「今そこにある未来」(未来工学研究所メールマガジン)2007.11.7号
未来工学研究所メールマガジン Hints for the New Century
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今そこにある未来 Clear and Present Future
■ 2007年11月7日号(第80号) ■
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―――――――――― も・く・じ ―――――――――――――――――
◇ 「スマイルカーブ」 〜儲からないのは技術と過当競争のため?〜
◇ 融通の利かない人感センサー 〜今そこにある未来の落とし穴〜
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◇
◆ 「スマイルカーブ」 〜儲からないのは技術と過当競争のため?〜
◇
主任研究員 諸橋 勝栄(もろはし かつえい)
■スマイルカーブ
「スマイルカーブ」と言う言葉をご存知だろうか? 製造業に従事されている方には
なじみが深いと思われるが、少し説明させていただく。スマイル・カーブとは、台湾
のパソコンメーカーであるエイサーのスタン・シー会長がパソコンの各製造過程で
の付加価値の特徴を述べたのが始まりとされている。付加価値を製造過程の流れ
に沿って図示すると人が笑った口のような形になることから「スマイルカーブ」と呼
ばれている(図)。
電機業界が儲からなくなった原因と言われる。
高↑
|
付 |
加 | * *
価 | * *
値 | * *
低| *
|________________
川上 川下
製品製造過程(販売・サービスを含む)
■価値移転の話
スマイルカーブ化は付加価値が移転する現象と捉えるとどのような形で移転する
のだろうか?電機業界の例を2つ挙げてみる。
90年代後半から急激に売り上げを伸ばしたある量販店は、最初メーカーから他よ
り高く仕入れていた。メーカーは利益率が上がる(ほかより儲けが多い)ので優先
して商品を供給し、その量販店は売り上げを急速に伸ばした。量販店はその一方、
リベートや協賛金などを徐々に導入した。売り上げに占める割合が高まったとき、
他と同じ仕入れ値を要求してきた。メーカー(の担当部門、責任者・担当者)は売
り上げを減らせないので、申し値で取引を続けざるを得なかった。その量販店の
戦略が一枚上だったのだ。
また、20年ほど前は、テレビ受像機の画像処理回路は部品が多く使われ、その
使い方に技術力の差を活かし、新規参入メーカーは画質の面で追いつけなかっ
た。コストダウンのため、技術部門(の責任者・担当者)は血の出るような努力を
し、画像処理回路がIC化された。その結果、差別化技術がICに移転された。部品
製造部門はICを他社へも販売するので、それを使ったメーカーと画質の差別化
が出来ない。技術をただで提供する結果になった。
■なぜスマイルカーブ化が起こるか?
スマイルカーブの例は日本企業の組織行動の一端を表しているかもしれない。
日本の多くの組織の原型とも見られる旧日本軍は以下の特徴を持つと言われる。
1 戦略の欠如 2 特定状況(過去の例)への固執 3 集団主義
前述の電機業界スマイルカーブ化の2例にこのような特徴が見られないであろうか。
企業の組織行動にスマイルカーブ化を解く鍵があるように思う。
◇
◆ 融通の利かない人感センサー 〜今そこにある未来の落とし穴〜
◇
主席研究員 片瀬 和子(かたせ かずこ)
私が暮らすマンションは、各戸の玄関ホールの天井灯に人感センサーが設置さ
れている。室内外のドアを開けて玄関ホールに人が足を踏み入れると、瞬時にこ
れを察知して、天井の複数個の電灯が自動的に点灯する。そして、一定時間(1
分ぐらい)が経つと、自動的に消灯する仕組みになっている。夜、玄関を開けた
だけで明かりが灯る、私が「今そこにある未来」を体感する瞬間である。
つい先日、この人感センターが故障してしまった。夜、玄関の扉を開けても辺り
は闇、段差がまったく無いオール・バリアフリーのわが家では、靴を脱ぐべきポ
イントを見極めるのに一苦労するという事態に陥った。手動で操作するスイッチ、
すなわち代替手段がないため、隣接する居室の電灯をつけるまで「お先(=玄
関先)真っ暗」なのである。
この玄関ホールの人感センサーには、入居当初より不満を感じている。わが家
は洗面所、浴室、トイレに行く時、必ず玄関ホールを経由しなければならない。
玄関ホールを通過する程度であれば、多少暗くてもまったく支障がないので、夜
もセンサーをオフにしておきたい。また日中は、外出時も玄関ホールの明かりを
点灯させる必要はない。ところが、昼夜を問わず(照度に関係なく)、人の気配を
感じただけで天井灯がついてしまい、省エネルギーに逆行するような動きをする。
一方、週末、天井灯のついた明るい玄関ホールで靴磨きに勤しみ始めると、ほ
どなく灯が消えてしまう。10秒ぐらい経つと再点灯するのであるが、点灯と消灯
が頻繁に繰り返される。靴磨きの間ぐらい、ずっと手元を明るくして欲しいのに、
融通が利かない。センサーに勝手に支配されてしまっている。そして、ひとたび
センサーが故障すると、まったく灯りがつかなくなってしまうのである。
このような事態に陥らないよう、センサーだけではなく、自由にオン・オフできる
手動スイッチも備え、状況に応じて生活者自身が適宜どちらかを設定できるよう
にして欲しい。これにより、前述したような在宅時や日中の不満、故障時の問題
がかなり解消され、微力ながら省エネにも貢献できるのではないかと思われる。
「ユビキタス社会が到来すると、様々なモノにICタグやセンサーが付いて暮らし
が非常に便利になる」といったバラ色の青写真が描かれ、多様な住宅設備機器
や電化製品のネットワーク化やセンサー等によるコントロールが期待されている。
ユビキタス社会を支えるセンサーが故障しただけで、明かりが灯らなくなる等生
活機能が著しく低下する事態に陥っては本末転倒である。故障など不慮の事態
が発生した時だけでも、生活を営む人自身が簡易に対処できるアナログ/手動
のバックアップ機能が必要である。
デジタル化、自動化された機器やシステムに全面依存することに、今そこにある
未来の落とし穴が待っているのではないだろうか。
◇◆
■◇ 編集後記
□■
味覚の秋の到来です。先日、精米したての新米を購入し、直火炊きの美味しい
ご飯を堪能しています。
直火炊きは面倒と思われるかもしれませんが、電子炊飯ジャーよりもはるかに
短時間で炊き上がり、時間に追われている時など、大変便利です。一流料亭
直伝の炊き方を実践するようになって、ほとんど焦がさなくなりました。
ささやかですが、こんなところにも、アナログ/手動の良さを感じています。
直火炊き、一度、お試し下さい。
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