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本業は総合商社の営業マン。もと北京駐在。このメールマガジンから、エッセー集 『中国人に会う前に読もう』 と政策提言書 『日本の本領(そこぢから)』 が誕生しました。歴史雑学いっぱいの辛口時評から語学のコツまで、毎号、大脳皮質を刺激します。

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2009/03/30

<国際派時事コラム>「草泥馬」のレジスタンス

↓ 週3回更新のブログはこちら
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi


◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆
          http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/


       「草泥馬」のレジスタンス


■■■■第263号■■平成21年3月30日発行■■■◆




今 朝(けさ)は 雨 で 散 歩 は 無 し と い ふ 事 を

 犬 に 伝 ふ る 事 の 難(かた)さ よ
            
               さいたま  松永 浩司

(3月29日の「日経歌壇」穂村 弘・撰より) 


 うちではミニチュアダックスフント「ココ」の散歩は、
週末だけコラム子の役目になっている。

 生活パターンの違いからウィークデーか週末かを判断し、
週末の朝は人なつっこく寄ってくる。

 期待されても、雨が降っていると困る。

 幸いにも「ココ」は最近、ヴェランダから雨降りの様子を
しばらく見せると、観念して静かになってくれる。


*  *


チベット・ラサの2008年10月「監視される街」
(9分8秒のビデオ)
http://www.youtube.com/watch?v=hLSXXC7pXK8&feature=player_embedded

 漢人ばかりが元気なチベットの首都を、淡々と映像記録し
ている。

 昨年10月の国慶節には、ポタラ宮に五星紅旗を翻(ひるが
え)らせた。

 マッカーサーが法隆寺の五重塔に星条旗を翻らせるような
ものだが。


*   *   *


 いま中国で話題の「草泥馬」(ツァオ・ニー・マー)の歌。

 まずは、軽快な児童合唱団の歌声をお聴きください。

“童声合唱≪草泥馬之歌≫”(1分24秒)
http://www.youtube.com/watch?v=01RPek5uAJ4

 Youtube ビデオでご覧になれるとおり、 南米のアルパカ
らしき動物が主人公ですが、“草泥馬”を中国語辞典で引い
ても載っていません。

 “草泥馬”は、ツァオ_ ニー↑ マー_ と発音します。

 これは、中国語の Fuck your mother を もじって でっち
あげた架空の動物名なのであります。

ツァオ↓ fuck (漢字は「入」かんむりに「肉」)。
ニー_  ニーハオの“ニー”です。「あなた(の)」。
マー→  mother (漢字は「女」へんに「馬」)。

 中国語の Fuck your mother と“草泥馬”は、
四声(しせい、高低アクセント)が異なります。

 しかし、中国語で歌うとき四声の区別はしないので、かわ
いい子供たちが“草泥馬(ツァオ・ニー・マー)”と合唱す
るのが、まさに大まじめに Fuck your mother! と繰り返し
ているように聞こえるわけです。


■“和諧社会”への当てこすり ■


 歌の中身は

「わんぱく盛りの草泥馬は自由奔放に暮らしている。
でも、草泥馬の主食の草を邪悪な河蟹(かわがに)が食べ尽
くそうとするので、草泥馬は河蟹をやっつけた」

というものです。

 なぜ “河蟹”かというとですね。

“河蟹”は ホー↑ シエ↓ と発音しますが、

これがなんと

“和諧” ホー↑ シエ↑ の、もじり。

 “和諧社会”(=調和した社会)こそ、中国の現政権の
スローガン。

 「邪悪な河蟹をやっつける」というのは、
胡錦濤・温家宝政権への当てこすりなのです。

 こちらの、43秒のアニメ・ヴァージョンをご覧いただくと、
さいごに河蟹も登場し、ずたずたにされています。
http://www.youtube.com/watch?v=or9ulLXogAk&NR=1


■ 検閲プログラムをすり抜ける“草泥馬”■


 中国共産党への批判を中国にあるサーバー経由でネット上
に載せて、これがモニターされると、サイトそのものが閉鎖
の憂き目に遭う

(……というのは常識ですが、残念ながらコラム子は試した
ことがありません。)

 “六・四”、“西蔵”(チベット)、“民主化”といった
単語が、体制側が敏感に反応するキーワード。

 Fuck your mother にあたる“ツァオ↓ ニー_ マー→”
も、共産党のネット検閲はとうぜん放っておかない。

 それなら、“草泥馬 ツァオ_ ニー↑ マー_”なら、
どうだ。

 ネット検閲プログラムには、ひっかかるまい。
 “草泥馬”も“河蟹”も、単なる動物名だもの!

 そんな、あそび精神に満ちたレジスタンスであるわけです。

 その辺の事情がウィキペディア(英語版)で詳しく解説さ
れていますので、興味のある方はどうぞ:
http://en.wikipedia.org/wiki/Baidu_10_Mythical_Creatures_(Internet_meme)


■“吉跋猫” “吟稲雁” “鳴猪”■


 “草泥馬”流のもじりで生まれた動物名には、たとえば以
下のようなものがある。

 いちおう、こういうのも知っておかないと、「中国語読み
の中国語知らず」なんてことになるから、ことばは奥が深い。

 “吉跋猫” チー↑ パー↑ マオ→

 猫の一種かと思いきや、これがなんと
“鶏巴毛” チー→ パ マオ↑
のもじり。

 “鶏巴”は、penis のことです。
 「ちんぽの毛」といったところでしょうか。

 “吟稲雁” イン↑ タオ↓ イェン↓

 これも、「雁(がん、かり)」にはあらず、
“陰道炎” イン→ タオ↓ イェン↑
つまり「膣炎」のもじり。

 “鳴猪” ミン↑ チュー→

 直訳すれば「うるさい豚」だが、これは
“民主” ミン↑ チュー_ の、もじり。

 「民主」と「ちんぽの毛」が、レジスタンス用語で同居し
てしまう国……!


■ 風穴となるか ■


 “草泥馬”のことをコラム子が知ったのは『ニューヨーク
・タイムズ』紙の記事でした。 

A Dirty Pun Tweaks China’s Online Censors
(下品な駄洒落が中国のネット検閲に風穴) 
http://www.nytimes.com/2009/03/12/world/asia/12beast.html

 “草泥馬之歌”アニメの、民謡風+ラップ調の別ヴァージ
ョン(4分13秒)もご紹介しておきましょう。
http://www.youtube.com/watch?v=T2Fl3q5gZNc

 後半に、いけずの蟹どもが登場します。


===


▲ 後記 ▼


  さいきんのコラム子のブログ記事から ――

(全文を読むにはリンクを開いてください)


浄瑠璃を 「浄るり」 と書く神経がわからない 
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200903240000/

 世の中には、漢字制限にへつらって浄瑠璃を「浄るり」と
書く向きがあることを知り驚愕した。

 文化庁が「新常用漢字表(仮称)に関する試案」への意見
を募集している。
 締め切りが4月16日なので、4月上旬にはまとめて配信誌
でも発表したい。

 わたしの基本は、「あっ旋」「ひっ迫」「まい進」のよう
な醜い混ぜ書きを世の中から少しでも減らすという観点から
字を選ぶべきだというもの。


「ビバリーヒルズ・チワワ」5月1日に日本でも封切り
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200903200001/

 マニラ出張の機上で観てきました。楽しい映画。
 予告篇のリンクをご紹介しています。


「県知事」経験を国会議員当選4回に換算すれば、
国の政治は活性化する
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200903260000/

 米国で、州知事が大統領への登竜門になっているのが参考
になる。

 県知事経験を国会議員当選4回に換算し、政令指定都市の
市長の経験を国会議員当選2回、その他の県庁所在地の市長
経験を国会議員当選1回に換算することにすれば、政界人事
は俄然おもしろくなる。


==


<泉 幸男 著>


   『中国人に会う前に読もう  第一線商社マンの目』 

『日本の本領(そこぢから)  国際派商社マンの辛口メモ』

               通 信 販 売 も 受 付 中
         http://homepage2.nifty.com/sai/mart/


==

■主宰   泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio)

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