2009/05/31
<国際派時事コラム>NHKドラマ「遥かなる絆」
↓ 週3回更新のブログはこちら http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi ◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ NHKドラマ「遥かなる絆」 ■■■■第269号■■平成21年5月31日発行■■■◆ コラム子は愛媛県出身なのだが、 昭和45年(1970)に奮励苦難の末に、愛媛県南部の八幡浜 (やわたはま)市 に 戻った 中国 幼時残留者* の 城戸 幹 (きど・かん)さん(中国名では孫玉福さん)のことは全く 知らなかった。 地元愛媛県では大きく報道されたそうだが、当時コラム子 は小学4年生だった。 (* 注:「中国残留孤児」ということばを使いかけたが、 城戸 幹さんの場合、ご両親は昭和45年当時も生きておられ、 「孤児」とお呼びするのは縁起でもない。 考えた末、「中国幼時残留者」という表現を使わせていただ くことにした。) きょう5月31日午後4時からNHK総合テレビで1時間も ののドキュメンタリーが放送される。 「四国スペシャル:故郷行 中国・家族のルーツをたどる旅」 出来のほどは知らないが、コラム子も見るつもりだ。 ■ 流れ弾が、やがて集中砲火に ■ 城戸 幹さんの苦難の末の帰国とその後を、幹さんの次女・ 久枝(ひさえ)さんが書いた本が、NHKでドラマ化され、 この4月〜5月に6回連続ものとして放送された。 「遥かなる絆」。 日本の台湾統治を揶揄することに終始した「NHKスペシ ャル」の悪質なおふざけが4月5日に放送されたばかりだっ たので、このドラマ「遥かなる絆」もはらはらしながら見た。 ドラマを見始めてから原作の城戸久枝著 『あの戦争から遠く離れて ― 私につながる歴史をたどる旅』 (情報センター出版局・刊)を読んだ。 おかしな言い方だが、とくに著書前半は、NHKドラマの ノヴェライゼーション(小説化)かとさえ思えた。 テレビ化は、それくらい忠実だった。 もちろん、細部の省略や若干の脚色はあるにせよ。 (脇役の俳優さんのなかでは、城戸 幹さんが帰国後に松山 の定時制高校で出会い結婚することとなる笹岡陵子さんを、 佐藤めぐみさんが愛くるしく演じていた。) ドラマは、中国・吉林省長春市に留学中の久枝さんが父の 過去をたどる形で進行する。 久枝さんの「現在」における衝撃的な出来事。 授業中に、ふいに流れ弾のように中国人学生の反日発言を 身にうけ、もたもたしていると学生たちに付和雷同のスウィ ッチが入り、やがて集中砲火を浴びせられる。 「日本人って、歴史のこと何も教わってないって、本当?」 「あなたは日本が過去、中国にどんなことをしてきたか、 知ってる?」 ■ 悔しい ■ 久枝さんの著書から出来事をたどってみよう。 ≪好奇心に満ちたいくつもの顔が何か叫びながら次々に私に 迫ってくる。 (中 略) リーベンレン(日本人)、リーベンレン、リーベンレン……。 それは呪いの言葉のようだった。 (中 略) 私は恐怖を感じながらも、彼らの勢いに負けまいと必死で質 問に答えた。 「日本の教育と中国の教育は違うし、歴史の認識は違うと思 います。 確かに歴史を知らない若者もいるけれど、知っている人も ちゃんといますよ」 しかし、話は一向に収まらない。 彼らを納得させるような答えを出せない私を見て、1人の男 性がニヤニヤしながら言った。 「ほら、日本人は何も知らないんだから、聞いても無駄だよ」≫ 歴史の隠蔽・歪曲の総本山の中国でこれを言われては悔し い。 “日本人 shenme 都不知道。”(日本人は何も知らない) と、ねちっこくあざける中国人学生は、テレビドラマを見た 誰もが実にうとましく思うであろうリアルな演技。 そのためか、原著にはない善玉中国人の 劉成 というキャ ラクターも毒消しで登場する。 ■ スウィッチ・オン、スウィッチ・オフ ■ 「こういう集中砲火へは、言われるがままにひれ伏すしか ない。 中国人・韓国人ウケする歴史知識を身につけよう」 というのが、一世を風靡(ふうび)した自虐史観の所以(ゆ えん)だろう。 コラム子が中国にどっぷりつかっていたのは、久枝さんが 留学した平成9〜11年(1997〜99)以前、江沢民の反日教育 路線が浸透する前の時代だったし、そもそも立場が貿易商だ から、こういう反日集中砲火は浴びたことがなかった。 自分が城戸久枝さんのような状況に置かれたら、付和雷同 のスウィッチをオフにするためにどういう一言を返すだろう。 これには考えさせられた。 多勢に無勢、ヘタをすれば身の危険もあるなかで、烏合 (うごう)の衆をどうやって黙らせる? “Nimen 在抗日戦争戦勝了日本。勝利者応該有雅量。” (あなたたちは抗日戦争で日本に勝った。勝利者には広い 度量がなければならない。) あえて意図的な虚言が含まれているが、けっこう意表をつ く一撃ではないかと思う。 反日の煽動は、かつての「抗日」が今に至るまで続いてい るのだという錯覚を一般大衆に与えることによって成り立つ。 誇りを奪われているというコンプレックスをかきたてるこ とで成り立つ。 「抗日は終わったのだ。あなたがたは勝ったのだから」 とプライドをくすぐってやるのが、スウィッチ・オフには効 果的ではないか……。 あるいは、こういうのはどうだろう。 “Nimen 這個態度不是違反中国政府的中日友好総方針的 ma?” (あなたがたのその態度は、中国政府の中日友好という全 体方針に反していませんかな?) おまえたちの反日的態度はどうせ体制側へのオベンチャラ だろうが、逆に反政府行動と見なされかねないぞ、と脅すこ とで水をかけてやろうという寸法だが、 さて、うまくいくかどうか……。 ■ 2種類の感情のギャップに戸惑い立ちすくむ ■ 中国語や英語で悔しいことを言われたときにうまく打ち返 す会話術の本を出せば、国際親善の維持に少しは役立つかも しれないので、そのうちトライしたい。 ワン・フレーズで終えられなければ、次は知識と哲学の勝 負になるから、所詮、付け焼刃では済まないけれど。 * 父・城戸 幹を“孫玉福”として想い、久枝さんをも親し い親戚として温かく受け入れてくれる牡丹江(ぼたんこう) の中国人たちと、 中国語がまだ流暢でなかった弱者の久枝さんに反日集中砲 火を浴びせる中国人学生と。 ≪彼らは一見、両極端な存在のようにも見える。 この両極端の単純な感情が複雑に交差する世界、それがまさ に中国なのかもしれない。 しかし、それは必ずしも中国人のなかに2種類の人間がいる ということではないようにも思えた。≫ 城戸久枝さんの著書の 323ページ、このくだりで目が釘付 けになった。 人を善玉と悪玉に整理することで納得を得るほうがラクだ が、久枝さんはそうしなかった。 そのあとの分析が著書の山場のひとつなので、ご紹介しよ う。 ≪「日本人(リーベンレン)」という言葉を聞くとまるで条 件反射のように攻撃的になる中国人たちの頭のなかには、常 に前提として「侵略者」「憎むべき対象」「歴史を知らない」 という抽象的な顔のない「日本人」像があるようだった。 かれらの怒りは決して個人に向けられているわけではなく、 いわば彼らの頭のなかの想像の「日本人」と、そんな「日本 人」をつくった日本という国に対して向けられているのだ。 彼らは自分の出会った目の前の日本人が、その想像の「日本 人」と同じなのかどうかを執拗に確かめようとする。≫ ≪ところが、そんな彼らでも、いったんその「日本人」と個 人としてリアルな人間同士の付き合いがはじまると、こんど は抽象的な「日本人」としてではなく、具体的な1人の人間 として深い情愛で接してくるようになるのではないだろうか (ただしそれで彼らの日本という国への基本的な認識が変わ るかどうかは別の話だ)。 私たち日本人はその2種類の感情のギャップに戸惑い立ちす くむことになる。≫ ■ 娘と父の2冊の本が立ち上げる立体像 ■ 城戸久枝さんの著書の終わりの2章では、中国幼時残留者 による国家賠償訴訟問題(平成19年に安倍晋三首相によって 最終的解決を見た)と、語られることの少ない「満洲国軍」 の日本人について、詳しい記述がある。 NHKドラマに反映されなかった部分で、教えられること が多かった。 久枝さんの父の城戸 幹さん(すなわち孫玉福さん本人) も、 『「孫玉福(スンユイフー)」39年目の真実 ― あの戦争か ら遠く離れて外伝』 という本を、娘と同じ 情報センター出版局 からこの4月に お出しになった。 城戸久枝さんの本が、劇的な部分に光を当てたのに対して、 ご本人の城戸 幹さんは中国そして帰国後の日本のごくごく 日常の部分をいつくしみを込めて淡々と描いている。 城戸 幹さんの著によって事実を補正した部分もあり、2冊 の本を読むといっそう生き生きと立体像が浮き上がる。 心から、ご一読をお奨めする。 === ▲ 後記 ▼ さいきんのコラム子のブログ記事から ―― (全文を読むにはリンクを開いてください) <クイズ>: 運転免許のない俳優さんが自動車運転シーンを 撮るには…… http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200905260000/ 笹本玲奈(ささもと・れな)さんがTBS日曜夜9時の 「ぼくの妹」に出演していますが、ここ2回ばかり公道で ほんものの車を運転するシーンがあります。 ところが笹本さんは、じつのところ運転免許をもっていな いのです。 クイズです。 このシーンを、公道でどうやって撮ったのでしょう。 合成映像ではなく、実写です。 車の運転は、笹本さんにとって今回がはじめての、新鮮な 体験だったとおっしゃるのですが……。 麻生政権の良い持ち味がようやく出てきた http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200905270000/ 5月の最大の不思議は、民主党の小沢一郎さんが鳩山由紀 夫氏の顔を刷ったお面をつけただけで人気を回復してしまっ たことだ。 麻生太郎首相は、政権末期になってようやく持ち味を発揮 しはじめたと思う。 5月23日に閉幕した「日本・太平洋諸島フォーラム」は、 3年ごとの開催で今年は5回目だが、取り組みに積極性が感 じられた。 今回は 「太平洋環境共同体」 の構築をうたった。 わたしは、「東アジア共同体」のようないわゆる「共同体 もの」が虫唾が走るほど嫌いだ。 だが、この「太平洋環境共同体」という看板は、いい着想 だと思った。 環境を前面に出したのがうまい。 中国がメンバーになりえない「共同体」の枠組みを日・豪 を核として提示するというのは、北京にとっては刺激的だか ら、民主党政権なら二の足を踏んだはずだ。 いっぽう、防衛関連では政府・与党が、「武器輸出3原則」 の緩和を検討する方針を固めたというのも1歩前進だ。 緩和されれば、他国との武器共同開発・生産の容認、共同 開発国への輸出の解禁、ということになる。 日本のメーカーが素材技術や構造設計で先端を行きはじめ、 米国もこれを無視できなくなったということだと思うが、こ の「緩和検討」も民主党政権ならできない。 麻生政権の方針を継承する次期政権であってほしい。 「兵庫県」の謎が解けた 百万都市「姫路」の まぼろし http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200905270001/ 兵庫県というのは日本で最も県民意識のない県として知ら れる。 播磨(はりま)地方も但馬(たじま)地方も、神戸近辺と の心情的親しさがいまだに、ない。 不自然に大きい。 県というより、道州制の広域行政区もどきだ。 『NHK知る楽(らく) 歴史は眠らない』の4〜5月号 「県境の謎を行く」(藻谷浩介さん)を読んで、ようやく疑 問が解明された。 == <泉 幸男 著> 『中国人に会う前に読もう 第一線商社マンの目』 『日本の本領(そこぢから) 国際派商社マンの辛口メモ』 通 信 販 売 も 受 付 中 http://homepage2.nifty.com/sai/mart/ == ■主宰 泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio) http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ (旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます) http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/ (週に3回ほど更新しているブログ) ■発行者への通信は mailto:t-izumi@f5.dion.ne.jp いただいたメールは、引用することがあります。 引用内容が政治性を強く帯びたものについては、掲載につ いて ご本人の事前了解をいただくつもりですが、 この辺の 采配は発行者にお任せいただくしかありません。 発信者氏名は原則として公開しません。公開する際は、ご 本人の事前了解をいただきます。 掲載するメールは、発信者の居住地名(市ないし県名)を できるだけ書かせていただきたく、それについてお問合せを することがあります。 ■このメールマガジンの転送・転載はご自由にどうぞ。 ■このメールマガジンの内容は、主宰の勤務先の見解とは無 関係です。このメールマガジンは、主宰の勤務先による監修 その他のサポートを一切受けておりません。主宰の勤務先に おいて守秘対象とされる事項は一切含まれておりません。 ■メールマガジン(配信誌)のお申込み・解除は、以下のペ ージでどうぞ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/mailmag.htm ------------------------------------------------------ このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐま ぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000063858) ------------------------------------------------------



