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本業は総合商社の営業マン。もと北京駐在。このメールマガジンから、エッセー集 『中国人に会う前に読もう』 と政策提言書 『日本の本領(そこぢから)』 が誕生しました。歴史雑学いっぱいの辛口時評から語学のコツまで、毎号、大脳皮質を刺激します。

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2009/02/23

<国際派時事コラム>「坂の上の雲」の俳句の海を泳ぐ生徒たち

↓ 週3回更新のブログはこちら
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi


◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆
          http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/


    「坂の上の雲」の俳句の海を泳ぐ生徒たち


■■■■第259号■■平成21年2月23日発行■■■◆




 2月最初の週末、松山へ帰ってきた。

 松山駅前でタクシーに乗り「坂の上の雲ミュージアム」に
行きたいと言ったら、

「どうせ行くんじゃったら、そのネキ(近く)に秋山兄弟の
生まれたうちがあるけんの、最初にそこへ行ってみたほうが、
よう分からい。
メーターも、よけ(余計)違(ちが)やせんのよ。

ミュージアムは、行きし(途中)に見えるけん、教えたげら
い。
場所さえ分かっとったら、秋山兄弟の家を見てから歩いて行
っても近いけんな」

 運転手さんに従って正解だった。


■ 2つの基本を的確に見抜いていた眞之 ■


 復元された「秋山兄弟の生家」は、たましいを帯びて語り
かけてくる。
http://www.akiyama-kyodai.gr.jp/

 玄関口で見た12分ほどの説明ビデオに感動してしまった。

 日本海海戦の名参謀、秋山眞之(さねゆき)海軍中将が、
大正7年に50歳で亡くなるとき遺した言葉の内容というのが


「こ れ か ら の 戦 争 は、飛 行 機 と 潜 水 艦 の 時 代
と な る。

諸 君 は 飛 行 機 と 潜 水 艦 の こ と を 十 分 に 研 究
 し て ほ し い」


「日 本 は 米 国 と 事 を 構 え て は な ら な い。

米 国 と 争 え ば 日 本 は 苦 境 に 陥 る こ と と な る」


 日米戦争の20年以上前、大正7年に、かくも的確に未来を
見据えていたとは!

 のちの昭和の悲劇は、まさにこの2つのポイントに集約さ
れるではないか。

 南洋進出の目当てだった天然資源も、輸送船団を潜水艦に
沈められて本土に運べなくなった。
 大正7年に眞之中将が遺した言葉が生かされなかった。
 
 
■ 生家復元に公費は出なかった ■


 眞之(さねゆき)は、日清戦争の直後に米国に留学して、
折しも米国とスペインがキューバを巡って戦った米西戦争を
視察し、その後 英国へ向かっている。

 広い見聞と的確な判断力で、時代の道筋を見通すことので
きた人だったのだ。
 もっと詳しくその生涯のことを知りたくなった。

 兄の秋山好古(よしふる)は、こんな言葉を遺していると
いう。

「眞之のことでとくに褒めるべきことはないが、ただこれだ
けは言える。
眞之は、四六時中、お国のためということを考えていた。
それが頭を離れたことはなかった」

*

 秋山兄弟の生家の復元には、つごう1億円の費用がかかっ
た。

 てっきり松山市が半分くらいは出しているのかと思ってい
たら、社会党や共産党の議員が
「市の費用を軍人ごときの顕彰のために使うのは、けしから
ん」
とゴネたために、公費は出なかった。

 そこで、秋山兄弟が関わった育英組織の流れをくむ「常盤
同郷会」という財団法人が民間の浄財を集めて建てた。
http://www.akiyama-kyodai.gr.jp/hozonkai/

 その話を聞いて、わたしも心ばかりの寄付をした。


■ 香川照之さんの演じる正岡子規 ■


 今年11月29日から5回連続で 「坂の上の雲」 がNHKの
大河ドラマ放送枠に放映される。
(全13回なので、残りの回は来年と再来年に4回ずつ放映と
なる。)

 復元した秋山兄弟の生家に、阿部 寛さん(秋山好古の役)
と本木雅弘さん(眞之の役)が訪れた写真もあったので、
ロケに使われたのかと思ったら、さにあらず。

 説明のボランティアの方によれば、秋山兄弟生家のシーン
は日活撮影所にセットを組んで撮ったらしい。

 復元公開されている生家は、現代の法律に沿って天井に火
災警報器がついている。
 周囲もビルで囲まれている。
 たしかに、これでは撮影に使いにくい。

 じっさいに松山でロケが行われたのは、松山城のシーンだ
けだったそうだ。

 秋山好古がことしは上杉謙信の生れ変り(!)というのも
面白いが、正岡子規を香川照之(かがわ・てるゆき)さんが
演じていて、これはもう生き写しだ。

 来年秋に放映予定の第7回 「子規、逝く」 の撮影では、
役づくりのために15キロも減量したという。

 子規の健啖(けんたん)ぶりを支えた妹・律を演じるのが
菅野美穂さん。
 きりりと芯の通った女優さん。いい配役だ。


■ 松山の恒例全国イベント「俳句甲子園」■


 そのあと、話題の「坂の上の雲ミュージアム」へも行って
みたが、なるほど運転手さんが秋山兄弟生家に先ず行けと奨
めるはずだ。

 秋山兄弟の生家復元の40倍以上の公費をかけたミュージア
ムは、まるでデパートの催し物のような当たり障りのなさ。

 たしかに社会党や共産党のセンセイがたが満足する出来栄
えであった。

 当時最高の知性の眞之が「四六時中、お国のためというこ
とを考えて」いなければならなかったのが、なぜなのか。
 
 そういう、だいじな問いへの答が見当たらない。

 明治に吹いた暖風と寒風が肌に感じられる展示を繰り広げ
る気魄が欲しかった。

*

 さて、その松山にあるコラム子の母校からうれしい知らせ
があった。
 おととい届いた、愛光中学・高等学校(愛光学園)の季刊
広報誌を開いたら、

「第11回俳句甲子園 全国大会準優勝」

とあるではないか。

 昨年8月16〜17日のことで、やや旧聞に属するが。

 優勝は、東京から遠征してきた開成高校だった。
 毎夏、俳都・松山で開かれる俳句甲子園は、全国イベント
なのだ。


■ 迷い猫、銃の匂ひ ■


 母校・愛光生たちの作品から個人賞受賞作を読んでみる。

 優秀賞の2作:


迷 ひ 猫 今 日 は 大 花 火 の 下 で  柴田悠貴


 花火に「迷い猫」を配したのが絶妙。
 犬では、句にならない。

 せっかくの花火を見ているのか見ていないのか、関心があ
るのか無いのかさっぱり分からないのが猫。
 でも、じつはしっかり見ているのだ。ちらり、ちらり。

 ただの猫ではなく「迷ひ猫」だというのがまた、いい。
 なに食わぬ素振りでいても心は不安でいっぱいの猫ちゃん
なのだ。

 それが、今日は束(つか)の間の花火見物だ。

 おそらく想像でつくった句だろうけれど、
「今日(きょう)は」のひとことでリアルさが増した。

 この辺が、うまい。


少 年 の 跣 足(はだし)に 銃 の 匂 ひ あ り  高崎壮太


 はっとさせる物語性。
 だが、映画広告のキャッチコピーのようでもある。

 うまい句ではあるが落ち着きが悪いのは「跣足」と「銃」
に連関が無さすぎるから。
 銃は、手で扱うものだからね。

 たとえば
「少 年 の 跣 足 火 薬 の 匂 ひ あ り」
と直したら、がぜん心の眼に、乾燥しきった戦場が広がるの
だが。


■ 東京の仮面、金色の獅子 ■


 続いて、入選の1作:


東 京 の 仮 面 つ け た る 金 魚 か な  戸田圭輔


 個人的には優秀賞の2作より、こちらを推したい。

 「東京の仮面」か……。

 金魚の、いかにも取り澄ました感じを、うまく表現した。

 人を食ったところに俳句の味(俳味)がある。


 残る2人の作品:


夏 草 に 金 色 の 獅 子 眠 り た る  野口 航


 「金色の獅子」のイメージが鮮烈。アンリ・ルソーの絵画
を思わせる。

 「眠りたる」で済ませず次の動きを何か予感させるものが
あれば、もっとよかった。


夏 草 や ほ う き の バ ッ ト 空(くう) を 切 る  

                                 二神(ふたがみ)雄揮


 うん、真剣にハチャメチャなのが、いい。

 「夏草や」で切れは得ているから、句末は「空を切り」と
したほうが余韻がうまれる。
 
 箒をひと振りした少年の顔を想像すると愉快だ。


■ 中1生も大健闘 ■


 同じ広報誌には「子規顕彰松山市小中高校生俳句大会」の
入賞作として中1生の6句も載っていた。

 うち、特選の句ふたつが良かった:


教 科 書 が 腕 に 吸 い つ く 暑 さ か な  田坂京太郎


 「汗」ということばを使わずに、汗の感触を伝える、納得
の技だ。

 今やエアコン完備に慣れて、「教科書が腕に吸いつく」感
触をなつかしく思い出す自分に気づく。


家 中 の 団 扇 並 べ て 選 び け り  合田昇平


 これは楽しい。
 一読、心の眼に色とりどりの団扇(うちわ)が集(つど)
う。

 夏祭りに、どの団扇を挿して行こうかと、家族でわいわい
話しているのだろう。
 「そういえば奥の部屋にもひとつ、いいのがあったよ」
などと話が広がるのだ。


 ことばを紡(つむ)ぐよろこびを知った少年少女らに、幸
(さち)あれ!

 ちなみに愛光学園は、コラム子が通った頃は男子校だった
が、いまは共学校になっている。


===


▲ 後記 ▼


 配信会社「まぐまぐ」に問い合わせたところ、アドレス削
除の運用ルールを昨年6月から変えたのだそうです。

 たしかにそのころから急に読者数が減りだしたので、時期
的に符合します。

 メールアドレスが無効になっている読者だけでなく、
メールボックスの容量オーバーで実質的に受信できていない
読者のアドレスも削除する方針としたのだとか。
 
 理由はともかく、3週間以上も配信がなかったら、
「商社マンに技」で検索すれば、ブログに行き着けます。
 ぜひそこで、読者再登録をお願いします。


       *     *     *

 
  さいきんのコラム子のブログ記事から ――

(全文を読むにはリンクを開いてください)


「ございます」を「御座います」と書く若い人たち
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200902030000/

 パソコンだと漢字変換で簡単に 「御座います」 が出る。

 世間ではあまり使われない文字遣いなのだが、そもそも読
書量が少なく、手書きの文章修行もしていない若いひとは、
漢字変換機能を先生にしてしまう。

 年長者が言ってやらないと分からないだろう。
 お触れ書きを部の全員にメールした。
 世間さまのお役にも立つかと思うので、ほぼそのままご紹
介しよう。


「万引」 抑止への決定打 万引対策費を実行犯に請求
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200902130000/

 千円、2千円の本を万引きした犯人にウン万円の賠償をさ
せようとすると、「焼け太り」だと言われぬか。

 そういう懸念があれば、店はモノの被害額しか賠償請求で
きず、万引対策にカネをかけられない。

 ところが、思想を変えれば対策は生まれる。

 万引対策費のツケを実行犯に払わせるのだ。
 これなら対策にカネと人手をかけることもできるし、万引
への抑止力になる。


==


<泉 幸男 著>


   『中国人に会う前に読もう  第一線商社マンの目』 

『日本の本領(そこぢから)  国際派商社マンの辛口メモ』

               通 信 販 売 も 受 付 中
         http://homepage2.nifty.com/sai/mart/


==

■主宰   泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio)

http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/
(旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます)
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/
(週に3回ほど更新しているブログ)

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 いただいたメールは、引用することがあります。
  引用内容が政治性を強く帯びたものについては、掲載につ
いて ご本人の事前了解をいただくつもりですが、 この辺の
采配は発行者にお任せいただくしかありません。
  発信者氏名は原則として公開しません。公開する際は、ご
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