【Jazz Magazine】《ジャズのメールマガジン》 RSSを登録する

「良いジャズを分かりやすく!」。ジャズライター・高野 雲が、「ジャズの楽しさ・聴きどころ・アルバムの紹介」など、ジャズにまつわる「役立ち情報」をお届けします。初心者からマニアの方まで、お気軽にどうぞ!

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2008/03/30

【Jazz Magazine】 vol.885

この記事を取り寄せる

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【Jazz Magazine】《ジャズのメールマガジン》

                             vol.885


━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━
───────────────[2008/03/30配信:発行部数:3,069]──

▼本日のアルバム

『ザ・ファントム』(ブルーノート)

 デューク・ピアソン

━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━

タイトル曲の《ザ・ファントム》が力作、力演だ。

特にズンドコ、ズンドコした重いが重すぎないリズム・パターンが独特。

アルバム冒頭からのミステリアスな雰囲気は、こちらの耳を掴むに充分で、
このテイストは、冒険映画のサントラを彷彿とさせる。

洞窟の中をズンドコ、ズンドコと分け入ってゆくような、まるで自分が冒
険者になったような感覚に襲われるのだ。

洞窟の中は暗い。危険も孕んでいる。
しかし、たとえば『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ』のような冒
険モノ映画のようなノリとでも言うべきか。
常にハラハラした危険やワクワク感を聴き手に抱かせるが、最終的には大
団円を迎えるだろうという、不安とは裏腹の期待と安心感もある。

宝探しの期待と興奮感。それと隣り合わせの危険も無論あるが、死にまで
至ることはないだろうという安心感も同時にある。
ゆえに、どこまでも「健康的なアドベンチャー感」。

ヴァイブとアルトフルートがミステリアスなスパイスを適度に加味するも、
恐怖や絶望の感情にまでは決して至らない安心感。
それゆえ、聴き手をどこまでも惹きつけ、楽しませてくれるのが、デュー
ク・ピアソンの力作《ザ・ファントム》なのだ。

とにかく、重たくもキャッチーな「ズンドコ」リズムが心地よく、このリ
ズムを開発した時点で、既にピアソンの目論見は半分以上成功していると
いっても過言ではない。

このリズムフィギュアの上に乗るソロ奏者は、ミステリアスに演奏しても、
少々アウトしたフレーズを用いても、思わせぶりな間を設けても、そこそ
こキマってしまう。

つまり、このリズム(あるいはリフ)のパターンは、思いのほか包容力が
あるのだ。なおかつ、何十回と繰り返されても聴き手を飽きさせないリフ
ゆえに、長尺演奏にも耐えられる。
なかなかに優れたリズムフォーマットだ。

ピアニスト以上に私はピアソンのことをアレンジャーとして買っているの
は、このようなイナたいがカッコいいリズムや曲を“開発”しているとこ
ろにある。 

と、ここまで書いて、はじめてこのアルバムのライナーを読むと、《ザ・
ファントム》という曲は「街を颯爽と歩く黒人女性をイメージして作曲し
た」とのこと。

いわば、クール・ストラッティンですか。

うーん、私は冒険映画のサントラを真っ先にイメージしてしまいました
が……(笑)。

この力作の次に続く《ブルース・フォー・アルヴィナ》は、一転軽快なC
のブルース。
軽やか。能天気なほどに。

ピアソンの親友のトロンボーン奏者、ウィリー・ウイルソンの妻に捧げた
曲だそうだ。

ヒョッコリとした軽やかさは、ミステリアスな雰囲気の《ザ・ファントム》
とは好対照。良い耳休めとなる。

《A列車で行こう》のボサノヴァ版とでも言うべき、《ブレンダ・アメレ
ラ》は、南アメリカの印象がモチーフなのだそうだが、これはどう聴いて
もテーマのない《A列車で行こう》だ。
軽やかかつ楽しい演奏。もとより、《A列車で行こう》のコード進行を借
用している曲ゆえ、どう考えても憂鬱になるはずはないのだが、それにし
ても、ボサノヴァがこんなに似合う曲だとは思わなんだ。楽しい曲だ。

ピアソンも自から《A列車で行こう》のメロディの一部をソロで披露して
いる。

《ザ・ハッピー・アイズ》はブラジル人女性の美しい瞳に魅せられて作曲
したそうだが(ピアソンはよく女性に触発されますね・苦笑)、なるほど、
このアルバムのモチーフは、一環してエキゾチックさだったのね。

あるいはジャケットからも分かるとおり“女性”。
女性の歩く様や瞳などがモチーフになっている上に、エキゾチックだった
り、ミステリアスだったり、ハッピーフィーリングだったりと、おそらく
女性の魅力を様々な角度から切り取っているのだろう。

作曲、アレンジにも気合がはいるわけだ。
しかも、その気合いゆえ、特に1曲目などは相当に練られたアレンジとな
ってはいるが、気合ゆえの重苦しさはまったくなく、むしろ軽やかさのほ
うが先に立つ。
だからこそ聴きやすいし、それでこそピアソン。

デューク・ピアソンの魅力は一にも二にも、センスの良い軽やかさだと私
は思っているのだから。

練り上げられたアレンジの勝利というべきか、この『ファントム』は、何
度聴いても飽きない骨の太さを持つ作品だ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『THE PHANTOM』 (Blue Note)  
 Duke Pearson  

 1.Phantom 
 2.Blues for Alvina 
 3.Bunda Amerela (Little Yellow Streetcar) 
 4.Los Ojos Alegres (The Happy Eyes) 
 5.Say You're Mine 
 6.Moana Surf 

  Duke Pearson (p)
  Jerry Dodgion (fl,alto fl)
  Bobby Hutcherson (vib)
  Sam Brown (g)
  Al Gafa (el-g)
  Bob Crandhaw (b)
  Micky Roker (ds)
  Victor Pantojo (conga) 
  "Potato"Valdes (conga,guiro) 

  1968/9/11

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

[ワタクシゴト]

今月2度めの沖縄、堪能してきましたよー。

それにしても、沖縄のジャズは熱いです。

夜は、いくつかのジャズの生演奏の店を訪問したのですが、沖縄のジャズ
のレベル(演奏レベル)は、かなり高いと感じました。

さりげなく、とんでもない人たちがいるんですよ。

もちろん、ネームバリューの高い演奏者は東京のほうが多いし、来日ミュ
ージシャンを演奏させる受け皿は東京のほうが整っています。

「ジャズの選択肢」においては、東京のほうが沖縄よりも充実しているこ
とは言うまでもありません。

しかし、ビッグネームだからといって、常に私を満足させてくれる演奏を
夜な夜なしてくれるとは限りません。

たとえ大御所といえど、私が聴きに行ったその日の晩に、素晴らしい演奏
をしてくれたとは限らないということは、これまでに何度も味わってきま
した。

たしかに、沖縄で活動するジャズマンは、全国的には知名度が低いかもし
れません。
しかし、言うまでもなく、演奏の内容の良し悪しはネームバリューとは関
係ないです。

彼らの演奏の素晴らしさの一要因として、基地の町だから、ということが
あると思います。

米兵相手に演奏を繰り返してきた猛者がそこかしこにいる。
修羅場をくぐりぬけてきたホンモノの表現。
様々なリクエストや、場の空気に応じた演奏をこなしてきた柔軟さと、ど
のようなタイプの音楽も、アメリカ兵を満足させるだけのクオリティを保
ち続け生き残っていたレンジの広いホンモノの表現力は、バークリー出身
という肩書以上の音の説得力を持ちます。

たとえば、ピアニストの屋良文雄氏。
齢70に近い氏は、国宝級といってもいいほどの存在。

彼は、那覇に「寓話」という店をお持ちで、そこで夜な夜な3セットピア
ノトリオで演奏しているが、なんというか、心の襞に染み入るような演奏
をしていました。

決して酒のBGMレベルにはとどまらないクオリティの高い演奏ですが、まっ
たく「我」というものを感じさせず、気が付くと音が自分の中に心地よく
浸食していることに気がつきます。

また、沖縄市のコザも熱いです。
「ジャズ・ジャングル」のマスター、エツ氏は凄まじいドラマーでした。

ジャズカフェ「スコット・ラファロ」オープンに際して、ドラムのチュー
ニングを徹夜でやってくれたという氏は、最初は単なるドラム好きのドラ
ムおっさんかと私は思ってました(笑)。

それぐらい、気さくで飄々とした華奢なオジサンだったのです。

オープニングパーティのときも、我々の演奏に付き合ってくれて素晴らし
いサポートをしてくれましたが、まさか彼があの伝説のバンド「コンディ
ション・グリーン」のドラマーだったとは!

このバンドは、「紫」とともに、沖縄に駐留するアメリカ兵に人気のバン
ドで、特にエツ氏のドラミングは米兵を熱狂させたほどの素晴らしいテク。

そんな凄い人が、コザの町の片隅に小さなジャズクラブを持ち、夜な夜な
演奏しているんだからビックリ。

特にドラムソロが凄まじく、スティック、ブラシ、マレットを巧みに使い
分け、たっぷり30分以上、飽きずに聴かせてしまうほどの内容です。

打楽器だが、一音一音の音が歌っているのです。

すごいっすねぇ〜

いやいや、そんなことないよ、だって俺ずっとロックだったもん。ロック
捨ててジャズやろうと思ったの8か月前だからねぇ、1年経ってないよ。

とさらりと話すエツ氏ですが、え〜、あのテクで、まだ8か月ですか!?
な世界。

また、彼の店でピアノを弾いていたトム稲川氏もすてきなピアニストでし
た。

大学時代は、五輪真弓やユーミンのアレンジ、キーボードを担当。ゆえに
お金も持っていたので、まだ群像新人賞を受賞する前のお金がなかった時
代の村上春樹の店「ピーター・キャット」のオーナーだったのだそうです。

国分寺の「ピーター・キャット」といえば、村上春樹がマスターをやって
いたジャズ喫茶として有名だが、まさか、そこに出資し、共同経営してい
たオーナーが沖縄にいたとはねぇ(笑)。

しかも、その後は16年間アメリカに渡りスタジオミュージシャンとして活
躍。日本に戻ってきて、いつのまにか沖縄に住みピアノを弾くようになっ
ているそうです。

沖縄には、そのような凄い人が最終的に行きつく場所なんでしょうか。

もちろん、トム氏のピアノの腕も素晴らしく、さすがにアレンジャーをや
っていただけあって、弾き出しは多彩です。しかもトゲトゲしさは皆無で、
どのフレーズにも包み込むような温かさがある。

もう一人、エツ氏の店の常連ピアニストに、前田りえさんという素晴らし
いピアニストがいらっしゃって、彼女ともセッションさせていただきまし
たが、ジャズのフィーリング満点なピアノを弾きます。

しかも、とても可愛い(笑)。

こういう素晴らしい人たちが、那覇やコザにはさりげなくゴロゴロいるん
ですよ。

そして、こういう人たちが私とのセッションに気さくに応じてくれたのだ
から、もう感謝感激! 先週は楽しい夜を過ごさせていただきました!

コザといえば、シャッター街という印象が強く、ちょっと歩いただけでは、
元気のない街に感じるかもしれません。
実際、私もそう感じました。
商店街なんか昼でも暗くて、入ろうという気がおきないんですよ。

しかし、よくよく歩くと、ジャズの生演奏の店、CDショップ、ミュージッ
クタウン、ギター教室などなど、音楽に関係する看板が多く出ていること
に気つきます。

コザは、まぎれもなく音楽の街なのです。

しかし、故郷のコザに「スコット・ラファロ」を開いたオーナーの話によ
ると、送り手は多いが、聴き手が育っていない、だから、店を作った、と
のこと。

そうなのだ、こんなに音楽にかかわる人や、店が多いにも関わらず、ジャ
ズの店にはほとんど客がはいっていないんですね。

ベトナム戦争以降、ロック一色に街が染まり、そのロックも色褪せた現在、
元来はジャズの町だったはずのコザも、時間の経過とともにジャズの熱気
が忘れさられ、リスナーたちは、何を聴いていいかわからない、あるいは
何も聞かない、夢中になれる音楽がないという宙ぶらりんの状態なようで
す。

しかし、来月10日にオープンする「スコット・ラファロ」をキッカケに、
ひとつのブレイクスルーが起きる可能性があります。

「ラファロ」のオープンをキッカケに、コザに住むジャズマンたちの表現
欲求が日増しに高まっているようです。

新しいジャズを生み出したい、コザからイキのいいとびっきりのジャズを
発信したい!
そのような爆発寸前の欲求が高まっている今、ジャズカフェ「スコット・
ラファロ」のオープン当日の夜は、コザのジャズマンたちが結集し、大セ
ッション大会が繰り広げられる予定。


スーパーサックスのようなサックスユニットから、名前は失念したが沖縄
では、1、2を争う大御所ピアニスト、齢78歳ながらもとてつもなくス
ケール大きく、大音量でテナーを鳴らすという沖縄在住のサックスの大御
所ほか、さまざまな面々が4月10日「スコット・ラファロ」に集結しま
す。


皆、やる気まんまん。
きっと、朝までのセッションになるんだろうなぁ。

オーナーのtommyさんも、

「ほんとはリスナーを育てるために店開いたつもりなんだけどなー、なん
だかミュージシャンたちのほうが熱くなっちゃってるよ」と苦笑しつつも
嬉しそう。


これを期に、一気にコザのジャズの勢いが吹き返すことを。
そして、このタイミングで沖縄にいらしている観光客の方も、もちろん、
沖縄在住の方も、是非、「スコット・ラファロ」」を覗いてみてください。

沖縄のジャズプレイヤーたちが、今、こんなにも盛り上がっている!
リスナーも負けずに盛り上げていきましょうよ!

私?
オープン当日は、沖縄にいきますよ(笑)!

なんだかドラムのエツ氏が「ベースの彼も呼んでよね、いいよね、奴のベー
ス」とおっしゃってくださったようで、はははは(汗)、恐悦至極でござ
います(笑)。

きっと、ヘンなベースだったから、印象に残ったのでしょう(冷汗)

拙いベースですが、私も演奏にくわわり、ぶんぶんベースを弾く所存であ
ります。

腕に覚えのある方、飛び入りOKよ! どんどん飛び込んできてねー(笑)


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 ●配信者 雲 kumo.takano@gmail.com 

 ▼雲・個人ページ「カフェ・モンマルトル」
 http://cafemontmartre.jp/

 ▼バックナンバーはこちらでご覧になれます。
 http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000061881

 ▼ブログ 高野 雲の「快楽ジャズ人生」
 http://ameblo.jp/jazzy-life/

 ▼もうひとつのブログ「趣味?ジャズと子育てです」
 http://ameblo.jp/okiraku-papa/

 ▼配信内容を加筆修正した内容はこちらでご覧になれます(レビューのみ)
 http://cafemontmartre.jp/jazz/index.html

 ▼購読の解除は、こちらでお願いいたします。
 http://www.mag2.com/m/0000061881.htm

 ※メールを返信されても、購読解除はできませんのでご了承ください。

 ※このメルマガは、出来れば等幅フォントでご覧になってください。

  ■無断転載・転用を禁じます。
  Copyright(C)2008"kumo"All Rights Reserved.

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■【Jazz Magazine】◆◆■

この記事を取り寄せる
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る