2009/05/29
名作落語大全集#442
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名作落語大全集#442 発行者:越智月久
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発行日:2009年5月29日(金)
「まぐまぐ」寄席に2190名様、
「メルマ」演芸場に712名様
合計2902名様にご来場いただいております。
ご来場ありがとうございます。
今日は529の語呂合わせで……分かるかな……はい、「呉服(ごふく=5
92)の日」、それから「こんにゃく(529)の日」になっています。そこ
で本日お勧めの落語は、着物を買う「御慶」、文字通りの「蒟蒻問答(こんに
ゃくもんどう)」などいかがでしょうか。
今日ご紹介するお噺は、幕末のドラマでございます。
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22 蔵前駕籠(くらまえかご)
【粗筋】
慶応4年正月3日、鳥羽伏見の戦いが始まって江戸の町は物騒なことが多い。
白昼堂々、よからぬ輩が徒党を汲んで商家に押し入る騒ぎ。こんなことなら持
っている金は今のうちに使ってしまおうというのが、江戸ッ子の心意気。吉原
が殷賑を極めるようになるが、この吉原通いの駕籠が襲われるようになった。
ところが世の中には危険をおかしても吉原へ行こうという女郎買いの決死隊
みたいなのがいて、いやがる駕籠屋に酒手をはずみ、着ているものを全部脱い
で尻の下に敷くと駕籠を走らせた。天王橋を渡った辺りで黒覆面をした数人の
侍が飛び出し、
「我々は由緒あって徳川方にお味方いたすもの。軍用金に事欠いておる。身ぐ
るみ脱いで置いてまいれ」
と刀の切っ先で駕籠の垂れを上げると、下帯一枚の男が腕を組んでいたから、
「ううん……もう済んだか」
【成立】
1772年(明和9)『譚嚢鹿子餅後篇』、1774年(安永3)『軽口五色紙』、
1775年(安永4)『浮世はなし鳥』、1777年(安永6)『落語六義』、同年
『譚嚢』など同じ趣向の小噺が多い。これらを維新当時の話として仕立てたも
の。「おいはぎびっくり」とも。大阪の「そってん芝居」の他、「外科本道」、
「長尻」などが同工異曲。特に「そってん芝居」は追剥対策に裸になるという
設定も同じ。どちらかの移植という説もあるが、他に共通点はないので、小噺
からそれぞれ独立して発展したと考える方がよさそうだ。
この舞台となっている時代は、将軍が大阪城に移った時期で、出る追剥はこ
の隙を狙った勤皇派の侍のはず。しかし、落語の中で追剥が必ず「徳川方だ」
と名乗っているのは、新しく政権を取った勤皇派への配慮であり、この噺が明
治の初期には演じられていたものと推察できる。
それでも枕程度のものだったが、林家彦六が駕籠かきのやりとり、侍たちの
仕草を見事に演出して一席のものに育て上げた。
【一言】
安永年間の小咄に肉づけしたこの落語のオチは、なかなか気がきいている。
ストーリーそのものはきわめて単純で、べつにどうということもない筋立てな
のに、それが古典の名作として生き残ったのは、ひとえに結びの「ううん……
もう済んだか」という一句のおかげだろう。(江國滋:上方の「そってん芝居」
は客の方が「もう向こうで済んだのじゃ」と説明する。この「もう済んだか」
は実に見事である。)
●追剥の出た天王橋は、浅草橋から蔵前にむかって右側にある交番あたりにな
りますかね。ただ寂しいばかりじゃなく、追剥が仕事をしてから逃げやすい場
所でないと具合が悪いんで……(林家彦六)
【蘊蓄】
駕籠屋には街で客待ちをしている辻駕籠と、店をかまえている宿駕籠があっ
た。今のタクシーとハイヤーの違いと考えればよく分かる。
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さて、噺家さんのご紹介です。
桂小文治:1957(昭和32)年 5月29日生まれ。本名古田繁昌。大学時代から
桂文治(10)に弟子入りし、卒業と共に内弟子になる。1993年真打昇進と共に、
大師匠の名跡小文治(2)を襲名。くりくり坊主という言葉を思い起こさせる、
噺家がよく似合う外見。その芸も本物。私が寄席で聞いた噺を並べると……「片
棒」「蛇含草(「蕎麦清」ではなく上方のネタ。江戸風に改めていた)」「長短」
「虱茶屋(前助六が得意だった)」「七段目(何と鳴り物なしで)」「替り目」
「七度狐(これも上方ネタを江戸風に)」「粗忽の釘」……記録を取り始めて4
年間、同じネタが一つも出ていない。古典の本格派として、ぜひとも聞きたい噺
家の一人に挙げねばならぬであろう。
これから誕生日の芸人さん(現役のみ)。
5月29日:入船亭扇橋
5月30日:古今亭志ん五・全亭武生
5月31日:桂米福
6月4日:山遊亭金太郎
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