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2008/05/16

名作落語大全集#388

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   名作落語大全集#388    発行者:越智月久
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発行日:2008年5月16日(金) 

      「まぐまぐ」寄席に2358名様、
      「メルマ」演芸場に837名様
     合計3195名様にご来場いただいております。

 ご来場ありがとうございます。連休が終わったといいながら、7日から3、
4日行ってまた休みということで、体の方がだれてしまっています。このメル
マガを読む頃には調子を戻しておかないといけませんね。そんな訳で、日曜日
ごとに落語会の予定が入っていたのですが、残念ながら今月はもう見送りとい
うことになりそうです。
 さて、本日は珍しい作品を一気に3作ご紹介します。ごゆっくりどうぞ。

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9 狐つき(きつねつき)

 その1

【粗筋】
 王子に住む狐夫婦が、人間の姿になって吉兵衛、おこんと名乗り、稲荷寿司
屋を始めた。ある日、狐憑きを追い出そうとしている村人達を見付け、吉兵衛
が狐憑きと問答を始める。
「お前はどこの狐だ」
 と尋ねると、白蔵王の狐だとか、九尾の狐だとか色々な返事をするが、全て
吉兵衛に言い負かされ、
「申し訳ありません。今日限り退散いたします」
 と降参したとたんに気絶してしまう。目を覚ますと正気に返っており、話を
聞いて、
「皆さんに迷惑を掛けて相すみません。お陰で正気になりました」
 吉兵衛とおこんが喜んで、思わず、
「コン、コン」
「いや、真似をされては面目ない」

【成立】
 三遊亭小遊三(6代目圓太郎?)の速記が残っているのみ。


 その2

【粗筋】
学者熊沢蕃山は若い頃塾を開いていた。弟子になっていた山崎兼義という若侍
の親戚の娘に狐がつき、学問の力でわしを押さえることができれば落ちてやる
という。そこで、色々な物知りが質問するがどんな問題にもすらすらと答え、
一向に落ちないという。
 蕃山が先方へ行って質問をすると、確かにどんな質問にも答える。そこで、
「しからばもう一つだけ、これはごく易しいものだが、『論語』のうちに、子
曰くという言葉がある。あれは『論語』のうちにいくつある。どうじゃ」
 と尋ねると、狐はたちまち落ち着きを失って降参してしまった。帰り道で山
崎が、
「先生、子曰くという言葉はいくつあるのですか」
 と尋ねると、蕃山は、自分も知らないと言う。
 狐は「常に人の気を知る」ところから「きつね(気常)」と名付けられたの
を思い出し、自分の知らないことを質問したのである。質問した本人が答えを
知らないので、狐の方でも答えられなかったのである。
「学問というものは、ただ覚え込んだからそれでよいものではない。これを広
く応用してこそ、初めて価値のあるものだ。それには、寄席へ行って落語なぞ
を聞くことが、一番ためになるぞ」
 とおっしゃったそうで……熊沢蕃山が狐つきを落としたというお噺でござい
ます。

【成立】
 生粋の江戸落語と思われる。「熊沢」「熊沢蕃山」とも。

【一言】
 これは七代目の土橋亭里う馬という、色が黒いところから“黒の里う馬”と
呼ばれた人が演っていたのを私が聞いていて、覚えたものなんです。この七代
目里う馬という人はもと木戸芸者という、芝居小屋の前で役者の声色を使って
近日開演する芝居の予告をする、それを商売にしていた人なんですが、世の中
が変わって木戸芸者なんてえものがいらなくなってきたので、当時の金原亭馬
生の弟子になって旅を廻り、一時、新潟に行って落着いていたんですが、圓朝
師が、病死した弟子の司馬竜生追善のために新潟へ行った、そのときに圓朝師
に弟子入りをしたんです。はじめての名前が圓新、それから司馬竜生になって
七代目里う馬となった人です。私が知っているのはもう里う馬になってからで
すけれども……。
 この人はめずらしい噺をよく演りました。「一眼国」「永代橋」なぞも当時
ほかの人は演らなかった噺で、そのほか「小幡小平次」だとか、いろいろめず
らしい噺を演っていました。この「狐つき」もそのうちのひとつで、ほかには
演る人は有りませんでした。(三遊亭圓生(6))

【蘊蓄】
 熊沢蕃山は備前岡山の重役になった人物。「朝顔の歌」という作、
  露の干ぬ間の朝顔に、照らす日影のつれなさに、
  あわれ一叢雨の、はらはらと降れかし……
 が流行し、『増補朝顔日記』という浄瑠璃本までできた。これは宮城阿曽次
郎という者と、深雪という娘が恋仲になる話。阿曽次郎を尋ね歩くうちに深雪
が失明する「大井川」という場面が現在でもよく演じられている。


 その3

【粗筋】
 注文を聞きに行ったまま翌日になるまで帰って来なかった道楽息子に、染物
屋の主人が意見をする。その後で昨日の注文は何だったかなと質問すると、
「竹内さんは、結城を紺に染めてくれとおっしゃいました」
「紺無地だな。分かった」
 主人は、自分も道楽者だったと、昔のことを思い出しながら一杯やり、寝込
んでしまう。
 この親父が夜中に目を覚ますと、床の間の掛け軸の美女が抜け出て話を始め
た。このやり取りに目を覚ました息子が見ると、息子には美女が見えず、親父
が一人で話している。狐が憑いたと思って話しかけるが、返事がまともでどう
も狐憑きではない。それでは狸かも知れないので、狸の嫌いな唐辛子を勧めて
みると、食べると言う。
「それでは正気なのかな……そうだ……竹内さんの結城はどう染めるのですか」
「無地だ」
「ムジナ……で、色は」
「紺」
「こりゃいけない。ムジナばかりか狐も憑いている」

【成立】
 1933年(昭和8)清文堂の『名作落語選集』に、橘家小円蔵の所演として「蛙
の子」という題が見える。その題名の噺がもう一つついていたオムニバスだっ
たと思われるが未詳。

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 さて、寄席の言葉を紹介する『落語大事典』、「ひ」の続きでございます。

びだくおん【鼻濁音】 鼻に抜けるような音で発音されるガ行。発音記号はn
とgがくっついたような形。カキクケコに丸をつけて表すが、正式の文字では
ない。関西にはない発音で、標準語が東京言葉を元にしているため、言葉の後
につく「が」はこの音で発音するのが正しいということになっているが、国語
の先生でも知らないようになった。つまり「学校が」の最初の「が」は普通の
濁音、最後の「が」は鼻濁音である。
 江戸言葉では重要で、江戸っ子の啖呵は鼻濁音でなければ聞けたものではな
いし、鼻濁音でなかったら言葉が詰まることはないという台詞もある。「八五
郎」が「はっちょうろ」と聞こえるのも、鼻濁音の影響なのである。残念なが
ら、喧嘩場で普通の濁音で話す東京落語の演者もいる。

ひとごと【他人事】 相手の状況から自分をかえりみて、「他人事じゃない」
という具合に使う。「たにんごと」と文字をそのまま読んだのは間違い。日常
会話でも「たにんごと」が一般化しているのは情けないが、1970年ころから、
テレビに出る人に読み間違いが多く、それが一般化したものだという。

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HP「名作落語大全集」はこちら。http://esaki-ochi.hp.infoseek.co.jp

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