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平安時代のシンデレラ物語とも言われる古典文学「落窪物語」を今風京言葉でお届け。美しい姫、男らしい少将、溌溂とした侍女阿漕…いきいきとした平安の若者たちが古典文学を身近に感じさせてくれます。

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2002/10/04

現代若者京ことば訳「落窪物語」

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■  落  ■           ■ 現代若者京ことば訳 ■ ■
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■  窪  ■   ■ ■  落 窪 物 語  ■ ■     ■
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■  物  ■       ■   58   ■         ■
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■  語  ■              ■ 訳/綾大 鈴 ■ ■
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■■■  現代若者京ことば訳「落窪物語」巻之一 42−1  ■■■
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   北の方は、姫君が寝起きしてはった落ち窪んだ部屋に来はった。

  「どこや、櫛の箱は。阿漕ていう賢ぶった子が、もう隠してしも

  たんやな」

  て言わはったんと同時に、

  「ここに片付けといたんですよ」

  て阿漕が言うたもんやから、さすがに取り上げようとはしやはら

  へんかった。

  「この部屋は、私が開けへん限り、開けたらあかん」

  て、戸を固う閉じてしまわはった。

   北の方は「上手ういった」て思て、「いつか、このこと典薬助┐
       (てんやくのすけ/北の方の叔父。六十歳。 ) ←┘
  に言うたろ」て思て、人気(ひとけ)のない時を狙ってた。

  

   阿漕は追い出されて、ものすご悔しいから、

  「なんでわざわざこんな邸にいるかいな。出ていってしもたろか

  な」て思うけど、「姫君がどうなってしまわはんのか、様子を見

  よう」て思い直した。「どうしてはるやろ」て気になる。

   阿漕は、三の君の許に行って、ずっと邸にいられるように、ひ

  たすらお願いした。

  

  「ほんまにひどいことに、身に覚えのないことで、北の方が叱ら

  はって、『出て行け』て言わはったんです。

   お仕えを途中でやめんなんこと思たら、ものすご悲しいです。

  何とかしてやっぱり、もう一度お仕えしたい、て思てます。

   姫君(三の君)から北の方にお話ししてもろて、今回のお叱り

  を許してもらえるようにしてもらえませんか。

   落窪の君には、小さい頃からお仕えしてきましたけど、今は別

  れて、離れてますし、今回の、落窪の君の件は、ちゃんとは知ら

  へんのです。

   誤解されてんのが、ものすごやりきれへんのです。

   優しく召し使てくれはって、お仕えした姫君(三の君)の許か

  ら離れるんが、悲しいんです」

  とか言うて、よう三の君への忠誠を誓て、こっそりお願いした。

  

   そしたら、三の君はほんまのことやと思て、阿漕がかわいそう

  にならはった。

   母親である北の方に、

  「阿漕まで、なんで叱るのん。使い慣れてる子やのに、いいひん

  ようになったら、困るわ。この邸で召し使てやって」

  て言わはった。

  「阿漕は、妙にあんたと気のあう女童(めのわらわ)みたいやね。

   盗人みたいな女童。今回のことは、あの子が『落窪の君を立派

  な身分にしてあげよ』て、したことに違いあらへん。

   落窪が自分からしたこととは思わへん。色気出してるようには

  見えへんかった」

  て北の方が言わはると、三の君は、

  「そやけど、今回は許してあげて。かいらしく私に泣きついてき

  たんやし」

  て言わはった。

  「どうするにしても、あんた思うようにしたらええ。そやけど、

  あんな子のこと『よう仕えてくれてる』やとか、言うたらあかん

  え。阿呆らしい」

  て、北の方が不満そうに言わはったから、さすがに三の君も面倒

  になって、急には阿漕を手許に呼ばんと、「ちょっと待ってて。

  そのうち良いようにしてあげるから」て言うてきはった。




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■■■ 後記 
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    阿漕が泣きながらもあれこれ動き回ってのは、こうして北
   の方がまた落窪の君の物を奪いに来たときの対策もあったの
   でしょうね。

    そして、北の方の実子である三の君にお願いして、とりな
   してもらう。
    さすがに北の方も、自分の娘のお願い攻撃には弱いようで
   す。
    阿漕が邸にいると、いろいろ都合が悪いでしょうに。

    北の方は阿漕が落窪の君のために立派な結婚相手を探して
   たことも、落窪の君がそんな大それたことを自分からするよ
   うな人ではないこともお見通し、だけど、そうなってもらう
   と困るから、中納言には嘘の報告ばかりして、落窪の君を閉
   じ込めてしまった。

    本当にすべてが「勘違い」なら、救いがあるのですが。

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