「今そこにある未来」(未来工学研究所メールマガジン)2007.12.25号
未来工学研究所メールマガジン Hints for the New Century
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今そこにある未来 Clear and Present Future
■ 2007年12月25日号(第82号) ■
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―――――――――― も・く・じ ――――――――――――――――
◇ 大学は本当に全員入学になるか
◇ 重要地下鉱物資源をめぐる技術と戦略
−11月20日技術同友会「クリティカルメタルに関する提言」を発表−
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◇
◆ 大学は本当に全員入学になるか
◇
主任研究員 小松 正和(こまつ まさかず)
1、全員入学は必然か
最近、高等教育システムを研究してきたY先生のお話を聞く機会があった。
筆者は、近い将来大学は全員入学(いわゆる全入)になっていくのだと漠然と考
えていた。同様の感覚を持たれている方も多いのではないだろうか。
ところが、どうもそうではないらしい。Y先生は大学全入を支持しているが、全入
は必然ではなく何も手を打たなければ進学率は現在のまま横ばいで推移する
だろうと言っている。
先生によると、大学の志願率も進学率も、1977年以降ほとんど横ばいであると
いう。示されたグラフを見ると、たしかに、ここ30年間ほとんど上昇していない。
2、大学進学率は上がり続けてきたわけではない
もう少し詳しくこのグラフを見ると、大学進学率は1960年でわずか10%であった
ものが、約15年後の1977年には40%に上昇している。まさに年々増加の一途
を辿っている。ところが、1977年を過ぎてから1990年までの約15年間の進学率
は、40%のまま完全に横ばいである。1990年を過ぎると10%ほど上昇して進学
率は約50%に至っているが、この10%の上昇も7〜8年の間に終って、2000年
にはすでに横ばい状態となって現在に至っている。
Y先生はもう1つのグラフも示された。このグラフは横軸−年度、縦軸−金額とな
っていて、2本の右肩上がりの折れ線が描かれている。その1本は月収の全国平
均、他の1本は大学の年間授業料の平均値である。
この2本の折れ線は、1977年まではほぼ重って上昇している。つまり、1977年ま
では大学の年間授業料は家庭の月収の全国平均とほぼ等しくなっていたという
ことである。ところが、1977年を過ぎると2本の線はどんどん離れていき、2005年
では大学の授業料年額は平均月収の約2倍となっている。
Y先生は、大学進学率の頭打ちはこの経済的環境が原因であると指摘している。
3、大学全入には意味がないか
大学の全入については、その必要性の有無も含めて意見の分かれるところだと
思われる。
従来の大学進学は、社会に出た時、中学卒や高校卒と比較して上の地位や高
い給料を貰う身分になるということとリンクしていた。進学意欲はこのリンクに支
えられていたといえる。
しかし、全員入学に近づいてくればこのリンクは成立しなくなり、当然ながら各大
学は格付けを上げることに奔走するのであって、すでにその兆候が見えていると
もいえる。受験しようとする当人もその親も大学の格に無頓着であるわけがない
ので、ここにも進学率を抑制する要素があり、見方を変えれば、全入は支持され
ないということである。
こういう状況では、大学全入には意味がないと言わざるを得ない。全入を支持す
るY先生も、大学が今のままで良いとは言っていない。
4、全入は本当に意味のないことだろうか
日本の大学進学率は国際的に見てトップクラスにはあるが、トップではないらし
い。
米国やEUは70%を超えており、韓国も60%を超えている。日本は現在50%で
ある。進学率はあまりに低いと問題であるが、ここまで高水準になると、ただ高け
れば良いという訳にはいかない。上に見たように、今の日本の状況を考えれば明
らかである。
Y先生はひとつの提案をされている。要点は次のようである。
(1) 将来社会における変化の激しい社会環境に際して、これに対応できる力を
養うために全員が大学で学ぶ必要がある。企業に入ってから学ぶ途は絶望的で
ある。
(2) そして、変化する環境への対応力を養うには、問題に直面し、それを解決し
たという達成体験を重ねることが必要である。この意味での「学ぶ習慣」を身に付
けることが求められ、大学はこの習慣が身につくように改革されねばならない。
(3) また、大学授業料を引き下げて全員入学を促す施策が必要で、例えば、消
費税を0.5%引き上げることで授業料のほとんど全額を賄うことができることなど
を視野に入れるべきである。
もし、このような改革が出来るなら、日本は世界に誇れる進学率100%の国とな
りうるだろう。今の日本には入学希望者の全員を受入れる能力が大学側にも家
庭側にもあるということを考えれば、進学率をこのまま50%程度で横ばいにして
おくのはもったいなく思えてくる。
ただし、そのためには進学率が「学ぶ場が提供されて、それを活用している度合
いである」と定義される社会になることが必要であり、大学の改革だけでなく、
我々によって形成されている一般社会をも改革も必要せねばばらない。ここでい
う一般社会の改革とは、言うまでもなく我々自身の意識改革にほかならないので
ある。
◇
◆ 重要地下鉱物資源をめぐる技術と戦略
◇ −11月20日 技術同友会「クリティカルメタルに関する提言」を発表−
技術同友会事務局長/未来工学研究所所長
長谷川洋作(はせがわ ようさく)
今世界では、プラチナ、インジウム、レアアース等、貴重で産地が偏在する金
属地下資源をめぐって、激烈な争奪が繰り広げられています。これらは、触媒、
磁性、半導体など特殊な機能を有することから、自動車や電子産業になくては
ならない先端材料になっています。
我が国では世界のレアアースの22%、インジウムの82%を消費しているが、レ
アースの8割以上は中国で産するなど国内の生産はゼロに等しい。プラチナの
8割は南アフリカ産です。中国は自国の資源管理だけでなく、アフリカにも資源
獲得の触手を伸ばしており、世界の鉱山関連の大資本も採掘権の確保などに
奔走しています。
しかし、わが国には国としての明確な資源戦略が欠けています。技術者も少な
い状態です。この事態に、どう対処すればよいでしょうか。
未来工学研究所が事務局をしている技術同友会(理工系出身の有識者の集
まり)では、最近(11月20日)、これに関する提言(資源開発への参加支援、
技術者の養成、代替技術、回収技術の開発など6項目の「クリティカルメタル
に関する提言」)を発表しました。ご関心のある方は、技術同友会事務局宛
(yo.wada@iftech.or.jp )でお願い致します。
◇◆
■◇ 編集後記
□■
本年も未来工学研究所メールマガジン「今そこにある未来」をご愛読下さいまし
て、有難うございました。食品偽装、労しい事件等が絶えなかった1年でした。
現代社会を見据えつつ、「今そこにあるべき明るい未来」を目指して、当メルマ
ガを配信して参りたいと思います。来年も、ご購読、宜しくお願い申し上げます。
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