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古典の名作や新作はもちろん、連続もの、艶笑噺、現在演じられないものまで、落語の全て紹介。粗筋・成立(原作や歴史)・一言(芸談や識者の感想)・薀蓄という4項目を毎週配信。

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2009/07/31

名作落語大全集#451

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   名作落語大全集#451    発行者:越智月久
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発行日:2009年7月31日(金) 

      「まぐまぐ」寄席に2144名様、
      「メルマ」演芸場に710名様
     合計2854名様にご来場いただいております。

 ご来場ありがとうございます。今日は「蓄音機の日」、1877年のこの日、エ
ジソンが特許を取ったのです。日本では快楽亭ブラックが落語の録音を勧めま
すが、1901年から。三遊亭圓朝が前年に亡くなっています。ううん、残念。私
はナマがいいというので、録音の趣味はないと言っていましたが、それでも先
日整理していたら約3千のデータが出てきました。整理が大変。まあ、寄席へ
行けない時は録音に頼るしかないので、これも大事にしなければならないでし
ょうねえ……何かいい整理の方法をご教授下さい。
 ところで、三遊亭圓朝の命日は8月11日ですが、直前の9日、谷中全生庵で
恒例の圓朝祭りが開催されます。落語家さんの屋台などお楽しみも沢山、皆様
もぜひお出掛け下さい。
 さあ、今日は歴史的落語の1席。

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3 袈裟御前(けさごぜん)

【粗筋】
 渡辺亘(わたる)の妻、袈裟御前にほれた遠藤武者盛遠(もりとお)、いう
ことを聞かないとお前の母を殺すぞと脅迫する。御前は、夫がいる以上いうこ
とを聞く訳にはいかないから、今夜忍び込んで夫の首を取ってくれと申し出る。
言われた部屋に忍び込んで首を取ったが、男の首にしては軽く髪も多い。不思
議に思って切り口に手を当てると、べっとりと飯粒。
「ああ、今朝の御膳(袈裟の御前)であったか」

【成立】
  遠藤盛遠は、人妻を強引に口説いたり、裸で藪に寝たり、奇行がたえなかっ
た。雪中那智の滝に5日もつかって失神すると、悟りを開いたと勝手に文覚と
名乗って高尾神護寺に勧進し、院御所法住寺殿へおしかけて暴力を振るったた
め伊豆へ流罪になる。ここで頼朝に会い、父義朝のしゃれこうべを見せて決起
をうながしたが、平家滅亡後、八十歳にして謀反のうたがいで隠岐へ流された
のが最後となる。この最初の人妻への恋慕事件が題材。
 今は林家しゅう平が演じている。この陳腐な落ちを避け、文覚として修行に
励む。断食を終えて食事を与えられるが、喉を通らず、
「ああ、まだ今朝の御膳がたたっていた」
 と落とす。シューベルト、オペラ座の怪人、などの歌入りはしゅう平らしい
が、聞いていてちょっと疲れる。

【一言】
 幼稚なオチだが、こうでもオトさないと落語には無理な素材なのだ。(宇井
無愁)

【蘊蓄】
 『平家物語』にはこの事件はない。『源平盛衰記』にあるのは『今昔物語集』
巻第十を翻案したものらしく、事件そのものも疑問視されているが、折角なの
で『今昔』の粗筋をご紹介。

 久安6(1150)年とも保元2(1157)年ともいう、淀川(現・大川)に掛か
る渡辺橋が完成し、橋供養が行われた。警護に当たっていた遠藤盛遠は、橋の
たもとの桟橋から、輿に乗る美しい女を御簾の隙間からかいま見る。彼は一目
でそのとりこになるが、相手は従姉妹に当たる袈裟御前、盛遠が17歳、袈裟御
前は16歳であったが3年前に渡辺左衛門尉渡の妻となっていた。
 ついに盛遠は伯母の衣川を訪ね、袈裟への恋で自分はだめになっている、こ
れは伯母が自分を殺そうとするに等しい、武士として仇のあなたと一緒に死ぬ、
という屁理屈をこねて衣川に刀をつきつける。衣川は仕方なく風邪で伏せって
いるからこっそり逢いに来るようにと袈裟を呼び出し、事情をうち明ける。板
挟みになって苦しむ袈裟だが、母親のために盛遠と一夜を共にする。夜が明け
ると、盛遠はいよいよ一時も離れていられなくなった、と彼女を帰そうとはし
ない。仕方なく、それなら自分の夫である左衛門尉を殺してくれと言い、洗い
髪にして酒を飲ませて眠らせるという約束までする。
 袈裟は夫を酔わせて奥に寝かしつけ、自分が洗い髪で夫の代わりに横になる。
忍び込んだ盛遠は約束通り濡れた髪を頼りに首を掻き切るが、屋敷へ戻って確
かめると愛する袈裟のものだと知り、泣き叫ぶ。
 無常を感じた盛遠は、翌朝渡の元へ赴き、すべてを話して自分の首を切って
くれと頼む。渡は、人を殺しても来世の苦難を招くだけだとし、妻は我々に道
心を呼び起こすための観音だったと考えるのがよいと言って、自ら髪を切り落
とす。盛遠もこれに倣って髪を切り、怪僧・文覚が誕生する。母の衣川や様子
を見ていた30余人が一斉に出家を遂げた。

 この原作が、一目で恋に落ちたのでなく、幼なじみだという方が説得力があ
るというので一般化し、主人公も激しい恋の行動力を持つ盛遠から、悲劇の女
性である袈裟へと移った。更に武士の妻が母と夫への献身を行うということに
なり、相手と一夜を共にするのは不都合ということでこの場面がカットされる
ようになった。
 芥川龍之介は「袈裟と盛遠」で二人が共寝する場面を描いたため、避難の声
が殺到したが、実はこれが本来の姿だった訳である。岡本綺堂や菊池寛、小山
内薫など、10人以上の作家が色々な角度からこの事件を描いており、石井歓の
作曲で歌劇にもなっている。

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 芸人さんの紹介です。
鈴々舎馬るこ:1980年8月4日、山口県防府市生まれ。平成15年に鈴々舎馬風
に入門、翌年には注目の的、『FLASH』にブレイクする芸人と紹介された。
ハングル語の『蟇の油』やら何やら訳の分からないことを演るかと思えば、『真
田小僧』を真田幸村ではなく快楽亭ブラックで演じる(『ブラック小僧』とい
う題になるのかしら)とか、改作もすごい。更には途中まで何を演じているか
分からないという『たらちね』。大家が女の欠点を隠すために言葉をそらすの
が実に見事で、今までの常識を打ち破る。とにかく、このネタが、この場面が、
何でこんなに面白くなっちゃうの……という演者。まだ二ツ目なので知らない
人が多いのはもったいない。記憶しておくだけの価値のある噺家。

 これから誕生日の芸人さん(現役のみ)。
7月31日:三遊亭小円右
8月2日:柳家花緑
8月4日:柳家さん喬
8月6日:柳家さん助・古今亭志ん弥・三遊亭好楽

ご意見ご希望はこちらまで mailto:meisakurakugo@yahoo.co.jp 
HP「名作落語大全集」はこちら。http://esaki-ochi.hp.infoseek.co.jp

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