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2008/04/18

名作落語大全集#384

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   名作落語大全集#384    発行者:越智月久
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発行日:2008年4月18日(金) 

  「まぐまぐ」寄席に2268名様、
  「メルマ」演芸場に835名様
 合計3103名様にご来場いただいております。

 私の生息している茨城県南部周辺では、先週末で桜も見頃を負え、そろそろ
葉の方が目立つようになりました。江戸の書物を読むと、梅が咲き始める頃に
はまだ冬の気候、桜が咲いて散って行くまでの短い春というのが江戸の春のイ
メージだということです。もうすぐに夏の雰囲気になるということですが、こ
の間の日曜日は冬のような寒さで、まだ春の暖かさを感じません。
 月末には私の住む取手市で、落語芸術協会の若手による落語会が開催されま
す。桂花丸、柳家小蝠、雷門花助の3人が登場します。昭和の日の29日、取手
市民会館、木戸銭は千円です。お近くの方はぜひどうぞ。問い合わせはメール
でお願いします。
 さて、本日の一席は、お馴染みの作品。ごゆっくりどうぞ。

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6 紀州(きしゅう)

【粗筋】
 8代将軍を決める朝、尾州公が鍛冶屋の前を通り掛かると槌の音が響いてく
る。この「トン  テン  カーン  トン  テン  カーン」という音が、尾州公に
は「天下取ーる、天下取ーる」と聞こえた。これは幸先がいいと、江戸城へ入
る。大評定の席で、
「下万民(しもばんみん)のため、任官あってしかるべし」
  と勧められた尾州公、
「余は徳薄(うしゅ)うして、その任にあらず」
  と辞退。これは一度で「ようがす、引き受けやしょう」と言うのはいかにも
軽い、もう一度勧めたら引き受けようと思ったのである。
  ところが、評定役はそのまま紀州公の前へ。
「下万民のため、任官あってしかるべし」
  紀州の奴がどうどう答えるかと思って見ていると、
「余は徳薄うして、その任にあらず」
『あれ、同じことを言ってやがる。これならもう一度こちらへ回ってくるだろ
う』
  と思ったが、紀州公続けて、「なれども……」って言いやんの。
「なれども、下万民のためとあらば、任官いたすべし」
  こうして紀州公に決まり、がっかりした尾州公が戻っていくと、鍛冶屋の中
からはまだ「天下取ーる、天下取ーる」と聞こえてくる。
「ははあ、これは紀州公は利口だから一度受けておいて、まだ若年ゆえ尾州公
によろしく頼むと使者をよこすのだろう」
  と思い、店の中をのぞくと、親方が真っ赤に焼けた鉄を水に付けたから、
「きしゅうぅ……」

【成立】
 1821年(文政4)松浦静山の随筆『甲子夜話』第17巻による。「槌の音」と
も。
  鍛冶屋の音は「天下取る」と鳴る訳ではないが、心の持ちようでそう聞こえ
るのである。高座では言葉に聞こえるという類似の小噺(「お歴々」「夜鷹だ」
など)を並べて説明する。その小噺にどんなものを選ぶかが、演者の個性とい
うことになる。
 ただ演じれば5分で終わるような噺を、『円生百席』では30分かけている。
別の小噺に飛んでも本筋があやふやにならないのはすごい。現在演じているも
のも、ほとんどこれがお手本。春風亭小朝は、中の言葉に聞こえる小噺を全て
現代的な新しいものに変えて演った。これもすごい。

【一言】
 鉄(かね)を焼く所は親方の左側、真ン中にふいごが縦に置いてあって、水
は右で、醤油樽に入っているんです。左手のやっとこで焼けた鉄を持って、右
手のハンマーで叩く。だから水に突っこむ時は、扇子を右手に持ちかえるんで
す。(橘家圓蔵(7))

【蘊蓄】
 徳川将軍に跡取りがない場合は、尾張、紀伊、水戸の御三家から選ばれるこ
とになっている。伊藤忠がこの落語を聞いて、「こんなことで将軍を決める訳
がない」と怒ったというが、落語に腹を立てていては仕方がない。実際には、
この八代将軍吉宗は、前将軍家継の遺言によって任命されている。
  家継は、十二歳で将軍となり、新井白石らを重く用いたが、十六歳で死去し
た。
  吉宗に求められたものは経済の安定であった。特に扶治米という、米で給料
をもらう侍が切迫していたので、まず米の値段を上げることで武士の生活を安
定させ、収穫による歩合制度だった税を豊作不況にかかわらず一定量を納める
という方式を導入、現在の消費税の発想を生かして経済を建て直した。その財
源として新田開発に力を入れ、この時に開発された場所には「○○新田」とい
う地名がつけられた。彼の経済政策は後世の範とされ、一応成功したかに見え
たが、1732年(享保17)のいわゆる享保の大飢饉によって行き詰まることにな
る。
 鍛冶屋の音について、『今様職人尽百人一首』には、
  あしひきの相槌音のちんからり長々し夜を明かす金槌
 とある。また『宝船桂帆柱』には、
  栄行く運は天からてんからとかねを延ばすや鍛冶の生業(なりわい)
 とある。

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 さて、寄席の言葉を紹介する『落語大事典』、今日も「は」の続きです。

ばれ【バレ】 性に関わることをズバリと話題にすること。噺にこうした内容
が含まれれば「バレ噺」という。それでも性器や行為そのものを口にすること
はなく、落語がいかに気品にあふれているかを証明している。ただし、特別の
席でのみ、そのものが出るという噺もない訳ではない。
 事例をあげると、落語家が演じる場合、未亡人が墓にまたがって、
「お線香の十倍のものをあげました」
 で終わる。素人に限ってその先をはっきり「お○こうをあげました」とやり
たがる。客席は仲間内であることが多いので大変に受けるが、これをやってし
まうと、後の上品なバレ噺では全く受けなくなる。実際にこういう場面に遭遇
して、その後演った噺が一つも受けなかった噺家がいるのを知っている。かと
いって、プロが同じことをやったらおしまいである。

ばれる 「壊れる」、「発見する」の意味もあるが、現在落語でも使われている
のは「露見する」の意味のみ。

ご意見ご希望はこちらまで mailto:meisakurakugo@yahoo.co.jp 
HP「名作落語大全集」はこちら。http://esaki-ochi.hp.infoseek.co.jp

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