「今そこにある未来」(未来工学研究所メールマガジン)2007.8.30号
未来工学研究所メールマガジン Hints for the New Century
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今そこにある未来 Clear and Present Future
■ 2007年8月28日号(第78号) ■
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―――――――――― も・く・じ ―――――――――――――
◇ 「新しい身体」の予感 〜身体2.0時代の到来
◇ 停電対処のスペシャリスト
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◇
◆ 「新しい身体」の予感 〜身体2.0時代の到来
◇
主席研究員 和田 雄志(わだ ゆうじ)
◆義足のランナー
7月13日、ローマの陸上大会(ゴールデン・ガラ)400m走で、義足のランナー
が健常ランナーと一緒に走り2位に入賞した。南アフリカ出身のオスカー・ピスト
リウス選手は、先天性の障害により両足とも膝から下を切断しカーボン繊維製の
義足を装着しているが、2004年のアテネのパラリンピックでは、100mで銅
メダルを獲得。来年の北京オリンピック出場をめざしているという。国際陸連は
「バネや車輪など選手に利益をもたらす器具の利用を禁止する」というルールに
抵触しないか調査している。
◆眼内レンズ
日本における白内障の患者は130万人。水晶体が濁ることにより視力が低下する、
高齢者に多い病気である。しかし最近は日帰り手術で、視力を取り戻す人が増えて
いる。超音波の力で水晶体を吸い出し、そこに「眼内レンズ」を埋め込むという方法
が主流となっている。埋め込まれるレンズも、紫外線を吸収するタイプ、少し色がつ
いたタイプなどがある。2006年の眼内レンズの国内市場規模は、メーカー出荷枚
数で合計約104万枚。メガネやコンタクトレンズなどの視力補正具が、我々の体内
に入り込み、身体の一部となっている。
◆「新しい身体」と社会の対応
たとえば、日本での心臓ペースメーカー装着者は30万人。
人工臓器、人工骨格、人工感覚器は、もはや私たちの日常生活に深く入り込んでいる。
高齢化社会が急速に進行しつつある我が国において、人体機能の劣化や老化への
対応は、社会を構成するマジョリティ=中高年が直面する共通課題である。
従来は、段差解消などのバリアフリー導入、各種介助サービスなどで対応しようとし
てきたが、これらに加えて今後は、人体そのものの「改変」あるいは機械化を前提に
した新しい社会システムの構築が不可欠となってくる。
ペースメーカー利用者に携帯電話や電磁調理器が悪影響を及ぼさないようにすると
いった社会的ルールづくりは、次第に定着しつつある。今後は、「新しい身体」、
最近の流行になぞらえて言えば「身体2.0」を獲得した人がスーパーパワーを
発揮することにより、通常の人が不利な状況に陥るといった「逆転格差」の問題も
懸念される。
「今そこにある未来」は、我々の「身体」においても、確実に現実化しつつある。
◇
◆ 停電対処のスペシャリスト
◇
研究員 大澤 真美(おおさわ まみ)
◆ニューヨークの大停電
2003年8月14日PM4時過ぎ、アメリカ北西部からカナダにまたがる北東アメリカで
世界最大規模の地震が起こった。送電が停止された電力は約6000万キロワット。
実に東京電力全体の供給量に匹敵するということだ。
この大停電ではニューヨーク市も被害を受け、夜景の美しい摩天楼から光が消えた。
止まった地下鉄から脱出する人々の姿やブルックリン橋の大混乱の様子をニュース
番組で見た方も多いだろう。9.11のテロを経験したニューヨーク市民は比較的冷静
に対応したそうだが、混乱に乗じた略奪の防止に4万人の消防、警察官が動員され
たり、上空からヘリコプターで監視するなどの警戒体制が敷かれた。
◆ドミニカ人的停電の過ごし方
そんなニューヨークの一画で、全く平然とこの停電を過ごしている地区があった。
いや、むしろ楽しんでいると言っていい。人々は家の外にテーブルとイスを出し、
乾電池式ラジカセから流れるリズミカルなラテン音楽を聴きながら、くつろいだ様子
でビールやラム酒を片手におしゃべりやドミノに興じている。「停電は心配じゃない
んですか?」と聞けば、”Ella viene horita(電気はそのうち来るさ)”とスペイン
語で答えが返ってくる。
マンハッタンの北部に位置するこのワシントン・ハイツはドミニカ(共和国)人地区と
言われるほどドミニカ移民が多い。街はメレンゲやバチャータといったドミニカの音
楽で溢れ、スペイン語が飛び交い、まるでドミニカ共和国の縮小版のようだ。
◆ドミニカ共和国の停電事情
筆者は4年半ほどドミニカ共和国に住んでいたが、この国にはやたらに停電が多い。
1〜2時間の短いものから半日以上の長時間停電までが、ほぼ毎日襲ってくることも
あった。電気釜でご飯を炊いている時に停電が来ると悲しい。慌てて鍋に移して
ガスで調理することになる。「発電事業への外資の参入」「政府の発電会社への支払
いの遅れ」「発電所の故障」「一般市民の電気料金未払い」など停電の理由は多々
あるが、とにかく国民は停電に慣れている。停電が来ても「またか」と思い、電気が
来れば街のあちこちから「電気が来たぞ!」の喜びの拍手が聞こえてくる。
何せ彼らは、飛行機が無事着陸しただけで拍手喝采する国民だ(嘘だと思う方は、
一度サントドミンゴ行きの飛行機に乗ってみてください)。そんなドミニカ人だか
ら、ニューヨークの大停電でも一際落ち着きを払ったものだった。
◆困難を楽しむ力
ドミニカ共和国のようなカリブの小国では、政府の在り方に国民の生活が振り回さ
れる。停電はもはや文化(?)と化してしまったのか、ある人は「コロンブスの時代
から停電はあるさ」とうそぶいていた。電力事情一つをとってみても、ドミニカ共
和国の生活が「発展」と呼ばれるところにはかなり遠いところにあることがわかる。
しかし、そんな中できうる限り楽しんで生活しようというの強さに私は感心する。
ちなみに、2006年7月に英国のシンクタンクが出した世界幸福度指標
http://www.happyplanetindex.org/index.htmでは、178カ国中ドミニカ共和国が27位、
日本が95位、アメリカが150位だった。
ニューヨークの大停電で、真っ暗闇に流れるドミニカ人たちの笑い声や、軽快なラテ
ン音楽は、そんな彼らの逞しさを如実に表している。2000年の国勢調査時で、ニュー
ヨークのドミニカ人口は5%を超え、今や市民の20人に1人がドミニカ人(不法移民
を含めればもっと)。ドミニカ女性の出産率の高さや新たな移民の流入とあいまって、
その数はますます増加傾向だ。近い将来、楽しんで(?) 停電を過ごすニューヨー
カーも多くなるかもしれない。
◇◆
■◇ 編集後記
□■
はじめまして、今月から編集長を勤めることになりました、片瀬と申します。
未来の確かな足音が感じられるようなメルマガを出していきたいと思っております。
どうぞ宜しくお願い致します。
大阪の世界陸上選手権では、予期せぬ失速やハプニングが続いています。
これから最終日まで、日本選手の活躍に期待しましょう。
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