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「良いジャズを分かりやすく!」。全国コミュニティFMと衛星ラジオ・ミュージックバードにて好評放送中のジャズ番組「快楽ジャズ通信」のパーソナリティ・高野雲が、「ジャズの楽しさ・聴きどころ・アルバムの紹介」など、ジャズにまつわる「役立ち情報」をお届けします。初心者からマニアの方まで、お気軽にどうぞ!

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2009/06/03

【Jazz Magazine】 vol.1035

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 ♪一番最近のパット・メセニーのトリオ。
  聴きやすいうえに、奥も深いので、
  安心しておススメできる内容だと思います。


━▼本日のアルバム━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━♪

『デイ・トリップ』(ノンサッチ)

 パット・メセニー

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

パット・メセニーは、新譜が出るたびに、「今度はどんな内容なんだろ
う?」とハラハラさせるジャズマンの一人だ。

あとは、個人的にはチック・コリアとハービー・ハンコック、在命中は
マイルス・デイヴィスも、「今度はどんな内容なんだろう?」と期待を
膨らませるジャズマンだったが、いずれにしても彼らに共通しているの
は、その実力もさることながら、切り口&コンセプトの多彩さと、豊富
な人脈といえるだろう。

つまり、様々な音楽性を持つミュージシャンとの共演から生み出される
サウンドカラーの違いが「今度はどんな内容なんだろう?」という興味
のもっとも大きな焦点でもある。

パット・メセニーの『デイ・トリップ』は、ベースがクリスチャン・マ
クブライド、ドラムがアントニオ・サンチェスという、現代ジャズシー
ンの中においては最高峰に位置するほどの実力者と組んだ、ギタートリ
オのアルバムだ。

ギタートリオといえば、メセニーは過去にもいくつかのギタートリオで
の作品を残している。

ジャコ・パストリアス(el-b)とボブ・モーゼス(ds)との『ブライト・サ
イズ・ライフ』。

チャーリー・ヘイデン(b)とビリー・ヒギンズ(ds)の『リジョイシング』。

デイヴ・ホランド(b)とロイ・ヘインズ(ds)の『クエスチョン・アンド・
アンサー』。

ラリー・グラナディア(b)とビル・スチュワート(ds)の『トリオ 99-00』
などなど、おそらく多くのメセニーファンが、新たなギタートリオのア
ルバム『デイ・トリップ』に対しては、バックのリズムセクションの変
化がもたらすサウンドテイストに興味を持ったにちがいない。

「今度のメセニーは、どんな内容なのだろう?」という興味の多くは、
「今度のメセニーは、どんなリズムセクションだろう?」という好奇心
も何割かは占めているに違いない。

なにせ、マクブライドもサンチェスも今やおしもおされぬ人気とキャリ
アを誇る実力者なのだから。

結論を言うと、このトリオのサウンドは、穏健な演奏ながらも随所がエ
キサイティング。

つまり、「テクニシャンはテクニシャンは知る」ではないが、超絶技巧
を演じようと思えばいくらでも出来る人たちでありながらも、さすがに
実力者同士の交感は、自分の音を誇示するよりも、相手のプレイを聴く
ことのほうに比重が割かれている。

もっと言ってしまえば、自分のプレイが及ぼす相手への影響、相手の音
の反応に聴き入り楽しむという高度な境地に達している。

よって、先述したとおり、バックのリズムは堅実。手堅い。

マクブライドのベースは、確実にメセニーのギターを弾きたてつつも、
ベースソロでは太く温かい音で素晴らしい速弾きをさりげなくしてみせ
る。

サンチェスのドラミングも、シンバルの細かな刻みが心地よく、煽ると
ころはグッと瞬間的に前に出てくるレスポンスの素早さは見事なものだ
が、手数の多さが気にならないサポートに徹している。

メセニーのギターは、独特の音色から、フレージング、スピード感は、
本当にいつも通りのメセニー。
なので、メセニーファンの方は安心して聴いて欲しい。

一流のリズムセクションに鼓舞されながら、どこまでも気持ちよく、の
びのびと広がりのあるギターを弾いている。

この広がるような感じに、さらにサンチェスのドラミングによりスピー
ド感も加わり、穏健ながらもスリリングな要素も常に孕むという、矛盾
しているようでしていない、絶妙な共存が素晴らしい。

これはこれで、メセニーの過去のギタートリオのアルバムの中でも、聴
きやすさ、親しみやすさ、通しで聴いても飽きない構成など、地味なよ
うでいて、かなり神経の行き届いた内容のアルバムだと感じる。

もっとも、一曲だけ肌ざわりが微妙に異なるのは、《イズ・ジス・アメ
リカ?》だろう。カトリーナ2005というサブタイトルは、このアルバム
がレコーディングされる2ヵ月前の2005年8月にアメリカの南部を襲っ
た「ハリケーン・カトリーナ」のことだ。
特に、ルイジアナやニューオーリンズに大きな被害をもたらしている。
ニューオーリンズにおもむいたメセニーが、その惨状を目にし、この
曲を作曲したという。

アコースティック・ギターで奏でられる素朴で美しいメロディ。静かに
淡々と進行してゆく内省的なこの演奏は、逆にかえって、内側にぐっと
押し殺した様々な情感が逆に浮かび上がってくるようで、このアルバム
の中では、もっとも耳を掴んで離さないナンバーだ。

最後に、このCDのアートワークにも触れておきたい。

ヘタウマチックながらも味わいのあるイラストが、このCDを彩ってい
る。

表ジャケットが、都会のストリート。
裏ジャケットが、上空に旅客機が飛ぶのどかな牧場。

中ジャケに、アメリカ大陸横断鉄道、白頭鷲(アメリカの国鳥)、寂れ
たガススタンド、ハイウェイと大型トラック、おそらくはニューオーリ
ンズの街風景、オープンカーとウサギ……。

いずれの風景も、リアルタイムのアメリカではなさそうだし、かといっ
て古き良きアメリカの風景でもなく、どの時代の匂いもたずさえた「無
国籍」ならぬ、アメリカの普遍的「無時代」的風景。

メセニーの変わらぬ音楽観に横たわる、彼自身のアメリカ的風景がこの
イラストに投影されているのでは? と見るのは深読みのし過ぎかもし
れないが、見事にメセニーの音の質感をすくいとったテイストではある。

音のみならず、アートワークも楽しめるCDなのだ。


┏▼アルバムジャケットは、
┃ こちらでご覧になれます━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓

 http://cafemontmartre.jp/jazz/Ma/day_trip.html

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『DAY TRIP』(Nonesuch)
 Pat Metheny

   1. Son of Thirteen
   2. At Last You're Here
   3. Let's Move
   4. Snova
   5. Calvin's Keys
   6. Is This America? (Katrina 2005)
   7. When We Were Free
   8. Dreaming Trees
   9. Red One
  10. Day Trip


  Pat Metheny (g)
  Christian McBride (b)
  Antonio Sanchez (ds)


  2005/10/19


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