっかく発電した 100の電力量のうち じつに20~30の 電力を二酸化炭素回収・貯留のためだけに消費する。 もしかりに二酸化炭素の増加が本当に地球温暖化の原因な ら、それも良かろう。 しかし現実には、地球温暖化の原因が本当に二酸化炭素な ど温室効果ガスの影響なのかどうか、実証した科学実験はな い。 (だから、科学者のあいだにも異論がくすぶっている。) もし仮に、二酸化炭素の増加が必ずしも地球温暖化の原因 ではなかったとすれば、どうだろう。 二酸化炭素回収・貯留は、限りある貴重な化石燃料をいた ずらに20~30%浪費して、大気中に大量の余分な熱をまき散 らすことになりかねない。 環境規制の範囲内とはいえ、様々な汚染物質の排出も20~ 30% 増加してしまう。 ■ 排出権取引は日本経済を萎縮させる ■ 下策は、排出権の購入だ。 排出権取引にも、わたしの勤務先は関わっている。 異なるフロアにいるが、担当部長はわたしのかつての同僚 である。 社秘は語れないが、これまでプレスリリースされた様々な 案件の規模の「ショボさ」からして、排出権取引のネタを発 掘・創出すること (←これは意義がある) がいかに困難な ことか分かるだろう。 排出権取引で「30%減」の目標を達成しようなどという のは、見当ちがいも甚だしい。 開発途上国で省エネを実現する後押しとなる制度というの が謳い文句だが、排出権買取りの金額ていどでは新規設備は とうてい買えない。 あくまで「後押し」でしかない。 (これは、わたしの見解であって、必ずしも勤務先の見解で はない。 この配信コラムはすべて個人見解なので、念のため。) かりに排出権取引で「30%減」を達成しようとしても、 2020年までに見合いの省エネ案件を開発途上国で発掘・創出 するのは到底不可能だ。 けっきょく、正直太郎の日本国だけ、連合国組織に供託金 を積まされ、これを連合国組織の官僚たちが「国連の援助金」 として使い放題、ということになりそうだ。 日本国内の貨幣の流通量が萎縮し、日本の国力が衰えるだ け。 そんな結末が目に見える。 ■ 地球をイメージする ■ 論外の策が、日本にある製造工場の他国への移転だ。 日本で二酸化炭素を吐けぬなら、他国に行って吐けばよい、 という議論があると知って唖然とした。 この論外の策によれば、地球規模では二酸化炭素排出は減 らない。 いや、むしろ、他国でいい加減な製造設備を稼動させたら、 二酸化炭素の排出は却って増えるだろう。 * * * 太陽光発電と風力発電について、次号で書きます。 また、今回は触れませんでしたが、ヒートポンプの普及も 大きな決め手となります。コストの検証が必要ですが。 http://www.fepc.or.jp/future/warming/co2_taisaku/kikikaihatsu/ (↑ 電気事業連合会のサイト) 財源として論じられるであろう「環境税」は、税率設定次 第ですが、無責任な議論を一掃する意味でも意義があるでし ょう。 「環境税」を国富流出につなげず、日本のさらなる技術振興 に使うことが大切です。 === ▲ 後記 ▼ 8月31日の前号で「国債増発」への懸念について書きまし たが、反対論を煽ろうという気持ちが先に立ったか、議論を 単純化しすぎました。 読み返してみると、最後のくだりなど、消費税率を引き上 げ歯を食いしばって国債を返済しきれと言っているようにも 読めます。 それをやったら、経済が萎縮します。 わたしの持論は、キャッシュのフローは消費税で活性化さ せ、国債は調整インフレで長期間かけて目減りさせてゆく、 というものです。 読者の皆さんから貴重なご指摘をいただき、議論を深める ことができましたので、興味のある方は以下のブログをご覧 ください。 民主党政権は国債の大増発で禍根を残す http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200908300000/ 本文は前号配信の転載ですが、コメント欄に わたしのも 含めると9月15日現在で 22 もの書き込みをいただきました。 この問題への関心の高さがよく分かります。 わたしの見解も補足してあります。 廣宮孝信著 『国債を刷れ! ― 「国の借金は税金で返せ」のウソ』 を支持する http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200909070000/ ある読者がブログへの書き込みで推薦してくれた本を、読 んでみたところ大いに共感しました。 試験的に数十兆円単位で廣宮説 = ベン・バーナンキ説を 実施しながら、日本経済のパイの拡大を図ってゆくのに賛成 です。 政策担当者に高度のモラルと節度が求められるステップだ と申せましょう。(全文はクリックしてお読みください) ほか、さいきんのコラム子のブログ記事から ―― (全文を読むにはリンクを開いてください) 民主党の「高速道路無料化」論に結果的にへつらった 小倉智昭チーム http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200909030000/ いちおうフジの若手アナウンサー氏も突っ込んではいるが、 民主党議員の言い分に小倉智昭チームがいちいち「なるほど!」 と うなずく姿をカメラがとらえる。 議員のはぐらかし発言への厳しい突っ込みは一切なかった。 時間的に、無理だから。 印象としては、反対論をいろいろ民主党議員にぶつけたけ れど、全部撥ね返されて終わっちゃいました、というところ。 == <泉 幸男 著> 『中国人に会う前に読もう 第一線商社マンの目』 『日本の本領(そこぢから) 国際派商社マンの辛口メモ』 通 信 販 売 も 受 付 中 http://homepage2.nifty.com/sai/mart/ == ■主宰 泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio) http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ (旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます) http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/ (週に3回ほど更新しているブログ) ■発行者への通信は mailto:t-izumi@f5.dion.ne.jp いただいたメールは、引用することがあります。 引用内容が政治性を強く帯びたものについては、掲載につ いて ご本人の事前了解をいただくつもりですが、 この辺の 采配は発行者にお任せいただくしかありません。 発信者氏名は原則として公開しません。公開する際は、ご 本人の事前了解をいただきます。 掲載するメールは、発信者の居住地名(市ないし県名)を できるだけ書かせていただきたく、それについてお問合せを することがあります。 ■このメールマガジンの転送・転載はご自由にどうぞ。 ■このメールマガジンの内容は、主宰の勤務先の見解とは無 関係です。このメールマガジンは、主宰の勤務先による監修 その他のサポートを一切受けておりません。主宰の勤務先に おいて守秘対象とされる事項は一切含まれておりません。 ■メールマガジン(配信誌)のお申込み・解除は、以下のペ ージでどうぞ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/mailmag.htm ------------------------------------------------------ このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐま ぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000063858) ------------------------------------------------------



