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「良いジャズを分かりやすく!」。全国コミュニティFMと衛星ラジオ・ミュージックバードにて好評放送中のジャズ番組「快楽ジャズ通信」のパーソナリティ・高野雲が、「ジャズの楽しさ・聴きどころ・アルバムの紹介」など、ジャズにまつわる「役立ち情報」をお届けします。初心者からマニアの方まで、お気軽にどうぞ!

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2009/06/11

【Jazz Magazine】 vol.1041

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 ♪ベース好きにはたまらない内容なのかもしれないけれども、
  一般的には、どう受け止められているんだろう?
  全編ベース1本でスタンダードからポピュラーナンバーまでを
  演奏しまくった、ブライアン・ブロンバーグのソロアルバムです。
 


━▼本日のアルバム━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━♪

『ハンズ』(キング低音シリーズ)

 ブライアン・ブロンバーグ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ブライアン・ブロンバーグは、とっても「いいヤツ」なんだと思う(笑)。

ものすごいテクニックの持ち主。
だけど音に哲学がない。
レコード会社(プロデューサー?)の言われるがままに、「今度はジャ
コやってよ」と言われたら、あたかも 天ぷら屋のおっちゃんが「かき
揚げ一丁!」と言われたら「あいよ!」とばかりにサクッとかき揚げを
揚げてしまう。

この気安さが、「アーティスト」ではなく、「うまい(だけの)プレイ
ヤー」という目線 で見られがちなことは否めない。

特に私の周囲のジャコ・パストリアスのファンからは評判が悪く、
「ジャコはアーティス トだけど、ブロンバーグは巧い楽器弾きでしか
ないない」というような大方の評価が定着 しているかのように思う。

『ジャコ』というアルバムでは、『ジャコ・パストリアスの肖像』と同
じ格好のパロディ風のジャケットにしようと提案されたら、「あいよ!」
とばかりにジャコのコスプレをし、ジャコファンからは顰蹙と失笑を買
ったりする。

きっとブロンバーグとしては、まったく悪気はあるわけでもないんだろ
う。

ただクライアントからの「発注」に応じて、律儀に「仕事」をしただけ
の感覚なんだろうが、この気安さがかえって、ブロンバーグのミュージ
シャンとしての格下げにもつながっている節がなきにしもあらずなのだ
から、かわいそうといえばかわいそうだ。

もちろん、テクニックは凄い。
なんたって、エレキベースでも難しいジャコのナンバーをウッドベース
でサラリと演奏してしまうほどの腕前なのだから。

しかし、それと反比例するかのように、
「ウマいんだけど、それだけ(=音楽性がない)」
「最初聴いたら驚いたけど、うまいだけの底の浅さが露呈してしまって
いるから、何度か聴くうちに飽きた」というようなマイナス評価につな
がりがちなところは、ある種ブロンバーグの仕事ぶりからくる不幸なの
かもしれない。

“ジャコ路線”もひと段落し、次なる「クライアント」からの発注は、
「ソロをやったら?」だった。

律儀なブロンバーグは、新愛なるプロデューサー氏からの発注に、最初
は驚き、とまどい(ライナーにもベースソロなんてやったことがないと
書いている)、しかし、根は「いいヤツ」だから、引き受ける(笑)。


カリフォルニア州リトルクリーク。
ロスから車で1時間ほどの郊外にある牧場。

その中にあるレコーディングスタジオにこもり、気が向いたときにいつ
でも録音出来るようにエンジニアにセッティングしてもらったブロンバ
ーグ。

良く言えば、ブロンバーグのために周到なお膳立てともいえるし、
悪く言えば、作家をホテルに缶詰めにして「早よ書け」状態に追い込ん
でいるともいえる(笑)。


しかしブロンバーグは、この環境を十分に楽しみ、新鮮な気分でレコー
ディングに臨めたようだ。

だから、たくさんの曲ウッドベースで録音した。

そして、完成したのが本作『ハンズ〜ソロ・アコースティック・ベース』
だ。

曲目を見ればわかるとおり、良く言えばバラエティに富んだ選曲。
悪く言えば、節操無さ過ぎのとっ散らかりっぷり(笑)。

スタンダードの《星影のステラ》に始まり、
マイルスの《ソーラー》を演奏したかと思えば、次曲はビートルズのメ
ドレー。

ボサ・ナンバーの《カーニバルの朝》もあるし、エリントン・ナンバー
の《イン・ア・センチメンタル・ムード》も演奏している。

もちろん、ジャコ・ナンバーも忘れてはいない。
《トレイシーの肖像》の一部も挿入するというサービス付きの《ティーン
・タウン》も演奏し、ファンの期待に応えている。

さらには、プロデューサー氏に捧げた《ススムズ・ブルース》という曲も
作曲・演奏し、表敬の意を込めることも忘れない。

ほんと「いいヤツ」なのだと思う、ブロンバーグという人は(笑)。

バラエティ豊かな(?)収録曲を聴いていると、彼は「やりたい曲」も演
奏したのだろうけど、同時にウッドベース1本で「やれる曲」と「やりや
すい曲」を弾いたんだろうなと思う。

どうしても、この曲がやりたい!
という意思よりも、

「ジャコファンのためにジャコ曲をやっておこう
「ジャズファンがターゲットだからスタンダードも入れておこっと」
「マイルスの曲もやっておいたほうがいいよな」
「ビートルズやツェッペリンナンバーやればウケるかも?」

こういった、発想のほうが先に見え隠れしてしまうところが、多くのジャ
コ好きからしてみれば、ブロンバーグというベーシストの軽やかさ(と同
時に尻軽さ)を感じてしまう所以なのだろう。


たとえばデイヴ・ホランドや、池田良夫のような、エッジの立ったジャズ
のイメージの漂う、
いかにも「アーティスト然としたベーシスト」もベースソロを発表してい
る。

しかし、彼らは「プレイヤー」であると同時に「アーティスト」というイ
メージも強い。
だから、デイヴ・ホランドが『ワンズ・オール』というソロアルバムで
《ミスターP.C.》を弾いたら、リスナーは「ホランドがコルトレーンナン
バーを取り上げているが、そこにきっと深い意味があるのだろうな」と、
好意的に解釈してくれる。

それは、池田良夫が『ソロ』で《柳よ泣いておくれ》を取り上げているの
も同様だ。

しかし、ブロンバーグの場合は、言い方悪いが「別荘に閉じ込められて何
か弾けといわれたから、弾ける曲を色々と弾いてみたんだな」という見え
方になってしまう(笑)。

しかし、だからといってアルバムの選曲に統一感がないからといって、そ
れがそのままこの『ハンズ』というアルバムの価値を貶めるものでは決し
てないことは、彼のベースソロを聴け ばよくわかる。

アーティストではないにしても、楽器弾きとしては一流の腕を持つブロン
バーグのこと、どの曲も聴きやすく、地味なフォーマットであるにもかか
わらず(地味なフォーマットだ からこそ?)必ずどの演奏にもキャッチー
なフックを設けている。

きちんと聴き手のことを考えてベースを弾いているんだなと思わせるだけ
の「いいヤツ」っぷりが発揮されているのだ。

音も素晴らしい
さすがに低音の録音にはていひょうのあるキングレコードの低音シリーズ
なだけあって、非常にリアルかつ奥行きのあるベース音。

ブロンバーグがベースの胴を移動させると、音の定位までもが、ブロンバ
ーグの身体とベースの胴の向きとシンクロして移動するぐらいリアルな録
音となっている。


とかくジャズを芸術としてとらえる向きには、演奏者の内的欲求が感じら
れないものはア ートとして認めない人が多い。

つまり、本当に表現したいことがなければ、無理してアルバム出すな、と
いうこと。

だとすると、「ウッドベースでソロアルバム作ってよ」というオーダーを
受けてから、はじめて何を弾こうか、どう弾こうか、と考えて録音を開始
したこのアルバムは 、内的欲求の乏しいアルバムなのかもしれない。

しかし、すべの料理人が一流ホテルのシェフである必要がないように、す
べての楽器弾きがアーティストである必要はまったくない。

お客の「かき揚げ丼一丁!」という気軽なオーダーに、「あいよ!」と気
軽に応えて、サクッとかき揚げを揚げる料理人の存在も必要なのだ。

そして、言うまでもなく、ブロンバーグという料理人の揚げたかき揚げは、
うまくて食べやすい。



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『HANDS Solo Acoustic Bass』(King Records 低音シリーズ)

 Brian Bromberg


   1. Stella By Starlight
   2. Cute
   3. Solar
   4. Beatles medley(Day Tripper〜Yesterday〜Eleanor Rigby)
   5. Black Orpheus
   6. In A Sentimental Mood
   7. King Of Pain
   8. Teen Town
   9. Susumu's Blues
  10. Use Me
  11. Black Dog
  12. SWhat Are You Doing The Rest Of Your Life ?
  13. Yeah


   Brian Bromberg (b)

   2008/7月


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ブロンバーグのベースワークには驚嘆しつつも、なんとなくつきまといまく
る「尻軽」なイメージが私の中では払拭しきれずにいます。
でも、やっぱり、今回これを書くために聞き返したんですが、テクニックは
すごいですね。

そっか、この曲はこういうふうに弾けば、ベース一台でも聴かせられるかも
しれない!なんて思いながら、久々にホコリをかぶったウッドベースを、
CDに合わせて弾いてましたから。

ベーシストにとっては、良き「ネタ帳」であり「アイデア集」。ベース好き
はうれしい内容だと思います。

でも、ベースに興味のない人には、どうでもいい(?)アルバムなのかもし
れませんね。

そのあたり、私自身、ベースに反応してしまう人なので、客観的にはなれな
いんですよ……。


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 衛星デジタルラジオ ミュージックバード
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 毎週日曜日/午後10時〜11時
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