【Jazz Magazine】 vol.878
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【Jazz Magazine】《ジャズのメールマガジン》
vol.878
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───────────────[2008/02/22配信:発行部数:3,078]──
▼本日のアルバム
『バイーア』(プレスティッジ)
ジョン・コルトレーン
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コルトレーンの専売特許とでもいうべき奏法、シーツ・オブ・サウンズ。
まるで、空間を埋め尽くさんばかりに、おびただしい数の音をばら撒きな
がら疾走してゆくこの奏法は、今でも聴く者に驚きを与える。
このシーツ・オブ・サウンズってさ、
早いハナシがロックにおける速弾きみたいなもの?
そう尋ねられたら、
ま、そういうもんです、
と答えても、もちろん間違いではない。
しかし本音を言ってしまうと、ロックとかのギターの早弾きとは一緒にし
て欲しくないなぁ、ということもある。
えー、どうして? ジャズのほうが難しいってこと?
はい、一言で言えば、そういうことになりそうです(笑)。
いや、べつに、簡単だから低俗、難しいから高尚だと言いたいわけではな
いのだよ。
こう言うと、すぐにロック畑の一部の人たちは、こちらが思っている以上
に「だからジャズ聴いている野郎は気に食わん」とオカンムリになるし、
べつにバカにしているわけでも、見下しているわけでも全然ないのに、ム
ズカシイからってイイ気になるなよ、とヘンな被害妄想に陥ったりして、
こっちもシラケテしまうんことが多い。
べつに、こっちはそういうつもりじゃないんだよ、ということは改めて断
った上でハナシを進めたい。
もっとも、ロックやってる人でも多くの"わかってる人"は、いちいちそん
な野暮な目くじらを立てないとは思うのだが……。
お話したいのは、純粋に技術的なお話。
いかにコルトレーンのシーツ・オブ・サウンズがすごいのかを身近で実感
のわきやすいロックのギターを引き合いに出して語りたいだけ。
速弾きというのは、むしろロック畑のギターの人がよく使う言葉ではある
けれども、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンズは、まさにロックでい
うところの、速弾きのようなもの。
いや、サックスだから速吹きか。
ロックの、たとえば、ペンタトニック・スケール(五音で成り立つ音階)
を多用した早弾きっていうのは、難しいようで、意外と慣れてしまうと簡
単、らしい。
手癖で出来ちゃうから。
頭の中の音符をどうこうという世界ではなく、多くは、ギターの指板の上
での指の運動で処理できちゃうことも多いから。
複雑な代理コードもないし、キーのチェンジも少ない場合のほうが多いか
らね。
もっとも、プログレとか、変拍子のオリジナル曲とか、そういった例外は
いくらでもあるから、あくまで一般的に言えば、というレベルにしておい
て欲しいんだけどね。
手癖で出来ちゃうってことは、肉体的訓練をつめば、頭をあまり使わなく
ても、習慣で、「あ、ここのところはこう弾いちゃおう」と、体が自然に
反応してくれる。
あとは、肉体的に生じた余裕はアクションなり感情こめるほうにエネルギ
ーを費やせばよいわけ。
もちろん、"肉体的な慣れ"という意味では、ジャズの場合でも、クリシェ
というものはあるし、ジャズマンにはそれぞれストックフレーズというも
のもある。
誰もが、考えに考えながらアドリブをとっているというわけでもないんだ
けれども、単位時間内に与えられた命題と情報を処理するために求められ
る演算処理能力は、ロックよりもジャズのほうが大きいとは思う。両方と
も演奏した経験から言うと。
ジャズマンがしかめっ面で演奏しているのは、自己陶酔だとばっかり思っ
ていたけれども、次の瞬間に起こりうる出来事と可能性を秒速単位でめま
ぐるしく考えているかもしれないんだよね。
だから、派手に動いたりアクションとったりしている余裕ってあまりない
んだよ。
で、面白い話があるんだけれども、
ある知り合いのギタリストで、エリック・クラプトンのコピーを弾かせた
ら、右に出る者がいないといわれたほどの人がいた。
まぁ、クラプトンといえば、フレージングの明快さと丁寧なアーティキュ
レーションゆえに、私的には、教則本みたいなギターであんまり好きでは
ないんだけどさ(ヤードバーズとか、クリームとかの初期の頃はわりと好
きだが)、でも一応は、誰もがマネしやすい音楽的な構造を持つ上に、キ
ャッチーな点で言えば、ロックの基本的なギターともいえるよね。
で、そのクラプトンが得意な人に、ジョー・パスが弾いた『ヴァーチュオー
ソ』の譜面を見せて「これ弾けますか?」と言ったのね。
そしたら、その人、数日、その譜面と格闘したんだけども、弾けたかとい
うと、いや、全然弾けなかったのよ。
数小節で挫折。
「次元が違う」「棲んでる星が違う」ってボヤいていた。
つまり、ロックのギターとジャズのギターでは、それぐらい難易度に開き
があったりする。
難易度もそうだが、根本的に指板の上での思考システムが異なっているこ
ともある。
つまり、日本語の早口言葉が得意な人に、いきなり外国語をしゃべらせよ
うとするようなもので、それはその言語の基本的な構造を把握していなけ
れば数日でマスターすることは難しいということだ。
単純に難易度の話ね。音楽の良し悪しについて言っているわけじゃないよ。
料理だって、調理の難易度と、おいしい、まずいは関係ないでしょ?
調理が難しい料理だからって、おいしいとは限らない。
それと同じで、難しいからジャズのほうがエラい音楽だ、と言いたいわけ
じゃないのよ。
純粋に、同じギターでも、ジャズギターのほうが、技術的には難易度が高
いことが多い、というだけの話です。
ま、クラプトンとジョー・パスというタトエも極端かもしれないけどさ、
あと、ジャンルごとに身に着けた反射神経とか思考パターンって微妙に違
うから、その先輩には酷なことをしてしまったかもしれないけど、ま、要
するにそういうこと。
で、私は今、なにを言いたいのかというと、コルトレーンのシーツ・オブ・
サウンズの凄さを、なんとか言葉で伝えようとしているわけなんですよ。
ギターでも難しいことを、サックスでやろうとすると、さらにハードルが
高くなるのよ。
ギターは指だけの世界だけれど、テナーサックスは、口や頬の筋肉、それ
にくわえて肺活量も伴うからね。
そうそう、肉体的にもキツイのよ。
それなのに、コルトレーンの場合は、明晰にアナライズされた音とフレー
ズが時間の隙間を許さんとばかりの勢いで、間断なくスゴい勢いで流れ出
て来るわけだ。
曲によっては、速いテンポなだけではなく、1小節に2回ずつコードチェ
ンジなんて当たり前なビ・バップ・チューンや、彼のオリジナル(ジャイ
アント・ステップスやモーメンツ・ノーティス)の曲もあるからね。
コードチェンジと、迫り来る時間の速度に対応する柔軟な思考力も必要っ
てわけね。
ま、コルトレーンの場合は、寝室やトイレでも練習していたほどの練習の
鬼だから、彼なりのストックフレーズはいくつもあったとは思うけれども
ね。
それにしても、文字だけで彼の凄さを伝えるにも限界があるなぁ。
だから、あとはコルトレーンのシーツ・オブ・サウンズを聴いてね、って
ことなんだけどね。
で、この奏法の決定打が名盤『ジャイアント・ステップス』のタイトル曲
なんです。
しかし、当然ながら、このようなテクニックの極限に挑むような奏法は一
朝一夕で完成するわけではなく、長い時間をかけて彼はこの奏法にトライ
し、試行錯誤を繰り返しながら磨きをかけていたことはいうまでもない。
そして、私の知る限りでは、彼は《ジャイアント・ステップス》をアルバ
ムで録音して以降は、ライブなどで再演していないことからも、相当に難
易度が高く、失敗をする可能性を常にはらんだ曲だったといえる。
満足いく結果をアトランティックの『ジャイアント・ステップス』で残せ
たから、もういいじゃない、次のステージ(モード奏法)に移ろう!とな
ったんだろうね。
あれだけ、苦労して練習に練習を重ねた結果、怒涛のシーツ・オブ・サウ
ンズで我々を常に驚かせ、気持ちを鼓舞してくれる《ジャイアント・ステ
ップス》は、まさにシーツ・オブ・サウンズの理想的な完成形だろう。
そして、すでに《ジャイアント・ステップス》のマスターテイク録音の
1年前には、既に"ほぼ完成の域"に達していたことが、この『バイーア』
を聴けばよくわかる。
《ゴールズポロ・エキスプレス》を聴いてみよう。
これぞ、スリリングなシーツ・オブ・サウンズ!
激しいドラムとの応酬。息詰まるつばぜり合い。
……なのに、あらら、潔く、ストン!と終わる(笑)。
潔すぎ(笑)。
はい、おしまい!てな感じのストン!な感じがなんとも、直前の激しいシ
ーツ・オブ・サウンズとは良い対比となっていて面白い。
あとは、このアルバム、シーツ・オブ・サウンズ以外の《マイ・アイディ
アル》のようなしみじみしたバラードもなかなかの出来なので、結構、ト
ータルで楽しめる内容だ。
後期のようにヘヴィ過ぎず、腹八分目にコルトレーンを堪能できる、良い
アルバムだ。
彼を最良のカタチでサポートしてきたレッド・ガーランドのピアノとコル
トレーンの音楽の方向性の微妙な乖離が見えるてきているところも、見逃
せない。
より一層、激しい世界に突入するコルトレーンに対し、ガーランドはいつ
ものペース。
同じ道を歩んできた者同士も、時代の経過とともに、保守派と革新派へと
方向が別れはじめる端緒がこのあたりの音楽からは伺える。
しかし、この二人の微妙なスタイルの乖離が、逆に耳に心地よかったりも
する。
悪く言えばコルトレーンだけが浮いて聴こえるといえるが、逆にコルトレ
ーンのプレイに自然に耳がフォーカスされるというメリットもある。
技術的に安定して破たんのない、この時期のコルトレーンのテナーは、テ
ナーの音ばかりが耳についても、安心して聴くことができるのだ。
ちなみに、ジャケットのコルトレーンはソプラノを吹いているが、まだこ
の時期はソプラノ吹いてません(笑)。
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『BAHIA』 (Prestige)
John Coltrane
1.Bahia
2.Goldsboro Express
3.My Ideal
4.I'm a Dreamer(Aren't We All?)
5.Something I Dreamed Last Night
John Coltrane (ts)
Wilbur Harden (tp) #3-5 Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds) #1,2
Jimmy Cobb (ds) #3-5
1958/7/11 #3,4
1958/12/26 #1,2,5
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〔ライブのお知らせ〕
私が所属するフルート・カルテット、
「サタデイ・ナイト・ジャズ・プロジェクト(SNJP)」のライブのお知ら
せです。
4月12日、
亀有にある「JAZZ38」イタリア料理のお店で演奏します。
▼HP
http://yydotto.com/jazz38/
18:30〜
20:00〜
21:30〜
の3セットとなります。
やる曲はスタンダード中心。
食事の邪魔となるような、フリージャズっぽい演奏や、激しい演奏はしま
せん(笑)。
ワインとパスタで、演奏をお楽しみください。
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【音聴き会】のお知らせ
久々の「音聴き会」は、3月21日の午後7時から。
場所は、沖縄のコザです。
新しくオープンする『スコット・ラファロ』というジャズ喫茶(カフェ)
にて、プレオープンの2日目の夜に2時間ほど講演させていただきます。
テーマは、「映像で愉しむジャズ入門!」。
沖縄在住の読者の方、あるいは、その時期に沖縄旅行を入れている方は、
是非、お立ちよりください。
あるいは、これにあわせて沖縄旅行を計画していただけると、なお一層
ありがたいです(笑)。
オーナーのtommy氏がジャズ喫茶をオープンさせるまでの過程をブログで
綴っていますので、是非チェックしてみてください。
▼「Tommy's Jazz Caf'e」
http://ameblo.jp/tommy-tdo/
【音聴き会】in 沖縄
日時:2008年3月21日(金)19:00〜21:00(予定)
店:『Scott LaFaro』
住所:沖縄県沖縄市胡屋(ゴヤ)1-3-3 2F
※コザ(沖縄市)のメイン通り国道330号線に面した場所にあります。
左隣は普久原(ふくはら)楽器店、右隣が書店ですので、そこを目印にし
てください。
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●配信者 雲 kumo.takano@gmail.com
▼雲・個人ページ「カフェ・モンマルトル」
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