2009/01/06
<国際派時事コラム>人名用漢字・再論(上)
↓ 週3回更新のブログはこちら http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi ◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ 人名用漢字・再論 (上) ■■■■第256号■■■平成21年1月6日発行■■■◆ 平成18年9月に出版の拙著『日本の本領(そこぢから)』 の記述に誤りがあったので、これを正すとともに、あらため てコラム子の主張を述べたいと思います。 訂正篇を(上)、主張篇を(下)としてお送りします。 きょうは、(上)の訂正篇です。 コラム子は、『日本の本領』の第3章「ファウルとエラー つづきの言語政策だが」のなかで、人名用漢字に関する政策 を批判しました。 平成16年7月に配信したコラム「<法人名用漢字><地名 用漢字>の怪」に若干手をいれて収録するにあたり、同書の 84〜86ページに導入を補筆したのですが、この部分に2点の 誤りがありました。 ■ レストランの裏メニューの如く ■ 誤りの1点目。 人名用漢字のなかに存在する、「真」に対する「眞」や、 「仏」に対する「佛」のような正字体について、 ≪これらの正字体は、「昭和21年告示の当用漢字表ではその 字体だったから」 という、 役所でしか通らない理屈でもっ て、昭和56年10月1日に 突 如 と し て 「人名用漢字許容 字体」に指定され、≫ と書きました。 この 「突如として」 というところが間違っていました。 たしかに、昭和21年11月16日に内閣告示された「当用漢字 表」には「眞」・「佛」の字体が収められ、 その後、 昭和24年4月28日に内閣告示された 「当用漢字 字体表」で「眞」は「真」に、「佛」は「仏」に、それぞれ 字体整理されました。 昭和56年の「人名用漢字許容字体」に「眞」・「佛」が収 め直されるまで、これらの正字体は子の命名には使えなくな っていたものと考えて、「突如として」と書きました。 ところがこの認識に間違いがありました。 じつは「当用漢字字体表」が公布された時点で、「眞」や 「佛」を使った子の命名は不可能になったと考えた戸籍窓口 係官も少なくなかったのですが、 政府解釈としては、 昭和21年の「当用漢字表」が廃止されたわけではないから、 そこに収められていた「眞」や「佛」も引き続き子の命名に は使える、 と されました。 まるでレストランの裏メニューみたいですね。 ■ 常用漢字表が当用漢字表に取って代わる ■ つまり、昭和24年4月28日から昭和56年9月30日まで、 「眞」・「佛」は「当用漢字表」収録の字体として 「真」・「仏」は「当用漢字字体表」収録の字体として、 どちらも、子の命名に使えたわけです。 では昭和56年10月1日に、何が起きたのでしょう。 「常用漢字表」の内閣告示があったのです。 常用漢字表の1945字に「真」・「仏」は収められています が、「眞」・「佛」はありません。 常用漢字表は、当用漢字表に取って代わるものという位置 づけ。 つまり、当用漢字表が廃止されることになるわけです。 ということは、「当用漢字表に 収録されている字体だか ら」との理由で それまで子の命名に使えた「眞」・「佛」 が、昭和56年10月1日から「突如として」使えなくなってし まう。 そこで、そういう「突如」の事態を回避することを主な目 的として定めたのが「人名用漢字許容字体」の205字でした。 205字の内訳は、 常用漢字の正字体(「眞」・「佛」など)が195字、 人名用漢字の正字体(「亙」・「彌」など)が10字。 ■ 205字の「許容字体」の由来 ■ 205字のうち、 常用漢字の正字体195字は全て、「眞」・「佛」と同じよ うな経緯によるもの。 いっぽう、人名用漢字の正字体10字のうち3字は、昭和26 年5月に人名用漢字としていったん正字体を採用したが、 昭和56年10月に簡易字体へ字体整理することを決めたため、 それまでの正字体も引き続き「許容」されるようにとの経過 措置。 具体的には新採用の簡易字体「亘」に対する正字体「亙」 と、「渚」・「琢」の正字体(点がつく)です。 残りの7字は、昭和56年10月に 文字通り 「突如として」 子の命名に使えるようになったもの。 具体的には、「巖」・「彌」・「祿」・「穰」と「祐」・ 「禎」の正字体(「ネ」→「示」)、それから「猪」の正字 体(「猪」に点つき)の7字です。 (経緯の詮索は、ここではやめておきます。) 以上が、誤りの第1点についての説明でした。 ■ 異体字の数が 205 字から228字へ ■ さて、誤りの第2点の説明に移ります。 人名用漢字は、平成16年9月27日さらに新たな字が488字 追加され、同時に「人名用漢字許容字体」205字も人名用漢 字に格上げされるなどして、合計 983 字となりました。 『日本の本領』の補筆部分を書いたとき、最終的な983字の 表をよく見ずに、正字体などの異体字は上述の 205字に限ら れるものと決めてかかってしまいました。 「真」・「眞」のような簡易字体・正字体のペアを1字種 と数えるとき、子の命名に使える漢字の字種は、常用漢字の 1,945字と人名用漢字の778字(983字から205字を引いた数) の合計、つまり 2,723 字だ、と書いたのはそのためです。 ところが、ここに間違いがありました。 じつは平成16年9月の追加にともない、人名用漢字に含ま れる正字体などの異体字は、例の 205 字からさらに 23 字 増えて、228 字となっていたのです。 増えた 23 字の内訳は、 常用漢字 の異体字として 追加された 「榮」「圓」「薗」 「駈」「實」「瀧」「嶋」「盃」「冨」「峯」「萬」「埜」 「凉」「禮」の 14 字と、 人名用漢字の異体字として追加された「堯」「槇」「凛」 「晄」など9字でした。 ですから、「真」・「眞」のような同字種異字体のペアを 1字種と数える場合の計算は、常用漢字の 1,945 字と 人名用漢字の 755 字( 983 字から 228 字を引いた数)の 合計で 2,700 字種。 これが、子の命名に使える漢字の数なのでありました。 もちろん、単純に常用漢字数 1,945 と人名用漢字数 983 を足し合わせれば、2,928 字となります。 これは、異体字も1字として計算した場合の数です。 ■ 例示の4字のうち2字は人名用漢字になった ■ ですから『日本の本領』の ≪いかにも名づけに使いたくなりそうな「榮」「澤」「鐵」 「萬」などは、人名用漢字許容字体に指定されず、≫ という記述は正しいが、 ≪したがって人名用漢字になっていない≫ わけではなかっ た。 上でご説明のとおり、「榮」と「萬」は平成16年9月に晴 れて人名用漢字となりました。 しかし「澤」と「鐵」が人名用漢字でないという状況は、 変わっていません。 以上が訂正の全てです。 * 【主な参考図書】 ・ 新潮社 編 『新潮日本語漢字辞典』 (平成19年 刊) <以下の4冊は、読みやすい順に並べてみました。> ・ 小駒勝美(ここま・かつみ)著 『漢字は日本語である』 (新潮新書、平成20年 刊) ・ 小池和夫 著『異体字の世界』(河出文庫、平成19年刊) ・ YOMIURI PC 編集部・著 『パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史』 (講談社・ブルーバックス、平成20年 刊) ・ 笹原宏之(ささはら・ひろゆき)著 『日本の漢字』 (岩波新書、平成18年 刊) === ▲ 後記 ▼ 昨年秋以来、多数の読者アドレスが第三者によって不当に 抹消される事態が起きています。 昨年春には読者数が9,200名に達していたのですが、年末 までに8,400名に急減。 これまで8年間の経験からして、単に不達アドレスを配信 会社が整理しただけではありえない減り方です。 読者数の減少は、配信のタイミングと全く関係なく起きて いるので、コラム内容への不満から登録解除されたものでは ないと判断しています。 もし「国際派時事コラム」が3週間以上も届かないことが あったら、そのときは まことに残念なことですが、 あなたのアドレスが第三者の悪質ないたずらによって抹消さ れたのではないかと疑ってみてください。 そのときは、まことにお手数ですが、 当ブログないしホームページでご案内の登録画面から アドレス再登録をお願い申し上げます。 そういうケースが発生した際は、当方へもメールでご一報 いただけると、配信会社「まぐまぐ」と対策を協議するため の参考になるので、併せ よろしくお願い申し上げます。 さいきんのコラム子のブログ記事から ―― (全文を読むにはリンクを開いてください) 「ユダヤ難民を助けた日本人」上杉千年さんの講演録に納得 http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200812290000/ 靖國神社社務所が発行している月刊『靖國』の平成20年12 月号に、上杉千年(うえすぎ・ちとし)さんが「ユダヤ難民 を助けた日本人」と題して書いておられた。 とてもいい内容なので、ネットで読めたらアドレスをブロ グで紹介したいと思ってグーグルしていたら、上杉さんが今 年1月に『ユダヤ難民を助けた日本と日本人 − 八紘一宇の 精神 日本を救う』 という本を神社新報社から出しておられ ることが分かり、さっそくアマゾンで注文した。 さらに、上杉さんが同じテーマで6年前の平成14年9月に 行った講演「猶太(ユダヤ)難民と八紘一宇」を筆録したも のをネット上で発見した。 == <泉 幸男 著> 『中国人に会う前に読もう 第一線商社マンの目』 『日本の本領(そこぢから) 国際派商社マンの辛口メモ』 通 信 販 売 も 受 付 中 http://homepage2.nifty.com/sai/mart/ == ■主宰 泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio) http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ (旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます) http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/ (週に3回ほど更新しているブログ) ■発行者への通信は mailto:t-izumi@f5.dion.ne.jp いただいたメールは、引用することがあります。 引用内容が政治性を強く帯びたものについては、掲載につ いて ご本人の事前了解をいただくつもりですが、 この辺の 采配は発行者にお任せいただくしかありません。 発信者氏名は原則として公開しません。公開する際は、ご 本人の事前了解をいただきます。 掲載するメールは、発信者の居住地名(市ないし県名)を できるだけ書かせていただきたく、それについてお問合せを することがあります。 ■このメールマガジンの転送・転載はご自由にどうぞ。 ■このメールマガジンの内容は、主宰の勤務先の見解とは無 関係です。このメールマガジンは、主宰の勤務先による監修 その他のサポートを一切受けておりません。主宰の勤務先に おいて守秘対象とされる事項は一切含まれておりません。 ■メールマガジン(配信誌)のお申込み・解除は、以下のペ ージでどうぞ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/mailmag.htm ------------------------------------------------------ このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐま ぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000063858) ------------------------------------------------------



