2004/09/08
Flash*Memory[012]青山ブックセンターのこと
[no.012] 09_08_2004 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ F L A S H * M E M O R Y 今 野 裕 一 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 私が、青山ブックセンターの閉鎖を知ったのは16日深夜だった。 間抜けといえばこの上ない。取次ぎの柳原の倒産の時もそうだった。 柳原の場合は、店頭在庫を伝票上で積み増され(売上げを架空の店頭 在庫にされたということ)た揚げ句の倒産。しかも店頭在庫は返って こない。そして何ヶ月後にはゾッキに出るという最悪の結果だった。 悪い記憶が頭をよぎった。早く知った出版社は、自社本を回収に店頭 に駆けつけたらしい。どうも近ごろ人間が大人しくなったというか、 危機察知が遅くなったというか、良い人間になっている。性格が悪い と言われてもえげつなく立ち回ったほうが良いのかもしれない。 青山ブックセンターとは、売上げ計算がなかなかまとまらずぐずぐず しているうちにこんなことになってしまった。なんと次号の夜想の制 作費分まるまる売掛で残すことになった。店頭在庫もたくさん残って いた。青山ブックセンターの閉鎖はかなり異常な状況だ。青山ブック センターの主力取次ぎの栗田によって破産申し立てが行われた。 聞けば栗田は資金をかき集めさせて手形を現金化したその足で、裁判 所に行って破産申告を申し立てたらしい(青山ブックセンターの社長 に取材した人の話を聞いた)。青山ブックセンターにしてみると抜き 打ち的にやられてしまったということだろう。さらに栗田は裁判所へ の申請から時をおかず全店から本を引き上げた。つまり16日には栗田 は本を引き上げ切っていたことになる。パラボリカとペヨトル工房は、 直取引をしていて、もちろん栗田は一冊も通過していないのだが、う ちの本も一緒に持っていってしまった。何日かして間違えて回収した から取りに来てくれる?との連絡が栗田から入った。今回の、栗田の 動きにはかなり問題があるような気がする。 8月6日に債権者会議が行われたが、どうも様子が掴めない。青山ブック センターの磯貝社長も不徳のいたすところ……みたいなことを言って 頭を下げるばかりで、はっきりした経過説明をしない。栗田の関係者 も会場にいるのかいないのか良く分からない。アップリンクの浅井隆 が噛みついた。個性的で、小さな出版社を大切にする青山ブック センターなどと言っているがちっともそうじゃないじゃないかと。 支払いの残り方がまさにそうだと。それはそうだ。アップリンクとか エディシオン・トレビルとかステュディオ・パラボリカとかの実質被 害は痛いだろう。もちろん債権者はそれぞれ痛みが切実なので、どこ がどれだけという議論は意味がないのだが。 私も質問をした。本社の不動産の負債が原因で、書店は黒字だったと 強調しているので、どのくらい黒字だったのか。数字を簡単に教えて くださいよと。資料が何もないじゃないですかと。弁護士はのらりく らいと逃げた。債権はほぼ放棄してくれ、なおかつ直接取引の出版社 には、引き続き商品を入れて欲しいって、そんな私たちが立ち行かな くなるような負担を強いるような再建っておかしくないですか、と。 浅井隆もさらに追及の手を緩めなかった。 青山ブックセンターの支援に入ったのは洋販だが、代表の賀川洋はか なりのやり手だ。経歴をネットで調べるとこんな感じだ。1955年大分 県生まれ、大手出版社のニューヨーク駐在員を経て、88年に現地で独 立。1999年、日本の洋書取次の老舗、タトル商会の買収に参画。 2003年6月に日本洋書販売を合併。新社名は日本洋書販売。洋販の渡辺 正憲社長が会長、タトル商会の賀川洋社長が社長兼CEOに就任。そして 今回は青山ブックセンターの再建。ちなみに洋販は、書店の東京ラン ダムウォークと流水書房のチェーンを経営している。短期にタトル、 洋販、青山ブックセンターを取得した賀川洋の真意は、私にはまだ分 からない。 復刊夜想はかなりの量を青山ブックセンターで販売していたために、 資金的にも将来の書店展開的にもかなりの打撃を受けた。夜想の千冊 近い売上げをどこかでカバーしなければ、復刊第2号は成立しない。 イメージとして中心にぽっかりと穴があいた感じだ。これはいまの日 本の状況を如実に反映している。巨大な規模のメガシステムと個性を 発揮するインディの両極しか生き残れないということだ。夜想も会社 システムでなく個人出版に戻すことで生き延びようとしている。賀川 が運営するミドルクラスの書店の経営は、これからの日本の構造の方 向が見えてくる良い実例になるだろう。個性をもったままミドルで生 き残れるか、それが最大の課題だろう。ミドルが存在するかどうかは 私たちの規模の出版の存続を左右することになる。 今、日本では世界最大規模のM&Aが行われている。企業が買収されたり 統合されたりすることはあたりまえのことになったのだ。そこに外資 も入りこんできている。出版業界の体質はかなり前近代的であり、改 革が行われてこなかった。再販制度や委託がどれだけ書店員の能力を 削いで、それが本の売れ行きを落としているか、余りにも無神経だ。 青山ブックセンターも六本木店、本店の売場の魅力はかなり低下して いて、夜想も映画のコーナーにこそっと置かれていて、これじゃあ売 れないよなと、なんどもアピールをしたのだが、上司の許可がいると いうことで却下された。 上司に聞かないと仕入れができないという店舗で良い書店はない。こ れは断言しても良い。復刊してから切実に思うのは、売れ行きは書店 員さん次第。店舗の規模も立地もほぼ関係がないというのが私の印象 だ。これを期に青山ブックセンターの店頭が再編されるなら一つの可 能性が生まれる。ステュディオ・パラボリカでは、9月29日の再開に あわせて本を納品することにした。10月15日の復刊第2号『ドール』 の発売日には夜想+人形のフェアが行われる予定だ。青山ブック センターの動向はかなり気にかかるが、ミドル層の空白は早晩、私た ちの活動を圧迫するだろう。その対策はまだ出来ていない。 夜想は草の根的な支援を得て終了し、また復活した。先日の東京・谷 中「HIGURE 15-17 CAS」での「夜想リターンズ展」も日大芸術学部の 学生さんとHIGUREメンバーのボランティア的尽力によって、運営され 成功した。そこからいくつもの新しい芽が生まれ、今回のドール特集 も、HIGUREと日大芸術学部の学生さんたちのサポートによってより充 実した内容になってきている。彼らの多くは、夜想を青山ブック センターで買っていたと言う。現代は不思議な時代で、一人の真剣な 力、一つの店舗の真摯さが全体に大きな影響を与える。だからこそ青 山ブックセンターにも頑張ってもらいたい。そして夜想もそういう真 摯な雑誌として存在していきたいと思っている。 [参照] 木の葉燃朗氏による、「夜想リターンズ展」レポート http://www.h5.dion.ne.jp/~garakuta/page131.html ┌――――――――――――――――――――――――――――――┐ ▽i n f o r m a t i o n └――――――――――――――――――――――――――――――┘ ★夜想復刊第2号は10月15日発売です。 ★9月11日(土)、東京芸術大学 芸術祭で楳図かずお氏と対談します。 http://www.geidai.ac.jp/event/geisai/ ★9月12日(日)、MMAC Festival in TOKYO のトークショウにでます。 http://members.jcom.home.ne.jp/mmac/pages/information.html "~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~"~" ペヨトル工房 http://www.tctv.ne.jp/sparabo/peyotl.html 2-:+ http://www.2minus.com Peyotlfan http://www.thought.ne.jp/peyotl/


