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古典の名作や新作はもちろん、連続もの、艶笑噺、現在演じられないものまで、落語の全て紹介。粗筋・成立(原作や歴史)・一言(芸談や識者の感想)・薀蓄という4項目を毎週配信。

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2009/02/27

名作落語大全集#429

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   名作落語大全集#429    発行者:越智月久
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発行日:2009年2月27日(金) 

      「まぐまぐ」寄席に2273名様、
      「メルマ」演芸場に701名様
     合計2974名様にご来場いただいております。

 ご来場でお礼申し上げます。
 1594年の今日、豊臣秀吉が吉野の花見を開催しました。もちろん旧暦なので、
現在の暦にすると3月末のことですが、今頃寄席へ行って、春らしい噺が登場
すると、ちょっとうれしいものです。今日のお勧め落語……「長屋の花見」「花
見酒」「花見の仇討」などはいかがでしょう。
 本日の出し物は、仕草落ちと呼ばれるもの。演じ手の動きによって落ちにな
るものです。では、どうぞ。

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9 首提灯(くびぢょうちん)

【粗筋】
   その1
 芝山中で田舎侍に道を聞かれた酔っぱらい、酒の勢いで毒づいたため首をは
ねられた。そうとも気付かず鼻唄まじりで歩くうちに、だんだん首が曲がって
くるのでやっと斬られたことに気付いた。
  間の悪い時は仕方のないもので、折からの火事に大勢の人が走ってきてぶつ
かり、首が落ちそうになる。男、自分の首を両手でひょいと持ち上げて、
「はい、ごめんよ、ごめんよ」

   その2
 芝山中で田舎侍に道を聞かれた酔っぱらい、酒の勢いで毒づいたため首をは
ねられた。そうとも気付かず鼻唄まじりで歩くうちに、だんだん首が曲がって
くるのでやっと斬られたことに気付いた。
 頭が落ちないよう気を付けて我が家に帰ると、恩人の家の近くに火事があっ
たというので、見舞いに駆け付ける。店先に自分を首を差し出して、
「へい、八五郎でござい」

【成立】
 1774年(安永3)『軽口五色紙』の「盗人の頓智」、1794年(寛政6)『軽
口四方の春』の「火事のきてん」など。「盗人」とあるように、古くは泥棒が
首を斬られて外へ出ると暗闇だったので提灯のように……という小噺程度のも
のであったが、橘屋圓蔵(3)が一席物にふくらましたという。上方では「上
燗屋」といい、飲み屋でのやりとりという前半部がメイン。支払いのために買
った刀を試し斬りしたいと、罠をしかけて盗人の首を斬る。
 その1・その2の異同については【一言】を参照。その2について、落語「火
事息子」などでも説明しているが、見舞いに来る人は混み合っているし、一人
一人挨拶をしていては邪魔になるというので、紋の入った提灯を出し、店の者
がその紋から誰が来たか記録する、あるいは紋を写しておく、ということが行
われたのである。
 子供の頃に聞いて、前半の町人が身分もわきまえずに侍にからむのがいかに
もひどいので、斬られて当然のように思えた。だが、それでは後半になって人
物への親しみがわかない。どういうことだろうと思っていたが、結局江戸ッ子
と田舎侍のやりとりなのである。まず侍が「おい」と声を掛ける。「おい」と
いうのは江戸ッ子にしてみれば、喧嘩の時にしか使わない呼び掛けなのである。
大家が店子らを呼ぶ「おいおい」と比べてみると分かる。まずその呼び掛けで
カチンとくる。物を教わるのに身分の違いから、横柄な聞き方をするから余計
に腹が立ってくる……この心理の動きをきちんと描いてくれると、説得力がわ
く。

【一言】
 首を斬られたまま火事見舞いにかけつけ、めざす商家の店先きに「へい、八
五郎でございます」と、威勢よくおのれの首を提灯がわりにさしだすのが、正
蔵(彦六)流のサゲ。これが圓生の演出によると、べつに火事見舞にかけつけ
るわけではなくて、ただ火事見物の雑踏にまきこまれて、「あ、いけねえ、混
んできやがった。落っことすといけねえ……自分の首をひょいッとさしあげて、
はいごめん、はいごめん」とかけ出していく所で終わっている。どちらがいい
悪いというより、どちらにもおもしろみがある。正蔵式の演出には、いかにも
とぼけたおかしみが感じられるし、圓生流にやれば、何ともいえない余韻のよ
うなものがただよう。その場の状況や、人間の心理的必然性からいえば、「は
いごめん、はいごめん」のほうがむりはないけれども、「へい、八五郎でござ
います」も捨てがたい。首を斬られたことに気がついているのに、その上さら
に火事見舞にいく気になれるものか、などというこざかしい理屈は、この奇想
天外なナンセンス落語の前に通用しない。(江國滋)

●このはなしでむずかしい所は、はじめの啖呵と、酔い加減。酔っているんだ
が、本当に酔っちゃったんだと言葉がまくれるとか、語尾がはっきりしなくな
る。けれども聞いてる方に、理屈がわからなくなっちゃァいけない。といって
本当にわかるように演ると、酔っていなくなっちゃうし。(三遊亭圓生(6)・
昭和35年、この噺で芸術祭大賞を受賞したが、師匠や先代の演っていたものを、
そのまま演じているだけもので自らの工夫に欠け、ほめられる噺ではないとい
う。『圓生百席』には入っていない)

●圓生の「首提灯」では冒頭に江戸の名物として「武士、鰹、大名、小路、生
鰯、茶店、紫、火消、錦絵」を紹介する。ちゃんと三十一文字になっている。
(関山和夫)

【蘊蓄】
 芝山中は、大半が広度院増上寺の境内。江戸期には景勝地として知られた。
 ダンテの『神曲』「地獄篇」第28歌では、地獄で悪魔の剣によって首を切ら
れた男が、首を提灯のように提げてダンテに語り掛ける。

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 さて、噺家さんのご紹介です。
三遊亭遊三(3):1938(昭和13)年2月28日生まれ。本名松嶋明。東京浅草
の出身。1955(昭和30)年に三遊亭圓馬(4)に入門、1964(昭和39)年真打。
わずか9年で真打という異例のスピード出世を記録した。とにかく大きな声が
売り物。贔屓の旦那もゴルフの時に「フォアー」と叫ぶのに引っ張り出すとい
う。高座でも声で客の注意を集め、調子よく噺に入って行く。結婚の時最初が
肝心と言われてかみさんを教育、何でも服従、文句を言わない家庭だという。
言うことを聞かないと往復ビンタ……かみさんのビンタが痛いのなんの……と
いうマクラも、大声と並んでよく登場する。夫婦を描く「替り目」が得意で、
何日か通えば必ず聞ける。また、歌謡曲を五十音で歌う「ぱぴぷ」は一席で演
じたり、マクラに用いたりという、代表的なネタになっている。

 これから誕生日の芸人さん(現役のみ)。
2月27日:柳亭燕路
2月28日:三遊亭遊三(3)・三遊亭らん丈・入船亭遊一
3月1日:三遊亭鳳楽
3月2日:三遊亭小遊三・林家時蔵
3月3日:古今亭志ん馬
3月4日:柳家喬之助
3月5日:春風亭栄橋

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HP「名作落語大全集」はこちら。http://esaki-ochi.hp.infoseek.co.jp

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