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古典の名作や新作はもちろん、連続もの、艶笑噺、現在演じられないものまで、落語の全て紹介。粗筋・成立(原作や歴史)・一言(芸談や識者の感想)・薀蓄という4項目を毎週配信。

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2009/10/16

名作落語大全集#462

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   名作落語大全集#462    発行者:越智月久
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発行日:2009年10月9日(金) 

      「まぐまぐ」寄席に2154名様、
      「メルマ」演芸場に711名様
     合計2865名様にご来場いただいております。

 ご来場ありがとうございます。今日は世界食糧デー。国連食糧農業機関(F
AO)が1981年に制定したもので、開発途上国などでの栄養失調や飢餓につい
て考える日です。そこで、今日お勧めの落語は、「火焔太鼓」、「お腹がすいて、
おへそが背中に出てくるよ」って台詞がいいですね。「二人旅」(「七度狐」な
どの旅噺にも多くあるが)、「らはが北山」という台詞。「腹をひっくり返して
らは、北の山は透いて見えるから、腹がすいた」ということ。お腹がすいたの
を笑いにするだけ、まだ飢餓にはほど遠いので安心ですね。
 さあ、今日は古典の名作をお届けします。

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14 源平盛衰記(げんぺいじょうすいき)

【粗筋】
 源義経は木曽義仲の軍勢を粟津の一戦で滅ぼし、その勢いで平家を討伐しよ
うと摂津、播磨の国境までやってきた。「鹿も四つ足、馬も四つ足」と崖を下
ろそうとするが馬達は、
「馬と鹿が同じだなんてそんな『馬鹿』な話があるか。特別手当をいただきた
いね」
  と動かない。義経さん、ぽんとボーナスをはずみ、これが名代の「日雇(ひ
よとり)越え(鵯越え=ひよどりごえ)」。
  屋島では平家が船を出し、扇の的を射抜いてみよとの挑戦。実は平家の作戦
があった。第一に、これを狙う弓の名手は佐々木・菅原という名手のいずれか
であろうから、岩場に伏兵を置いて暗殺しようという計画。第二に、扇に矢が
当たらなければ、それで源氏の勢いも衰えるであろうと考え。そして、万一扇
に矢が当たっても、扇に日輪を描いてあるので、これに矢が当たると源氏に天
罰が下るかもしれないという目算。
  ところが射手に選ばれたのが下野中学を優等で卒業したばかりのスポーツマ
ン、那須与一宗高。暗殺者の方では、「誰なんだ、これは……」とあっけに取
られて殺すきっかけを失い、与一は見事に扇の鼎を貫いた。
  この乱戦のさなか、いとも優しき笛の音、さすがは平家の武士よと、義経が
様子を探りにいくと、実に意外、時子姫がさめざめと涙を流している。美人の
泣き声が笛の調べに聞こえたのである。時子姫は義経に介錯を頼むところへ、
平家の武将能登守教経が駆けつける。時子少しも騒がず八木節で辞世をよみ、
義経も仕方なく、
「♪抜いた刀をしまわりましょうか、ヨイショ……」
  と合槌を打ったから、そばに来ていた教経も踊り出した。これでは平家が滅
びるのも当然で、踊る(奢る)平家は久しからず……

【成立】
 『平家物語』の名場面を散りばめた生粋の東京落語。昭和の初年、トーキー
の出現で活動弁士が失業し、徳川夢声、松井翠声らが、洋服で高座に立つ「漫
談」というものを始めた。落語の方も影響され、漫談調落語が増えた。その一
席と言われている。故林家三平が演じた唯一の「普通の」落語と言い伝えられ
ている……実は唯一ではないし、くすぐり沢山、脱線自由だから「普通」では
ないと思う。
  義経を中心に、その生い立ちから語っていくのが本来のものらしく、「熊坂」
を付けることもある。「ひよどり越え」で切る場合、「このくらい馬を大切にし
た人はいない。だから戦の評判よりも、吉原と洲崎の評判がよかった」という
バレで落とすこともあった(馬が男のモノの立派なのをいう)。
 壇ノ浦で総大将の教経が死を前に踊って落ちというのがあったので、これが
最も古い型かも知れない。
  現在では時間的制約もあって、那須与一の部分だけを取り上げるのが一般的。
春風亭小朝は、見事的を射抜くと源平双方が与一を褒めたたえ、平家の武者の
一人が船上で舞い始める。これで平家の敗北は決まった。踊る平家は……で落
としている。那須与一の腕前もお見事だが、この落ちもお見事。『平家物語』
では、感極まった平家の武者が踊りを始め、義経の命でこの者を射殺すことで、
再び戦いが始まるのである。
  大阪では桂三枝が、「生中継・源平」で合戦をテレビで生中継するという現
代的スタイルの演出をしている。

【一言】
 小ゑん(立川談志)は『源平盛衰記』を語るときに、木曽義仲がくりから谷
で牛のつのに松明をつけて、平家の陣屋になだれこませる。平家の軍勢がその
猛襲に浮足だってくると、ひとりの大将が絶叫する。「なんだ!バッファロー
なんか恐れるな、だれかフライヤーズの山本八を呼んでこい」また平清盛が沈
む太陽を呼びかえして、熱病にとりつかれると、その記事がたちまちアメリカ
の雑誌『ルック』に報道される。それを読んだハリウッドの女優マリリン・モ
ンローが「わたしは清盛さんがだいすき。だって“お熱いのがお好き”」と告
白する。(虫明亜呂無)
●わたしが『源平盛衰記』を演じ、桂文楽師匠に頭からどなられたことがあっ
た。あんなものをやっちゃあいけない、というのだ。なぜいけないのか、わた
しには理解できなかったが、文楽師匠はとにかくいけないの一点張り。こっち
は口惜しいけれど、相手が文楽師匠じゃ仕方ない。泣寝入りだ。のちになって
聞いてみたら、「あいつは近頃生意気になっているので一度どっかでこっぴど
く小言をいってやろうと思っていたんで、わたしいいました」と。(立川談志)

【蘊蓄】
 一の谷の合戦は1184年2月7日、屋島は同11日。壇ノ浦は翌年3月24日。
『徒然草』には『平家物語』の作者は信濃前司行長だとある。実際には語り継
がれるうちに増補されたものであって、一人の作者ではあり得ない。

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 芸人さんの紹介です。
春風亭柳桜:1952年10月22日、東京都港区に生まれる。本名は吉沢正雄。20
歳ころから原因不明の難病、ビュルガー病で入退院を繰り返すことになるが、
この頃から噺家への道を志、1979年に春風亭柳昇に入門した。1992年に右足、
1994年に左足を切断した。真打になったのはその間の1993年で、真打になって
も高座に上がれなかった。手にもハンディを遺しているが、2005年に復帰、私
が始めてみたのは8月1日の「鰻屋」、4日の「小言念仏」から。ハンディを
感じさせない動き、しかも階段で3階まで上がらなければならない上野広小路
亭、ちゃんと歩いて登場し、椅子で簡単な膝隠しを用いるだけ。闘病の苦労を
感じさせぬ芸は本格。病気との闘いを綴り、『不死身の落語家(はなしか)』
を出版している。

 これから誕生日の芸人さん(現役のみ)。

10月18日:三遊亭遊喜
10月19日:三遊亭道楽
10月20日:桂小南治・柳家禽太夫
10月22日:橘家竹蔵

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