2009/08/31
<国際派時事コラム>民主党政権は国債の大増発で禍根を残す
↓ 週3回更新のブログはこちら http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi ◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ 民主党政権は国債の大増発で禍根を残す ■■■■第276号■■平成21年8月31日発行■■■◆ 民主党政権の財政の論客として、これからは早稲田大学の 榊原英資(さかきばら・えいすけ)教授のメディア露出度が 増すだろう。 榊原氏は民主党のブレーン。 積極的な国債増発論者である。 民主党は、公約実現のための財源を国債の大増発に求める だろう。 民主党マニフェストを改めて読むと、国債増発をしないと いう約束はどこにもない。 (消費税の税率を4年間は上げないという鳩山由紀夫代表 の口約束はあったけど。) ■「日本全体で見れば借金はない」■ まず、榊原英資氏の主張を聴こう。 日本の財源は、どうせすでに一般会計歳出の4割が国債の 発行でまかなわれているのだから、あらたな財源が必要なら 国債でまかなえばいいじゃないか。 これが、氏の主張である。 ≪今、日本の国債と地方債は合計で 800兆円。 日本人の貯蓄残高は総額 1,500兆円だから、日本全体で見れ ば借金はない。 国債は有力な財源だ。 子ども手当も、高速道路の無料化も、暫定税率をゼロにする のも、国債を発行すればいい。 国債の長期金利は今、1.45%で決して高くない。 これから20兆、30兆円を追加発行しても、10年債で2%は超 えないだろう。 1,000兆円ていどまで行っても、そこで止まれば問題ない。≫ (産経新聞、平成21年8月21日号8面の榊原氏発言) これをす~っと読んでしまうか、電卓を叩いてみるかで、 判断はずいぶん変わってくる。 現状、1.45%の金利で 800兆円を借りている。 金利負担だけで年間 11.6兆円。 1日あたり 318億円。 1時間あたり 13億円。 あえて扇情的な言い方をすると、 国債を買えるような富裕層のために、国民全員で毎時13億円 払い続けているのである。 家族4人の平均的家庭が1日あたりに負担する国債金利は 1千円と計算できる。 1年あたり36万円。 国債・地方債が800兆円あるというのは、そういうこと。 各家庭が年間36万円のカネを、国債・地方債の金利として 金融界・富裕層に貢ぎ続ける世の中を意味する。 (年間36万円というのは、金利分だけ。 元本を返済しようとするとどうなるか、電卓で試算してみて ください。) ■ 1家庭、1年間に63万円の金利負担 ■ 榊原氏は言う。 ≪財源論はナンセンスだと思う。 財源の話になると、増税か歳出減かの二者択一になる。 なぜ、国債発行を財源の選択肢に入れないのか。≫ 榊原英資氏の言うように国債を1,000兆円まで増やし、 榊原氏が許容する金利2%を適用すると、どうなるか。 年間の金利負担は20兆円。 1日あたり547億円。 1時間あたり23億円が、日本国民の負担する金利である。 家族4人の家庭が1年間に負担する国債・地方債の金利は 63万円に達する。 (しかも、金利分だけ。元本返済分は入ってません。) 榊原氏に言わせると、63万円が高いか安いか論ずるのは 「ナンセンス」なのだろうが、読者諸賢はいかがか。 ちなみに63万円の消費税を支払うには、1,260万円分の買 い物をしなければならない。 63万円とは、そういう金額だ。 「国債増発は、未来の世代にツケを回すことになる」 と、よく言われるが、未来世代どころか現役世代にずしりと くるのである。 ■ 少子高齢化で、貯蓄率が急落しつつある現実 ■ 榊原英資氏の強気の辯(べん)は、 「日本人の貯蓄残高は総額1,500兆円だ」 という事実に基づいている。 だから、あと200兆円くらい借り増ししても問題ない、と 榊原氏は言う。 財源の当てがないのに マニフェストで約束してしまった バラマキ政策を実現するため、 民主党政権は榊原英資氏を 御用学者として推し立てるだろう。 * ところがじつは、そもそも日本人の貯蓄率が急速に低くな っているという、別の事実がある。 東京大学の伊藤元重(いとう・もとしげ)教授が『VOICE』 誌8月号29~31ページに書いている。 ≪日本の家計部門の貯蓄率が急速に低くなっていることを知 っているだろうか。 1990年代の初めには15%もあった日本の家計部門の貯蓄率は、 2007年には3%前後まで下がっている。≫ ≪もっとも説得的な理由は少子高齢化の進行である。 人口のなかに占める高齢者の割合が増えるほど、経済全体の 家計部門の貯蓄率は低くなる傾向になる。≫ ≪金額で見ても、約 1,400兆円あるといわれる個人金融資産 の 70%前後が 60歳以上の人によって保有されている。≫ ≪若いときには たくさん稼いで貯蓄に回し、 年をとったら その貯蓄を崩して消費に回していく。 これは1人ひとりの個人についていえることだが、同時に国 についてもいえることだろう。≫ ■ 60歳以上の人びとが貯蓄を食いつぶす ■ 国債・地方債を日本国内の低金利の資金で消化できるのは、 1,400~1,500兆円の貯蓄をかかえる銀行が国債・地方債を買 っているからだ。 金利をいくら払っても、日本人が日本人に支払うカネなの だから国外流出はない、という安心感が国家財政の借金を増 やしてきた。 だが、そんなラクな世の中がいつまで続くのだろう。 「約 1,400兆円あるといわれる個人金融資産の 70%前後が 60歳以上の人(=新たな所得がほとんどない人)によって保 有されている」 ということは、どういうことか。 約 1,000兆円の貯蓄が60歳以上の人たちの個人資産なのだ が、高齢化に従ってこれがどんどん食い潰されてゆく。 貯蓄率は下がっているのだ。貯蓄残高は確実に減ってゆく。 伊藤元重氏も言う。 ≪通常は政府の財政状況が悪ければ、長期金利の急騰が起こ るか、悪性のインフレとなることが少なくない。 日本の場合にそうしたことが起きていないのは、潤沢な国民 の貯蓄資金が国債をファイナンス(=金融的下支え)してい るからだ。 国民の多くが銀行などの金融機関に預けた貯蓄の相当部分は、 政府の国債購入に回っているのだ。≫ ■ 貯蓄残高が政府債務をカバーできなくなる日 ■ ≪問題はこうした政府債務のファイナンスがいつまで持続可 能であるのか、ということだ。 増えつづける国公債を誰が所有してくれるのか。≫ コラム前半で、榊原英資氏の説に基づいて行った計算を振 り返ろう。 国債を 1,000兆円まで増やし、許容できる金利として2% を適用すると、家族4人の家庭が1年間に負担する国債・地 方債の金利は 63万円に達する。 榊原説に乗って国債を増発したあと、貯蓄残高が落ち込ん でいったらどうするつもりだ。 日本人の貯蓄残高にオンブにダッコができなくなると、国 債の借り換えをするたびに、金利3%、いや、4%…… と 高金利で資金調達しなければならなくなる。 ないしは、俗な言い方をすれば日本銀行券を刷りまくって、 つまりインフレを起こして借金を目減りさせるという荒療治 が必要となる。 ■ ワイドショーにご注目 ■ 民主党は、来年の参院選で負けぬよう、バラマキ公約実現 の財源を、けっきょく国債に求めるだろう。 ワイドショーに榊原英資氏が出始めたら、この配信コラム を思い出していただきたい。 国債増発で各家庭の金利負担が加速度的に増えるくらいな ら、消費税率を上げて国家財政の健全化を図るほうが、痛み が少ないはずだ。 電卓で計算してみよう。 === ▲ 後記 ▼ さいきんのコラム子のブログ記事から ―― (全文を読むにはリンクを開いてください) 中国企業と中国で決戦しても、最後はコンプライアンス違反 ができずに負ける サントリー vs. 華潤雪花 http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200908270000/ サントリーは上海のビール市場で地道な販売戦略を積み重 ね、トップシェアの地位を11年間維持している。 ところが、ここに華潤雪花という新興ビールメーカーが 進出してくる。 上海全体の年間需要のほぼ半量を生産できる規模のビール 工場を上海郊外に建設中だ。 おぉぉ、「華潤」といえばエネルギー分野で中国共産党の 大幹部らとギヴ&テイクしながら大きくなった財閥じゃない か。 中国共産党が、上海ビール市場を外国企業から奪還すべく 勝負を掛けてくるんだな。 中国共産党の大幹部が面子(メンツ)をかけて華潤雪花を 優遇税制・優遇融資で支援したら、消耗戦になって外国企業 のサントリーに勝ち目はないだろう。 サントリーの腕利きの中国人営業マンも高給で引っこ抜か れるだろう。 総力戦だ。 (そういうとき日本企業というのは、対抗して現地社員の給 与を急騰させるといった荒業(あらわざ)ができない。) 華潤雪花は中国企業だから、日本企業では支払えないコン プライアンス違反のカネが自由に使える。 中国共産党の幹部と結託して、税務当局や地場銀行、卸業 者などの全面的支援を得てサントリーを蹴散らしにかかるだ ろう。 華潤雪花の上海進出を、中国共産党の誰が支援し、どんな 見返りを得ようとしているのか調べ、市場首位の座のあきら め時を早めに決断することを、サントリーの経営トップには おすすめしたい。 トップがそれをやらず、ひたすら社員の奮励努力を期待し たりしようものなら、担当者は不幸である。 あの自国中心主義の中国で、 中国企業が製造することに何の困難もないビールという製品 の圧倒的シェアを、よりによって看板都市の上海で、 外国企業が勝ち得ていたこと自体が異常な僥倖(ぎょうこう) だった。 シェアを下げることで普通に戻るだけである。 == <泉 幸男 著> 『中国人に会う前に読もう 第一線商社マンの目』 『日本の本領(そこぢから) 国際派商社マンの辛口メモ』 通 信 販 売 も 受 付 中 http://homepage2.nifty.com/sai/mart/ == ■主宰 泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio) http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ (旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます) http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/ (週に3回ほど更新しているブログ) ■発行者への通信は mailto:t-izumi@f5.dion.ne.jp いただいたメールは、引用することがあります。 引用内容が政治性を強く帯びたものについては、掲載につ いて ご本人の事前了解をいただくつもりですが、 この辺の 采配は発行者にお任せいただくしかありません。 発信者氏名は原則として公開しません。公開する際は、ご 本人の事前了解をいただきます。 掲載するメールは、発信者の居住地名(市ないし県名)を できるだけ書かせていただきたく、それについてお問合せを することがあります。 ■このメールマガジンの転送・転載はご自由にどうぞ。 ■このメールマガジンの内容は、主宰の勤務先の見解とは無 関係です。このメールマガジンは、主宰の勤務先による監修 その他のサポートを一切受けておりません。主宰の勤務先に おいて守秘対象とされる事項は一切含まれておりません。 ■メールマガジン(配信誌)のお申込み・解除は、以下のペ ージでどうぞ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/mailmag.htm ------------------------------------------------------ このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐま ぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ 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