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本業は総合商社の営業マン。もと北京駐在。このメールマガジンから、エッセー集 『中国人に会う前に読もう』 と政策提言書 『日本の本領(そこぢから)』 が誕生しました。歴史雑学いっぱいの辛口時評から語学のコツまで、毎号、大脳皮質を刺激します。

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2009/01/03

<国際派時事コラム>元旦各紙の社説読み比べ

↓ 週3回更新のブログはこちら
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi


◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆
          http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/


        元旦各紙の社説読み比べ


■■■■第255号■■■平成己丑年1月3日発行■■■◆



 
 元旦号の新春詠のなかで、読売新聞掲載の正木ゆう子さん
の3句がみごとだった。


年 の 夜 の 高 き と こ ろ に 噴 火 口   ゆう子

 心眼に、一幅の日本画となってマグマがたぎる。
 またひとつ、俳句の世界を広げてもらった。


初 鶏(はつどり)と 自 ら 知 ら ず け た た ま し 
                        
 にわとりの一途(いちず)さをユーモアで包み込む俳人の
温かい眼差しまで感じられる。


た つ ぷ り と 一 年 は あ り 初 日 の 出   

 一読、ほっとさせられた。
 そうだ、一年は「たっぷり」あるのだ。
 大ぶりの構図。包容感があふれる。


 いっぽう、あえて名は伏せるが某老大家お二人の新春詠に

車 椅 子 の わ れ を 真 中 (まなか)に 初 写 真

一 茶 も わ れ も 世 紀 跨 い で 寝 正 月
 
といった、ジコチューの見本みたいな作品があり、これには
がっかりさせられた。

 「われ」と言い立てずに一人称と知らしめるのが俳句の基
本技のはずだが。


■ ハシゴを外さないか? ■


 さて、年頭恒例の元旦社説読み比べである。

 ことしは、具体論への踏み込みが弱く、誰もが知っている
話題をあれこれ撫でただけの社説が目立った。

 政治がひたすら政局を睨(にら)んで動かず、経済に目の
覚めるような処方箋もない、そんな世の中だからか。

 国のあり方を左右する政策論として、道州制について論ず
る元旦社説がひとつくらいあってほしかった。


 「人間主役に大きな絵を」(朝日)
 「人間社会を再構築しよう」(東京)
と、池田大作氏がつけたみたいな題目を掲げた両紙。

 朝日社説からキーワードを抽出すると、
米国一極支配後の「多頭世界」には、将来を見すえた国づく
りに集中して資源を投下する「たくましい政治」が要る、
と言っている。

 世界は「多極化」しているのではなく「無極化」している
というのがコラム子の見方なので、「多頭世界」ではなく
「無頭世界」だろうと突っ込みを入れたいが、

それはさておき、

ほんとに「たくましい政治」が始まったら、たちまちハシゴ
を外し、
「もっと政治は やさしい ほうがいい」
などと説くのが朝日新聞ではないのかね。

 東京新聞(中日新聞東京版)は、神野直彦教授のスウェー
デン紹介本から「協力社会」というキーワードを引いて、高
負担・高福祉のスウェーデン型社会への移行を検討せよと言
っているが、

これを政府が真に受けて、

ほんとに高負担・高福祉の消費税20%社会を設計したら、た
ちまちハシゴを外し、
「消費税率アップは知恵が足りぬ」
などと説くのが東京新聞ではないのかね。


■ 危機克服策にも「撤退のメド」が必要 ■


 それなりの得点を差し上げたいのが、日本経済新聞と毎日
新聞。

 両紙とも、景気・雇用対策のために政府が財政出動するに
あたってカネを戦略的に使えと、具体的な使途を提案してい
る。
 具体論を繰り広げたところを買いたい。

<日経の戦略案>

・大都市部の空港整備
・主要港湾の整備
・環境対策車(ハイブリッドや電気自動車)開発・普及促進
・太陽電池の開発・普及促進
・必要性が高い分野の公共事業を含む当面の失業者救済
・職業訓練の充実

 日経社説のいいところは、

≪当面の危機克服策を、経済がどうなったときにやめるかと
いう「撤退のメド」を決めておくのも過剰な介入を防ぐのに
有用である。≫

と述べて、経済回復後もだらだらと大きな政府の社会主義に
陥らぬよう釘を刺していることだ。


■ その意気やよし、よく読むと疑問符だらけ ■


 毎日新聞は、第1面に主筆の年頭署名評論、第2面に社説
を掲げている。

≪2兆円ばらまくなど政策といえません。
たとえば全額投入して がん治療特効薬を開発する、
次の産業である航空機開発や介護用ロボットを完成する、
アジアの学術の中心都市を作るなど有効なお金の使い方はい
くらでもあります。≫(主筆評論)

 う〜ん、具体的な策を列挙したのはよいが、主筆の菊池哲
郎さん! わが自由主義社会では、「癌の特効薬の開発」も
「民用航空機開発」も「介護用ロボット開発」も、みな民間
企業が事業として行う仕事なのですがね。

 政府が民業介入・民業圧迫をやってはいけないが。

 「学術都市建設」などというハコもの志向ではなく、
少人数学級編成による教育の充実と教員増による雇用拡大、
といった社会システム変革に踏み込む策を挙げてほしかった
な。

 いっぽう、社説本篇は
「日本版 <緑のニューディール> を」
と題して、環境技術への政府資金の集中投資を説いている。

≪実用段階の太陽光発電と次世代自動車を飛躍的に普及させ
ることを提案しておきたい。≫

≪この際、2兆円の定額給付金を中止しそれを太陽光発電に
回したらどうか。
学校には全国くまなく設置しよう。≫


■ 単年度だけ2兆円投下されても…… ■


 これが実現すれば、コラム子の勤務先でも太陽光発電を扱
う部門がとつぜん稼ぎ頭に浮上して大増員、太陽電池メーカ
ーも巨額の設備投資を実施……ということになりそうだが、

 政策論としてはいかがなものか。

 わが国は社会主義国ではないから、政府が太陽電池の製造
に乗り出すなどということはない。

 資金の使い道は、研究助成か商品購入かの、いずれかしか
ない。

 シャープなど特定企業に巨額の研究助成金を集中投下する
のは、WTOのルール違反。
 公正な競争原理がくずれてしまうから。

 来年度に突然2兆円分の太陽電池を政府が購入するとして
も、再来年にはどうなるか分からないから、日本のメーカー
が増産のための設備投資にすぐ走るとは限らない。

 最悪のケースとしては、
突然の2兆円需要が太陽電池市場を攪乱して販売価格相場が
つり上がった挙句、
日本メーカーの増産は間に合わず中国製の太陽電池が大量に
流れ込み、
いちばん潤ったのは中国人でした、という図式もありうる。


■ 潮時を読むのはむずかしいが ■


 毎日社説の先を読むと

≪自動車はすべての公用車をハイブリッドや電気自動車に置
き換える。
電気自動車の充電施設を全国に設置する必要もあるだろう。≫

 ハイブリッド車はともかく、電気自動車はまさに新技術が
次々にデビューしつつあるところだ。

 今日ただいま商品化されている電気自動車に合わせて一気
に充電施設を全国設置するのではなく、実験の輪を広げつつ
商品の成熟をもう少し待ったほうがいいのではないかと思う
のだが、どうだろう。


 ずいぶん毎日新聞にキツくなってしまったので、主筆評論
で気に入ったくだりを挙げておきたい。

≪多極化という古い分類ではなく、各国平等な真の意味での
グローバリゼーションが大きく前進しているのではないでし
ょうか。
これは人類史上初めてのことです。
そこに人類のこれからの夢が横たわっていると思います。≫

 「多極化という古い分類ではなく」というところが、正に
わが意を得たり、である。

 そう、現代国際社会は「多極化」してはいないのだ。
 だって、中国もインドもロシアも、とうてい「極」と呼べ
る分際ではないもの。


■“眠れる資金”をどう掘り起こす? ■


 毎年、優等生なのが読売新聞社説だが、さて今年は、
内需拡大のために個人金融資産を掘り起こして活用せよと、
かなりの行数を割いて熱辯(ねつべん)したのに尻切れトン
ボになってしまった。

≪日銀は、いわゆるタンス預金だけでも30兆円、投資や利殖
より安全を志向する当座・普通預貯金としてほぼ眠っている
資金が120兆円あると見ている。

こうした “眠れる資金” を掘り起こして活用することは、
重要な政策課題だ。≫

 では具体的にどうせよというのか。

 “眠れる資金”で赤字国債を購入してもらおうということ
だろうか。
 地方債や社債を買ってもらおうということだろうか。

≪内需拡大に向け、社会保障や、雇用対策などを中心とする
景気振興に使途を限定すれば、国民も納得するに違いない。≫

とあるから、赤字国債発行を念頭に置いているように思える
が、そこをハッキリとは語っていないから、わかりにくく、
議論を喚起できない。


■ 京都御所写真特集 ■


 産経新聞はどうしたことか、第1面に皿木喜久論説委員長
の「年頭に」というコラムを掲げただけ。

 無署名の「主張」を元旦号には載せなかった。

 「日本人の <流儀> にこそ活路」 と題して、夏の間も冬
のためにせっせと働く稲作文化にはぐくまれた「蟻型」の、
モノづくり重視の生き方をあらためて評価してみせている。

 しかし、切り口が月並みで口調も歯切れが悪く、いささか
がっかりさせられた。


 元旦号の各紙特集のなかでよかったのは、朝日新聞の別刷
り第5部の、京都御所の写真特集。

 よく読んだら、ことし11月に朝日新聞出版が出す予定の京
都御所・離宮の豪華写真集の前宣伝を兼ねていた。

 朝日新聞本紙で皇室への敬語が不自然に簡略化(「天皇陛
下が来られる」でなく「天皇陛下が来る」のように)されて
久しい。

 せめて写真集ではきちんと整った敬語を使ってほしい。
 朝日新聞出版という、新聞社とは別の社から出すのだか
ら、新聞本紙の掟に呪縛されることなく、自然な日本語で書
いてほしいものである。


===


▲ 後記 ▼


 今年も、思いのたけをどんどん書いてゆくつもりです。

 『日本の本領(そこぢから)』の人名用漢字に関する記述
で2点、訂正があります。
 昨年中に配信したかったのですが間に合いませんでした。
 次号で論じます。

 
  さいきんのコラム子のブログ記事から ――

(全文を読むにはリンクを開いてください)


聴けます!「マリー・アントワネット」ドイツ語版から2曲
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/200812270001/

 平成18年11月から平成19年5月まで、日本で世界初演とな
ったミュージカル「マリー・アントワネット」のドイツ語版
が、今年1月30日からブレーメンで上演されます。

 そのドイツ語版から2曲を聴けるサイトを発見したので、
ご紹介します。


==


<泉 幸男 著>


   『中国人に会う前に読もう  第一線商社マンの目』 

『日本の本領(そこぢから)  国際派商社マンの辛口メモ』

               通 信 販 売 も 受 付 中
         http://homepage2.nifty.com/sai/mart/


==

■主宰   泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio)

http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/
(旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます)
http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/
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